マンション売却で確定申告が不要・必要なケースを解説します。
「マンションを売ったけど確定申告は必要なのかな?」
「どんなケースに確定申告が必要なの?」
この記事では、確定申告が不要なケースと必要なケース、確定申告に必要な書類などを詳しく解説します。
マンション売却後の確定申告が初めての方は、ぜひ参考にしてみてください。
マンション売却における確定申告の基礎知識
マンション売却における確定申告の基礎知識を解説します。
確定申告が初めての方は以下のポイントを理解しておきましょう。
確定申告が必要かどうかを判断する基準
マンション売却によって確定申告が必要かどうかを判断する基準を解説します。
以下のケースを参考に判断してみましょう。
▼必要なケース①:マンションが買った時より高く売れた場合
マンションを買った当時よりも高く売れた場合は確定申告が必要です。
高く売れたことを「譲渡所得」と呼び、購入時にかかった費用と比べて利益を得た場合のことを指します。
譲渡所得の金額に対して所得税や住民税が課されるため、確定申告が必要です。
▼必要なケース②:税金の控除を利用したい場合
マンションを売って譲渡所得が発生しなかった場合、基本的に確定申告は不要です。
しかし、税金の控除を利用する際に以下の特例を申請する場合は確定申告が必要です。
- 特定の居住用財産の譲渡損失の損益通算及び繰越控除の特例
参考:国税庁「No.3390 住宅ローンが残っているマイホームを売却して譲渡損失が生じたとき(特定のマイホームの譲渡損失の損益通算及び繰越控除の特例)」
- マイホームを買い替えた際の譲渡通算の損益通算及び繰越控除の特例
国税庁「No.3370 マイホームを買い替えた場合に譲渡損失が生じたとき (マイホームを買い替えた場合の譲渡損失の損益通算及び繰越控除の特例」
- 居住用財産を譲渡した場合の3,000万円の特別控除の特例
特定居住用財産の譲渡損失の損益通算及び繰越控除の特例は、家の売却価格が住宅ローンの残債を下回った場合に利用できます。
マイホームを新しく買い替えて新しい住宅ローンを組んだ場合は、「居住用財産の買い替え等の場合の譲渡損失の損益通算及び繰越控除の特例」が利用できます。
3,000万円特別控除の特例は、居住しているマンションを売却した際に利用できる特例です。
各特例の詳細は以下の記事を参考にしてみてください。
▼不要なケース:売却額が買った価格以下の場合
マンションの売却額が買った価格よりも安い場合、確定申告は不要です。
前述のとおり、マンション売却によって譲渡所得を得た場合は、譲渡所得に対して所得税や住民税などが課されるので確定申告が必要です。
一方で、譲渡所得がない場合は課される税金がないため、確定申告は不要です。
このように、確定申告が必要かどうかは、買った価格と比較して判断するので購入にかかった費用を計算しておくとよいでしょう。
計算方法は記事の後半で解説しているので、ぜひ参考にしてみてください。
確定申告はいつまでにやればいいのか
確定申告の時期について解説します。
時期を過ぎるとペナルティが課せられるため、しっかりと理解しておきましょう。
▼毎年2月16日~3月15日の間
確定申告は、各市町村の税務署にて毎年2月16日~3月15日の間で行う必要があります。
申告方法は、税務署にて確定申告に必要な書類を作成して直接提出する方法と、webから申告できる「e-Tax」の2種類があります。
期間中は各税務署内は多くの人が訪れるため、なるべく早い時期から準備するのがおすすめです。
なお、確定申告が初めてで不安な方は、税務署での提出にすればスタッフが随時対応してくれるため、安心して進められます。
▼確定申告しないと延滞税が課される
確定申告は期限内に申告しなければなりません。
もし、期限を過ぎた場合は「期限後申告」とみなされ、延滞税や無申告加算税など課される可能性があります。
延滞税については、国税庁で以下のような記載があります。
税金が定められた期限までに納付されない場合には、原則として法定納期限の翌日から納付する日までの日数に応じて、利息に相当する延滞税が自動的に課されます。
(1)納期限(注1)の翌日から2か月を経過する日まで
原則として年「7.3パーセント」
(2) 納期限の翌日から2か月を経過した日以後
原則として年「14.6パーセント」
つまり、申告期限である3月15日の翌日から納付した日までの日数に応じて延滞税が課されます。
