通常、土地売却で利益(=譲渡所得)が発生する場合、確定申告が必要になります。
土地売却で発生する譲渡所得には、給与所得とは別に所得税と住民税が課税されるため、確定申告が必須となるのです。
特に相続した土地の場合、相続手続きに加えて、確定申告の手続きも必要になってくるため、通常の売却よりも行う手続きが増えることになります。
本記事では、相続した土地の売却後の確定申告の必要性と、確定申告のタイミングや必要書類、確定申告の流れについて解説します。
土地売却にかかる税金はいくら?計算方法や控除など節税できる方法を解説!
相続した土地を売却したら確定申告は必要?不要?
本章では、相続した土地を売却した後に確定申告が必要となるケースと、不要となるケースについて解説します。
確定申告が必要なケース
冒頭で解説したとおり、譲渡所得が発生する場合、確定申告が必要になります。
譲渡所得は売却代金から費用(譲渡費用と取得費)を差し引いた金額によって決まります。
つまり、売却代金が費用(譲渡費用と取得費)を上回る場合、譲渡所得がプラスとなり、確定申告によって税額を確定させる必要がでてきます。
▼譲渡所得がプラスになるケース
つまり、売却代金から譲渡費用と取得費の合計を差し引いてプラスになる場合は、譲渡所得がプラスとなり確定申告が必須となります。
【確定申告が不要となるケース】
譲渡所得 = 売却代金 – (譲渡費用 + 取得費)>0
また、譲渡所得は「売却代金」から「譲渡費用」と「取得費」を差し引いて計算されます。
なお、「売却代金」「譲渡費用」「取得費」の内訳と詳細については以降で解説していきます。
「売却代金」の求め方
「売却代金」は、『土地の売買金額』に『固定資産税と都市計画税の清算金』を加えて計算します。
売却代金 = 土地の売買金額 + 固定資産税と都市計画税の精算金
通常、土地の売買では固定資産税および都市計画税の精算を行います。
「譲渡費用」の求め方
「譲渡費用」(土地の売却にかかった費用)の具体的な内訳は以下のとおりです。
いずれの場合も領収書は保管して確定申告時に漏れなく計上できるようにしておきましょう。
【譲渡費用の内訳】
- 売却時の仲介手数料
- 売買契約書の印紙代
- 売却のために広告した場合の広告料
- 売却のために測量した測量費
- 売却のために鑑定をした場合の鑑定料
- 売却のために借家人を立退かせるために支払った立ち退き料
- 買主の登記費用を負担した場合はその負担額
- 土地を売るために、その土地の上の建物を取り壊した場合、建物の取得費と取り壊し費用
- すでに売買契約を締結していたが、さらに有利な条件で他に売却するため、その契約を解除した場合の違約金
- 売却のために行った建物の補修費
- 買主との交渉のために要した交通費、通信費等
- 借地権を売るときに地主の承諾をもらうために支払った名義書換料など
土地売却の費用はいくら?手数料や税金など仕訳や計算方法を紹介
ただし、以下は加えることができないため注意してください。
【譲渡費用として認められない費用】
- 抵当権抹消費用
- 遺産分割のために要した支出
- 移転先家屋の購入費、修繕費、移転費用等
- 譲渡資産の維持管理費等
- 引越代
「取得費」の求め方
「取得費」(土地の購入にかかった費用)の具体的な内訳は以下のとおりです。
費用がわかる資料(領収書など)が被相続人の自宅などに保管されていないか探し、できる限り揃えるようにしましょう。
【取得費の内訳】
- 相続の際の不動産の登記費用(売却のために行った名義変更費用)
- 取得時の仲介手数料
- 取得時の売買契約書に貼付けした印紙代
- 取得時の登録免許税
- 取得時に司法書士へ支払った手数料
- 取得時の不動産取得税
- 取得に際して支払った立退料・移転料
- 取得のための測量費
- 取得のための建物の取り壊し費用
- 購入時の整地、埋立て、地盛りの費用、下水道、擁壁の設置費用
相続した土地では、取得費がわかる書類が残っていないケースが多いです。
取得費が不明な場合は、「概算取得費」(売却代金×4%)を代わりに用いて計算します。
概算取得費 = 売却代金 × 4%
ただし、「概算取得費」を利用すると取得費が実際より少額となるため、譲渡所得が発生する可能性が高くなります。
取得費は正確に申告したほうが、譲渡所得を減らせるため、取得費がわかる資料は漏れなく揃えることがおススメです。
確定申告が不要なケース
土地売却で譲渡所得が発生しなければ確定申告は不要となります。
所得税と住民税は譲渡所得に課税されるため、譲渡所得がゼロ以下の場合、確定申告によって税額を確定させる必要がなくなるためです。
▼譲渡所得がゼロ以下になるケース
つまり、売却代金から譲渡費用と取得費の合計を差し引いてゼロ以下になる場合は、譲渡所得がマイナスとなり確定申告は不要となります。
【確定申告が不要となるケース】
譲渡所得 = 売却代金 – (譲渡費用 + 取得費)≦0
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相続した土地売却後に確定申告はいつ行う?
