所有している不動産を売却して利益(譲渡所得)が出た場合、「譲渡所得税」という税金が課されます。課税される場合には、不動産売却の中で最もお金がかかる部分です。
しかし、居住用の家・マンション・家を取り壊した土地の売却にかかる税金は、「3,000万円特別控除」を活用すると大幅に節税が可能です。
この記事では「3,000万円特別控除」について詳しく解説していきます。
居住用財産の3,000万円特別控除とは
「3,000万円特別控除」とは、一定の適用要件を満たすと、マイホーム(居住用財産)の譲渡所得から最大3,000万円を控除できる特例制度です。
3,000万円特別控除で譲渡所得税が節税できる
不動産を売却して利益が出ると、譲渡所得税(所得税と住民税)を納めなければなりません。
不動産売却時の利益は「譲渡所得」といい、以下の計算式で求めます。
つまり、譲渡所得が3,000万円以下の場合は、譲渡所得税が非課税となります。

たとえば、家を売却した時の利益(譲渡所得)が1,000万円だった場合に「3,000万円特別控除」を適用する場合と適用しない場合で、税額を見比べてみましょう。
- 家の売却価格:5,000万円
- 譲渡費用:200万円
- 取得費:3,800万円(減価償却済みの金額)
- 家の所有期間:8年(税率:20.315%)
3,000万円特別控除を適用する場合は以下の通りです。
譲渡所得=売却価格-(譲渡費用+取得費)-3,000万円
=5,000万円-(200万円+3,800万円)-3,000万円
=-2,000万円
譲渡所得=売却価格-(譲渡費用+取得費)
=5,000万円-(200万円+3,800万円)
=1,000万円
=1,000万円×20.315%
=203万1,500円
3,000万円特別控除の適用要件
3,000万円特別控除を利用するためには、一定の条件を全て満たしていなければなりません。
下記の表でチェックしてみましょう。
3,000万円の特別控除やその他の特例の適用を受けていない。
(国税庁「No.3302 マイホームを売ったときの特例」をもとにすまいステップ編集部が作成)
3,000万円特別控除は、2回目、3回目と何回でも利用できますが、3年間に1度しか利用できません。
その他併用できない特例制度については、次の章にて詳しく解説します。
家屋を取り壊した土地に3,000万円控除は適用できる?
- 取り壊した日から1年以内に売買契約を締結する
- 家屋に住まなくなった日から3年を経過する日の属する年の12月31日までに売却する
- 家屋を取り壊してから譲渡するまでに土地を貸駐車場などに利用していない



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売却のきっかけ
売却のきっかけは、結婚により間取りの広い部屋への引越を考えたため。
不安だった点は、いくらで売却できるかという点や、仲介手数料や税金面と、どの不動産店に依頼するかという点。
不動産会社を選んだ際の決め手
こちらの納得できる戦略やその説明があるかどうか。強引でなく、こちらの話をしっかり聞く姿勢のあるかどうか。総合的に見て会社や担当者が信頼できること。
東京都墨田区 / 40代 / 住み替え / マンション / 築36年~40年 / 2DK
査定額2,300万円→売却価格2,500万円
不動産会社 | 東急リバブル押上店(担当者:石澤恒) |
---|---|
不動産会社の決め手 | 知名度が高い会社だった |
担当者の特徴 | 積極的に販売活動を実施 |
満足度 | 4.3 |
3,000万円特別控除と住宅ローン控除は併用できない
住宅ローン控除は併用不可
住宅ローンを借入して住み替え先を購入した場合、「住宅ローン控除(住宅ローン減税)」を申請すると、最長13年間にわたって所得税の減税措置を受けられます。
住宅ローン控除は節税効果の高い制度ですが、3,000万円特別控除を適用した年と前年、前々年、また翌年以降3年間は利用できません。
そのため、自宅を売却した時の譲渡所得税と、最長13年分の所得税のどちらを減税された方が節税効果が高いか比較して、適用申請する制度を選ぶ必要があります。
その他に併用できない特例
自宅を売却した年と前年・前々年に以下の特例を利用していると、3,000万円控除を適用できません。
- 3,000万円特別控除(同じ特例)
