「相続した不動産を売りたいけど、税金っていくらかかるの?」
相続も不動産売却も人生で何度も経験するものではないので、こんな疑問を抱く方は少なくありません。
相続した不動産を売却すると、「譲渡所得税(所得税・住民税)」「印紙税」「登録免許税」の4種類の税金がかかります。
相続した不動産の売却にかかる税金は相続人全員で支払うのが一般的なので、自分以外が不動産の売却をすすめる場合でも、知識として覚えておきましょう。
税金の種類 | 概要 | 金額 | 支払時期 |
---|---|---|---|
譲渡所得税(所得税・住民税) | 不動産売却で得た利益にかかる税金 | (売却価格 ー 取得費用 - 譲渡費用 - 特別控除額 ) × 税率(20%~39%) | 所得税:確定申告時 住民税:売却翌年の6月以降 |
登録免許税(相続登記) | 登記内容の変更にかかる税金 | 固定資産税評価額 × 0.4% | 登記時 |
印紙税 | 売買契約の締結にかかる税金 | 2,000円~2万円 | 売買契約時 |
相続不動産の売却では、知識がなかったために、知らず知らずのうちに数百万円の大損をしてしまうケースも珍しくないんです。
そこでこの記事では、相続した不動産の売却で損をしないための税金の知識を徹底解説します。
相続した不動産の売却については、以下の記事でも解説しています。
親から相続した不動産はすぐに売却するのがおすすめ!流れや税金の控除をわかりやすく解説
相続した不動産にかかる税金を控除する制度
相続した不動産を売却する際には、支払う税金を少なくするための特例がいくつかあります。
この特例を利用せずに相続不動産を売却すると、かなり損をするので気をつけてください。
代表的なものだと、以下の4つの特例が挙げられます。
控除の特例を適用すると支払う税金を百万円単位で減らせる可能性もあるので、積極的に活用しましょう。
なお、すべての特例が併用できるわけではなく、中には選択制のものもあるので、どの適用パターンが一番節税できるかを考えて特例を選びましょう。
本章では、代表的な4つの特例の概要と適用条件をご紹介していきます。
一点注意していただきたいのが、いずれの特例を受ける場合にも確定申告が必要になるということです。
確定申告方法については、「相続した不動産にかかる税金の申告方法」の章を参考にしてください。
取得費加算の特例
1つ目の特例は、「取得費加算の特例」です。
(No.3267 相続財産を譲渡した場合の取得費の特例)
この特例は、相続した不動産を相続から3年10か月以内に売却した場合には、相続税の一部を取得費として加算できる特例です。
ここで言う取得費とは、2章でもお話しした売却した不動産を取得するためにかかった費用のことです。
取得費が増えると譲渡所得が減るので、その分「譲渡所得税」として支払わなければならない金額が減少し、節税をすることができます。
取得費として加算できる金額は、以下の計算式で求めます。
=売却した相続人の納付すべき相続税額 × (売却する不動産の相続税課税額 ÷ 売却した相続人の債務控除前の相続税課税額)
【取得費加算の特例の適用条件】
- 相続や遺贈により財産を取得した者である
- その財産を取得した人に相続税が課税されている
- その財産を、相続開始のあった日の翌日から相続税の申告期限の翌日以後3年を経過する日までに譲渡している
相続した空き家の3000万円特別控除
2つ目の特例は、「相続した空き家の3000万円特別控除」です。
(No.3306 被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例)
この特例を適用すれば、相続した空き家を売却する際、譲渡所得から最大3000万円を控除することができます。
大きな控除を受けられる特例ですが、売却価格が1億円以下の場合にしか使えないこと、耐震基準の条件があることなどに留意しましょう。
また、取得費加算の特例と併用ができない点にも注意が必要です。
両方の特例の条件を満たす場合には、より控除額の大きい特例を選択して適用します。
なお、相続した空き家に母屋と離れがある場合、控除対象となるのは母屋のみです。
【母屋と離れがある場合の特例適用面積の計算方法】
【相続した空き家の3000万円特別控除の適用条件】
- 相続した空き家もしくは空き家の建っていた土地を更地にして売却している