また、税率は納期期限の翌日から2ヶ月を経過する日までは原則として「年7.3%」であり、それ以降は「年14.6%」と倍増します。
無申告加算税についても国税庁に以下のような記載があります。
期限内に確定申告を忘れた場合でも、自分で気が付いたらできるだけ早く申告するようにしてください。この場合は、期限後申告として取り扱われます。
また、期限後申告をしたり、所得金額の決定を受けたりすると、申告等によって納める税金のほかに無申告加算税が課されます。
各年分の無申告加算税は、原則として、納付すべき税額に対して、50万円までの部分は15パーセント、50万円を超える部分は20パーセントの割合を乗じて計算した金額となります。
- 法定申告期限から1か月以内に自主的に行われていること
- 納付すべき税額の全額を期限内に申告する意思があったと認められる場合など、一定の場合に該当すること
ただし、期限内に確定申告するのが最適なので、なるべく遅れないように申告しましょう。
確定申告の手順
確定申告を自分で行う際は以下の流れで進めましょう。
確定申告書の添付書類を準備する
譲渡所得税を計算する
税務署で確定申告を行う
①確定申告書の添付書類を準備する
まずは確定申告に必要な書類を準備します。
必要書類について詳しくは次の章で紹介します。
確定申告を余裕をもって進めるためにも必要な書類は前もって準備することが大切です。
②譲渡所得税を計算する
次に譲渡所得税を計算しましょう。
マンション売却時の確定申告で、多くの方がつまづきやすいのが、譲渡所得税の計算です。
譲渡所得税は、譲渡所得に税率をかけて算出します。
まず、譲渡所得を「譲渡所得 = 譲渡価格 -(取得費 + 譲渡費用)」の計算式で算出します。
「譲渡価格」とは、マンションの売却金額に、売主が納税済みの固定資産税・都市計画税を日割計算して精算した金額を足したものです。
「所得費」は、売却したマンションの購入時の費用から、減価償却相当額を差し引いたものです。
詳しくは譲渡所得税の計算手順を参考にしてみましょう。
③税務署で確定申告を行う
必要書類がすべてそろったら、マンションを売却した翌年の2月16日から3月15日までの間に確定申告を行います。
年度により若干時期がずれる場合があるので、不安なら確認してから税務署に行くとよいでしょう。郵送の場合は、通信日付印の日付が提出日とされます。
書類の作成に不安がある方は、税務署主催で確定申告相談会が開催されています。確定申告の時期に国税庁のホームページをチェックしてみましょう。
必要な書類
マンション売却後に確定申告する際は以下の書類が必要です。
書類名 | 取得方法 | 取得費用 |
---|---|---|
確定申告書B様式 | 税務署で入手(国税庁ホームページでもダウンロード可) DLページ | 無料 |
分離課税用の確定申告書 | 税務署で入手(国税庁ホームページでもダウンロード可) DLページ | 無料 |
譲渡所得の内訳書 | 税務署で入手(国税庁ホームページでもダウンロード可) DLページ | 無料 |
売却時の売買契約書 | 売買契約時に入手 | 印紙税分の費用 |
購入時の売買契約書 | 売買契約時に入手 | 印紙税分の費用 |
仲介手数料や印紙税の領収書 | 売買契約後に不動産会社から発行してもらう | 無料 |
書類は複数あり、それぞれで取得場所やかかる費用などが異なるため、事前に用意しておきましょう。
▼税務署から入手する書類
確定申告時に税務署から入手する書類は、主に次の3つです。
- 確定申告書B様式
- 分離課税用の確定申告書
- 譲渡所得の内訳書
これらは申告会場で配布されているため、一度税務署に足を運んでみるとよいでしょう。
また、税務署以外でも地域ごとの確定申告会場にて入手も可能です。国税庁のホームページからもダウンロードが可能であり、どこで入手しても問題はありません。
重要なのは必要な書類がきちんと揃っており、かつ正しく内容が記載されていることです。
どこで入手するにしても必要な書類と記載内容だけは間違えないようにするとスムーズに確定申告ができるでしょう。
▼自分で用意する書類
マンション売却の状態や利用する制度によって違いはありますが、確定申告時に自分で用意する基本の書類としては、次の3つが挙げられます。
- 売却時の売買契約書
- 購入時の売買契約書
- 仲介手数料や印紙税の領収書
売買契約書はマンションを売った時だけではなく、買った時のものも必要なため、忘れずに用意しましょう。
