親戚同士や友人など、知り合い間で不動産の売買をする際、業者を挟まずに個人的に売買がしたいと考える人は少なくないと思います。
不動産を個人で売買することは可能ですが、正しい手続きや決まりを踏まないと、後々に違法行為が発覚しトラブルに発展する恐れがあるため危険です。
この記事では不動産の個人売買で注意すべきこととよくあるトラブル事例について紹介していきます。
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不動産業者の仲介などでは、契約書の作成や重要事項説明書の作成・交付義務など、様々な厳しい規則の元で行われますが、個人での取引の場合そうした規則がない為、取引で起こる問題などは全て自己責任になります。
そのため、法律で守られていない分、売主と買主が必要事項をきちんと把握して取引を進めることが重要です。
不動産個人売買の注意点は以下の通りです。
- 売買の当事者は個人売買に適した人であること
- 価格の妥当性をしっかり検討する必要がある
- 適正な書類を作成する必要がある
- 事業用不動産の売買は消費税を計算する必要がある
- マイホームであれば売買契約書に、事業用不動産には領収証に、印紙が必要
- 個人売買契約の「瑕疵」には要注意
- 司法書士に会計を依頼する必要がある
- 買主がローンを組めない可能性がある
知識不足があると、後に大きなトラブルを引き起こす可能性があるため、それぞれの項目をしっかりと確認しておきましょう。
注意点①売買の当事者は個人売買に適した人であること
個人で不動産売買をする場合、売買の当事者は個人売買に適した人である必要があります。
個人売買に適した個人とは以下の二点が挙げられます。
- 売主に対して敵対的に賠償請求や責任追及をしてくる可能性が低い人
- 買主が物件について熟知していること
これらの2点は、不動産を売買した後、売主が不当に責任を追及されないためには重要な事項です。
なぜなら、個人で売買する場合は取引に法的な保護がないため、売却後に不動産に不都合が発見された際に、不当な損害賠償や契約解除で多額の請求を受けることを避けるためです。
買主が取引する不動産についてを熟知している場合や、売主と親しい間柄であれば、敵対的に責任を追及してくる可能性が低くなります。
具体的にいうと、以下ような場合は個人売買でも構わないと考えられています。
- 戸建て賃貸や区分賃貸マンションを、借主に直接売る場合
- 隣地所有者に不動産を売る場合
- 親族間など親しい間柄で売買を行う場合
- 関連会社もしくは代表者と法人で売買を行う場合
反対に、第三者と不動産を個人間で売買するのはお勧めしません。
仲介手数料を抑えたいからといって、インターネット上で見知らぬ買主を見つけ、不動産を売買するのは危険なのでやめましょう。
注意点②価格の妥当性をしっかり検討する必要がある
個人売買では売主が売り出し価格を自由に決定する事ができます。
そのため、売主と買主間の都合に合わせて自由に価格を設定したい、と考えている人も多いのではないでしょうか。
しかし、個人間での取引でも、売却相場に対して著しく低価格で売却すると、贈与とみなされることがあります。
贈与とみなされた場合、買主は贈与税を支払う必要があります。
そのため、不動産を個人で売買する場合でも、価格を市場と比較して相場通りの価格で売買するのが好ましいです。
不動産の売却価格を自分で調べる方法は以下の記事で詳しく解説しているので参考にしてください。
注意点③売買契約書を作成する必要がある
不動産の個人売買において、非常に多いトラブルが「契約」についてのトラブルです。
個人売買では、業者のようなプロが介入して契約を行うわけではなく、素人同士で行う為確認不足や認識の違いが頻繁に起きます。
認識の違いによる大きなトラブルを避けるためにも、契約内容の確認は特に入念に行う必要があります。
売買契約書にも種類があり、目的に合わせて作成する必要があります。
契約の対象 | 作成する契約書 |
---|---|
土地と不動産(マンションを含む) | 不動産売買契約書 |
土地のみ | 不動産売買契約書 土地売買契約書 |
建物のみ | 不動産売買契約書 建物売買契約書 |
不動産の種類によって必要な契約書が異なりますので注意してください。
またどれだけ小さな疑問でも、必ずお互いに確認を取り認識を合わせる作業を徹底しましょう。
また、口頭で確認した内容は後々に揉めた時に証明が出来ず、有効な約束としては認められません。
取り決めた内容を口約束で終わらすのは絶対にやめましょう。
確認事項は契約書にしっかりと明記して文字に起こしたうえで互いの同意としましょう。
契約書に記載すべき確認事項については、こちらの記事に詳しく記載してあるので、ぜひ確認してみてください!
