2020年は、コロナウィルスによる外出自粛などの影響で経済的な打撃を受けた方も少なくなかったと思います。
住宅ローンを扱う住宅金融支援機構のコールセンターに寄せられたコロナウイルス関連の相談の件数は、2月が15件だったのに対し、3月229件、4月1387件、5月2265件と驚異的なペースで増加しており、コロナウイルスによる経済状況の悪化で、住宅ローンを払えない不安を感じている方が急増していることを物語っています。
また、「住み替えローン」などを利用したことで返済額がかさんでしまった方も、この度のパンデミックで返済計画が狂ってしまってお困りかもしれません。
経済状況の悪化により住宅ローンを滞納した場合、一般的には約半年ほどで家の競売が始まります。
競売が始まってしまうと、家が相場の7割程度の安い価格で売りに出され、家を失うだけでなく多額の借金まで手元に残ってしまうケースも少なくありません。
住宅ローンを払えなくなった場合には、金融機関からの連絡を放置して家を競売にかけられるのだけは絶対に避けましょう。
本記事では、住宅ローンを滞納した時に起こる出来事を時系列に沿って解説しているほか、住宅ローンを払えない人がとるべき最善策について紹介しています。

なお、家の売却を検討している方は、以下のボタンから不動産一括査定を依頼することができます。
住宅ローンを払えないとどうなるのか
では、住宅ローンが払えなくなってしまった時には何が起こるのでしょうか?
漠然と「家が差し押さえられて売られる」と考えておられる方も多いと思いますが、売られるにしても、滞納し始めてから何ヶ月後なのかは把握していないのではないでしょうか。
以下で、住宅ローンを払えない場合に起こる出来事を時系列に沿って解説していきます。
住宅ローンを払えない時に起こること
【住宅ローン滞納から家が差し押さえられるまで】
住宅ローンを払えない時には、上記のような流れで家を失うことになります。
それぞれのステップを詳しく見ていきましょう。
①督促状が届く(滞納1ヶ月~3ヶ月)
住宅ローンを滞納すると、債権者である銀行・金融機関から電話や通知書類が届きはじめます。
また、滞納2ヶ月を過ぎると、来店依頼状や「このままこのまま支払いがない場合には残高および遅延損害金を一括で支払ってもらう」といった内容の督促状が届くようになります。
この時点ではまだ競売や差し押さえの話は出ません。
②期限の利益の喪失(滞納3ヶ月~6ヶ月)
「期限の利益の喪失」の通知が届くようになります。
「期限の利益の喪失」とはつまり、分割して払う権利が失い、住宅ローンの残高の一括支払いを請求されることを指します。
また、金融機関にもよりますが、概ね3ヶ月以上住宅ローンを滞納すると、個人信用情報機関に金融事故情報が記録されます。
③競売開始決定(滞納6ヶ月~8ヶ月)
裁判所から競売開始決定通知が届きます。
競売開始決定通知とは、競売の手続きを開始したことと不動産を担保として差し押さえたことを知らせる書類です。
また、競売の手続きが開始した合図として「現況調査」というものが実施されます。
裁判所の執行官と不動産鑑定士が自宅に訪れ、強制的に写真撮影・間取りの確認・周辺環境調査などの調査が行われます。
この時点で競売にかけられることは近隣に知れ渡るので、それを回避したい場合には、現況調査よりも前に「任意売却」への切り替えを金融機関に打診して下さい。
競売よりも遥かに債務者にメリットのある任意売却については、「任意売却の特徴」の章で詳しく解説しています。
④競売入札期間の通知(滞納8ヶ月~10ヶ月)
この期間になると、期間入札決定通知が届きます。
これは、「この期間までに入札しますよ」という内容の告知になり、競売にかけられる不動産の購入希望者が、裁判所に購入金額を提示して申し込むことができる期間に入ります。
この時点が先述の「任意売却」へ切り替える最後のタイミングになりますが、この時点での切り替えだと、場合によっては金融機関の承認をもらえない可能性もあります。
そうなると、あとは家が競売にかけられて売れるのをただ待つしかありません。
⑤立ち退き(滞納10ヶ月~12ヶ月)
競売による不動産の落札後、所有権が落札者に移り、元の不動産の所有者は何の権利も持たないということになります。
居住を続けていた場合は、ただの占有者、つまり不法滞在者になります。
以後、落札者との間で立ち退き交渉が行われ、立ち退きをする必要がでてきます。
交渉の際、落札者の好意によって引っ越し代や新居の契約金などを出してもらうこともありますが、誠意を欠き立ち退きを長引かせると「強制執行」がなされます。
強制執行では、執行官によって強引に荷物が運び出され追い出されてしまうため、できるだけ避けるようにしましょう。
