マンションを売却する方法には、大きく分けて「仲介」と「買取」があります。
売却の方法として一般的なのは「仲介」です。
仲介は、マンションを購入したい買主を、売主に紹介(仲介)することで、売買取引が成立します。
一方で、「買取」は不動産会社がマンションを購入します。
不動産会社が買主となるため、仲介手数料がかからない売却方法です。
しかし、マンションの売却には、不動産会社への仲介手数料以外にも、かかるお金があります。
本記事では、マンションを買取で売却する場合にかかる費用や手数料を詳しく解説します。
また、マンション買取のメリットや、買取を選ぶ上での注意点についても、解説します。
マンション買取にかかる手数料・費用
マンションを買取で売却する場合、主にかかるお金は以下の通りです。
手数料・費用 | 金額の目安 |
---|---|
印紙税 | 200円~数万円 |
抵当権抹消登記費用 | 2,000円 |
司法書士への報酬 (抵当権抹消登記を依頼した場合) | 1万~2万円 |
譲渡所得税 | 売却益×約20%または約40% (控除が受けられれば支払いがないことも多い) |
住宅ローンの一括返済手数料 | 5,000円~2万円 |
この章では、各種費用・手数料について、解説していきます。
印紙税
印紙税とは、金銭の取引をする契約書や、領収書を作成する時に課される税金です。書面に収入印紙を貼り付けることで納付します。
マンションの買取では、不動産会社と売買契約を結び、売買契約書を作成する時に印紙税がかかります。
印紙税の金額は、以下の表の通りです。
契約金額 | 本則税率 | 軽減税率 |
---|---|---|
10万円を超え50万円以下のもの | 400円 | 200円 |
50万円を超え100万円以下のもの | 1,000円 | 500円 |
100万円を超え500万円以下のもの | 2,000円 | 1,000円 |
500万円を超え1,000万円以下のもの | 1万円 | 5,000円 |
1,000万円を超え5,000万円以下のもの | 2万円 | 1万円 |
5,000万円を超え1億円以下のもの | 6万円 | 3万円 |
1億円を超え5億円以下のもの | 10万円 | 6万円 |
出典:国税庁「不動産売買契約書の印紙税の軽減措置」(2022年9月22日閲覧)
なお、平成26年4月1日から令和6年3月31日までの間に作成される契約書類については、印紙税に軽減税率が適用されます。
抵当権抹消登記費用
住宅ローンを組んでマンションを購入していた場合は、売却前にマンションに設定されている「抵当権」を抹消する手続きをしなければなりません。
抵当権の抹消は、法務局に「抵当権抹消登記」を申請して行います。
抵当権抹消登記には、手数料として2,000円かかります。
マンションの場合は、土地の所有権と建物部分の所有権の計2件で、2,000円を支払います。
また、抵当権抹消登記を司法書士に依頼する場合には、司法書士への報酬として別途1万~2万円がかかります。
抵当権抹消を住宅ローン完済後に自分でする方法|必要書類と費用も解説
譲渡所得税
譲渡所得税とは、マンションを売却した利益(儲け)にかかる税金です。
譲渡所得税は、以下の式によって求められます。
=(マンションの売却益-特別控除額)×税率
={マンションの売却価格-(購入にかかった費用+売却にかかった費用)-特別控除額}×税率
売却するマンションが、自宅用マンションだった場合は、最大3,000万円まで控除を受けられます。
そのため、売却益が3,000万円を上回らなければ、譲渡所得税は支払わなくてよいです。
(売却益があった場合は確定申告は必要です。)
売却するのが自宅用マンションでない場合は、売却益に税率をかけ合わせて、譲渡所得税を求めます。
(自宅用マンションの売却益が3,000万円を上回る場合は、控除額を差し引いた金額に税率をかけ合わせます。)
税率は、マンションを所有していた期間に応じて異なります。
所有期間 | 所得税(※) | 住民税 |
---|---|---|
5年を超える | 15.315% | 5% |
5年以下 | 30.63% | 9% |
