家がようやく売れてひと段落、しかも購入価格より高く売れたとあれば、良いことづくめのように思えます。
しかしそうした手続きでホッとしていると、実は思わぬ高額な税金を請求される可能性があります。
「10年超所有軽減税率の特例」は、売却した自宅や敷地の所有期間が10年を超えていれば、課税譲渡所得にかかる税率が、通常の長期譲渡所得税率よりも下がるという特例です。
また同時に使える特例に、3,000万円特別控除の特例があります。こちらを適用する際の条件についても解説します。
マイホーム売却時の5つの特例
家を売却した際に「売却価格-購入価格」でプラスの値、つまり利益が出るようなら譲渡所得という税金を納める必要があります。
しかし家の売却価格はとても大きな金額になりやすく、税金も高額になりがちです。その税金を軽減するための特例が全部で5つあり、10年超所有減税率はそのうちの1つです。
そもそも譲渡所得って?
譲渡所得とは、先にも述べたように「不動産を売却したことで得た利益」を指す言葉です。
売却代金ー譲渡費用(不動産を購入したときの代金+売却時の手数料などかかった費用)=利益(譲渡所得) |
ここでいう譲渡費用とは、土地や建物の売却のために不動産会社に支払った仲介手数料、売主側で負担した印紙税、賃借人がいればその立退料、建物の解体費用などが挙げられます。売るために直接かかった費用であることがポイントで、修繕費・維持管理費や代金取り立ての費用は含まれません。
簡単に言えば、1,000万円で購入した家が1,100万円で売れれば、手数料などを引いてもおよそ100万円近い利益が得られます。この利益を譲渡所得と呼び、所得税と住民税の対象となります。したがって、売っても購入価格以下であれば課税は起きません。
利益が出ているときに活用できる特例
「10年超所有軽減税率」は、この譲渡所得が生じた際に、所得税と住民税の税率を下げてくれる特例です。したがって、譲渡所得が大きい人ほど、メリットが大きくなります。使用するには確定申告が必要になりますが、それ以外にもいくつかの制限や上限が設けられます。
同じように負担を軽減してくれる特例として「3,000万円特別控除の特例」や、マイホームを住み替えのために購入した際に買い換えた金額の方が大きければ課税しないという「特定居住用財産の買換え特例」があります。
利益が出ないときに使える特例もある?
しかし不動産売買は、利益が出るときばかりではありません。そこで活用できるのが「居住用財産の買い替え等の場合の譲渡損失の損益通算及び繰越控除」と「特定居住用財産の譲渡損失の損益通算及び繰越控除」という制度です。
マイホームの売買とその税金に関する内容であるため、前述した「10年超所有軽減税率」などと合わせて、マイホームを売った時の5つの特例として知られています。
こちらも一定の条件を満たす必要がありますが、活用すると年の給与所得や事業所得といった他の所得から補填することで、損益(赤字)を相殺することができます。またその年だけで相殺できなかった場合も、譲渡の翌年以降3年以内であれば繰り越して相殺することが可能です。
(参考:国税庁No.3370「マイホームを買換えた場合に譲渡損失が生じたとき(マイホームを買換えた場合の譲渡損失の損益通算及び繰越控除の特例)」)
10年超所有軽減税率の特例とは
10年越え所有軽減税率の特例とは、居住用の不動産(マイホーム)を売った時に所有期間が10年を超えていた場合に、譲渡所得税に軽減税率を適用することができる特例です。
3,000万円特別控除の特例と合わせて利用することができ、売却益(譲渡所得)6,000万円以下の部分が譲渡所得税率14.21%となります。
6,000万円以下の部分 | 6,000万円超の部分 | |
---|---|---|
所得税 | 10.21% | 15.315% |
住民税 | 4% | 5% |
合計 | 14.21% | 20.315% |
なお、これらの税率には現在、復興特別所得税(平成25年から49年まで)として所得税における2.1%相当が上乗せとなっています。
以下の参考に記した国税庁のホームページでは、土地建物を売った収入金額などを入力することで、おおよそのマイホーム売却時の税金額を算出できます。あくまでも目安の結果ですが、どのくらいの税額になるが知りたい人は、試しに収入金額などをまとめた用紙などを用意して活用してみましょう。
(参考:国税庁No.3305「マイホームを売ったときの軽減税率の特例」)
併用できる3,000万円特別控除の特例とは
住んでいる自宅を売却した場合、利益部分(譲渡所得)から3,000万円を控除できるという特例です。つまり、6,500万円の利益があったとしても、そのうち3,000万円が控除されるため、課税譲渡所得が6,000万円以下の場合に適応される税率が使用できます。
また、自宅を売却して利益があったとしても、3,000万円までの利益部分なら課税対象にはせずに済むため、ほとんどの場合は譲渡所得税がかからなくなります。
条件次第では使えないこともあり
ただこの時ポイントとなるのは、条件を満たしていない場合は使えないということです。その主な条件は以下の3つとなります。
- 自宅(居住用財産)を売っていること
- 親子や配偶者といった特殊関係者への売却ではないこと
- 売却した年から数えて、前年および前々年にこの特例の適応を受けていないこと
所有期間や居住期間については制限がないため、その点では使いやすい特例です。ただ居住用財産とは認められない場合もあり、たとえばマイホーム新築時の仮住まいや別荘、この特例のために入居した家屋は認められません。
また、以前に住んでいた家を売った場合は、自分が所有者として住んでいたことがあり、なおかつ住まなくなってから3年を経過する年の12月31日までに売る必要があります。しかしこの条件を満たすことができれば、新居に移転してからも手続きを進めることが可能です。
特殊関係者とは?