住宅ローンを払えないときは早めに売却の検討をはじめる
今後住宅ローンを支払える見込みが立たないとき、放置していると「個人信用情報に傷がつく」「家を立ち退きさせられる」「相場よりも安い価格で家を売られる」など、良いことが一つもありません。
「もう払えない!」と思ったら、とにかくはやめに売却に向けて動き始めることです。
不動産を売却する場合、まずは不動産に査定を依頼して査定額を聞く必要がありますが、忙しくて自分で不動産会社に問い合わせるが難しいという方もおられるかもしれません。
そのような方は、すまいステップなどの不動産一括査定サイトを利用すれば簡単に複数社の査定額を知ることができます。
住宅ローンを払えない時の対処法
住宅ローンを払えない場合の対処法は状況に応じて様々ありますが、まずは金融機関へ相談をしてみましょう。
ここでは月々の返済額の見直しや、一定期間の元金の据置などが提案の材料となります。
他に住宅ローンの借り換えや、保険適用を利用することが考えられますが、いずれの方法でも解決しない場合は売却を考えなければいけません。
住宅ローンが残っている場合は、任意売却という手段を使う必要があります。
対処法を以下にまとめあげ詳しく解説していますのでご確認ください。
【まだ住宅ローンを滞納していない場合】
【既に住宅ローンを滞納している場合】
【住宅ローンの滞納に関わらず高齢者である場合】
【コロナ感染症の影響で収入が減少した場合(2022年1月更新)】
長期間住宅ローンの返済が滞ると、その不動産は最終的に競売にかけられます。
競売の売却価格は市場価格の60~70%程度の低い価格で、個人信用情報に傷がつき、さらには競売に掛けられていることが近隣住民にも明らかになってしまいます。
競売は融資を受ける人にとって最悪の事態だと捉え、上記の対策を確認していきましょう。
以下で詳しく解説いたします。
金融機関への相談
「給料が大幅に減った」「共働きができなくなった」
このような理由で経済状況が苦しく、住宅ローンをこれまで通り払っていける見込みが立たない場合には、返済が遅れる前に住宅ローンを組んでいる金融機関にその旨を伝えましょう。
その上で、返済計画の見直しを依頼します。
金融機関としても、滞納されて競売にかけるよりは長期にわたって返済をしてもらったほうが利益があるので、相談に応じてくれることが多いです。
具体的には以下のような内容を相談しましょう。
- 一定期間、月々の返済額を減らす
- ボーナス払いの中止または減額
- 返済期間の延長
- 一定期間元金の返済を据え置いてもらう
なお、元金の返済を据え置いてもらった場合にも利息だけは支払わなければならないので、その点に留意しましょう。
その結果、多くの金融機関が「1年間の元金据置き」などの柔軟な条件変更に応じました。各金融機関ごとに相談窓口も設置されているので、まずは金融機関への相談を優先しましょう。
参考:金融庁「業界団体との意見交換会 要請事項」
住宅ローンの借り換え
現在返済中の住宅ローンの金利が高い人は思い切って他の金融機関に借り換えを行いましょう。
より金利の低いローンに借り換えをすることによって、返済額を減らすことができます。
また、一部の金融機関や現在の借り入れ状況などによっては、借り換えによって返済期間を引き延ばすことができます。返済期間を延ばすことで、月々の返済負担を減らす効果が得られるでしょう。
ただし、返済期間を延長することで元金の返済を先送りすることとなり、総支払額は増える可能性がある点は注意が必要です。
家計が立ち直った後は、繰り上げ返済をして返済期間を再び短縮するなどのリカバリーが求められます。
一般的に、以下のようなケースでは住宅ローンの借り換えによるメリットが多いと言われています。
- 借り換え前後でローンの金利が1%以上低くなっている
- 残り返済期間が10年以上残っている
- ローンの残高が1000万円以上ある
それぞれ、どのような人があてはまるのか考えてみましょう。
①は、金利の高い金融機関から金利の低い金融機関に変えた場合に条件を満たすことが出来ます。
たとえば、10年以上前に借りた人や10年固定金利など当初の固定期間が満了し金利が上がった人などが該当します。
また、借り入れした当時、収入状況が不安定な職業に就いていたり、他に借り入れがあって返済能力に不安があると判断され、金利の高い金融機関で住宅ローンを組んだ人などです。
残高が多く、残存期間が長い場合は借り換え前後の金利差が1%未満でも借り換えメリットが出るケースもあります。
②は、残り返済期間が10年以上残っていて、今後の返済期間が長期にわたる方です。
逆に、残りの返済期間が10年をきっているような場合、金利が低くなったとしても借り換えにかかる諸費用を考慮するとメリットが出ないケースもあります。