- 昭和56年5月31日以前に建築されている
- 区分所有建物登記がされている建物でない
- 相続の開始直前において、被相続人以外に居住者がいなかった
- 相続の開始があった日から3年を経過する日の属する年の12月31日までに売却している
- 売却時に一定の耐震基準を満たしている
- 相続から売却までに賃貸に出したり、居住したりしていない
- 売却代金が1億円以下である
相続した空き家の3,000万円控除の適用要件をわかりやすく解説
マイホームの3000万円特別控除
3つ目の特例は「マイホームの3000万円特別控除」です。
(No.3302 マイホームを売ったときの特例)
これは、自宅を売却した際、条件を満たせば譲渡所得から最大3000万円を控除することができるという特例です。
相続した不動産を自宅として利用していた場合、相続した空き家の3000万円特別控除に代わってこの特例を適用することができます。
【マイホームの3000万円特別控除】
- 売却した不動産が自宅である(別荘不可)
- 過去2年以内にマイホームの3000万円特別控除の特例、譲渡損失の損益通算および繰越控除の特例を受けていない
- 過去2年以内にマイホームの買換えやマイホームの交換の特例の適用を受けていない
- 売手と買手が、親子や夫婦など特別な関係でない
- 現在住んでいる、あるいは住まなくなった日から3年を経過する日の属する年の12月31日までに売却している
- 災害によって滅失した家屋の場合は、その敷地を住まなくなった日から3年を経過する日の属する年の12月31日までに売却している
マイホームの買い替え特例
4つ目の特例は、「マイホームの買い替え特例」です。
(No.3355 特定のマイホームを買い換えたときの特例)
マイホームの買い替え特例とは、一定の条件を満たすことで、譲渡所得税を繰り延べることができるという特例です。
繰り延べるというのは課税タイミングを翌年以降に先延ばしにするということなので、非課税になるわけではないことに注意しましょう。
具体的には、マイホームを売って購入した新居をさらに売却するときまで、譲渡所得への課税を繰り延べることができます。
相続した不動産がマイホームである場合は、この特例の適用も考えられるでしょう。
【マイホームの買い替え特例の適用条件】
- 売却した不動産が自宅である(別荘不可)
- 過去2年以内にマイホームの3000万円特別控除の特例、譲渡損失の損益通算および繰越控除の特例を受けていない
- 売却代金が1億円以下である
- 売却した年の1月1日時点で、不動産の所有期間が10年を超えている
- 買い替えるマイホームの床面積が50㎡以上かつ、土地の面積が500㎡以下
- マイホームを売却した年の前年から翌年までの3年の間にマイホームを買い換えている
- 買い替えるマイホームが耐火建築物の中古住宅の場合、取得日時点の築年数が25年以下であるか、一定の耐震基準を満たしている
- 買い替えるマイホームが耐火建築物の中古住宅以外の場合、取得日時点の築年数が25年以下であるか、取得期限までに一定の耐震基準を満たしている
- 売手と買手が、親子や夫婦など特別な関係でない
相続不動産を売却したときの税金シミュレーション
この章では、相続不動産を売却した場合にかかる税金を実際に計算してみましょう。
シミュレーションには以下の事例を用います。
- 親から相続した戸建て住宅(親の死後は空き家)
- 築40年
- 所有期間40年
- 2000万円で売却
- 取得にかかった費用は不明
- 譲渡にかかった費用は100万円
- 土地・建物の合計固定資産税評価額は1500万円
step1:相続登記にかかる登録免許税を計算する
まずはじめに、相続登記にかかる登録免許税を計算します。
相続登記にかかる登録免許税の税率は0.4%なので、以下のような計算になります。
step2:不動産売買にかかる印紙税を計算する
次に、不動産の売買契約時に必要な印紙税を計算しましょう。
印紙税は売買契約書に記載された契約金額によって税額が変わりますが、売却価格が2000万円の場合は1万円です。
よって今回のケースでは1万円の印紙税がかかります。
step3:不動産売却で得た利益(譲渡所得)を計算する
不動産の売却後に、不動産売却で得た利益(譲渡所得)を計算します。
譲渡所得は、「売却価格 – (取得費+譲渡費用)」という計算式で算出できます。
