マンションを複数人で資金を出し合って購入した場合や、相続によって取得したマンションを共有財産として登記して、ひとつの不動産を複数人で共同所有している状態の不動産を所有しているあなた。
複数人で共同所有する状態を解消するためにマンションの持分を売却したいと考えることはないでしょうか。
共有名義のマンションを売却して共有持分状態を解消するために、この記事では共有名義のマンションを売却する方法と売却時の注意点をご紹介していきます。
共有名義のマンションは自由に売却できる
共有名義とは1つの不動産を複数人が所有してる状態のことです。
実際に不動産を分割することはできないので、「持分」という割合で所有をします。
- 夫婦間で不動産を共有名義にする
- 親子間で不動産を共有名義にする
- きょうだい間で不動産を共有名義にする
- 親族と不動産を共有名義にする
共有名義でできること
共有名義の不動産において、それぞれの共有持ち分の名義人を「共有持分権者」と言います。
共有名義でできることは以下の通りです。
共有名義でできること | |
---|---|
単独でできること | 【保存】 不動産の現状を維持するために、修繕などをすること 【使用】 共有してる不動産に居住すること |
過半数の同意でできること | 【利用】 不動産を賃貸で出したり、賃貸借契約書を解除すること 【改良】 不動産のリフォーム、リノベーションを行うこと |
全員の同意でできること | 【処分】 不動産の売却や抵当権の設定をすること |
単独でできること
共有名義でも単独できることはいくつかあります。
まずは、不動産の現状を維持するために修繕を行うなどの「保存」です。
また、共有している不動産に居住する「使用」もあります。
共有名義に持分割合がありますが、この持分割合はこの割合に応じた使用ではなく、不動産全体の使用が認められています。
過半数の同意でできること
共有名義人の過半数の同意でできることもいくつかあります。
不動産を賃貸で出したり、賃貸借契約書の解除ができる「利用」です。
他には不動産のリフォーム、リノベーションを行える「改良」があります。
全員の同意でできること
売却などを行える「処分」に関しては共有名義人の全員の同意が必要です。
処分では売却や抵当権の設定などを行うことを指します。
マンション売却も「処分」にあたり、全員の同意などは口約束でも成立できますが、トラブル防止のためにも書面に残しておきましょう。
処分を行う際には、共有名義人の代表者が作成して提出します。
共有名義のマンションを売却する5つの方法
実は共有名義のマンションを売却する方法にはいくつかあります。
それぞれの売却方法を知って自分に合った売却方法を選びましょう。
共有名義のマンションを売却する方法は以下の通りです。
- 共有者の同意を得てマンション全体を売却する
- 持分のみを売却する
- 他の共有者に売却する
- 単独名義にしてマンション売却する
- 【相続時】換価分割をする
①共有者全員の同意を得てマンション全体を売却する
共有者全員の同意を得ることさえできれば、共有名義のマンション全体を売却することが出来ます。
共有名義のマンション全体を売却することは、民法にある「共有物の変更行為」に該当するため、所有権を持つ人全員の同意が必要な行為になります。
ただ、売却時に共有者全員の同意が必要なこと以外は、基本的に通常のマンション売却の手続きや流れと同じです。
②名義分のみを売却する
実は、共有名義のマンションの自分の持分だけを単独で売却することが出来ます。ただし、その場合自らの共有持分の権利を売却するという形になります。
単独で持分だけを売却する場合、第三者に売却することになるので、共有名義人と関わらずに売却したい方にはおすすめの方法です。
共有名義分の売却は専門の買取業者に相談しよう
共有持分のマンションを売却は、専門の買取業者に依頼する必要があります。
マンションの共有持分だけを売却する場合、相場より売却価格が大幅に安くなるということは抑えておく必要があります。