条件の2つ目にあげた「特殊関係者」とは、配偶者や親、子供、孫といった直系の血族や生計を共にする親族にあたります。また内縁関係にある人や、特殊な関係を持つ個人・法人も、この特殊関係者に当たります。
家屋を取り壊して敷地のみ売却した場合も使用可能
この特例は、家屋を取り壊して敷地だけ売却した場合も、「1年以内に譲渡契約を結んでおり、なおかつ家屋を取り壊してから売買契約するまでの間に他の用途に使用しておらず、住まなくなってから3年目の年の12月31日まで」であれば、適応可能です。
併用できる特例とできない特例
前述したように、3,000万円特別控除の特例は、10年超所有軽減税率との併用が可能です。
しかし「売却した年から数えて、前年および前々年にこの特例の適応を受けていないこと」という条件があるため、3年に1度しか使えません。また、併用できない特例も数多くあります。一例を以下に挙げます。
このほかにも、様々な特例が存在するため、どれを使ってよいか、また使えるのかは確認する必要があります。より詳しく相談したい場合は、国税局電話相談センターなどを活用してみましょう。
(参考:国税庁 No.3302「マイホームを売った時の特例」)
売買額が高くなりそうなら税金に強い業者を探そう
不動産売買はいくらで売れるのか、また実際に売れるかどうか、といった売却の方にばかり目が行きがちです。しかし、売れた後のことや、売れた場合にかかる税金などの問題をスムーズにクリアし、できるだけ自分の生活の負担にならないようにすることも、とても重要です。
特に税金関係の問題は、普段日常生活で関わらない内容も多いため、分かりにくく条件次第で使えないケースもあります。査定や売却を依頼する不動産会社が税金に詳しいと、安心して依頼でき、また困った時に相談にも乗ってもらえます。不動産会社によっては、税理士との相談や連携に長けた場所もあります。
売買額が大きくなりそうであったり、税金について不安があったりする場合は、そうした税金に強い不動産会社に依頼するのもおすすめです。すまいステップなら、不動産一括査定を全国1,600か所の優良な不動産会社が請け負ってくれます。信頼できる不動産会社探しなら、すまいステップがおすすめです。
10年超所有軽減税率の特例を利用する条件
10年超所有軽減税率の特例を使用する条件は、次の4つです。
- 自宅(居住用財産)を売っていること
- 親子や配偶者といった特殊関係者への売却ではないこと
- 売却した年から数えて、前年および前々年にこの特例の適応を受けていないこと
- 売却した不動産の所有期間が売却した年の1月1日現在において10年を超えていること
「所有期間が10年超」にも条件が付く
3,000万円の特別控除と比べると、4番目の所有期間の制限がついています。ただこの「所有期間が10年を超えている」という点についても、3つの条件が加わります。
居住期間ではなく所有期間が10年以上であること
所有期間は譲渡、あるいは売却してもらった年の1月1日時点で、何年経過しているかを数えます。一方で居住期間は、実際に入居した日から転居するまでの期間のことです。10年超所有軽減税率の特例において、居住期間の制限はありませんが、自宅であることが大前提であるため住んでいたという事実は必須です。
売った年の1月1日時点で所有期間が10年を超えていること
「売った年の1月1日時点」ということは、例えば2018年に売った場合、2018年1月1日時点に所有者となってから10年経過していれば特例が使えるということです。反対に2018年9月にならないと10年経過しない場合には、軽減税率の適応外となるため、翌年に売った方が税金に関して言えばお得と判断できます。
家屋と敷地の所有期間がともに10年以上であること
敷地は自分の持ち物でも、立っている家の所有者が異なっていた場合、家屋と敷地の所有期間は異なります。これが両方とも10年以上であれば適応できますが、後から購入した部分や所有者となった部分は、10年以下となるケースもあります。10年以下の部分に対しては、軽減税率は適応されません。
(参考:国税庁 No.3305「マイホームを売ったときの軽減税率の特例」)
売却前に自宅の価値を調べよう
譲渡所得税は、特例の活用ができますが、用意に手間取ると期日に間に合わない可能性もあります。自宅を売る前にその価値をしっかりと把握しておけば、どのくらいの税金がかかりそうなのか、またどんな特例が活用できるのか、あらかじめ調べておくことができます。
確定申告の時期は税務署も混み合うため、時期を見越して早めに相談するなど、必要な書類の用意にも余裕を持って対応できます。そのためには、適切な査定額を出してくれる不動産会社や、信頼できる担当者と出会っておくことが大切です。
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