マンションを売り出し、売買契約を締結して引き渡しまで済ませると売却活動はようやく一段落します。しかし、売却活動はここで終わりではなく、確定申告までで完了となります。
確定申告は不動産売却後の必要な手続きですが、やり方が分からないという人は多くいます。
確定申告の方法から必要性までを知り、不動産売却の最後のステップについて理解を深めていきましょう。
マンション売却で確定申告が必要なケース
マンション売却で確定申告が必要なケースは、売却で利益が出たかどうか、税金控除を受けたいかどうかで決まります。
まずは、自分が確定申告が必要かどうかを確認しましょう。
マンション売却によって譲渡所得が発生した場合
マンションを売却して利益(譲渡所得)が発生した場合、確定申告は必須です。
ここでは、確定申告に関わる「所得」と「譲渡益」について解説します。
▼そもそも所得とは
マンション売却で言う「所得」とは、マンション売却で得た収入から必要経費を差し引いた金額のことです。
▼譲渡所得・譲渡損とは
譲渡所得とは、購入時にかかった費用と比べて利益を得た場合のことを指します。
譲渡所得の金額に対して所得税や住民税が課されるため、確定申告が必要です。
反対に、購入時にかかった費用と比べて赤字(譲渡損)の場合は、税金が課税されないので確定申告が不要です。
譲渡益がなくても控除特例を申請する場合
マンション売却で譲渡損失が発生した場合、確定申告は必須でありません。
しかし、以下の特例を申請する場合は確定申告が必要です。
- 特定の居住用財産の譲渡損失の損益通算及び繰越控除の特例
参考:国税庁「No.3390 住宅ローンが残っているマイホームを売却して譲渡損失が生じたとき(特定のマイホームの譲渡損失の損益通算及び繰越控除の特例)」
- マイホームを買い替えた際の譲渡通算の損益通算及び繰越控除の特例
国税庁「No.3370 マイホームを買い替えた場合に譲渡損失が生じたとき (マイホームを買い替えた場合の譲渡損失の損益通算及び繰越控除の特例」
- 居住用財産を譲渡した場合の3,000万円の特別控除の特例
特定居住用財産の譲渡損失の損益通算及び繰越控除の特例は、家の売却価格が住宅ローンの残債を下回った場合に利用できます。
マイホームを新しく買い替えて新しい住宅ローンを組んだ場合は、「居住用財産の買い替え等の場合の譲渡損失の損益通算及び繰越控除の特例」が利用できます。
3,000万円特別控除の特例は、居住しているマンションを売却した際に利用できる特例です。
各特例の詳細は以下の記事を参考にしてみてください。
マンション売却における確定申告の時期
マンション売却によって確定申告が必要になった際は、以下の期間内に確定申告を行う必要があります。
期間内に申告しないとペナルティが課せられるケースもあるため、しっかりと理解しておきましょう。
毎年2月16日~3月15日の間
確定申告は、各市町村の税務署にて毎年2月16日~3月15日の間で行う必要があります。
申告方法は、税務署にて確定申告に必要な書類を作成して直接提出する方法と、webから申告できる「e-Tax」の2種類があります。
期間中は各税務署内は多くの人が訪れるため、なるべく早い時期から準備するのがおすすめです。
なお、確定申告が初めてで不安な方は、税務署での提出にすればスタッフが随時対応してくれるため、安心して進められます。
確定申告しないと延滞税が課される
確定申告は期限内に申告しなければなりません。
もし、期限を過ぎた場合は「期限後申告」とみなされ、延滞税や無申告加算税など課される可能性があります。
延滞税については、国税庁で以下のような記載があります。
税金が定められた期限までに納付されない場合には、原則として法定納期限の翌日から納付する日までの日数に応じて、利息に相当する延滞税が自動的に課されます。
(1)納期限(注1)の翌日から2か月を経過する日まで
原則として年「7.3パーセント」
(2) 納期限の翌日から2か月を経過した日以後
原則として年「14.6パーセント」
つまり、申告期限である3月15日の翌日から納付した日までの日数に応じて延滞税が課されます。
また、税率は納期期限の翌日から2ヶ月を経過する日までは原則として「年7.3%」であり、それ以降は「年14.6%」と倍増します。
無申告加算税についても国税庁に以下のような記載があります。
期限内に確定申告を忘れた場合でも、自分で気が付いたらできるだけ早く申告するようにしてください。この場合は、期限後申告として取り扱われます。