(※復興特別所得税2.1%分を含めた税率)
所有期間は、売却した年の1月1日を基準に年月を計算します。
2020年5月1日に購入したマンションを、2023年12月1日に売却した
⇒2023年1月1日時点で所有期間を計算する
所有期間は2年8ヶ月
また、売却するマンションが自宅で、更に所有期間が10年を超える場合には、上記の表の税率よりも安い税率を適用できる特例があります。
課税長期譲渡所得金額 | 所得税(※) | 住民税 |
---|---|---|
6,000万円までの部分 | 10.21% | 4% |
6,000万円を超える部分 | 15.315% | 5% |
(※復興特別所得税2.1%分を含めた税率)
受けられる税制上の特例は、売却するマンションの所有状況によって異なってきます。
マンションの売却にかかる税金について、更に詳しく知りたい方は、以下の記事をご覧ください。
住宅ローンの一括返済手数料
マンションを売却する時に、住宅ローンを繰り上げで一括返済すると、一括返済手数料がかかります。
住宅ローンの一括返済手数料の相場は5,000円~2万円です。
金融機関や返済の手続き方法よって、金額が異なります。
たとえば、三井住友銀行で借入れをしている場合、全額繰り上げの一括返済手数料は以下の表のようになります。
手続き方法 | 一括返済手数料 |
---|---|
インターネットバンキング | 5,500円 |
窓口の専用パソコン | 11,000円 |
窓口の書面手続き | 22,000円 |
マンションは、住宅ローンの残債が残ったままでは売却できません。
必ず売却時に、売却代金で一括返済をします。
決済に関しては、不動産会社がサポートしてくれますが、ローン返済の流れについて詳しく知りたい方は、以下の記事をご参考にしてください。
マンション売却時に住宅ローンの残債がある場合の売却方法をわかりやすく解説!
その他場合によってかかる費用
ここまで解説してきた費用以外に、売却に伴って住み替えをする場合は引っ越し費用がかかります。
マンションの家財を、一時的に別の場所へ保管する必要がある場合は、トランクルームなどの利用料がかかるでしょう。
すまいステップの一括査定では、仲介の不動産会社と、買取を行っている不動産会社に、同時に査定依頼をすることができます。
仲介と買取、それぞれの査定金額を比較して納得した上で、売却方法を決められます。
一括査定であなたの家の適正価格が分かる
今の価格が届く!
無料診断スタート
一括査定であなたの家の適正価格が分かる
今の価格が届く!
無料診断スタート
マンション買取で費用・手数料を抑える税金控除
マンション買取では、確定申告をすることでマンションを買取して利益が出たときの譲渡所得や、買取で価格を下げて売ることで発生した赤字を抑えることができます。
この章では、マンション買取での税金や赤字を確定申告で抑える税金控除について解説していきます。
- マンションを買取して利益が出た場合
- 3000万円の特別控除の特例
- 軽減税率の特例
- 特定の居住用財産の買換え特例を利用する
- マンションを買ったときより安く売って赤字になった場合
- 損益通算・繰越控除をする
3000万円の特別控除の特例
3,000万円特別控除とは、譲渡所得3,000万円の部分をすべて控除できる特例です。
例えば、3,000万円で買ったマンションが6,000万円で売れ、3,000万円の譲渡所得が発生した場合、3,000万円に対して課される税金をすべてゼロにできます。
控除特例のなかでも特に恩恵の大きい特例であり、譲渡所得が発生した際は利用するのがおすすめです。
ただし、利用するためには以下の条件をすべて満たす必要があります。
- 居住中の家や土地、マンションを売却した
- 住まなくなってから3年経過した年の12月31日までに売却している
- この特例を受けることだけを目的として入居した家ではない
- 別荘やセカンドハウス、仮住まい目的の住宅ではない
- 3年以内に3,000万円の特別控除やその他の特例を受けていない
別荘や事業用など、居住用以外に購入したマンションや、空き家になってから3年以上経過したマンションには適応できませんので注意してください。
