家の売却を検討している人の中には、「住民票を移す手順が知りたい」「異動させるタイミングが分からない」「住民票は売却のどんな場面で必要なのか」など、疑問をかかえている場合があるかもしれません。
住民票は、住所や生年月日などの個人情報を公的にまとめた台帳で、現在の住所とは異なる場所に引越した場合には、住民票の変更(異動)が必須です。また、家を売却する場面でも住民票が必要な場合があります。
ここでは、家の売却で必要な住民票異動の基礎知識から、基本的な住民票異動の手順や流れ、また売却をスムーズに進める住民票の取り扱いや、書類手続きで失敗しないポイントまで、わかりやすく紹介します。
家売却時のおける住民票異動のタイミングは引越しから14日以内
住民票を異動するタイミングは、引越しから14日以内です。
例えば、3月1日に新しい新居に移った場合、住民票の異動は3月14日までに行います。
住民票の変更は、住民基本台帳法の22条で原則14日以内と定められており、この手続きを怠ると最大5万円の罰金が科せられるため注意が必要です。
特に、近隣ではなく遠方に移り住む場合は、引越し後に旧住所の役所に出向いて転出届を出す必要がないよう、引越し前に手続きを終えましょう。
また、引越し先に提出する転入届は、転出届の後にしか手続きができません。
そのため、転出届は余裕をもって行い、転入届が14日以内に収まるように手続きするのがポイントです。
家の売却で必要になる住民票異動の流れ
ここでは、異なる市町村に引越した場合に行う「転出届」と、引越し先に届け出る「転入届」に加え、同じ市町村内に引越した場合に行う「転居届」に必要な書類と、基本的な住民票異動の流れを紹介します。
家の売却で転出届を提出する場合
転出届の場合、手続きには運転免許証やマイナンバーカードなどの本人確認書類をはじめ、旧住所の役場が発行した保険証・医療証、加えて印鑑などが必要です。
必要書類を用意した後、引越し日から14日以内に、旧住所の役所・役場へ転出届を提出します。その際、転入届に必要な転出証明書が発行されるので、紛失しないよう大切に保管しておきましょう。
なお、マイナンバーカードを持っている場合は、証明書発行の代わりにカードが証明書となります。
また、原則として転出届は、引越しをする本人やその家族が行いますが、役所が開いている平日の日中に都合がつかない場合は、本人から委任された代理人による手続きが可能です。
代理人による転出届に必要な委任状の作成は、各自治体のホームページを参考に作成しましょう。
または、役場のホームページから郵送届出用の転出届を印刷して、必要事項を記入し投函する方法もあります。郵送の場合、手続きが完了するまでに5日程度かかるため、なるべく早めに対応するのがポイントです。
【転出届の手続きの流れ】
- 必要書類を用意
- 旧住所の役所に転出届を提出(引越しから14日以内)
- 転出証明書を受け取る
- 転出届の手続き完了
家の売却で転居届を提出する場合
転居届にも、転出届と同様に本人確認書類や、保険証・医療証、印鑑などが必要です。
必要書類を用意したら、新住所の役所・役場に転居届を提出します。転出届と同じく14日以内に手続きを済ませましょう。なお転居届の場合、引越し先が同じ市区町村内のため、転出届や転入届の必要はありません。
また、本人の都合で役所に足を運べない場合は、転出届同様、代理人による手続きが可能です。ただし、郵送による転居届は受けつけていません。
【転居届の手続きの流れ】
- 必要書類を用意
- 新住所の役所に転居届を提出
- 転居届の手続き完了
家の売却で転入届を提出する場合
転入届には、本人確認書類や印鑑のほかに、転出届の手続きの際に発行された転出証明書が必要です。役所に赴く際は忘れず持参しましょう。
必要書類を持参して、引越し日から2週間の間に、引越し先の市区町村にある役所に転入届を提出すれば手続きは完了です。
なお転入届は、旧住所の役所で転出届を出した後でなければ手続きができないため、転出届は早めに済ませる必要があります。
また転入届の場合、転居届と同様に代理人による手続きは可能ですが、郵送による手続きには対応していません。
【転入届の手続きの流れ】
- 必要書類を用意
- 新住所の役所に転入届を提出
- 転入届の手続き完了
家の売却時に住民票を異動する際は印鑑証明書の扱いに気を付ける
印鑑証明書は、家売却時の所有権移転登記の際に必要な書類です。
所有権移転の際に用いる印鑑証明書に登録されている住所は、売却予定の家の名義人と同一の住所でなければなりません。
そのため、今の家を売ってから新居を購入する「売り先行」の場合は特に問題ないですが、先に新居を購入してから今の家を売却する「買い先行」で進める場合は注意が必要です。
先に新居を購入するということは家の名義人の住所が新居に変わっているため、印鑑証明書の住所と異なってしまうからです。
ただし、購入後の住民票の異動や転出届、転居届などを行っても3か月間は前の住所の印鑑証明書を使用できるため、買い先行で進める場合は早いタイミングで発行しておくのがよいでしょう。
印鑑証明書を所有していない・有効期限内に売却できなかった場合
印鑑証明書を持っていなかったり、印鑑証明書の有効期限に売却できなかった場合は、法務局にて住所変更を行う必要があります。
印鑑証明書の有効期限は3ヶ月であり、不動産売却は3ヶ月以上かかるケースも十分考えられます。
そのため、先に住所変更を行っておくことで売却が長期化しても、スムーズに進められるのでおすすめです。
なお、住所変更は自分で行う方法と司法書士に依頼する方法があります。
自分で行う場合は手間がかかりますが、司法書士への委託料がかからないため、費用を抑えたい方におすすめです。
一方で司法書士への依頼は、手間がかからない代わりに委託料が発生するため、資金に余裕がある方は利用してみましょう。
なお、司法書士への委託料は1~2万円程度です。
スムーズに住民票の転出・転居や転入を行い家を売却
引越し時には住民票の異動が必須です。異動の手続きは引越し日から14日以内に済ませる必要があるため、転出や転入、あるいは転居する場合でも期限に注意する必要があります。
また、売却時に登記簿上の住所と名義人の現住所が異なる場合や、家を旧住所のまま登記している場合、また売却後の確定申告など、家を売却する場面でも住民票は必要です。
住民票だけではなく、不動産売却に必要な書類は多岐に渡ります。不備がないように書類の申請は計画的に行い、家の売却をスムーズに進めましょう。