また、期限後申告をしたり、所得金額の決定を受けたりすると、申告等によって納める税金のほかに無申告加算税が課されます。
各年分の無申告加算税は、原則として、納付すべき税額に対して、50万円までの部分は15パーセント、50万円を超える部分は20パーセントの割合を乗じて計算した金額となります。
- 法定申告期限から1か月以内に自主的に行われていること
- 納付すべき税額の全額を期限内に申告する意思があったと認められる場合など、一定の場合に該当すること
ただし、期限内に確定申告するのが最適なので、なるべく遅れないように申告しましょう。
マンション売却で確定申告をする手順
マンション売却で確定申告をするには、以下の三つの方法があります。
- 自分で確定申告をする
- 税理士に依頼する
- e-taxを利用する
税理士に依頼する:自分で確定申告をするのが難しい・不安だという方は、税理士に依頼ができるので利用するのが良いでしょう。
税理士に依頼する場合、申告間違いのリスクがなく安心できますが、費用は10万円ほどかかります。
e-Tax:を利用する:e-Taxとは、確定申告を電子データでインターネットで送信できるサービスです。
利用するには、電子証明書の取得やICカードリーダーの購入が必要なため、確定申告を繰り返し行うこ方にはお勧めです。
自分で確定申告をする:税理士に10万円払うのはもったいない、自分でできるならやりたい…という方は、自分で確定申告をすることもできます。
ここ先は、自分で確定申告をする手順について詳しく解説していきます。
- 確定申告書の添付書類を準備する
- 譲渡所得税を計算する
- 税務署で確定申告を行う
確定申告書の添付書類を準備する
確定申告にはさまざまな書類の準備が必要です。
必要書類について詳しくは次の章で紹介します。
確定申告を余裕をもって進めるためにも必要な書類は前もって準備することが大切です。
譲渡所得税を計算する
マンション売却時の確定申告で、多くの方がつまづきやすいのが、譲渡所得税の計算です。
譲渡所得税は、譲渡所得に税率をかけて算出します。
まず、譲渡所得を「譲渡所得 = 譲渡価格 -(取得費 + 譲渡費用)」の計算式で算出します。
「譲渡価格」とは、マンションの売却金額に、売主が納税済みの固定資産税・都市計画税を日割計算して精算した金額を足したものです。
「所得費」は、売却したマンションの購入時の費用から、減価償却相当額を差し引いたものです。
減価償却は築年数によって劣化が進むマンションの建物部分にのみ、該当するので注意しましょう。減価償却相当額の計算式は「減価償却費 = 取得価額 × 0.9 × 償却率 × 経過年数」です。
「譲渡費用」は、仲介手数料や印紙税など売却にかかった費用です。登録免許税は経費とされますが、抵当権抹消費用は経費とされないので注意が必要です。
最後に「譲渡所得 = 譲渡価格 - (取得費 + 譲渡費用)」の計算式に実際の数字を当てはめて譲渡所得を算出したら、税率をかけて譲渡所得税を出します。
税率は、マンションの所有期間によって異なります。
所有期間 | 5年を超える場合 | 5年以下の場合 |
---|---|---|
所得の区分 | 長期譲渡所得 | 短期譲渡所得 |
所得税率 | 15% | 30% |
復興特別所得税率 | 0.315% | 0.63% |
住民税率 | 5% | 9% |
なお、マンションの所有期間は、購入日から「売却した年の1月1日」時点を基準に計算します。
たとえば、2020年3月1日に購入したマンションを2023年3月1日に売却した場合、所有期間は「2023年3月1日から2023年1月1日まで」の「1年10ヶ月」になります。
税務署で確定申告を行う
必要書類がすべてそろったら、マンションを売却した翌年の2月16日から3月15日までの間に確定申告を行います。
年度により若干時期がずれる場合があるので、不安なら確認してから税務署に行くとよいでしょう。郵送の場合は、通信日付印の日付が提出日とされます。
書類の作成に不安がある方は、税務署主催で確定申告相談会が開催されています。確定申告の時期に国税庁のホームページをチェックしてみましょう。
マンション売却後の確定申告に必要な書類
マンション売却後に確定申告する際は以下の書類が必要です。
書類名 | 取得方法 | 取得費用 |
---|---|---|
確定申告書B様式 | 税務署で入手(国税庁ホームページでもダウンロード可) DLページ | 無料 |