この場合、単純に計算すると3000万円で売却することが出来ますが、間違いなくこの値段にはなりません。よくても1000万円、ないしはそれ以下になる恐れもあります。
また買取業者は、共有者の1人からマンションを買い取った後、残りの共有分の買取を進めることも珍しくありません。それが原因で共有者間でトラブルになることもあるため、独自の判断で買取業者に依頼する前に、ほかの共有者に「買取をする」と報告したほうが良いでしょう。
③他の共有者に売却する
他の共有者と話し合い、買い取ってもらうことで自分はマンション売却ができ、買い取った共有者は持分割合を増やすことができます。
さらに、第三者を交えないので余計なトラブルが避けられるというメリットがあります。
買取を依頼した共有者が快く承諾してくれれば第三者に売却するよりもスムーズにトラブルなく売却することが出来ます。
④単独名義にしてマンション売却する
ほかの共有者からの持分割合をすべて購入し、単独名義にしてからマンションを売却する方法です。
単独名義になった場合、誰からも同意を得る必要がないため、自由にマンションを売却や賃貸に出すことができます。
しかし、ほかの共有者から持分割合をすべて購入できる資金が必要なので、購入する場合、資金を計画的に調達しておきましょう。
⑤【相続時】換価分割をする
マンションを売却してから売却代金を分ける方法で、相続が発生した際に利用できる制度です。
相続したマンション売却に関して、相続人が複数いる場合、まず共有名義に登記をしてからの売却が原則となっています。
しかし共有名義になると手続きが面倒になるので、相続時の換価分割が認められています。
換価分割する場合、マンションを売却して現金化してから分割するため、不公平感がなくなり、トラブルの発生が少なくなります。
共有名義のマンションを売却する流れ
共有名義のマンションを売却する場合でも、一般的な不動産売却と流れは変わりません。
- 事前準備
- 不動産会社への査定依頼
- 不動産会社と媒介契約を結ぶ
- 売却活動をする
- 買主と売買契約を結ぶ
- 決済・引き渡し
- 確定申告
マンションの売却にかかる期間は3ヶ月~半年が平均です。
マンション売却の流れは以下の記事で詳しく解説しています。
共有名義のマンション売却は事前準備が肝心
共有名義のマンション売却は、事前準備をしっかりと行うことでスムーズに進めることができます。
マンションを売却する前に決めておくべきことは以下の通りです。
- マンションの共有者を把握する
- 売却にかかる費用の負担割合を決める
マンション売却では、売却により入ってくるお金だけでなく、売却するのにかかる費用も大きいです。
マンションの共有名義者をしっかり確認し、費用の負担割合を決めておくことで、売却中にトラブルが発生することを避けられます。
委任状があれば代理人が売却手続きを行える
マンションの共有名義者が遠方に住んでいたり、ご高齢であったりと、当人での手続きが難しい場合、委任状により売却手続きを代理してもらうことができます。
例えば、3人でマンションの名義を共有している場合、誰か一人を代表者として立てることも、第三者を代理人にすることもできます。
マンション売却の手続きを委任する際には、委任状が必要です。
委任状には決まった書式がありませんが明記すべきことは以下の通りです。
- 委任の旨
- 本人の名前・住所・実印での捺印
- 代理人の名前・住所・実印での捺印ん
- 有効期限
委任状は不動産会社が用意してくれる場合もあるので、代理人を立てたいときには相談してみるとよいでしょう。
共有名義のマンション売却に必要な書類
必要書類も一般的なマンション売却の場合と同様です。
必要書類 | 内容 |
---|---|
身分証明書(必須) | 本人確認のため |
登記済証(権利証)・登記識別情報(必須) | 売却物件の内容確認、登記の際に必要 |
実印・印鑑登録証明書(必須) | 3カ月以内のもの。共有名義の場合、共有者全員分が必要 |
固定資産税・都市計画税納税通知書 | 固定資産税や都市計画税など年税額の確認や固定資産税等の日割清算の計算のため |
口座情報がわかる通帳・キャッシュカード(必須) | 売却代金の残代金が振り込まれる |
