家や土地などの売却を検討し始めたら、まず不動産会社に査定をしてもらいます。
査定とは不動産会社に「不動産がいくらで売れるか診断してもらう」事ですが、具体的にどのような方法で査定されるか知らない方も多いのではないでしょうか?
家の売却を成功させるためには、見切り発車で査定を依頼せず、自分に合った方法で査定してもらうことが大切です。
この記事では家の査定方法や、物件によって使い分ける査定額算出の方法を紹介していきます。また、査定前の準備しておくべきことも合わせて解説します。
査定について基礎的な情報を知りたい方はこちらの記事もご覧ください。
家査定とは?どんな査定方法がある?
まず家の売却を検討したら、不動産会社に査定を依頼することから始まります。不動産会社は営業活動の一環として無料で査定を行ってくれるのが一般的です。
家の査定方法には机上査定と訪問査定の2つがあります。まず知っておきたいことは査定方法によって得られる情報が異なるということです。
訪問査定:担当者が実際に物件の状況を見た上で査定価格を算出する
それぞれどのような違いがあるのかを知り、査定方法の理解を深めていきましょう。
すぐにシミュレーションしたいなら「机上査定(簡易査定)」
「簡易査定」と呼ばれることもある机上査定は、実際に物件を見ずに物件の情報だけで査定を行うことから「机上」という言葉がついています。不動産会社のホームページや査定サイトに物件情報を入力すると「近隣の売却事例」や「市場動向」などを考慮して機械的に査定価格が算出します。
筆者が実際に実家を机上査定してもらった際には査定依頼後2時間でメールで査定価格を教えてもらいました。
査定の担当をさせて頂きます、○○会社○○支店の○○と申します。宜しくお願い致します。
こちらで確認させて頂いた内容ですと、宅地面積が4筆の合計234.91㎡道路部分面積が2筆12.43㎡、建物が昭和51年築の126.47㎡となっておりましたので、こちらの内容で査定額は算出致しました。査定額【20,000,000円 ~ 23,000,000円】上記査定がの詳細につきましては、添付の査定書をご参照ください。
不動産会社とのやり取りをメールで完結でき気軽に査定できるのが机上査定のメリットです。「ある程度の査定価値を知ってから売却の検討を始めたい」方に向いています。
一方で、簡易的な査定価格なので実際の不動産価値とのずれが大きい場合もあります。筆者が教えてもらった机上査定価格も「20,000,000円 ~ 23,000,000円」とボラがあるので、実際に家を売る場合には机上査定だけでは不十分です。
査定方法 | メリット | デメリット | 向いている方 |
---|---|---|---|
机上査定 | 査定結果得るまでに時間がかからない メールで査定結果を受け取れる | 正確な査定価格は分からない | 大雑把でいいので査定価格をすぐ知りたい方 |
詳しく査定してほしいなら「訪問査定(現地査定)」
不動産会社の担当者が実際に現地を訪れて、物件を詳細にチェックしたうえで算出するのが訪問査定です。物件データのチェックはもちろん、外装や内装などの実際の老朽化具合や、家の周辺環境まで考慮して査定結果を算出するので、机上査定に比べ正確な査定結果が分かるのがメリットです。訪問査定時に見られる主なポイントは下記になります。
- 敷地形状・・・土地の形状・傾き・大きさを確認。正方形に近いほど価格は高くなります。
- 敷地境界・・・隣家との境界、境界標の有無を見て敷地の境界が定まっているか確認。
- 接道幅員・・・接道の長さ、前面道路の幅員を確認。
- 近隣関係・・・周辺の建物、越境の有無、高圧線の存在を確認。
- ライフライン・上下水道、ガス、浄化槽の状況を確認。
- 建物状況・・・綺麗さ、日当たり、増改築、建物の傾きを確認。
- 管理状況・・・設備の破損や修繕状況を確認。
- 使用状況・・・居住中か空き家か、賃貸入居の状況を確認。
- 騒音臭気・・・騒音や臭いなどの近隣の環境の美観や揺れを確認。
さらに、訪問査定後には査定結果や計算に用いた周辺相場や売却事例をまとめた査定書をもらうこともできます。
訪問査定のメリットは、精度の高い査定額を知ることができて、売却に関する不明な点を専門家に直接聞くことができることです。ただし、机上査定よりも査定に時間を要し査定額が出るまで数日かかります。
査定方法 | メリット | デメリット | 向いている方 |
---|---|---|---|
訪問査定 | 正確な査定価格が分かる | 不動産会社とやり取りの時間が増える | 正確な査定価格を知りたい方 |