各種領収書類はコピーでもよく、実は必須の書類ではありません。これらがなくても確定申告はできますが、経費の計上はできなくなるため注意が必要です。
売却にかかった費用を計上していないと、売却価格がそのまま利益になってしまい、課税対象額が大幅に増えます。
仲介手数料や印紙税などを経費に計上することで、申告上の利益は縮小でき、課税対象額も減って節税ができることは覚えておきましょう。
仲介手数料や印紙税の領収書以外では、固定資産税の清算書類なども用意しておくことが大切です。
経費になる費用
マンション売却により確定申告が必要になった際は、いくつかの費用を「譲渡費用」として経費計上できます。
しっかり経費計上できれば節税につながるため、確定申告が必要な方は確認しておきましょう。
▼不動産会社への仲介手数料
不動産会社への仲介手数料は譲渡費用として扱えます。
マンション売却における仲介手数料とは、マンション売却契約後に不動産会社へ支払う成功報酬であり、以下のように手数料の上限額が定められています。
売却金額 | 仲介手数料の上限 |
---|---|
200万円以下 | 売却金額×5% |
200万円超~400万円以下 | (売却金額×4%+2万)+税 |
400万円超 | (売却金額×3%+6万円)+税 |
例えば、売却金額3,000万円でマンションを売った際の仲介手数料は以下のとおりです。
▼印紙税
印紙税とは、不動産売買契約書や領収書などを作成する際にかかる税金です。
書面に記載されている金額によって以下のように税額が異なります。
記載金額 | 本則税率の印紙税額 |
---|---|
1万円未満 | 非課税 |
1万円以上10万円以下 | 200円 |
10万円を超えて50万円以下 | 400円 |
50万円を超えて100万円以下 | 1,000円 |
100万円を超えて500万円以下 | 2,000円 |
500万円を超えて1,000万円以下 | 1万円 |
1,000万円を超えて5,000万円以下 | 2万円 |
5,000万円を超えて1億円以下 | 6万円 |
1億円を超えて5億円以下 | 10万円 |
5億円を超えて10億円以下 | 20万円 |
10億円を超えて50億円以下 | 40万円 |
50億円を超えるもの | 60万円 |
出典:国税庁「不動産売買契約書の印紙税の軽減措置」(2022年10月20日閲覧)
3,000万円の契約の場合は2万円とそこまで高額ではないですが、経費計上できるため、使用した書類などは残しておきましょう。
▼測量費
測量費とは、土地の面積や高低差などを測る際にかかる費用です。
測量をしていないと、売却時の境界について隣接地の所有者とトラブルになるケースがあり、売主は確実に行っておきたいポイントです。
測量は土地家屋調査士が行うので費用がかかります。
費用の相場は隣接地が民有地か官有地によって以下のように異なります。
種類 | 費用相場 |
---|---|
隣接地が民有地 | 35万~45万 |
隣接地が官有地(国有地) | 60万~80万 |
このように測量費は高額であり、隣が官有地だと80万円もかかるケースもあります。
この測量費も譲渡費用として経費計上できるため、領収書などは確実に残しておきましょう。
▼立ち退き料
立ち退き料も譲渡費用に含まれます。
賃貸に出しているマンションを居住目的の買主へ売却する場合は、立ち退きしてもらわなければなりません。
しかし、立ち退き料に相場や規定はなく、無料で立ち退きしてもらえるケースもあります。
借主との話し合いにより決まるため、高額になる場合もあるでしょう。
いずれにせよ立ち退き料が発生した場合は譲渡費用として経費計上できるため、出金伝票などに記載しておきましょう。
マンション売却後の確定申告にかかる譲渡所得税の計算手順
マンション売却によって確定申告が必要とわかれば譲渡所得税を計算しましょう。
譲渡所得税を把握することで、どれくらいの税金がかかるのかを理解できます。
以下の流れに沿って求めてみましょう。
STEP①:譲渡価格を求める
まずは譲渡価格を求めましょう。
3,000万円+5万円=3,005万円(譲渡価格)
STEP②:取得費を求める
例えば以下の費用はマンションの取得費に含まれます。
- マンション購入費用
- 不動産会社への仲介手数料
- 登録免許税
取得費は上記の費用をそのまま計算するわけではありません。
上記の費用からマンションの減価償却費を差し引くことで取得費を求められます。