また、今回は取得費用が不明なので、売却価格の5%を概算取得費として計算に用います。
step4:譲渡所得税を計算する
譲渡所得がわかったら、譲渡所得から特別控除額を差し引いてから譲渡所得税を計算します。
譲渡所得税の計算式は「(譲渡所得-特別控除額) × 税率」です。
税率は所有期間で変わりますが、今回は40年なので長期譲渡所得にあたり、税率は20.315%で計算されます。(復興特別所得税含む)
また、今回の不動産は「相続した空き家の3000万円特別控除」にあてはまるため、3000万円を特別控除額として差し引きます。
不動産を売却した翌年には確定申告が必要
相続した不動産かどうかに関わらず、不動産を売却した翌年には確定申告が必要になることがあります。
具体的には、以下の2つのケースでは不動産売却の翌年の確定申告が必須です。
【不動産売却で確定申告が必要になるケース】
- 譲渡所得が発生するケース
- 控除の特例を用いるケース
この確定申告は、不動産売却の譲渡所得税に関する申告になります。
不動産売却の譲渡所得税は分離課税といって、給与所得などとは別で申告が必要なので、上記に当てはまる場合はサラリーマンでも確定申告をしなければなりません。
また、注意していただきたいのが、先ほどご紹介した税金を控除する特例を用いるためには、いずれのケースでも確定申告が必要であるということです。
控除の特例を使ったら譲渡所得が発生しなくなる、という場合は、控除の特例を使うための確定申告をしなければならないのです。
確定申告をする時期
確定申告をするタイミングは、不動産を売却した年の翌年の2月16日~3月15日です。
例えば、2022年8月に不動産の売却を完了した場合、2023年の2月16日~3月15日の間に確定申告をする必要があります。
確定申告に必要な書類
確定申告に際に必要な書類は、利用する控除の特例によって変わります。
そのため、国税庁のホームページで利用する控除の特例のページを事前に確認しておきましょう。
なお、多くのケースで必要になる書類としては以下のようなものがあります。
以下の書類は、なるべく早めに手元に揃えておきましょう。
- 確定申告書
- 本人確認書類
- 譲渡所得の内訳書
- 不動産の売買契約書の写し
- 譲渡費用の分かる資料(領収書など)
- 取得費用の分かる資料(領収書など)
- 譲渡した不動産の全部事項証明書
- 印鑑
まとめ
この記事では、相続した不動産を売却する際の税金、控除の特例、確定申告などについて詳しく解説しました。
相続の前後はなにかと慌ただしく、知識を十分につける時間をとるのが難しいこともあるでしょう。
そんなとき、この記事で相続不動産を売却する際の税の知識を確認していただけると幸いです。
また、税金や確定申告の手続きは、自分だけで行うのが不安という方も少なくないかと思います。
そういった方は、不動産会社に相談してみるのがおすすめです。
不動産会社は不動産の取引についてだけでなく、そこで発生する税金や売却後の確定申告についても知識を持っている不動産関連のプロです。
自分で調べて失敗するよりも、頼れるプロにどんどん質問しましょう。
業者を探す際は一括査定サイトがオススメ!
業者を探す際に最もおススメなツールは「一括査定サイト」です。
一括査定サイトとは、不動産の簡単な情報をネットのフォーマットに入力すると、実際の不動産会社がその情報をもとに不動産の査定を行ってくれるというサイトです。
このツールを活用するメリットは、効率的に業者を見つけ出せることです。
本来は業者1社1社のホームページなどを検索して直接コンタクトを取らなければならないのに対し、このサイトを活用することで、一度情報を入力するとそれが複数の不動産会社に届き業者側からアプローチしてくれるため、業者を探す手間が大幅に省けるのです。
この一括査定サイトの中でも特におすすめしているサイトが「すまいステップ」です。
このサイトは、全国の優良業者のみを厳選しており、同時に最大4社の業者から査定を受ける事が可能です。
もちろん、査定自体は無料で行うことが可能であり、入力も非常に短い時間で行うことが出来るのでとてもおススメのツールになっています。
不動産売却を検討しており、業者を探している人にはぜひ使ってみてください。
以下のフォームから簡単に査定依頼が可能です。



一括査定であなたの家の適正価格が分かる
オンライン対応