実際にはシミュレーションをしてみないと判断がつきませんが、住宅ローンの借り換えは、残りの返済期間が長ければ長い人ほどメリットが出やすくなります。
③はローンの残高が1000万円以上の、残債を多く抱えている方です。
残高が多ければ多いほど利息の支払いがかさむため、借り換えによって金利を下げることができれば支払総額も大きく減らすことができます。
借り入れした金額が多く、一度も繰り上げ返済をしていないという人があてはまるでしょう。
これらの条件に当てはまる場合には、一度住宅ローンの借り換えを視野に入れても良いかもしれません。
保険適用ができないか確認
病気で収入が途絶え、住宅ローンの返済を続けていけないといった場合には、保険が適用される可能性があります。
住宅ローンを組む際、多くの金融機関では「団体信用生命保険」という保険への加入を義務付けています。
「団体信用生命保険」はローン名義人が死亡した場合に、保険金でその時点のローン残高が弁済され、以降の返済がなくなるものですが、死亡以外にも所定の高度障害あるいは身体障害に認定された場合も保険の適用対象です。
また、団体信用生命保険と併せて特定疾病保障のオプションをつけて契約した人や、「住宅ローン返済支援保険」という保険に加入した人は、保険金の支払い対象となっている可能性も考えられます。
まずは、現在の保険の加入状況とその適用範囲を確認しましょう。
不動産会社の仲介による家の売却
将来的に住宅ローンを支払っていける見込みがなく、現在の家に住み続けたい積極的な理由がない場合には、思い切って早い段階で売却してしまうことも考えましょう。
特に、離婚に伴う住宅ローンの返済不能の場合には、売ってしまったほうが夫婦の共有の財産の精算をできて後腐れないと考える方もいます。
まずは今の家がいくらくらいで売れるのかを知る必要があるので、不動産会社に不動産の無料査定をしてもらいましょう。
この時注意すべきことは、「同じ家でも不動産会社によって査定額は異なる」ということです。
不動産会社が変わると査定額が数百万単位で変わることも珍しくないので、不動産売却を検討する際には必ず複数の不動産会社で査定をしてもらいましょう。
自分で不動産会社を何社も見つけるのが手間だと感じる場合には、不動産の一括査定サービスの利用も検討しましょう。
すまいステップなら、「累計100件以上の不動産売買仲介の実績あり」「市場相場よりも高値での不動産売却の実績あり」などの条件を満たした優良不動産会社のみを厳選してご紹介することができます。
家を売ることを検討している方はこちらの記事も参考になります。
任意売却
すでに住宅ローンを滞納してしまっている場合には、通常の売却手段を利用することができないため、「任意売却」という方法をとる必要があります。
(ここまでの対処法で解決できなかった場合にも有効です。)
通常、ローンが払いきれない状態で不動産を売却することはできないため、ローンが残っている場合は売却金額で住宅ローンを払いきる必要があります。
任意売却は、売却金額をもってしてもローンを払いきれない場合でも売却できるる手段で、住宅ローンを滞納してる方が対象となります。
なお、金融機関が任意売却を許可する必要があります。
競売よりも家を高く売れる上、引っ越しなどの費用も受け取れる可能性があるので、競売になりそうな場合は早めに任意売却を金融機関に打診すべきです。
任意売却の方法、メリットやデメリットについては下の記事をご覧ください。
リバースモーゲージ
リバースモーゲージとは、自宅に住み続けながら、その自宅を担保にお金を借りることができるサービスです。
高齢者向けの商品で、60~80歳を条件とする場合が多く見受けられます。
通常の住宅ローンは毎月元金と金利分を返済しますが、リバースもゲージでは毎月の金利分のみの返済となるため支出も大きく抑えられます。
残債の返済は、借入人が死亡したのち相続人が行います。
一般的には、担保とした不動産を売却することで支払いますが、相続人が現金一括で返済する方法も用意されています。
リバースモーゲージは社会福祉協議会や金融機関が提供していて、一括、あるいは月々に一定の金額を受け取ることができます。
ただし、リバースモーゲージで借り入れられる金額は、担保とする不動産の評価額のおよそ5~7割程度になります。
自宅に住み続けたい場合は有効な手段でありますが、不動産会社を介した通常の不動産売却の方が手元に残る金額は大きいでしょう。
新型コロナ関連の給付金
新型コロナ感染症拡大予防のため、給与の減少や離職を余技なくされた場合は各種給付金を受け取ることができます。
いずれの給付金も期限が差し迫っているため、条件に当てはまる方は迅速に申請を行っていきましょう。