取得費=マンション取得費-減価償却費相当額
建物は築年数の経過とともに劣化していき、その価値も減少していきます。
構造によって以下のように減価償却率が異なります。
構造 | 耐用年数 | 償却率 |
---|---|---|
鉄骨鉄筋コンクリート造又は鉄筋コンクリート造 | 70年 | 0.015 |
れんが造、石造又はブロック造 | 57年 | 0.018 |
木造又は合成樹脂造 | 33年 | 0.031 |
木骨モルタル造 | 30年 | 0.034 |
参照:国税庁
また、価値が減少するのは建物のみであり、建物の土台となる土地は期間が経過しても価値は減少しません。
そのため、減価償却するのは建物のみとなります。
上記をふまえて減価償却費を以下の計算式で求めてみましょう。
これを最初の取得費の計算式に当てはめてみましょう。
取得費=マンション取得費-減価償却費相当額
STEP③:譲渡費用を求める
- 仲介手数料
- 印紙税
- 測量費
- リフォーム費用(売却目的のみ)
STEP④:①~③を考慮して譲渡所得を求める
ステップ①~③をもとに譲渡所得を求めます。
STEP⑤:譲渡所得税を求める
譲渡所得を求めたら最後に譲渡所得税を求めましょう。
譲渡所得税とは、ステップ④で求めた譲渡所得に対して所得税が住民税がかかった総称です。
譲渡所得が多ければ多いほど所得税と住民税も多くかかるため、多くの税金が発生します。
所得税と住民税の税率はマンションの所有期間によって以下のように異なります。
種類 | 対象期間 | 税率 |
---|---|---|
短期譲渡所得 | 所有期間5年以下の土地・建物 | 39.63%(所得税 30% 、住民税 9%、復興所得税 0.63%) |
長期譲渡所得 | 所有期間5年を超える土地・建物 | 20.315%(所得税 15% 、住民税 5%、復興所得税 0.315%) |
所有期間が5年を超えているかどうかで税率が2倍近くも異なります。
築浅マンションを早く売却したい人以外であれば、5年を超える期間所有してから売却した方が大きな節税効果に期待できます。
これまでのSTEPを踏まえて計算すると……
・マンション売却価格3,000万円(建物価格2,000万円)
・所有期間20年
・鉄筋コンクリート造
・譲渡費用:120万円
3,000万円+5万円=3,005万円(譲渡価格)
3,000万円(売却価格)-540万円(減価償却費)=2,460万円(取得費)
120万円(仲介手数料、印紙税など)
【譲渡所得=譲渡価格-取得費-譲渡費用】
3,005万円-2,460万円-120万円=425万円
【譲渡所得税=譲渡所得×所得税・住民税】
425万円×20.315%=863,388円
マンション売却における確定申告書の種類と書き方
確定申告書には主に3種類の書類があります。
それぞれのひな形や書き方を確認しておきましょう。
譲渡所得の内訳書
譲渡所得内訳書は、不動産を売却して得た譲渡所得の金額を記入する書類です。
画像参照:国税庁
譲渡所得額以外にも、所在地や売却時期、居住年数なども記入します。
税務署で取得できるほか国税庁のホームページでもダウンロードできます。
確定申告書B
確定申告書Bとは、その年の所得額を記載する書類のことです。
また、控除の申告内容や社会保険料控除などの書類を貼り付ける台紙などもあります。
マンション売却によって所得を得た場合は、この確定申告書Bを税務署へ提出します。
画像参照:国税庁
税務署で取得できるほか、国税庁のホームページからでもダウンロードできるので、税務署に行く前に準備しておくとスムーズに進められます。
分離課税用の確定申告書
分離課税用の確定申告書とは、ほかの所得と分けて税額を申告する書類です。
そもそも確定申告時に申告する所得税は、それぞれの所得を合算した「総合所得」が基本です。
しかし、譲渡所得や雑所得、退職所得(退職金)などの所得は分離課税に該当するため、分けて申告しなければなりません。
そして、マンション売却によって得た所得は譲渡所得なので分離課税用の確定申告書を使って申告する必要があります。
画像参照:国税庁
分離課税用の確定申告書も、税務署で取得できるほか国税庁のホームページでもダウンロードできます。
マンションの売却益を計算する方法
確定申告をする際には、売却益があるかどうかが重要です。そのため、売却後は利益が出たのかどうか、金額はいくらなのか計算しておかなければなりません。