確定申告を行う機関は決まっており、指定の期間内に実施しない場合は罰金などのペナルティが課せられます。
土地売却後の翌年2月~3月に確定申告
譲渡所得が発生する場合、相続した土地を売った翌年2月16日~3月15日に確定申告を行います。
この期間内に確定申告に必要な書類を税務署に持参するか、郵送、もしくはe-Taxでの電子申告で提出しましょう。
期間内に申請できなければペナルティが課せられる
なお、期間内にできなかった場合、以下のペナルティが課せられますので必ず実施してください。
【確定申告を期限内に実施しない場合のペナルティ】
- 税務署が調査に来る
- 銀行の融資が受けられなくなる
- 延滞税が課される
- 無申告加算税が課される
- 悪質な隠蔽には重加算税が課される
- 過少申告加算税が課される
不動産売却後に確定申告が不要なケースとは?必要なケースも合わせて解説!
相続した土地を売却した際の確定申告に必要な書類
相続した土地の場合でも、確定申告に必要な書類は通常の売却の場合と同じです。
本章では、確定申告する人全員が共通で必要な以下の書類について解説します。
確定申告書B
確定申告書の第一表と第二表にあたる書類です。
用紙にはAとBの2種類があり、土地売却の所得の申告には「B」を利用します。
申告者の収入や所得、受ける控除(差し引かれる金額)、支払う税金額を記入して申告します。
確定申告書第三表(分離課税)
土地売却で、譲渡所得がある(売却利益が出た)場合に提出する書類です。
土地の売却による収入や所得、支払う税金額を記入して申告します。
譲渡所得の内訳書
課税のベースとなる「譲渡所得金額」を計算して申告するための付表です。全部で4枚あります。
(譲渡損失がある場合は、提出必須ではありません。)
土地を「売却した時」の売買契約書
「譲渡価額(土地売却による収入額)」の証明のために必要です。
提出する時はコピーを取って添付します。
譲渡費用を証明するための領収書
土地の売却にかかった費用の証明のために必要です。
- 不動産会社に支払った仲介手数料
- 収入印紙代(印紙税)
- 売却に伴って行った測量の費用
- 建物の取り壊し費用
提出する時はコピーを取って添付します。
土地を「購入した時」の売買契約書
売却した土地を「購入した時の代金」を証明するために必要です。
相続した土地の場合は、被相続人が購入した当時の価格を計算に用います。
提出する時はコピーを取って添付します。
取得費を証明するための領収書
土地の取得・購入にかかった費用を証明するために必要です。
- 不動産会社に支払った仲介手数料
- 収入印紙代(印紙税)
- 不動産取得税
- 登録免許税
- 登記申請を依頼した司法書士への報酬
- 固定資産税の精算金
- 取り壊すこと前提で購入した建物の費用や取り壊しの費用
- (相続した土地の場合)相続登記にかかった費用
提出する時はコピーを取って添付します。
本人確認書類
マイナンバーカードがある場合は、マイナンバーカードの表面と裏面のコピーを添付します。
マイナンバーカードがない場合は、個人番号が確認できる書類(通知カードや住民票)のコピーと、身元確認書類(運転免許証やパスポート、健康保険証など)のコピーの2種類を添付して提出します。
源泉徴収票
サラリーマン(給与所得者)の場合、収入や所得、給与から天引きされている税額などの記入に利用します。2019年から、添付は不要になりました。
相続した土地売却後の確定申告の流れ
土地売却後の確定申告は以下の手順に沿って進めていきます。
- 書類を準備する
- 譲渡所得税を計算する
- 書類に記入する
- 税務署に申請する
- 納税する
順番に確認しましょう。
①書類を準備する
確定申告には、基本的に次の6つ書類が必要です。
確定申告に必要な書類は漏れがあると税務署から問い合わせがある場合がありますので、すべて揃えるようにしましょう。
申告書類は最寄りの税務署窓口で受け取ったり、国税庁ホームページから用紙をダウンロードすることで入手できます。
▼確定申告の書類一覧
書類名 | 内容 | 入手場所 |
---|---|---|
| 個人事業者や土地・建物を売った人などが使用する申告書類 | 税務署 |
