分譲マンションを所有していると、「管理費」「修繕積立金」の支払いが必要となります。
マンションの売却時に、これらの費用が返金されるのか気になる方も多いでしょう。
本記事では、マンションの売却における管理費や修繕積立金の扱いと、日割り精算の考え方、管理組合への手続きについてご紹介します。
管理費の負担を軽減するための方法についても解説しているため、コストを抑えてマンション売却を進めたい方はぜひご参考にしてください。
マンション売却で管理費は返金されないのが原則
毎月支払っているマンションの管理費や修繕積立金は、原則として管理組合や管理会社から返金されることはありません。
管理費は、共用部分の清掃やメンテナンス、管理人の人件費などに充てられる日常的な管理資金のため、売却しても過去の支払い分は返還されません。
売却時に返金されないことは、マンションの管理規約にも明記されています。
そのため売却活動をスタートして購入希望者の内覧を受け付けている期間であっても、管理費や修繕積立金は全額支払う必要があります。
ただし、後述する「日割り精算」により、引き渡し日以降の管理費を買主に請求し、先払いした管理費を払い戻してもらうことは可能です。
マンションの管理費・修繕積立金とは?
マンションを購入後、毎月引き落とされている管理費や修繕積立金について、具体的な用途や目的を把握しないまま支払っている方も少なくないでしょう。
ここではマンションの管理費・修繕積立金の概要と、金額の計算方法、負担する人について詳しく解説します。
管理費は快適なマンションを維持するための費用
管理費とは、マンションの日常的な維持・管理のために使用される資金です。
主な使用用途として、以下のような項目が挙げられます。
- 共用部分の電気代・清掃費用
- エレベーターの点検・保守費用
- 管理組合の運営費用
- 管理人の人件費
- 植栽の管理費用
マンションの入居者の快適な生活のために使われるのが管理費であり、物件の管理を手掛ける管理会社に支払います。
なお、管理費や修繕積立金は次月分を前納していることが大半で、たとえば2月分の管理費は1月の引き落としで支払われることが一般的です。
修繕積立金は物件のメンテナンスのための費用
修繕積立金とは、マンションの定期的なメンテナンスのために積み立てておく資金のことを言います。
約10年〜15年ごとに実施される大規模修繕のための費用として使用され、マンションの資産価値を守るために欠かせない費用です。
主な使用用途には、以下のような支出が含まれます。
- 外壁の補修・塗装費用
- 給排水設備の交換費用
- ロビー・エントランスの改修費用
- 自然災害発生時の修繕費用
- バリアフリー化工事費用
- 耐震補強工事費用
国土交通省が実施した「平成30年度マンション総合調査」(p.24)によれば、修繕積立金の平均額は一戸あたり12,268円です(駐車場使用料等からの充当額を含む)。
一般的に築浅のマンションほど修繕積立金が安く、築年数を重ねるごとに値上がりする傾向にあります。
5年・10年ごとに修繕積立金を増額する管理規約が定められているケースもあるため、増額前のタイミングで売却を進めることで買主が現れやすくなる可能性が高まるでしょう。
専有面積に応じて区分所有者が支払う
管理費や修繕積立金は、所有するマンションの専有面積に応じて計算されます。
ただし、専有面積が同じであっても、営業目的か住居目的かによって金額が異なるケースがあります。
また、管理費・修繕積立金が請求されるのは、マンションの入居者ではなく所有者です。
そのため子どもや親戚が住んでいる場合や、賃貸に出している場合でも、支払い義務は物件の所有者であるご自身が負う点に注意が必要です。
マンション売却で管理費を日割り精算することも可能
前述の通り、マンションを売却してもこれまで支払った管理費・修繕積立金が返金されることはありませんが、前納した分を買主に請求して日割り精算で返却してもらうことは可能です。
マンションの売買では「清算金」とも呼ばれ、引き渡し日以降の管理費・修繕積立金を買主が売主に支払うことを言います。
ここではマンションを売却後、管理費・修繕積立金を買主との間で分担する方法について解説します。
引き渡し日を基準に買主と売主で精算
マンションの管理費・修繕積立金は、物件の引き渡し日以降の費用を買主から支払ってもらうことが可能です。
たとえば1ヶ月分の管理費・修繕積立金が4万円、引き渡し日が9月15日だった場合、9月1日〜9月15日分を売主、9月16日〜9月30日分を買主が負担します。
この場合、マンションの決済時に「精算金」として、15日分(半額)の2万円を買主から受け取ることもできます。
引き渡し月は売主が負担するケースも多い
管理費・修繕積立金は日割り精算で返金してもらうことができますが、一般的には売主が全額を負担するケースが多くなります。
1ヶ月分の管理費・修繕積立金は少額であり、日割りで計算する手間が面倒と考える方が多いためです。
買主へのお礼の意味を込めて、売主が1ヶ月分を負担する場合も少なくありません。