休業支援金・給付金(上限日額11,000円)
進学コロナウイルス蔓延防止ため休業を余技なくされた場合、休業前の賃金の80%(上限日額11,000円)×休業期間分が支給されます。
パート・アルバイト、雇用保険被保険者でない方も対象です。
- 令和3年10月1日から令和4年3月末までに事業者が休業させた中小企業の労働者
参照:厚生労働省『新型コロナウイルス感染症対応休業支援金・給付金』
申請期限は休業した期間によりますが、令和3年9月30日のものと令和3年12月31日までのものに分かれます。
自分がどの期間に属するか、しっかり確認しておきましょう。
緊急小口資金貸付・総合支援資金
それぞれ社会福祉協議会に申請し、貸付を受けられる特例です。
返済開始までに1年の猶予があり、その後2年間以内に返済を行います。
- 緊急小口資金 最大20万円
- 総合支援資金 最大20万円×3ヶ月分(60万円)
申請期限は延長され、令和4年3月末までとなっています。
- 新型コロナウイルス感染症の影響を受けて、休業等による収入の減少があり、緊急かつ一時的な生計維持のための貸付を必要とする世帯
住宅ローンを払えなくなった人の体験談
ここまでで、住宅ローンを払えなくなってしまった場合に取るべき手段を確認することができました。
以下では、実際に住宅ローンを払えなくなってしまった方の体験談を見ていきましょう。
以下の体験談は『どうなる?住宅ローン!離婚とお金』高橋愛子 プレジデント社より引用させていただきました。
離婚後14年目に元夫が自己破産。
突然元妻にローンの一括支払い請求が…
Q子さんは20代で結婚。30歳の時に名古屋市内に2980万円でマンションを購入しました。夫と共有名義で、主債務者は夫。後で知ることになったのですが、Q子さんは連帯保証人でした。
Q子さんも働いていましたが、まだ若くて収入も少なかったため、持ち分は夫9:妻1。しかし3年後に性格の不一致が原因で離婚することになりました。それでも、最後は握手して別れるような、いたって円満な離婚です。協議もトラブルなく進み、財産分与で、Q子さんのマンションの持ち分は、夫のものとなりました。
もともとQ子さんはほとんど出資しておらず、持ち分も少なかったので、もめることもありませんでした。その後Q子さんは上京し、再婚もして幸せに暮らしていました。ところが、それから14年がたったある日、元夫の代理弁護士から、「元夫が自己破産した」という通知が届いたのです。
まsない寝耳に水の話に、Q子さんは動転です。離婚したのは14年も前のことですから、それ以来元夫とは連絡も取っておらず、Q子さんは彼が今どうしているかなど、まったく知りませんでした。弁護士によると、連帯保証人であるQ子さんに、残債を一括返済する義務があるということでした。
離婚の際にマンションは夫の名義にしたはずですが、それも元夫まかせで、当時は自分が連帯保証人であったという意識もありませんでした。
離婚をして、不動産の所有者名義を変更したとしても、連帯保証人は解除されることはありません。
Q子さん、もちろん元夫もそれを知らず、結果的にQ子さんが1,400万円の負債を抱え、支払うことができなくなりました。
競売を回避するため任意売却という方法をとったうえでも残金があり、結果的に元夫ができる範囲で返済していくことになったようです。
払えなくなる前に不動産会社に相談してみよう
住宅ローンの滞納は、非常に大変な出来事です。
信用情報に傷がついてしまううえ、家を追い出されて手元に債務のみが残ってしまうことも十分考えられます。
そのような状況を避けるため重要なのは、住宅ローンを払えなくなる見込みができた段階ではやめに対処をはじめることです。
その際の相談相手として、不動産会社も考えられます。
不動産会社は不動産取引のエキスパートのため、住宅ローンの返済に不安がある場合にどうすればよいのかについても詳しい知識をもっています。
まずは今の家がいくらで売れそうなのかを一括査定で調べた上で、売却やそのほかの住宅ローンの処理方法について相談してみるのもよいかもしれません。



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記事のおさらい
住宅ローンを滞納して何ヶ月で金融事故記録が残る?
家を競売にかけられるのは住宅ローンを滞納して何ヶ月目?
住宅ローンを滞納して6~8ヶ月目に裁判所から競売決定通知が届きます。詳しくは住宅ローンを払えないとどうなるのかをご覧ください。
住宅ローンを払えなくなったときはどうすればいい?
住宅ローンを払えなくなった時は、主に以下のような対応が考えられます。詳しくは住宅ローンを払えない時の対処法をご覧下さい。
- 住宅ローンの借り換え
- 金融機関への相談
- 任意売却