| 土地・建物の譲渡などの給与所得とは分離して課税される場合に必要な申告書類 | 税務署 |
| 売却した不動産に関する情報(所在地、面積、売却金額等)などを記入する書類 | 税務署 |
| 不動産を購入した際の不動産売買契約書のコピーと不動産を売却した際の不動産売買契約書のコピー | (不動産の売却時に締結したもの) |
| 売却をおこなった不動産の登記事項証明書 | 法務局 |
| 取得費用と譲渡費用の証明として使用 | (不動産の売却時に入手したもの) |
※各必要書類の詳細は、以降の「確定申告時の必要書類」で確認できます。
②譲渡所得税を計算する
譲渡所得税は以下の式で算出することができます。
費用(譲渡費用、取得費)、控除額、税率を順に調べて計算していきましょう。
■費用(譲渡費用、取得費)を求める
以下に該当する譲渡費用と取得費用を合算します。
▼譲渡費用の例
- 不動産売却時の仲介手数料
- 売却が負担した印紙税
- 家屋を明け渡してもらうときに支払う立ち退き料
- 売却予定の土地に建っている建物の取り壊し費や建物の損失額
- 違約金
- 名義所換料
▼取得費の例
費用がわからない場合は「売却価格×5%」で概算した金額を計上することもできます。
- 不動産の購入代金
- 建物の建築費用
- 購入手数料
- 登録免許税、印紙税、不動産取得税
- 建物解体費用
- 測量費用
- 設備費用
- 減価償却費(建物の場合のみ)※
※建物のように時間の経過とともに価値が減少する資産の場合、価値の減少分を差し引く減価償却という計算が必要です。
減価償却に関する詳細は、以下の記事を参考にしてください。
不動産を売却する人のため減価償却に関する基礎知識について徹底解説
■控除を確認する
居住していた不動産を売却する場合、3,000万円特別控除を利用できます。
控除額は1人につき最大3,000万円なので、夫婦の共有名義物件であれば合計6,000万まで控除できます。
■税率を確認する
税率は不動産の所有期間によって異なります。
- 不動産を売却した年の1月1日時点で所有期間が5年以下なら「短期譲渡所得」、所有期間が5年を超えていれば「長期譲渡所得」となり税率が異なります。(表1を参照)
- 売却したのが自宅で、所有期間が10年を超えている場合は、更に税率が軽減されます。3,000万円特別控除と併用可能です。(表2を参照)
▼譲渡所得税の税率(表1)
譲渡所得の長短区分 | 所得税 | 住民税 |
---|---|---|
長期譲渡所得(5年超) | 15.3% | 5% |
短期譲渡所得(5年以下) | 30.6% | 9% |
▼所有期間が10年超の場合の軽減税率(表2)
長期譲渡所得 | 所得税 | 住民税 |
---|---|---|
6,000万円以下の部分 | 10.2% | 4% |
6,000万円を超える部分 | 15.3% | 5% |
③書類の記入を行う
確定申告書の記入は、こちらの国税庁ホームページである「確定申告書作成コーナー」が便利です。
画面案内に従って入力するだけで納税額を自動計算でき、簡単に確定申告書が作成できるためおすすめです。
記入方法がわからなくなったときは、確定申告書作成コーナーの問い合わせ窓口に掲載されてされている電話番号から相談できます。
④税務署へ申請する
提出先は「納税地の税務署」になります。
期日は2月中旬~3月中旬が通例ですが、その年によって日程は変化するので、税務署や国税庁公式サイトで確認するようにしましょう。
以下の方法で提出できます。
- 郵送で、所轄の税務署に送付する
- 所轄の税務署へ直接持参する
- 国税電子申告・納税システムで申告する
⑤納税または還付をうける
納税が必要な場合は、申告時期と同じ2月中旬~3月中旬の期間中に納付します。
期限までに全額納税するのが難しい場合は、半分以上の税金を納付期間内に納税すれば、残りの税金は5月31日まで延納できます。
(延納する場合、利子税がかかります)
以下の方法で納税が行えます。
- 現金で納める
- 口座振替で納める
- 国税電子申告・納税システム(e-Tax)で納付する
- クレジットカードで納める
還付をうける場合は申告書に記入した金融機関の預金口座に振り込まれます。