売却益の計算方法を知り、確定申告までに利益や損失の有無と金額を明確にしておきましょう。
売却益を算出する計算式
マンションを売却した時の利益の計算は、次の式で行います。
売却益=売却価格-取得費-諸経費-特別控除
簡単に売却価格から取得費や諸経費、特別控除などを差し引いた結果、プラスになった場合は売却益、マイナスになった場合は売却損と考えるとよいでしょう。
売却価格がそのまま売却益とイコールになるわけではないため、いかに高額で売れていても計算すると売却損が出ているということもあります。
取得費の算出方法
マンションの取得費を算出する方法は、概算法と実額法の2つがあります。
概算法は売却価格の5%を取得費用とする方法であり、不動産の取得費、すなわち購入代金などが明確に分からない場合に使われることが多いです。
対して実額法は、取得にかかった各種費用から、減価償却費を差し引くことで、より厳密な取得費を計算います。
減価償却費とは金額の大きいものを複数年に分けて経費計上する税制上の考え方であり、家の経年劣化分を考慮して、計算する指標とイメージしてもよいでしょう。
つまり、実額法で計算する場合は、取得にかかったもろもろの費用の総額から、減価償却費を引いたものが、取得費となります。取得にかかった費用とは、次のものが計上できます。
- 土地建物の購入代金
- 建築代金
- 不動産購入時の仲介手数料
- リフォームの設備費・改良費
概算法と実額法はどちらを用いるかは自由であり、より高額になるほうを採用して構いません。基本的にはより詳細に計算できる実額法を用い、取得費が定かではない場合に限って概算法を使うとよいでしょう。
減価償却費の算出方法
実額法で計算する際に使う減価償却費は、次の式で求めます。
減価償却費=建物購入代金×0.9×償却率×経過年数
償却率は建物の構造と用途によって違うため、それぞれ適切なものを確認しておかなければなりません。同じ構造でも、事業用と居住用では割合が違ってくることも多いです。
該当するものを間違いなく確認し、式に当てはめて計算してみましょう。減価償却費の計算は複雑であるため、より確実に行いたいなら不動産会社に依頼することもおすすめです。
参考:減価償却率
諸経費
売却にかかる諸経費は、次ものが挙げられます。
- 仲介手数料
- 印紙税
- 登記の費用や司法書士への報酬
- 売却活動費の実費精算分
不動産会社に支払う仲介手数料や、売買契約時の印紙税なども経費に計上できるため、領収書は忘れずにとっておきましょう。また、登記にかかった費用や、登記手続きを司法書士に依頼した場合の報酬なども、売却活動の経費として認められます。
他にもマンションを売却するまでにかかった活動費の実費精算分も、経費計上できる場合があります。どれが経費になるのかは、不動産会社や税理士と相談しながら決めるとよいでしょう。
なんでも経費にできるとは限らず、該当しないものまで計上してしまうと、ペナルティを課せられるため注意しなければなりません。
【図解あり】マンション売却でかかる税金は?シミュレーション機能付き
マンション売却の確定申告で節税したいなら3,000万円特別控除がおすすめ
確定申告で節税したいなら3,000万円特別控除がおすすめです。
ここでは、その理由や利用できる条件について解説します。
譲渡所得から3,000万円控除できる
3,000万円特別控除はその名の通り、譲渡所得から3,000万円控除できる特例です。
譲渡所得が3,000万円以下なら課税されなくなるため、大きな節税効果があります。
ただし、譲渡所得がない場合は利用できないので注意しましょう。
適用条件
3,000万円特別控除を受けるためには以下の条件に該当していなければなりません。
- 現在おもに居住している住宅の売却であること
- 取り壊した場合は1年以内に売却していること
- 空き家の場合は住まなくなってから3年以内の売却していること
- 家族など特別な関係の人への売却ではないこと
- 前年や前々年に同じ特例を受けていないこと
特別控除を受けるには、これらの条件をすべて満たした上で一定の書類を添えて確定申告をすることが必要です。
控除適用時には該当不動産の全部事項証明書など、追加書類が必要になることもあるため、不明点は税務署や申告会場で聞いておくとよいでしょう。
10年超所有軽減税率の特例と併用できる
確定申告時に必要な特例として、10年超所有軽減税率があります。
