一戸建てを売却したい方の中には、「何から始めればいいか分からない」「何も調べずに不動産会社に行くのは不安」と思っている方も多くいるでしょう。
一戸建ての売却が完了するまでには、短くても6カ月ほどかかります。この6カ月の行動、また売却の仕組みを理解していれば、安心してスムーズに行動を進めていけます。
この記事では、一戸建て売却の全体の流れと、ステップごとの詳細・注意すべき点を解説します。
まずは1章で売却全体の流れを簡単に把握しましょう。
戸建て売却全体の流れ
まずは売却完了までの流れを下の画像で確認し、大まかなイメージを膨らませてみましょう。
売却相場を調べる
不動産会社に査定依頼する
不動産会社と媒介契約を結ぶ
売り出しを開始する
買主と売買契約を結ぶ
物件を引き渡す
利益が出たら確定申告を行う
一戸建てを売却する際は、不動産会社を通して購入希望者を探して行きます。
『step4』で売り出しを開始して、すぐに買手が見つかれば1カ月で売却できる場合もあります。
反対に買手が見つからなければ1年以上売れない場合もあります。
立地が良いとされる都心の戸建ては売れやすく、築年数は浅いほど売れやすい傾向にあります。
戸建て売却の流れ①:売却相場を調べる
戸建て売却に向けて、まずは売却相場を調べましょう。
相場の調べ方はいくつかあるので解説します。
不動産ポータルサイト
「SUUMO」や「ホームズ」などの不動産ポータルサイトで調べる方法です。
ポータルサイトには、全国の売り出し物件情報が掲載されており、売り出し価格や築年数、間取り、最寄り駅などの詳細な情報まで確認できます。
また、エリアを限定すれば、そのエリアの周辺相場もある程度把握できるため、売り出し価格を決める際の参考になります。
レインズ・マーケット・インフォメーション
画像参照:レインズ・マーケット・インフォメーション
レインズ・マーケット・インフォメーションは、実際に取引された不動産情報を調べられるサイトです。
不動産流通機構が提供しているので信頼性も抜群。より詳細な売却相場を調べたいときにおすすめです。
都道府県を指定すれば、そのエリアの取引情報に絞れるので、所在地周辺の相場を調べる際に活用してみましょう。
土地総合情報システム
画像参照:土地総合情報システム
土地総合情報システムは、不動産取引価格や地価公示を調べられるサイトです。
地価公示とは土地の価格を表す指標であり、毎年1回土地鑑定委員会により標準値の価格を公示しています。
土地のみの相場を把握できるため、より具体的な売却相場を調べたい方におすすめです。
AI査定
AI査定とは、物件条件を入力するだけで、AIが自動で査定してくれる方法です。
主に、各AI査定サイトで利用でき、条件入力から数秒で査定してくれるのが特徴です。
「今すぐ査定額が知りたい」「手軽に相場を知りたい」と思う方は利用してみましょう。
費用総額シミュレーターで売却にかかる費用を算出してみよう
以下の費用シミュレーターを使って、あなたの不動産を売ったときにかかる費用を算出してみましょう!