マンションの管理規約・長期修繕計画・総会議事録(必須) | 入居後、購入者が守らなければならないルール等を確認するため |
管理に係る重要事項調査報告書(必須) | 正確な管理費と修繕積立金の月額や駐車場な駐輪場などの区画数や空き状況、使用料など買主への説明に必要な情報が記載されている |
ただし、身分証明書、実印・印鑑登録証明書は名義者全員分が必要になりますので注意してください。
共有名義のマンションごと売却する場合の4つのポイント
ここでは、共有名義のマンションごと売却する際の4つのポイントをご紹介していきます。
ポイント①:共有持分状態を理解する
共有持分の意味や共有持分が発生する状況を理解することが重要です。
共有持分とは、複数人で一つの不動産を共同所有している際に、各人が保有している所有権の割合のことを指します。
共有持分が発生する状況は、主に以下の三種類に分かれます。共有持分があるマンションがどのようなパターンかを把握しましょう。
- きょうだい間・親族で資金を出し合いマンションを購入した場合
- 夫婦間で資金を出し合いマンションを購入した場合
- 遺産相続でマンションを相続人同士で共同で相続した場合
ポイント②:共有持分しているマンションの価値を把握する
売却前に共有持分しているマンションがどれくらいの資産価値があるか把握することが重要です。
マンションの価値を把握するためにインターネット上で複数の不動産会社に無料査定依頼ができる「不動産一括査定サイト」を使うことをお勧めします。
不動産一括査定サイトの代表例は「すまいステップ」です。
すまいステップなら、「大手」だけでなく「地域密着」の優良不動産会社まで幅広く査定依頼をすることが出来ます。
ポイント③:共有者それぞれの持分割合を把握する
共有者それぞれがどれくらいの割合で共有持分しているマンションの権利を有しているのか確認することです。
査定によって、共有持分しているマンションの価値を把握したら、各共有者の持分割合を計算することで自分が権利として保有している価値がどのくらいかを把握することができます。
持分の割合は、マンションを取得した方法が購入か相続かによって変わります。
マンションを購入した場合
購入によってマンションを共有持分している場合は、購入時の負担額に応じて持分割合が決まります。
持分割合は負担額の割合と同じく、夫2/3・妻1/3ということになります。
マンションを相続した場合
相続によってマンションを共有持分する場合は、基本的に法定相続分がそのまま持分割合となります。
法定相続分とは、民法によりそれぞれの相続人が得られる遺産の割合によって分けた法定相続人の取り分のことを言います。
法定相続分は以下の表をご確認ください。
相続人 | 各相続人の法定相続分 |
---|---|
配偶者 + 第一順位 | 配偶者 : 1/2 第一順位 : 1/2 |
配偶者 + 第二順位 | 配偶者 : 2/3 第一順位 : 1/3 |
配偶者 + 第三順位 | 配偶者 : 3/4 第一順位 : 1/4 |
以上のように配偶者は必ず相続人となるため、ほかの相続人の順位によって割合が変わってきます。
ここでいう第一順位は子、第二順位は直系尊属、第三順位は兄弟姉妹のことを指します。
また、同順位が複数人いる場合はそれぞれの法定相続分を人数で分割します。
ポイント④:売却後の確定申告は個別で行う
売却後の確定申告は代表者が一括で行うことはできず、共有名義人ひとりひとりが個別で行う必要があります。
マンションを売却した際の売却益は持分比率によって分割されるため、所有者によって納める税金の額が異なる可能性があるためです。
また、確定申告の際には「3000万円特別控除」をそれぞれの個人が受けることが出来ます。
※3000万円特別控除・その他の節税方法に関しては以下の記事をご覧ください。
共有名義のマンション売却でよくあるトラブル事例と対策
共有名義のマンションを売却するということは、複数人が売却に携わるということです。売却のすべての手順で名義人全員の意思確認や書類用意と同意が必須になってきます。