分離課税用の確定申告書 | 税務署で入手(国税庁ホームページでもダウンロード可) DLページ | 無料 |
譲渡所得の内訳書 | 税務署で入手(国税庁ホームページでもダウンロード可) DLページ | 無料 |
売却時の売買契約書 | 売買契約時に入手 | 印紙税分の費用 |
購入時の売買契約書 | 売買契約時に入手 | 印紙税分の費用 |
仲介手数料や印紙税の領収書 | 売買契約後に不動産会社から発行してもらう | 無料 |
書類は複数あり、それぞれで取得場所やかかる費用などが異なるため、事前に用意しておきましょう。
税務署から入手する書類
確定申告時に税務署から入手する書類は、主に次の3つです。
- 確定申告書B様式
- 分離課税用の確定申告書
- 譲渡所得の内訳書
これらは申告会場で配布されているため、一度税務署に足を運んでみるとよいでしょう。また、税務署以外でも地域ごとの確定申告会場にて入手も可能です。国税庁のホームページからもダウンロードが可能であり、どこで入手しても問題はありません。
重要なのは必要な書類がきちんと揃っており、かつ正しく内容が記載されていることです。どこで入手するにしても、必要な書類と記載内容だけは間違えないようにすると、スムーズに確定申告ができるでしょう。
▼確定申告書B
確定申告書Bとは、その年の所得額を記載する書類のことです。
また、控除の申告内容や社会保険料控除などの書類を貼り付ける台紙などもあります。
マンション売却によって所得を得た場合は、この確定申告書Bを税務署へ提出します。
画像参照:国税庁
税務署で取得できるほか、国税庁のホームページからでもダウンロードできるので、税務署に行く前に準備しておくとスムーズに進められます。
▼分離課税用の確定申告書
分離課税用の確定申告書とは、ほかの所得と分けて税額を申告する書類です。
そもそも確定申告時に申告する所得税は、それぞれの所得を合算した「総合所得」が基本です。
しかし、譲渡所得や雑所得、退職所得(退職金)などの所得は分離課税に該当するため、分けて申告しなければなりません。
そして、マンション売却によって得た所得は譲渡所得なので分離課税用の確定申告書を使って申告する必要があります。
画像参照:国税庁
分離課税用の確定申告書も、税務署で取得できるほか国税庁のホームページでもダウンロードできます。
▼譲渡所得内訳書
譲渡所得内訳書は、不動産を売却して得た譲渡所得の金額を記入する書類です。
画像参照:国税庁
譲渡所得額以外にも、所在地や売却時期、居住年数なども記入します。
税務署で取得できるほか国税庁のホームページでもダウンロードできます。
自分で用意する書類
マンション売却の状態や利用する制度によって違いはありますが、確定申告時に自分で用意する基本の書類としては、次の3つが挙げられます。
- 売却時の売買契約書
- 購入時の売買契約書
- 仲介手数料や印紙税の領収書
▼売却時の売買契約書の写し
売却時の売買契約書の写しを用意しておきましょう。
売却金額が記載されているため、売却金額の証明となり、正しく経費計上できます。
画像参照:デイライト不動産事務所
▼購入時の売買契約書の写し
売却時の売買契約書と同様に、購入時の売買契約書も用意しておきましょう。
確定申告の際に申告する譲渡所得は、売却金額から「取得費」と「譲渡費」を差し引いた金額です。
購入時の売買契約書は取得費を証明する書類となるため、忘れずに用意しておきましょう。
▼仲介手数料や印紙税などの領収書
仲介手数料や印紙税を支払った際の領収書も用意しておきましょう。
確定申告では、所得税を申告することによって、払い過ぎていた税金が還付金として戻ってくる場合があります。
還付金を受け取るためには税金を支払った証明となる領収書が絶対に必要なので、仲介手数料や印紙税に限らず、マンション売却に関わる領収書はすべて用意しておくのがよいでしょう。
マンションの売却益を計算する方法
確定申告をする際には、売却益があるかどうかが重要です。そのため、売却後は利益が出たのかどうか、金額はいくらなのか計算しておかなければなりません。売却益の計算方法を知り、確定申告までに利益や損失の有無と金額を明確にしておきましょう。
売却益を算出する計算式
マンションを売却した時の利益の計算は、次の式で行います。
売却益=売却価格-取得費-諸経費-特別控除
簡単に売却価格から取得費や諸経費、特別控除などを差し引いた結果、プラスになった場合は売却益、マイナスになった場合は売却損と考えるとよいでしょう。