「売却価格」「購入価格」「物件の所有期間」「現在住宅として住んでいるか」をそれぞれ入力し、「費用を算出する」ボタンを押すと、売却時にかかる費用が自動で算出されます。
※購入価格が分からない場合は空欄で大丈夫です。
費用の内訳も表示されますので、まずはどんな費用がいくらかかるのかを把握しておきましょう。
戸建て売却の流れ②:不動産会社に査定依頼する
売却相場を調べたら不動産会社へ査定依頼しましょう。
不動産会社が行う査定には以下の2種類があり、それぞれで特徴が異なります。
自分の状況に合わせて選んでみましょう。
机上査定
机上査定とは、不動産会社が行う簡易査定です。
売却物件の所在地、築年数、間取り、構造、方角などを不動産会社に伝えるだけで査定してくれます。
実際に不動産会社を訪れる必要がないため、「手軽に査定したい」「査定に時間をかけたくない」という方に向いています。
なお、査定結果がわかるまで数日かかるため、今すぐ査定額が知りたい方はAI査定がおすすめです。
訪問査定
戸建て売却の流れ③:不動産会社と媒介契約を結ぶ
査定額に納得したら不動産会社と媒介契約を結びます。
媒介契約を結ぶことで、依頼された不動産会社は売却を成功させるために売却活動を開始します。
なお、媒介契約には以下の3種類があるので、それぞれの特徴を理解してから依頼しましょう。
専属専任媒介契約
専属専任媒介契約とは名前のとおり、不動産会社と専属契約を結ぶことです。
不動産売却のすべてを任せる契約であり、3種類のなかで最も縛りのある契約です。
縛りが強い分、REINSへの登録義務や1週間に1回以上の報告義務などの恩恵を受けられます。
「不動産会社にすべて任せたい」という方に向いています。
詳しくは以下の記事を参考にしてみてください。
専任媒介契約
専任媒介契約とは、1社のみに媒介依頼できる契約です。
専属専任媒介契約との違いは、「自己発見取引の可否」です。
一般媒介契約
一般媒介契約とは、複数の不動産会社と媒介契約できる契約形態です。
同時に複数の不動産会社に依頼できるので、売却価格を比較できるのがメリットです。
また、人気物件の売却であれば不動産会社同士で取引を競わせることもできるため、売却価格UPにも期待できます。
ただし、REINSへの登録義務と業務状況報告義務を受けられないことを理解しておきましょう。
詳しくは以下の記事を参考にしてみてください。
戸建て売却の流れ④:売り出しを開始する
媒介契約を無事結んだら、いよいよ売り出しを始めます。
この期間の行動手順
- 不動産会社が集客を行う
- 不動産会社に活動状況を逐一聞く
- 購入希望者の内覧対応をする
不動産会社が集客を行う
集客は不動産会社の営業担当者が行います。
買主から依頼を受けた不動産会社は、まずレインズという全国の不動産会社が売買情報を共有するプラットフォームに物件情報を掲載します。
これにより、全国から買主を募集で切るようになります。
また、チラシ作りも行われます。
チラシの内容は売主もきちんと確認し、問題があれば修正を依頼しましょう。
不動産会社に活動状況を逐一聞く
不動産会社に任せきりになってしまうのは危険です。
不動産会社が集客を開始したら、売却活動の状況を逐一聞くようにしましょう。
購入希望者の内覧対応
売却活動を続けていくと次第に購入希望者から不動産会社に問い合わせが入り始めます。
購入希望者は内覧へと進みます。
この期間の行動手順
- 内覧前に徹底的に清掃
- 内覧当日
(売主が内覧に立ち会えると良い)
内覧前に徹底的に清掃
まず、内覧の前に必ず掃除をしましょう。
内覧は購入希望者が購入を決めるためにとても重要なイベントです。
印象が少しでもよくなるよう、特に水回りの掃除は徹底しましょう。
内覧時は、写真ではきずかなかった傷や汚れも気づかれてしまうから、見栄えはしっかりと整えておこう。
- 水回りのカビや水垢、油汚れはないか
- 玄関の清潔さ・臭いはひどくないか
- リビングが広く見えるか
- 電球は切れていないか
- 押し入れ・収納が見せられる状態か
- ベランダに不用品をためていないか
- 窓や網戸に汚れが溜まっていないか
- 枯れ葉、伸びた雑草、越境した木々はないか
- 外壁にクモの巣がはっていないか
内覧当日
ここで、対応を不動産会社に任せきりにしないようにしましょう。
また購入希望者はお客様と考え、紳士的・誠実的な対応を心がけましょう。
- 靴を玄関に置いていないか
- 過ごしやすい室温に調整されているか
- 洗濯物を干していないか
- 変な臭いはしないか
ただ、購入希望者にも好みがあるから注意も必要。
戸建て売却の流れ⑤:買主と売買契約を結ぶ