そのため、全員の意思が揃わない・同席できず書類が用意できないといった事例が想定できます。
ここでは、代表的な4つの事例の概要と対策をお伝えします。
事例①:共有者のなかに反対意見がある場合
共有者全員の同意をとることが共有名義のマンションを売却する前提条件でしたが、1人の名義人が反対するという事例はよくあります。
誰が説得しても売却の合意が取れない対策として、共有名義を解消する「共有物分割請求」という手続きをとることをお勧めします。
共有物分割請求とは、共有名義人のうち1人の共有状態を解消しその持分を他の共有名義人に分割する請求のことです。
ただ共有物分割請求の場合でも分割を行うときには全員の同意が必要ですが、売却手続きが煩わしいという理由で売却に反対していたということも想定できるので
どうしても売却手続きを進めたい場合は共有物分割請求を試しに行うことをお勧めします。
事例②:共有者のなかに売却に参加できない人がいる場合
売買契約を結ぶ際に共有者が遠方にいて同席できないという場合はよくあります。
共有者本人が売却手続に立ち会えない対策として、代理を依頼して第三者に売却意思を委任することをお勧めします。
第三者への代理依頼を行う際に必要なものは「委任状」です。マンション売却は厳正な手続きであるため、以下をもとに正確な情報を揃えて効力のある委任状を作成しましょう。
揃えるもの・記載事項 | 目的・備考 |
---|---|
名義人(依頼元)の押印と直筆署名 | 名義人本人からの委任を証明するため |
印鑑証明書 | 3ヶ月以内に発行されたもののみ有効 |
代理人の印鑑証明書・実印・身分証明書 | 代理人としての本人確認をするため |
共有持分しているマンションに関する情報 | 正確な情報を具体的に記載する |
遠方のマンションの売却方法についてはこちらの記事でも解説しています。
事例③:共有名義人が行方不明の場合
親族間でマンションを購入した場合など、共有名義人の身元が分からず行方不明の場合はよくあります。
共有名義人が行方不明である場合の対策として、「不在者財産管理人制度」があります。
この制度は、裁判所に申し立て不動産の財産管理をする人を選任する手続きのことで、以下の必要書類を提出する必要があります。
- 申立書
- 不在者の戸籍謄本(全部事項証明書)
- 不在者の戸籍附票
- 財産管理人候補者の住民票または戸籍附票
- 不在の事実を証する資料
- 不在者の財産に関する資料(不動産登記事項証明書、預貯金及び有価証券の残高がわかる書類〈通帳写し、残高証明書等〉等)
- 申立人の利害関係を証する資料(戸籍謄本〈全部事項証明書〉、賃貸借契約書写し、金銭消費貸借契約書写し等)
選出されたのちは、家庭裁判所に不在者財産管理人が売却を行う権限の許可を取ることで共有名義のマンション売却をすることができます。
事例④:離婚時に共有名義のマンションを売却する場合
離婚時に共有名義のマンションを売却する場合はよくあります。
離婚時の財産分与の対策として、名義変更して単独名義にするという方法があります。
離婚時にはマンションが財産分与の対象となるため夫婦間の持分割合に関係なく原則2分の1にする必要があり、親族間の共有持分の場合に比べて少し厄介です。
そのため、マンションを売却して現金化する必要がありますが離婚後も何度も顔を合わせることを避けるために、どちらかが相手に共有持分を全部譲り家を単独名義にするということが多いです。
名義変更には、住宅ローンを完済してから離婚協議書や財産分与契約書を作成して所有権移転登記の申請を行う必要があります。
離婚時の名義変更の際にかかる税金は基本的に譲渡所得税と変更手数料である登録免許税だけで、一般的な名義変更の際にはかかる贈与税が非課税になります。
また、原則マンションの名義を譲ってもらった側は、マンションの価値の半分の「代償金」を支払う必要がありますので、価格を決めるためにも
事前に査定でマンションの価値を把握しておくことが重要です。まずは一括査定サイトを使って複数の不動産会社に査定依頼をしてみましょう。
マンション売却を進めていきたい方は『マンション売却で失敗しないための注意点』もご覧ください。