- マイホームの買い換え特例
- 譲渡損失の損益通算及び繰越控除の特例
▼マイホームの買い換え特例
マイホームの買い換え特例とは、一定の要件を満たしていると、マイホームを売って新居を購入する場合に、課税を将来に繰り延べられる制度です。
特例を適用すると、旧居(A)の売却時には課税されず、新居(B)を将来的に売却する時に、旧居(A)と新居(B)の譲渡所得の合算額が課税されます。
課税対象となる譲渡所得を控除する「3,000万円特別控除」とは併用できません。
また、この特例を過去3年以内に利用している場合、3,000万円特別控除は適用できません。
特定居住用財産の買換え特例について|適用条件や使い分けの方法とは
▼譲渡損失の損益通算及び繰越控除の特例
マイホームの買い換え時に譲渡損失が出た場合、あるいは住宅ローンを借入している自宅の売却価格がローン残高を下回って譲渡損失が出た場合は、発生した譲渡損失を給与所得や事業所得と損益通算できる制度があります。
(「マイホームを買い換えた場合の譲渡損失の損益通算及び繰越控除の特例」と「特定のマイホームの譲渡損失の損益通算及び繰越控除の特例」)
これらの制度についても、過去3年以内に利用している場合、3,000万円特別控除は適用できません。
売却損は譲渡損失の繰越控除を利用しよう|損失を出さない方法も重要
3,000万円特別控除と併用できる特例
所有期間が10年を超えるマイホームを売った時の軽減税率の特例は、3,000万円特別控除と併用可能です。
特例を併用すると、譲渡所得から3,000万円の控除を受けた後に6,000万円以下の部分に対する税率が軽減されます。
譲渡所得の金額 | 譲渡所得税額 |
---|---|
6,000万円以下まで | 譲渡所得×14.21% |
6,000万円を超える部分 | 譲渡所得×20.315%(通常の長期譲渡所得税率) |
所有期間が10年を超えている必要がありますが、3,000万円控除を適用してもまだ譲渡所得の金額が残る場合には、併せて適用申請することで節税効果を高められます。
3,000万円特別控除の申請方法
この章では、「3,000万円控除」の申請方法と、必要書類について解説します。
3,000万円特別控除は確定申告時に申請する
「3,000万円控除」を利用するには、確定申告時に必要書類を揃えて申請します。
確定申告は、不動産を売却した年の翌年の2月16日~3月15日までに行います。
令和5年1月からは、インターネット上で確定申告を行えるサービス「e-Tax」の仕組みが変更され、マイナンバーカード、スマートフォンなどを用いた申告書の作成が可能になります。
e-taxを使えば画面の案内に沿って入力を行うだけで申告書を作れるので、確定申告に自信がない方でも安心です。
e-taxの詳細はこちらから確認できます。
確定申告の手続きを税理士に依頼する場合は、「3,000万円控除」の適用も併せて申請してもらえます。
税理士に依頼する費用は、手続きの内容にもよりますが、10~20万円が相場です。
3,000万円特別控除の必要書類
3,000万円特別控除を適用したい場合には、以下の11種類の書類が必要です。
数が多いので、早めに準備を始めましょう。
必要書類名 | 入手場所 |
---|---|
譲渡所得の内訳書(確定申告書付表兼計算明細書)【土地・建物用】 | 税務署HP |
確定申告書 | 税務署HP |
マイナンバーカード | – |
本人確認書類(免許証・パスポートなど) | – |
売却時の不動産売買契約書の写し | 不動産売買契約時に不動産会社から渡される |
売却にかかった費用の領収書 | 不動産売買契約時に不動産会社から渡される |
売却した不動産を購入したときの不動産売買契約書の写し | 不動産売買契約時に不動産会社から渡される |
売却した物件を購入したときにかかった費用の領収書 | 不動産売買契約時に不動産会社から渡される |
登記事項証明書 | 法務局 |
住民票の写し(*) | 役場 |
売却した不動産の居住していた際の公共料金の支払状況が分かるもの(*) | – |
多くの書類は不動産の売買契約時に不動産会社から渡されるため、ご自身で取得しなければならないものは多くありません。
万が一必要な書類を紛失してしまった場合は、不動産会社で保管している写しのコピーを依頼するなどしてみましょう。