不動産の個人売買契約書の作り方を解説!困った時の対処法も学ぼう!
注意点④事業用不動産の売買は消費税を計算する必要がある
基本的に、住居用の不動産を売却する場合、売主は消費税を払う必要はありません。
一方で、戸建てでもマンションでも、賃貸などで貸し出すために購入する場合、事業用に不動産を売却する場合は建物に消費税が発生します。
このような場合、全前年における課税売上高が1,000万円を超える課税対象者は、消費税を納税する必要があります。
注意点⑤マイホームは売買契約書に、事業用不動産は領収証に、印紙が必要
個人で売買する場合、居住用の不動産には売買契約書に、事業用の不動産は領収書に、印紙の貼付が必要です。
売買契約書とは、売り主と買主の間で取り交わされる文書のことで、売却の価格や支払時期、支払い方法など重要事項をまとめたものです。
不動産の売買契約書は課税文書になりますので印紙を貼らなければなりません。
マイホームとして売買する場合は、売買契約書に印紙を貼るのを忘れないようにしましょう。
不動産を事業用の不動産として売買する場合は、売買契約書ではなく領収書に印紙を貼ることになっているので注意してください。
印紙税の料金は以下の通りです
▼居住用の不動産を売買する場合の印紙税
記載金額 | 印紙税額 |
---|---|
50万円以下 | 200円 |
100万円以下 | 500円 |
500万円以下 | 1,000円 |
1,000万円以下 | 5,000円 |
5,000万円以下 | 10,000円 |
一億円以下 | 30,000円 |
▼事業用不動産を売買する場合の印紙税
記載金額 | 印紙税額 |
---|---|
500万円以下 | 1,000円 |
1,000万円以下 | 2,000円 |
2,000万円以下 | 4,000円 |
3,000万円以下 | 6,000円 |
5,000万円以下 | 10,000円 |
1億円以下 | 20,000円 |
収入印紙は郵便局や法務局、金券ショップなどで購入することができます。
注意点⑥個人売買契約の「瑕疵」は要注意
不動産取引には契約不適合責任というものがあります。
不動産売買における「瑕疵(かし)」とは、「きず」は「欠損」、「不具合」を指します。
「瑕疵(かし)」とは、具体的に以下のようなものがあります。
- 設備の不具合
- 構造部分の腐食
- シロアリの害
- 雨漏りなど
これらの問題に対して、売主が負う責任が契約不適合責任です。
この瑕疵担保責任の内容をしっかりと取り決めておらず、引き渡し後にトラブルに発展するというケースが非常に多いです。
例えば、家の柱にシロアリが沸いていた事が取引成立の3年後に発覚したとします。
瑕疵担保責任の保証期間や詳細を取り決めていた場合はその規則にのっとって契約の破棄、または損害賠償の支払い、などスムーズに進める事が出来ます。
しかし、この内容についての取りきめを行っていない場合、売主はもう3年も経っているのだから無効だ、買主は売る側の責任なのだから賠償金を支払え、など双方の主張が生まれトラブルになってしまう場合が多いのです。
契約不適合責任において、買主が請求できる権利には以下のものがあります。
賠償契約責任 | 障害に対して損害賠償を請求できる |
契約解除 | 契約の不適合が見つかった場合、契約を解除することができる |
追完請求 | 「瑕疵」に対して修理や物品の交換を請求できる |
代金減額請求 | 欠陥が見つかった場合に代金の減額を求めることができる |
こうしたトラブルを起こさないためには、契約段階で、瑕疵担保責任が課せられる期間や、ペナルティの内容などをしっかりと契約書に記載しておく事が大切です。
瑕疵担保責任は個人売買取引の中でも特に問題になる事が多いパートなので、とにかく徹底して確認を行い、それを契約書を通して認識するようにしましょう。
注意点⑦司法書士に会計を依頼する必要がある
不動産を売買することで移転した不動産の所有権は、司法書士に依頼して登記等の手続きを行う必要があります。
また、売却する物件の住宅ローンが残っている場合は、抵当権の抹消も司法書士に依頼するほうがよいでしょう。
特に抵当権の抹消は、個人が銀行と直接行うこともできますが、不慣れな個人と当事者のみでのやり取りすることを銀行は好みません。
手続きを迅速に行うためには司法書士に依頼するのが良いでしょう。
