マンション売却でかかる税金を調べてる途中で、「減価償却費」という言葉が出てきたものの、『何のことだかよくわからない』『説明を読んでもわかりづらい』という方は多いのではないでしょうか?
「減価償却費」は、譲渡所得を計算する「取得費」を正しく計算するために必要なものです。
この記事では「確定申告時に必要なマンション売却における減価償却費」にフォーカスして、「減価償却」の意味と、減価償却費の計算方法を、どこよりもわかりやすく解説しています。
マンション売却時の減価償却費とは
「減価償却費」とは、「経年で建物の価値が下がった分」を金額として表したものです。
そもそも「減価償却」とは、資産の価値を年ごとに減らす会計手続きのことをいいます。
たとえば事業用の機械について、毎年少しずつ経費として計上することで、事業者は安定して税金を納めることができます。
事業用資産の減価償却費 | 自宅マンションの減価償却費 |
---|---|
毎年の所得と税金の負担を調整するために申告する | 譲渡所得税の計算に、マンションの現在の価値を反映させるために申告する |
減価償却の対象は「建物部分」のみ
自宅マンション売却では「定額法」で計算する
減価償却の計算方法には「定額法」と「定率法」の2種類があります。
マンションの減価償却費の計算には「定額法」を利用します。
定額法とは、対象の資産の取得価額を、「法定耐用年数」で均等に割り、毎年同じ金額ずつ減価償却していく計算方法です。
減価償却のペースは「法定耐用年数」で決まる
「建物がいつまで使えるか」は、建材や使われ方によって異なります。また建物の実際の寿命は、建築当初にはわかりません。
そこで国は、建物の価値がなくなるまでの年数を、建物の構造や用途などの基準によって定めています。
これを「法定耐用年数」といいます。
たとえば、鉄筋コンクリート造のマンション(自宅用)は、耐用年数が70年となっています。
購入時の価値が、決められた年数をかけて均等に目減りしていくので、法定耐用年数が長いほど、償却率の値は小さくなります。
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マンション売却における減価償却費の計算方法
自宅用マンションを売却した際の減価償却費の計算式は、以下の通りです。
ちなみに、計算式の「0.9」という数字は、建物の購入費用から残存価額(購入費用の10%)を差し引いた金額にするために、かけ合わせられている数字です。
「残存価額」とは、法定耐用年数を過ぎても建物に残る価値のことです。
旧定額法では、残存価額は取得価額の10%と定められています。
購入費用から10%分引くのと、購入費用に0.9をかけるのでは計算結果が同じになるため、計算式では0.9をかけ算しています。
それでは以下から、1つずつステップを追って、減価償却費の計算をしていきましょう。
Step1:マンションの建物購入代金を調べる
マンションを買った時の値段は、土地部分と建物部分の合計金額になっています。
減価償却するのは建物部分のみの価格なので、まずはマンションの建物部分の購入代金を調べましょう。
方法①売買契約書の記載を確認する
基本的には、マンション購入時の売買契約書に記載されている金額を計算に使用します。
建物の価格と土地部分の価格が分けて記載されている場合、建物の価格をそのまま計算に用います。
建物と土地部分の価格が分かれていない場合には、次の方法②で建物の価格を計算しましょう。
方法②消費税額から計算する
売買契約書に記載されたマンションの購入金額が、建物と土地で分かれていない場合、消費税の記載があるか確認しましょう。
消費税が記載されていれば、消費税の金額から建物のみの価格を算出できます。
消費税率は購入時の税率で計算するようにしましょう。以下は、各年の消費税率をまとめた表です。
購入年月 | 消費税率 |
---|---|
平成元年4月1日~平成9年3月31日まで | 3% |
平成9年4月1日~平成26年3月31日まで | 5% |
平成26年4月1日~令和元年9月30日まで | 8% |
令和元年10月1日~ | 10% |
たとえば、平成8年に5,000万円(うち消費税90万円)で購入したマンションの場合の建物のみの購入代金は、以下の通りになります。
建物購入代金=消費税÷消費税率+消費税
=90万円÷3%+90万円