軽減税率の特例
軽減税率の特例とは、3,000万円特別控除によって控除しきれなかった部分に対して税率を軽減できる特例です。
例えば、6,000万円の譲渡所得が発生した際、3,000万円特別控除によって3,000万円までは控除できますが、残りの3,000万円までは控除できません。
このときに利用できるのが軽減税率の特例で、以下のように譲渡所得額に対して税率を軽減できます。
6,000万円以下の部分 | 6,000万円超の部分 | |
---|---|---|
所得税 | 10.21% | 15.315% |
住民税 | 4% | 5% |
合計 | 14.21% | 20.315% |
このように、3,000万円特別控除だけでは賄いきれないほどの高額な譲渡所得を得た際にも、軽減税率の特例を使えば大きく節税できます。
特定の居住用財産の買換え特例
マイホームを売って新しいマイホームに買い換える場合、一定条件を満たせば、売却の利益に対する税金を繰り延べできます。
注意したいのは、税金が免除されるわけではなく繰り延べされるということです。今回の譲渡所得には課税されませんが、次に買い替えをした場合は、繰り延べ分を含めて課税されることになります。
繰り延べできる金額は、新しいマイホームの購入金額により変わります。
元のマイホームより新しいマイホームの方が高いか同額なら税金は全額繰り延べとなります。新しいマイホームの方が安い場合は、その差額に税金がかかります。
なお、買い替え特例は3000万円特別控除や軽減税率と同時に適用できません。
一般的には、譲渡所得が3000万円以下の場合は税額がゼロになる3000万円特別控除が有利、譲渡所得が3000万円を超えていれば、買い替え時に税金がかからない居住用財産の買い変え特例が有利です。
買い替え特例利用の条件は以下となります。
売却した住宅の要件・売却した年の1月1日における所有期間が10年を超える居住用財産 ・売却代金が1億円以下 ・居住期間が10年を超えている |
買い替えた住宅の要件・住宅の床面が50㎡(マンションの場合は登記された専有部分の面積のみで判定)以上で、かつ土地面積が500㎡以下である事 ・中古マンション購入の場合は築25年以内であること、または一定の耐震基準を満たしていること |
損益通算・繰越控除
マイホーム売却で損失が出た際に、そのマイナス分を他の所得と合算して減税を図れます。
例えば、家の売却で200万円の赤字が出た場合に給与所得が400万円だったとすると、100万円を差し引いて300万円で所得が確定します。
そしてこの年の所得税は、300万円分の所得税を支払うことになります。
損益通算・繰越控除は、損失分を相殺するまで最大4年分の所得税の控除をすることができます。
例として、給与所得が500万円、譲渡損失が1,800万円の場合で考えてみましょう。
この場合は、1年目から3年目までは年収の500万円全額を譲渡損失で相殺することができ、3年間は所得税がすべて控除されます。
そして最後の4年目にのこりの300万円分を差し引いて、200万円分の所得税を支払います。
利用するためには以下の条件を満たす必要があるので確認しておきましょう
- 合計所得が3,000万円以下(3,000万円を超える都市があった場合、その年のみ適用不可)
- 家を売った3年以下に3,000万円控除、または軽減税率を利用している場合
- 敷地面積が500平方メートルを超える場合
マンション買取で手数料を安くする方法
マンション買取でできるだけ手数料や費用を抑え、手取り額を多くするために工夫は他にもあります。
この章では、マンション買取で費用をなるべく安く抑えためにできる不動産会社選びや手続きのコツについて解説します。
知っておくことで得する情報を紹介するのでぜひ参考にしてください。
- サービス内容・引き渡し条件を比較する
- 登記手続きを自分で行う
- 5年以上所有してから売る
サービス内容・引き渡し条件を比較する
不動産会社選びの際は、不動産会社が提供しているサービス内容を確認し、自分にあったサービスを選ぶことで手数料を削減することにができます。