売却価格がそのまま売却益とイコールになるわけではないため、いかに高額で売れていても計算すると売却損が出ているということもあります。
取得費の算出方法
マンションの取得費を算出する方法は、概算法と実額法の2つがあります。概算法は売却価格の5%を取得費用とする方法であり、不動産の取得費、すなわち購入代金などが明確に分からない場合に使われることが多いです。
対して実額法は、取得にかかった各種費用から、減価償却費を差し引くことで、より厳密な取得費を計算います。減価償却費とは金額の大きいものを複数年に分けて経費計上する税制上の考え方であり、家の経年劣化分を考慮して、計算する指標とイメージしてもよいでしょう。
つまり、実額法で計算する場合は、取得にかかったもろもろの費用の総額から、減価償却費を引いたものが、取得費となります。取得にかかった費用とは、次のものが計上できます。
- 土地建物の購入代金
- 建築代金
- 不動産購入時の仲介手数料
- リフォームの設備費・改良費
概算法と実額法はどちらを用いるかは自由であり、より高額になるほうを採用して構いません。基本的にはより詳細に計算できる実額法を用い、取得費が定かではない場合に限って概算法を使うとよいでしょう。
減価償却費の算出方法
実額法で計算する際に使う減価償却費は、次の式で求めます。
減価償却費=建物購入代金×0.9×償却率×経過年数
償却率は建物の構造と用途によって違うため、それぞれ適切なものを確認しておかなければなりません。同じ構造でも、事業用と居住用では割合が違ってくることも多いです。
該当するものを間違いなく確認し、式に当てはめて計算してみましょう。減価償却費の計算は複雑であるため、より確実に行いたいなら不動産会社に依頼することもおすすめです。
参考:減価償却率
諸経費
売却にかかる諸経費は、次ものが挙げられます。
- 仲介手数料
- 印紙税
- 登記の費用や司法書士への報酬
- 売却活動費の実費精算分
不動産会社に支払う仲介手数料や、売買契約時の印紙税なども経費に計上できるため、領収書は忘れずにとっておきましょう。また、登記にかかった費用や、登記手続きを司法書士に依頼した場合の報酬なども、売却活動の経費として認められます。
他にもマンションを売却するまでにかかった活動費の実費精算分も、経費計上できる場合があります。どれが経費になるのかは、不動産会社や税理士と相談しながら決めるとよいでしょう。
なんでも経費にできるとは限らず、該当しないものまで計上してしまうと、ペナルティを課せられるため注意しなければなりません。
【初心者必見】マンション売却にかかる税金と計算方法|控除についても解説
特別控除の特例
マンションを売却した時に特定の条件を満たしていると、特別控除が適用でき、譲渡所得額を引き下げることができます。これは居住用財産を譲渡した場合の3,000万円の特別控除の特例といい、次の条件を満たすことで適用可能です。
- 現在おもに居住している住宅の売却であること
- 取り壊した場合は1年以内に売却していること
- 空き家の場合は住まなくなってから3年以内の売却していること
- 家族など特別な関係の人への売却ではないこと
- 前年や前々年に同じ特例を受けていないこと
特別控除を受けるには、これらの条件を満たした上で一定の書類を添えて確定申告をすることが必要です。
控除適用時には該当不動産の全部事項証明書など、追加書類が必要になることもあるため、不明点は税務署や申告会場で聞いておくとよいでしょう。
マンション売却時の不動産会社選びは一括査定サイトを利用する
マンションを売却する際には、売却後の確定申告のことも考慮して、不動産会社を選ぶことをおすすめします。信頼ができ、かつ手厚いサポートを行う不動産会社を見つけるには、一括査定サイトをご利用なさったほうがよいでしょう。一括査定を利用することで、各社の条件を簡単に比較できます。
好条件を提示する不動産会社を選ぶことで、売却についてのサポートが充実していることも多く、信頼できる業者も見つけやすいでしょう。
すまいステップは全国の優良業者が登録しており、信頼度が高い点が魅力です。一括査定も一度に4社まで結果を比較できるため、利用先の選定もしやすいでしょう。
マンションを売却したら忘れずに確定申告をしよう
マンションを売却した後は、翌年の申告期間内に必ず確定申告をする必要があります。売却益が出た場合はもちろん、売却損でもしておくことで税制優遇のメリットがあります。
確定申告までが売却活動ですべきことであるため、最後のステップも忘れずに行い、正しく所得を申告しましょう。