=3,000万円+90万円
=3,090万円
方法③標準建築単価から計算する
個人の売主からマンションを購入していた場合など、売買契約書に消費税の記載がないこともあります。
売買契約書に消費税の記載がない場合は、「標準建築単価」を利用して、建物の推定価格を計算できます。
標準建築単価とは、国土交通省が毎年発表している「床面積1㎡辺りの工事費の平均値」です。建物の構造ごとに金額は異なります。
方法④固定資産税評価額から調べる
売買契約書に消費税の記載がない場合の建物購入代金の調べ方には、他にも固定資産税評価額から調べる方法があります。
固定資産税評価額は、土地と建物で別々に決められているので、固定資産税評価額の比から建物購入代金を算出できます。
他にも相続税評価額を利用して求める方法などもありますが、複雑な計算になるため、自分ひとりで調べる方法としてはおすすめしません。
Step2:購入代金以外の建物を調べる
譲渡所得を計算する「取得費」には、マンションの購入代金以外にも、マンションの取得に関わった費用を計上できます。
このうち、建物部分の取得費は、マンションの購入代金同様に、減価償却します。
取得費となる費用【土地+建物】
- 購入時の仲介手数料
- 購入時の登記費用(登録免許税、司法書士報酬)
- 不動産取得税
- 購入時の印紙税
- 購入時に支払った固定資産税の精算金
- 住宅ローンの事務手数料
- 住宅ローンの金利・保証料(借入日~使用開始日)
- 団体信用生命保険料(借入日~使用開始日)
取得費となる費用【建物のみ】
- リフォーム費用
【土地+建物】の費用は、金額を土地分の価格と建物分の価格に分ける(按分する)必要があります。
土地:建物=4:6
建物分の仲介手数料=100万円×6/10=60万円
Step3:マンションの償却率を調べる
「償却率」は、マンションの材質・構造によって異なります。
以下は、自宅用マンション(非事業用資産)の、材質・構造ごとの償却率をまとめた表です。
材質・構造 | 償却率 | 法定耐用年数 | |
---|---|---|---|
鉄筋コンクリート造(RC造)、鉄骨鉄筋コンクリート(SRC造) | 0.015 | 70年 | |
レンガ造、石造、ブロック造 | 0.018 | 57年 | |
軽量鉄骨造 | 骨格材の肉厚が4mm超 | 0.020 | 51年 |
骨格材の肉厚が3mm超4mm以下 | 0.025 | 40年 | |
骨格材の肉厚が3mm以下 | 0.036 | 28年 | |
木造、合成樹脂像 | 0.031 | 33年 | |
木骨モルタル造 | 0.034 | 30年 |
なお、非事業用資産は、耐用年数が事業用の資産の1.5倍に設定されています。
Step4:経過年数の端数を切り上げる
「経過年数」は、マンションを購入してから売却するまでの所有期間の年数です。
端数は、6ヶ月以上の時は切り上げて1年とします。6ヶ月未満の場合は、切り捨てします。
たとえば、経過年数が15年7ヶ月の時、「7カ月」の部分は切り上げて、経過年数は「16年」と計算することになります。
なお、リフォーム費用の減価償却費は「リフォームした日からの経過年数」を使って、個別に計算します。
マンション購入日からの経過年数で計算してしまうと、多めに減価償却してしまうことになるため、気をつけましょう。
Step5計算式に代入する
Step1~4で手元に用意した数字を、減価償却費の計算式に代入して、求めましょう。
- マンションの建物部分の取得費:4,000万円
- 鉄筋コンクリート造(RC造)
- 購入した日:平成14年2月1日
- 売却した日:令和4年3月1日
マンションの構造が鉄筋コンクリート造なので、償却率は「0.015」になります。
経過年月は、20年1ヶ月です。6ヶ月未満の端数は切り捨てるので、減価償却費の計算では「20年」を使用します。
=4,000万円×0.9×0.015×20
=1,080万円
まとめ
マンション売却による利益と税金を正しく申告するためには、減価償却費の計算が必要不可欠です。
減価償却費の計算は複雑そうに見えますが、マンション購入当時の建物購入代金と購入にかかった費用、マンションの構造、そして所有していた期間がわかれば算出できます。
マンションの売却後の確定申告は、翌年の2月16日から3月15日までに行わなければならないため、早めに取りかかりましょう。