例えば、買取して欲しいマンションに残留物が多く残ってしまっている方は、不用品を処分してくれるサービスを提供してくれる会社を選ぶのがお勧めです。
以下の条件を不動産買取業者の担当者と確認しておきましょう。
確認しておくべき条件
- 不用品(残置物)を処分してもらえるか
- 不用品の処分費用は査定額から既に差し引かれているか・追加でかかるか
- 引き渡し時期を希望に合わせてもらえるか
登記手続きを自分で行う
抵当権の抹消登記は司法書士などの専門家に依頼することが一般的ですが、必ずしも司法書士へ依頼しないと手続きが行えないというわけではなく、自分で行うこともできます。
5年以上所有してから売る
譲渡所得の税率は所有期間によって異なる特殊な税金で、詳細は次の通りです。
所有期間 | 所得税 | 住民税 | 譲渡所得率 |
短期譲渡所得(5年以下) | 30.63% | 9% | 39.63% |
長期譲渡所得(5年超) | 15.315% | 5% | 20.315% |
長期譲渡所得(10年超) | 10.21%~15.315% | 4%~5% | ①課税譲渡所得6,000万円以下の部分14.21% ②課税譲渡所得6,000万円超の部分20.315% |
マンションを5年以内に売ると、所得税が30%もかかりますが、5年以上所有することで15%に半減します。
売却期限が決まっておらず、売却時期に余裕のある方は5年以上所有してから売ると売却費用を大幅に抑えることができます。
マンション買取を依頼する不動産会社選びのポイント
この章では、マンションの買取をしてもらう不動産会社を選ぶためのポイントを解説します。
複数の不動産会社から査定を受ける
マンションを買取で売却する時には、必ず複数の会社から査定を受けましょう。
仲介とは異なり、買取の場合は、業者の査定金額がそのまま売却価格になります。
また、引き渡しができる時期が決まっていたり、室内の家財の処分をしてもらいたいといった事情がある場合には、査定の時点で担当者に伝えておきましょう。
引渡し時期や片づけ費用によって、売却価格が変動する可能性があるからです。
契約する段階になってから認識に齟齬が出ないように、査定の時点で買取の条件について確認しておきましょう。
査定依頼をする不動産会社を見つけるには、不動産一括査定サイトを利用するのが便利でおすすめです。インターネットを使って申し込みをするので、1件1件不動産会社を訪ねる必要がありません。
不動産一括査定サイトの「すまいステップ」では、一度に最大4社の企業に査定の依頼ができます。各社エース級の担当者が査定を担当するため、マンションの価値をしっかり見極めてもらえます。
マンション買取の実績がある会社を選ぶ
不動産会社を選ぶ際に注意して見たいのが、取扱いの実績です。
全国的に知名度のある不動産会社であっても、売りたいマンションが所在する地域の売買に優れているとは限りません。
不動産の買取実績を自社のサイトに掲載している不動産会社も多いため、査定の依頼前に見てみましょう。中には、実際の物件の写真を掲載している会社もあります。
ご自身が売りたいマンションと同じ地域で、築年数や立地の似たマンションの取引事例があれば、良い条件で買取をしてもらえるチャンスがあります。
マンション買取業者のおすすめ15選!失敗しない会社選びのコツとは?
マンション買取を選ぶと仲介よりも手数料や費用を少なくできる
マンションを売却するにあたって、「買取」を選ぶと、「仲介」の時に不動産会社に支払う仲介手数料は無くなります。
マンションの売却にかかる手数料や費用の多くは、仲介手数料が占めるので、買取では支出を抑えてマンションを売ることができます。
ただし、仲介手数料を無くした分だけ高く売るというのは、難しいです。買取での売却価格は、一般的に仲介の相場価格の6割~8割程度になります。
マンションを引き渡したい時期が決まっていたり、早めに現金を手にしたい事情がある場合には、買取での売却がおすすめです。
また、マンションを現状のまま売却できるというメリットも、買取にはあります。
メリットと注意点を踏まえた上で、売却方法を判断しましょう。