以上が家を査定する2つの方法です。
売却することに前向きであれば精度の高い査定額が分かる訪問査定を選ぶと良いでしょう。不動産会社の担当者と会うことで、契約を結ぶ不動産会社が信頼できるか判断する機会にもなります。
続いて、物件種別によって使い分ける査定額算出の計算方法を紹介していきます。
家の査定額を算出する3つの方法
不動産会社が査定額を算出する方法は原価法、取引事例比較法、収益還元法の3つがあります。
②取引事例比較法:査定する物件と同じような条件で実際に取引された事例と比較して査定価格を算出する方法
③収益還元法:査定する物件を運用した場合に、今後得られる収益を加味して査定価格を算出する方法
これらの算出方法は不動産の種類によって使い分けられています。詳しく見ていきましょう。
戸建ての査定で用いられる「原価法」
原価法は、現在の建物と同様の建物を新築した場合の価格を計算し、経年による建物や設備の劣化を評価額から差し引くことで建物評価を算出する評価法です。
戸建てはマンションに比べて間取りや内装の個別性が強いという特徴があります。そのため周辺相場を比較するより、物件の建築費用から逆算して計算する原価法が向いています。
原価法は以下の式で計算を行います。
=再調整価格(円/㎡) × 建物面積(㎡) × 減価修正(1 - 経過年数/耐用年数)
建物の構造によって再調整価格と耐用年数は次のように定められています。
構造 | 再調達価格 | 耐用年数(自己居住用) |
---|---|---|
木造 | 15万円/㎡ | 33年 |
軽量鉄骨 | 15万円/㎡ | 40年 |
重量鉄骨 | 18万円/㎡ | 51年 |
鉄筋コンクリート | 20万円/㎡ | 70年 |
例えば、築10年、延床面積150㎡の木造住宅だった場合、150㎡×15万円/㎡×(1-(33-10)/33)で1500万円と査定額を求めます。
さらに、不動産会社が査定をする際、減価要因を物理的要因、機能的要因、経済的要因の3つに細分化して細かく調べます。
物理的要因
物理的要因とは、家を使用することで生じる破損や、時の経過によって生じる老朽化並びに偶発的な損傷などが挙げられます。
機能的要因
機能的要因とは、建物の機能的陳腐化、すなわち、設計の不良や形式の旧式化、設備不良が挙げられます。建物の間取りや設計が時代遅れであるなど機能面の低下した場合も該当します。
経済的要因
経済的要因とは、近隣地域の衰退、不動産とその付近の環境との不適同、売り出し物件との比較における市場性の減退等が挙げられます。商業地化が進んだ地域に取り残された古家など、周囲の環境に適合しなくなったことによる原価要因ながこのケースに該当します。
土地やマンションの査定に便利な「取引事例比較法」
取引事例比較法は、査定地周辺地域で条件の類似する複数の成約事例地を選択し、形状、環境、方位などの個別要素を比較検討し、売却理由など個別事象による補正を行う評価法で、主に土地やマンションの評価に適しています。
取引事例比較法は以下の式で計算を行います。
=事例地の単価(円/㎡) × 建物面積(㎡) × 補正率
補正率とは、選択した成約事例物件と査定物件の個別要素を比較して出される掛け率のことで、事情補正、時点修正、地域要因、個別的要因の4つを考慮して決めます。
事情補正
「転勤や離婚で売却を急いでいる」「ローンの返済のために売却せざるを得ない」といったやむを得ず売らなければならない事情があると適正な価格に補正されます。
時点修正
不動産の相場に変動するので、選択した取引事例の成約時点と現在の相場を比較して価格を修正します。
地域要因比較
事例不動産の地域と査定物件の地域要因を比較して価格を修正します。事例不動産が査定物件の近隣であればこの比較は不要です。
個別的要因比較
物件の個別要因の違いを考慮します。築年数やリフォームの有無、日当たり、敷地の形状などを考慮して価格を修正します。
例えば、査定した土地Aが駅徒歩3分で100坪に対し、事例地として選んだ土地Bが駅徒歩5分80坪で1000万円だとします。この場合土地Aの方が好立地で坪数も大きいので、その分が補正されて土地Bよりも査定価格が高くなります。売却事例が多数あるエリアであれば有効的な査定方法ですが、条件の類似する成約情報が少ないエリアでは利用できないのがデメリットです。
投資物件で用いられる「収益還元法」
収益還元法は、対象不動産が賃料により将来生み出すと予想される純利益から現在の不動産価値を決定する評価方法で、賃貸マンションや商業ビルなど収益目的の物件を査定する際に使われます。