10年以上所有したマイホームを売って譲渡所得を得た際に利用できる特例で、譲渡所得に対して一定の税率を軽減できます。
3,000万円特別控除は、この10年超所有軽減税率の特例と併用できる特徴があります。
併用できればさらに節税効果が大きくなるため、10年以上所有していた家を売却した際は、適用できるかどうかチェックしておきましょう。
マンション売却後の確定申告で利用できるその他の特例
マンション売却後の確定申告の際は、3,000万円特別控除以外にも利用できる特例があります。
利用すれば大きな節税に期待できるので確認しておきましょう。
10年超所有軽減税率の特例
10年を超える期間所有した不動産を売却する際は、「10年超所有軽減税率の特例」を利用できる場合があります。
概要や適用条件を解説します。
▼10年超の住宅を売却した際の税率を軽減できる
10年超所有軽減税率の特例とは前述のとおり、所有期間が10年を超える不動産を売った際に利用できる特例です。
具体的には、譲渡所得6,000万円以下の部分の譲渡所得税率が通常20.315%から14.21%へ軽減されます。
そもそも譲渡所得税は所有期間によって以下のように異なります。
種類 | 対象期間 | 税率 |
---|---|---|
短期譲渡所得 | 所有期間5年以下の土地・建物 | 39.63%(所得税 30.63% 、住民税 9%) |
長期譲渡所得 | 所有期間5年を超える土地・建物 | 20.315%(所得税 15.315% 、住民税 5%) |
10年超所有軽減税率の特例は長期譲渡所得が該当するため、通常は20.315%かかりますが軽減されて14.21%となり、約6%ほど税率が下がるので大きな節税効果があります。
また、3,000万円特別控除と併用できるため、仮に6,000万円の譲渡所得があったとしても3,000万円控除されて譲渡所得が3,000万円となります。
その3,000万円に対してさらに軽減税率が適用されるため、非常に大きな節税効果に期待できるのが特徴です。
▼適用条件
この特例を受けるためには以下の条件をすべて満たしている必要があります。
- ①日本国内にある自分が住んでいる家屋を売るか、家屋とともにその敷地を売ること
- 売った年の1月1日において売った家屋や敷地の所有期間がともに10年を超えていること
- 売った年の前年および前々年にこの特例の適用を受けていないこと
- 売った家屋や敷地についてマイホームの買換えや交換の特例など他の特例の適用を受けていないこと
- 親子や夫婦など「特別の関係がある人」に対して売ったものでないこと
引用:国税庁
なお、以前に住んでいた不動産の場合は住まなくなった日から3年を経過する日の属する年の12月31日までに売る必要があります。
詳しくは以下の記事を参考にしてみてください。
マイホームの買い替え特例
マイホームを買い替える際に利用できる特例です。
特徴や適用条件を解説します。
▼譲渡所得税の支払いを将来に繰り延べできる
マイホームの買い替え特例とは、マイホームを売却して譲渡所得を得た場合の譲渡所得税を将来に繰り延べできる特例です。
本来支払うべき税金を将来に延ばせるため、支出の重なる不動産売買のタイミングとは別のタイミングで支払えるメリットがあります。
ただし、買い替え特例はほかの特例と併用して利用できないため、3,000万円特別控除の特例や軽減税率の特例を利用していた場合は利用できません。
また、税金の支払いを先延ばしにできるだけのため、新たに家を購入した場合は、今回の分と次回分の譲渡所得税をまとめて支払う必要も出てきます。
メリットばかりではないため、計画を立てたうえで利用するかどうかを判断しましょう。
▼適用条件
この特例を受けるためには以下の条件をすべて満たしている必要があります。
- 自分が住んでいる家屋を売るか、家屋とともにその敷地や借地権を売ること
- 売った年、その前年および前々年にマイホームを譲渡した場合の3,000万円の特別控除の特例またはマイホームを売ったときの軽減税率の特例もしくはマイホームの譲渡損失についての損益通算及び繰越控除の特例の適用を受けていないこと
- 売ったマイホームと買い換えたマイホームは、日本国内にあるものであること
- 売却代金が1億円以下であること
- 売った人の居住期間が10年以上で、かつ、売った年の1月1日において売った家屋やその敷地の所有期間が共に10年を超えるものであること