購入希望者が内覧を終え、購入を決断したら売買契約を進めていきます。
この記事では、ここからは購入希望者ではなく、買主と表現します。
この期間の行動手順
- 書類をそろえる
- 条件交渉を行う
- 売買契約を交わす
(不動産会社主導で進めていきます) - 手付金を受け取る
仲介手数料を払う
書類をそろえる
ここから売買契約や引渡しといった重要な手続きが続きます。
この段階では多くの書類が必要になるので、余裕をもって収集に取り掛かりましょう。
- 身分証明書
- 実印,印鑑証明書
- 登記済権利証or登記識別情報通知
- 固定資産税納税通知書
- 抵当権抹消書類
- 住民票or戸籍の附票
- 物件状況確認書
条件交渉を行う
この段階になると、購入希望者から買付証明書が提示されます。
買付証明書には、希望価格、支払い条件、引き渡しの希望日などが書かれています。
この買付証明書を参考に、売主側と買主側の不動産会社が間に入り条件交渉が行われます。
値引き交渉に至る前に、あらかじめ値引き額の上限を想定しておくと、値下げしすぎずに済みます。
売買契約を交わす
次に、売買契約を結びます。
売買契約では、「最終的な売却金額」や「支払い方法」「引渡しの日程」等を決定します。
また、不動産会社の担当者による重要事項説明(取引する不動産の状態や権利・法律関係、契約条件の詳細説明)がされます。
手付金を受け取る/仲介手数料を払う
重要事項説明も終わり、両者が契約を承認した段階で、買主から手付金を受け取ります。
また買主は、売買契約完了後に不動産会社へ仲介手数料の半額を支払います。
- 手付金:契約成立の証明、また契約解除の際の違約金として買主が支払う。売却金額の5%~10%が相場。
- 不動産会社へ支払う報酬。売買契約締結の時点で半額、引渡しが完了した後残りの半額を支払のが一般的。
仲介手数料は、不動産会社が請求できる上限額が決まっており、400万円以上で売れた物件に関しては『売却金額×3%+6万円+消費税』で求められます。
戸建て売却の流れ⑥:物件を引き渡す
売買契約時に決めた引渡し日に物件の引渡しを行います。
この期間の行動手順
- 引渡し日までに引っ越しを完了
- 残代金の受け取り
(同時に司法書士による登記手続き) - 鍵の引渡し
- 報酬の支払い
(不動産会社・司法書士)
引渡し日までに引っ越しを完了
引渡し当日までには引っ越しを完了させ、家を空の状態にしておきましょう。
(売買契約次第では、いくつかの設備を残していかれる方もいます。)
残代金の受け取り
引渡し当日は、法的手続きや大金を動かすため、一見複雑です。
ただ、司法書士や金融機関の担当者を交えて行のが一般的なため、スムーズに進めていけるでしょう。
買主から残代金の決済がされたと同時に、登記手続きがされて買主の所有物になるんだ。
鍵の引渡し
玄関、勝手口、車庫など、漏れがないよう注意しましょう。
報酬の支払い
戸建て売却の流れ⑦:利益が出たら確定申告を行う
一戸建ての売却で、20万円以上の売却益がでた場合、確定申告をして納税する必要があります。
売却益のことを譲渡所得と言います。税金計算時には頻出する言葉なので、以下『譲渡所得』の文言で解説を続けます。
この期間の行動手順
- 譲渡所得があるか計算しておく
- 控除が利用できるか確認する
- 確定申告を行う
(翌年の2月16日~3月15日)
譲渡所得があるか計算しておく
売却が完了したら、譲渡所得があるか計算しておきましょう。
譲渡所得は以下の様に計算します。
譲渡所得=
売却金額 –取得費 – 譲渡費用 – 控除額
取得費とは
譲渡費用とは
仲介手数料や交通費などが該当します。
控除については次の項目で解説します。
各種特例による控除は確定申告時の申請が必要です。
控除が利用できるか確認する
- 所有期間5年以下:
(短期譲渡所得)税率39.63% - 所有期間5年越え:
(長期譲渡所得)税率20.315%
確定申告を行う
申告期間は、売却した翌年の2月16日~3月15日になります。
売却益が出なくても、極力確定申告をしよう!
まとめ
一戸建ての売却は、不動産会社への査定依頼から始まりますが、その前に事前準備をしておくと安全でスムーズです。
戸建ては、マンションに比べて売却期間が長くなりやすい傾向にあります。
そのため、マンション売却以上に、不動産会社選びや内覧対応に力を入れ、早期売却の確立を高めていきましょう。
マイホームの売却では、3,000万円分の譲渡所得を非課税にできる制度があるため、税金がかかる方は稀でしょう。
それでも、特例制度の利用には確定申告が必須になるため、売却後の確定申告までをしっかりイメージすることが大切です。