収益還元法には直接還元法とDCF法という2つの計算方法があります。
直接還元法とは査定物件から1年間に得られると予想される利益から査定額を算出する方法です。
一方、DCF法とは査定物件を長期所有した時に得られる利益と物件の維持費などの支出を踏まえて査定額を算出する方法です。
DCF法は査定額を計算が複雑になるので、一般的には直接還元法が用いられます。収益還元法は以下の式で計算を行います。
=1年間の純利益 ÷ 還元利回り
例えば、家賃月額が12万円、管理費が2万円、還元利回り8%の賃貸物件を査定すると、(12万円-2万円)×12カ月 ÷8% = 1500万円という計算になります。
期待還元利回りをいくらで見るかで、大きく査定額が変動するので不動産会社は周辺の賃貸不動産の利回りを参考に、慎重に判断をしています。
以上が査定額の算出する3つの方法です。
家査定の流れ
全体的な査定の流れを把握しておくと安心して査定を依頼できるようになるので、査定の流れを確認して査定の全体像を把握しましょう。
手順 | やること |
---|---|
ステップ1 | 不動産会社に査定依頼をする |
ステップ2 | 査定の訪問日時を決める |
ステップ3 | 不動産会社に家に来てもらい現地調査をする |
ステップ4 | 不動産会社から家の査定結果を報告してもらう |
ステップ1:不動産会社に査定依頼をする
まずは、不動産会社のHPや不動産一括査定サイトを使って査定依頼をしましょう。査定依頼時に机上査定・訪問査定に限らず、次の情報が求められるのであらかじめ調べておきましょう。
・物件所在地(都道府県、市区町村、町名、字/丁目)
・査定希望の物件詳細(住所、広さ、間取り、築年数、査定物件との関係、番地、現在在住か否か、専有面積、間取り、築年数、物件の状況、依頼理由)
・査定依頼者の個人情報(名前、年齢、メールアドレス、電話番号)
ステップ2:査定の訪問日時を決める
査定してほしい家へ訪問をしてもらうに日時を決めます。空き家であっても、分からないことを確認するために立ち会いを求めらることがあります。なお、机上査定を希望する場合はステップ1のみで査定額を教えてもらえます。
ステップ3:不動産会社に家に来てもらい現地調査をする
査定依頼した家の内外を調査してもらいます。査定時には不動産会社から質問されることが多々あります。質問への回答内容が査定額に影響するので、正直に質問に答えましょう。
ステップ4:家の査定結果を報告してもらう
訪問査定後にすぐ査定額を教えてもらえます。また、後日査定結果の根拠をまとめた査定所が送られてきます。査定結果に納得すれば不動産会社と媒介契約を交わし、家を売り出していきます。もちろん査定額に不満があれば家を売る出す必要はありません。
以上が家査定の流れとなります。より詳しく家売却の流れを知りたい方はこちらの記事もご覧ください。
家の査定前にやるべき3つの準備
家の査定をスムーズに進めて、売却成功につなげるためには事前準備が大切です。準備しておくことは以下の3つ。
- 相場価格を自分でも調べる
- 必要書類は査定前に確認しよう。特に境界確認書が大切!
- 住宅ローンの残高を調べる
では、それぞれ詳しく説明していきます。
準備①:相場価格を自分でも調べる
不動産会社が査定した価格が100%正しいとは限りません。自分でも相場を調べておけば査定結果が相場に沿った価格か判断できます。相場価格は周辺物件の成約事例を調べれば大体のイメージはできます。不動産流通機構が運営している『Reins Market Information』や、国土交通省が運営している『土地総合情報システム』で近隣の成約事例を調べることができます。
また、簡単に査定価格をシミュレーションできるAIサイトHowmaや現在売り出されている物件価格が分かるHOME‘sというサイトも相場を調べる際に便利です。以下に不動産相場価格が分かる主要サイトをまとめたので参考にしてください。
サイトの種類 | サイト名 | 成約価格 | 売り出し価格 | オススメ度 |
---|---|---|---|---|
取引情報提供サイト | レインズ・マーケット・インフォメーション | 〇 | × | ★★★★★ |
シミュレーションサイト | Howma | 〇 | × | ★★ |
不動産ポータルサイト | HOME`s | × | 〇 | ★ |
準備②:必要書類は査定前に確認しよう。特に境界確認書が大切!