- 買い換える建物の床面積が50平方メートル以上のものであり、買い換える土地の面積が500平方メートル以下のものであること
- マイホームを売った年の前年から翌年までの3年の間にマイホームを買い換えること
- 買い換えるマイホームが、建築後使用されたことのない住宅である場合において、令和6年1月1日以後に入居(または入居見込み)であるときには、特定居住用家屋(※)に該当するもの以外のものであること
- 買い換えるマイホームが、耐火建築物の中古住宅である場合には、取得の日以前25年以内に建築されたものであること、または一定の耐震基準を満たすものであること
- 買い換えるマイホームが、耐火建築物以外の中古住宅である場合には、取得の日以前25年以内に建築されたものであること、または、取得期限までに一定の耐震基準を満たすものであること
- 親子や夫婦など特別の関係がある人に対して売ったものでないこと
引用:国税庁
このように非常に多くの条件をクリアする必要があります。
詳しくは以下の記事を参考にしてみてください。
マンション売却で譲渡損失だった場合に利用できる特例
マンションを売却した結果、譲渡損失だった場合に利用できる特例をご紹介します。
マイホーム買替えの損失の繰越控除
マイホームを買い替えた結果、損失した際に利用できる特例です。
概要や適用条件を解説します。
▼買い替えによる損失額を給与所得などから控除できる
売却後に新たなマイホームを購入した際、売却価格が購入価格を上回っている(赤字)場合があります。
この際に一定の要件を満たすものに限り、その赤字を給与所得などのほかの所得から控除できる特例です。
また、控除しきれなかった分に関しても売却した年の翌年以降3年内に繰り越して控除できます。
つまり、給与所得や事業所得から赤字分を差し引けるため、所得税などに対して本来かかる税額を抑えられるメリットがあります。
▼適用条件
この特例を受けるためには以下の条件をすべて満たしている必要があります。
- 自分が住んでいるマイホームを譲渡すること
- 譲渡の年の1月1日における所有期間が5年を超える資産(旧居宅)で日本国内にあるものの譲渡であること
- 譲渡の年の前年の1月1日から売却の年の翌年12月31日までの間に日本国内にある資産(新居宅)で家屋の床面積が50平方メートル以上であるものを取得すること
- 買換資産(新居宅)を取得した年の翌年12月31日までの間に居住の用に供することまたは供する見込みであること
- 買換資産(新居宅)を取得した年の12月31日において買換資産について償還期間10年以上の住宅ローンを有すること
引用:国税庁
詳しくは国税庁のホームページを参考にしてみてください。
特定のマイホームの譲渡損失の損益通算及び繰越控除の特例
住宅ローンの残っている不動産を売却した際に利用できる特例です。
概要や適用条件を解説します。
▼住宅ローン残高を下回る額で売却した際に利用できる
住宅ローンの残っている不動産を売却した結果、ローン残債を下回る価額で売却した際に利用できる特例です。
下回った分は、給与所得や事業所得などから控除でき、控除しきれなかった分も売却年の翌年から3年間繰り越して控除できます。
「マイホーム買替えの損失の繰越控除」に似ている特例ですが、この特例はマイホームを新たに購入しない場合にも利用できる点が異なっています。
▼適用条件
この特例を受けるためには以下の条件をすべて満たしている必要があります。
- 自分が住んでいるマイホーム(譲渡資産)を譲渡すること
- 譲渡の年の1月1日における所有期間が5年を超えるマイホーム(譲渡資産)で日本国内にあるものの譲渡であること
- 譲渡したマイホームの売買契約日の前日において、そのマイホームに係る償還期間10年以上の住宅ローンの残高があること
- マイホームの譲渡価額が上記(4)の住宅ローンの残高を下回っていること
引用:国税庁
詳しくは国税庁のホームページを参考にしてみてください。
マンション売却時の不動産会社選びは一括査定サイトを利用する
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マンションを売却したら忘れずに確定申告をしよう
マンションを売却した後は、翌年の申告期間内に必ず確定申告をする必要があります。売却益が出た場合はもちろん、売却損でもしておくことで税制優遇のメリットがあります。
確定申告までが売却活動ですべきことであるため、最後のステップも忘れずに行い、正しく所得を申告しましょう。