司法書士に依頼する際には、登記費用と司法書士への成功報酬を払う必要があります。
登記にかかる費用は、司法書士への報酬と合わせて15,000円~20,000円が相場です。
司法書士の役割について、以下の記事で詳しく解説しているので参考にしてください。
注意点⑧買主がローンを組めない可能性がある
不動産を個人で売買する場合、買主は住宅ローンが組めない可能性があります。
なぜなら、住宅ローンの審査には、不動産会社が発行する重要事項説明書が必要になるケースが多いからです。
重要事項説明書には、建物が法に準拠して建てられたものか、再建築可能な物件であるかなど、不動産が融資に適する建物であるかを判断する情報が記載されています。
個人間での売買では重要事項説明書がないため、担保の判断材料がないと銀行に判断され、住宅ローンを組めない可能性があるのです。
不動産個人売買でよくあるトラブル
注意点を把握しないままに個人売買をしてしまうと様々なトラブルを引き起こす可能性があります。
ここからは不動産個人売買でよくありトラブル事例を紹介します。
売却価格に関するトラブル
不動産を個人で売買するときは、売却価格を自由に設定することができます。
そのため、「少しでも高く売りたい」と思う売主と「少しでも安く買いたい」と思う買主の意見に折り合いが付かず、トラブルに発展する可能性があります。
どちらか一方の意見のみで通るような価格設定はうまくいかなくなることが多いでしょう。
また、「個人売買だから安く売ってあげよう」と、本来の価値より著しく低い価格で売却をすると、贈与とみなされ贈与税を支払わなければならなくなります。
個人売買といえど適正な価格帯で売却することが大切です。
契約内容の不備によるトラブル
契約内容の理解の不一致がトラブルに発展する可能性があります。
不動産を個人で売買するときも、不動産仲介を利用するときのように売買契約書を記載します。
仲介の場合は、不動産会社を通して契約内容に解釈の齟齬がないかを確認する機会があります。
個人の場合はそのような機会がないため、支払い方法や時期はどのようにするか、欠損があった時にどうするのかなどを決め忘れてしまったり、お互いの理解に差があったりということが起こり得ます。
書類の不備によるトラブル
書類の不備も個人売買で起こりやすいトラブルの一つです。
特に気を付けてほしいのが、契約書や領収書に貼る印紙です。
契約書に印紙を貼り忘れた場合は過怠税が課せられるため注意が必要です。
また、もしも記載事項に漏れがある場合、再度売主と買主が後日修正する必要があるため、余計に手間がかかってしまいます。
売却過程で揉めてしまい関係性が悪くなる
売却の過程でトラブルが起きてしまうと、その後の関係性が悪くなってしまいます。
不動産の売買は大きなお金が動くため、大きなトラブルがあるとその後の関係性の修正も難しくなってしまったり、もっと大きな問題に発展する可能性があります。
困ったときは不動産会社にサポートを求めよう
個人売買は、多くの事を全て自分で行わなければならない取引です。
出来ると思っても、やってみると想像以上に大変だという事もあるでしょう。
そうなった場合、無理やり進めてトラブルに発展するよりは、お金を支払い適切なサポートが受けられる不動産会社に頼む事を強くお勧めします。
また、書類の作成のみ手伝ってほしい、関連調査のみをお願いしたい、など、一部的なサポートを依頼したい場合は「司法書士」や「行政書士」といった専門家も活用できます。
無理をして取引を行うのではなく、サポートが必要だと感じた際は潔く助けを求める方が、効率的且つトラブルになりづらいです。
個人売買自体は法的に全く問題ありませんが、さまざまな手続きを全て自分で行なわなければならない手間と、後々まで起こる可能性のあるトラブルのことを考えると、最初から不動産会社に任せておいたほうがよかったということも少なくないでしょう。とはいえ、売買価格の3%+6万円+消費税という高額な仲介手数料を不動産会社に支払うのが惜しいというのもよく分かります。
特に知人や友人に不動産を売却するときは、個人売買で済ませてしまいたいと思う方も多いはずです。
知人や友人に不動産を売却するといったケースでは、不動産会社も新しく買主を探す必要がなく、売買を仲介するだけなので5万円や10万円など、低額の手数料で引き受けてくれることも少なくありません。
気になる方は、いくつかの不動産会社に相談を持ち掛けてみるとよいでしょう。