家の査定をスムーズに進めるために、査定までに必要書類を一通り揃えておくと良いです。
これらの書類は査定時なくても査定は行えます。しかし、家を売却するときには必要なので、査定前の段階で何があって何がないか確認しましょう。
以下の表で必要な書類をまとめたので、時間に余裕があるうちから揃えておきましょう。
No | 項目 | 目的 | 取得場所 |
---|---|---|---|
1 | 登記済権利証 | 登記名義人の変更 | 市役所 |
2 | 間取り図と測量図 | 物件情報の確認 | 市役所 |
3 | 実印、印鑑証明 | 書類への捺印と実印の証明 | 市役所 |
4 | 身分証明書 | 売主本人の確認(免許書など) | 市役所 |
5 | 建築確認済証、検査済証 | 建築基準を満たしてるかの確認 | 市役所 |
6 | 地積測量図、境界確認書 | 土地の大きさ等の確認 | (測量士に相談) |
書類確認時、特に気を付けたいのは境界確認書の有無です。一戸建てや土地の売買で、最もトラブルになりやすいのが境界線についてのトラブルです。境界が定まっていないと正確な査定額を算出できないだけでなく、家が売れにくくなります。(境界が定まっていない家を買いたい人は少ないでしょう)そのため、必ず手元に境界確認書があるか確認してください。
準備③:住宅ローンの残高を調べておこう
住宅ローンが残っている家はローンを全て完済しなければ、勝手に売却できません。査定額よりも住宅ローン残債の方が多いと、他の金融機関から借り入れをして返済したり、新居の住宅ローンに借り替えたりする必要があります。現在住んでいる家にローンが残っている場合は、査定価格がローン残高を上回るのか確認できます。
ローン残高と査定価格との差分を把握しておけば、たとえ売却価格でローンを返済できなくても、新しいローンを組んだり、預貯金で支払うなど資金計画を立てることができます。住宅ローンが残っている家を売る場合は、買い替えの資金計画を立てるためにも事前にローン残高を調べておきましょう。
家の査定は無料で依頼できる一括査定サイトがオススメ
不動産会社はこれまで紹介した方法で、あなたの家がいくらで売れるか査定してくれます。ただ「不動産会社によって査定額に差が出る」ことがあるので注意が必要です。
不動産会社によって、「都内のマンションが得意」「郊外の木造戸建ての実績はない」など得意・不得意がありますし、高くても買いたい!という買主を抱えている不動産会社に依頼すれば高く売れることもあります。数百万円もの大きな差が出てくることも、珍しくありません。
なので、家を査定をするなら「複数の不動産会社の査定額を比べる」事が絶対に必要です。
複数社の査定額を比べる一番のメリットは、家の適正売り出し価格が分かることです。不動産会社によっては、契約を取るために高い査定額を提示してくる会社もあります。
ただし、相場より高いの価格で売り出しても売れ残る可能性が高く、結果的に相場よりも値下げすることにもつながります。複数社の査定額を比較すれば、明らかに高い価格を見抜くことができます。
昔は電話や直接訪問で不動産会社に査定を依頼していましたが、インターネットが普及した現在は不動産一括査定サイトというネットサービスで無料査定を申し込むのが一般的です。
不動産一括査定サイトとは、Web上で複数の不動産会社にまとめて無料で査定依頼ができるサービスです。
不動産一括査定サイトを利用すればこのような面倒な作業が不要です。Web上で簡単な項目を入力すれば、提携している不動産会社の中からあなたの物件を高く売ってくれる会社に自動で査定依頼でき、査定結果をメールや電話で受け取れます。一括査定サイトは無料で利用できるため「ラクに査定依頼がしたい」「高く売ってくれる不動産会社を見つけたい」という人にオススメです。
すぐに査定を依頼したい方は、下のボタンをクリックして一括査定サイトに進みましょう。業界No.1のサイトすまいステップで査定依頼ができます。
すまいステップは最大4社の査定結果を比較できるため、信頼できる不動産会社も見つけやすいです。
また、すまいステップでは査定時に訪問査定と机上査定の選択できるので「正確に査定額を知りたいか方」と「早く手間なく査定額を知りたい方」どちらにもオススメできます。
自分に合った査定方法を選んで家の売却を成功させてください。
・不動産査定の方法は「机上査定」「訪問査定」の2種類がある
・査定価格の算出方法は「原価法」「取引事例比較法」「収益原価法」の3種類がある
・家の査定はすまいステップなどの不動産一括査定を使って、複数の不動産会社に依頼するのが大切!