なお、売却時の管理費・修繕積立金の支払いに関しては法的な定めはなく、売買契約書で負担方法を決定します。
マンション売却後は管理組合への届出が必要
マンション売却が決まった後は、速やかに管理組合・管理会社に連絡する必要があります。
届出を怠れば、支払う必要がない費用が引き落とされてしまったり、管理組合・管理会社に迷惑をかけてしまう恐れがあります。
ここでは具体的な届出の提出方法と、連絡が遅れてしまった場合のデメリットについてご紹介しましょう。
管理組合に「組合員資格喪失届」を提出
マンションの売却では、売買代金の決済が行われ、買主に所有権が移ったタイミングで「組合員資格喪失届」を提出する必要があります。
組合員資格喪失届とは、マンションの所有権を手放して管理組合から脱退することを示す書類です。
一般的にはマンションの売却が決まった際に、仲介した不動産会社が組合員資格喪失届を取り寄せてくれることが多くなっています。
組合員資格喪失届は、不動産会社の担当者を通して管理組合・管理会社に提出するケースが大半です。
ご自身で取得・提出する場合には、売買契約が決まった時点で管理組合・管理会社に問い合わせて組合員資格喪失届を取得し、管理組合の理事長に提出しましょう。
届出が遅れると管理費が引き落とされることも
組合員資格喪失届の提出が遅れた場合、管理組合・管理会社が所有権の移転を確認できず、管理費や修繕積立金の引き落としが続いてしまうデメリットがあります。
売却後も支払いが発生すればご自身にとっても負担となるほか、返金手続きのために管理組合・管理会社に迷惑をかけてしまう結果となります。
そのため、マンションを売却する際は、遅くともマンションの売り出し後には管理組合・管理会社へ連絡を済ませておきましょう。
マンション売却での管理費を軽減する方法と注意点
最後に、マンションの売却で管理費の負担をできるだけ軽減する方法を、注意点と併せてご紹介します。
- 管理費負担を軽減するには短期間での売却が効果的
- 管理費を滞納すると売却で不利になる
- 固定資産税の精算も忘れずに
それぞれ詳しく解説します。
管理費負担を軽減するには短期間での売却が効果的
マンション売却に伴う管理費の負担を減らすためには、可能な限り短い期間で売却することが効果的です。
一般的にマンションの売却に必要な期間は3ヶ月〜6ヶ月と言われているため、仮に1ヶ月以内で売買契約が決まれば、2ヶ月〜5ヶ月分の管理費を節約することが可能です。
場合によっては売り出し価格をやや低めに設定したり、値引き交渉に応じたり、不動産会社に買取を依頼したりといった選択肢も検討すると、売却期間を短くできるでしょう。
なお、家を早く売る方法については、下記の記事で詳しく解説しています。
管理費を滞納すると売却で不利になる
住宅ローンの返済が負担となり経済的な余裕がない場合などに、管理費を滞納してしまうケースが考えられます。
管理費を滞納したマンションを売却する場合には、査定額が下落し、買主が現れにくくなるなどのデメリットが発生します。
売主が滞納している管理費は、新所有者である買主が負担することとなるためです。
管理費を滞納している場合は、宅地建物取引業法により買主への告知が義務付けられているため、購入希望者の心象を悪化させて成約に進みづらくなる可能性が高まるでしょう。
また、マンションの管理費を長期にわたって滞納し続けた場合、マンションの所有権を失ってしまう可能性もあります。
差押えや競売といったリスクを回避するためにも、管理費・修繕積立金は必ず支払うようにしましょう。
固定資産税の精算も忘れずに
マンションの所有者に課される固定資産税や都市計画税も、本記事で解説した管理費・修繕積立金と同様に日割り精算を行うことが可能です。
固定資産税は毎年1月1日時点の不動産の所有者に課される税金で、比較的高額となるため、引き渡し日を基準に365日で日割り精算することが多くなります。
年末にマンションを売却した場合などは、全額売主が負担して清算金を請求しないケースもあるため、不動産会社や買主との話し合いの上で清算の方法を決めましょう。
マンション売却での管理費は忘れずに支払い・精算を
マンションを売却する際には、これまでに支払った管理費・修繕積立金を返金してもらうことはできませんが、前払いした分を日割り精算で返金してもらうことは可能です。
一般的には引き渡し月の管理費・修繕積立金は売主が全額負担するケースが多くなっていますが、月初に引き渡しを行うなどの場合には、不動産会社や買主と相談しながら清算金を決めることをおすすめします。
また、その年の固定資産税も精算の対象となる点や、売却後は「組合員資格喪失届」の提出が必要になる点も踏まえながら、マンションの売却活動を始めると良いでしょう。
なお、売却予定のマンションの市場価格を調べたい場合には、不動産の一括査定サイト「すまいステップ」をご活用ください。
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