マンション、戸建て、土地などの不動産を売却した後に欠陥が見つかった場合、売主は契約不適合責任として損害賠償を負う可能性があります。
ただし、契約不適合責任とはなにか、どのようなペナルティがあるか知っている人は少ないと思います。
この記事では、不動産の売却における契約不適合責任とは何か、代表的な瑕疵の事例、契約不適合責任に免れる対策までを解説します。
不動産売却をトラブルなく進めるために、契約不適合責任について詳しくなっておきましょう。
この記事では、新たに改定された契約不適合責任について解説します。
(参考:国土交通省『既存住宅売買瑕疵保険について』2025年12月閲覧)

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契約不適合責任とは
契約不適合責任とは、種類・品質・数量に関して「契約の内容と適合しない」場合に、売主が買主に対して負う責任のことです。
かつての「瑕疵(かし)担保責任」では「隠れた欠陥」が対象でしたが、現在の契約不適合責任では、隠れていたかどうかに関わらず、「契約書に記載された内容と異なるかどうか」が判断基準となります。
つまり、物件に不具合があっても、契約書や重要事項説明書にその旨が明記され、買主が合意していれば売主は責任を負いません。
逆に、契約書に記載のない不具合が見つかった場合は、売主は債務不履行(契約違反)として、補修や代金の減額などの責任を負うことになります。
これは売主が不具合を知らなかった場合でも同様ですので、契約書への記載漏れや、売り主が気づいていない不具合がないよう十分に注意しなければなりません。
契約不適合責任を負う期間
民法の原則では、買主が不適合(欠陥など)を知ってから1年以内にその旨を売主に「通知」すれば、売主は責任を負うことになっています。
しかし、引渡しから長期間経過後に見つかった不具合は、元々の欠陥か経年劣化か区別がつかないため、個人間の不動産売買では特約により責任期間を「引渡しから3カ月程度」に短縮することが一般的です。
一方、売主が不動産会社(宅建業者)の場合は、買主保護の観点から「引渡しから2年以上」とする義務があります。
そのため、実際の契約では「引渡しから2年以内に不具合を通知しなければならない」とするのが一般的です。
もし不動産会社が「1年で終わり」のような買主に不利な特約を結んでも無効となり、その場合は民法の原則である、「買い主が知ってから2年以内に通知する」が適応されます。
また、新築住宅の基本構造部分(柱や屋根など)については、「住宅の品質確保の促進等に関する法律(品確法)」により、10年間の保証責任が義務付けられています。
瑕疵担保責任を問われた時のペナルティ
不動産物件を売却後、瑕疵が発覚し契約内容に合致しないと判断されると、瑕疵の内容によって主に4つのペナルティがあります。
追完請求
まず基本となるのが、「契約通りの完全なものを引き渡してほしい」という請求です。
雨漏りや設備の故障など、契約内容と異なる不具合がある場合、買主は売主に対して補修(修理)を求めることができます。
減額請求
修繕が不可能な欠陥があったり、期限内までに修繕をしなかったりした場合に購入代金の一部を減額請求できます。
以前の瑕疵担保責任には、補修請求と合わせて、減額請求もなかったのでこの部分はより厳しくなったことになります。
契約解除
補修請求や減額請求をしたにも関わらず、売主が請求に応じない場合は、それにより契約の目的が達成できないと認められるなら、買主は売買契約を解除できます。
基本的には事前勧告がありますが、売買契約の目的が明らかに達成できないと判断されると無勧告で契約を解除される場合もあります。
損害賠償請求
契約解除が行われた場合に損害賠償金が請求される可能性もあります。
例えば、契約が無効になったことで、それまでに支払ってた登記費用や引越し費用などの諸費用が請求される場合があります。
基本的には契約不適合だと認められる場合には、追完請求や減額請求のペナルティが課され、それでも目的を果たせない・修復困難な場合は契約解除や損害賠償の流れになります。
以上のように、隠れた瑕疵があるまま物件を売ってしまうと後々ペナルティがあるので注意しましょう。
では、どのような欠陥が瑕疵にあたるのでしょうか?次の章では瑕疵の種類について詳しく説明していきます。
不動産売却における4種類の瑕疵
契約不適合責任の対象となる「契約内容と異なる不具合」には、大きく分けて物理的・心理的・環境的・法律的の4種類があります。
これらに該当する事実がある場合は、必ず契約書や重要事項説明書に明記し、買主に合意してもらう必要があります。
4つのケースのいずれかに該当する欠陥がある場合は、瑕疵がある旨を不動産会社と購入検討者に正直に申告しましょう。
物理的瑕疵
物理的瑕疵とは、不動産を使用する上で物理的に問題、弊害となるものです。主なものは、以下の4つが挙げられます。
- 地盤沈下
- 地盤の軟弱化
- 土壌汚染
- 地下埋没物
上記のような瑕疵があると、建物の建設が制限される、あるいは建設自体ができない可能性もあります。不動産の使用用途によって、瑕疵がどれだけ影響するかは異なりますが、居住用の住宅を建てる目的で不動産を購入する場合は、これらは大きな問題となりやすいです。告知しないと大きなトラブルに発展しやすいため、隠さず正直に伝えましょう。
心理的瑕疵
心理的瑕疵は不動産を使用する上で、心理的、精神的に問題になる可能性があるものです。心理的瑕疵の幅は広いですが、主なものは以下に挙げられます。
- 事故
- 事件
- 火災
- 自殺
いわゆる事故物件と呼ばれるものがこれに該当します。隠して売却すると、後から心理的なストレスになったと賠償請求をされる可能性もあるため、注意しなければなりません。心理的なストレスは目に見えるもの、見えないものの両方があるため、事前に不動産の現状はもちろん、過去の状態まで調査することが大切です。
環境的瑕疵
環境的瑕疵は、不動産そのものではなく、周辺環境によって生じる問題です。主なものは以下に挙げられます。
- 騒音
- 悪臭
- 嫌悪施設
周辺環境が悪いと地価そのものも下がりやすいです。また該当する不動産がピンポイントで価値が下がる可能性もあるため、注意しなければなりません。仮に地価が高い一等地のエリアでも、周辺環境次第では価値が下がり、エリア内で最安値になってしまうこともあります。
不動産の活用目的によっても異なりますが、居住用に購入する場合は、環境は特に重要視されやすく、売却価格への影響も大きいです。
法律的瑕疵
法律的瑕疵は、法律によって不動産の使用が制限されていることを指します。
法律的瑕疵では、主に以下の2つの法律が該当することが多いようです。
- 都市計画法
- 建築基準法
上記2つの法律によって不動産の使用方法や、建築行為に制限がかかりますので正確に伝えないと、買主は思っていた使用ができない、また建築ができなかったとなり瑕疵になるため、注意しなければなりません。
また、市町村によっては条例による制限を受けることもあり、これも法律的瑕疵に該当します。
法律的瑕疵は素人では判断が難しい場合も多いため、不動産業者に確認し、自身で思っている
使用や建築ができないかを聞くことが大切です。
自身で調べるだけでは見落としが発生する可能性もあるため、必ず専門家の意見も参考にして瑕疵を把握しておきましょう。
契約不適合責任に問われないための対策
契約不適合責任で最も重要なポイントは、「不具合があっても、契約書に記載して買主が納得していれば責任を負わない」という点です。
トラブルを防ぐためには、以下の対策を徹底しましょう。
まずは不動産会社に正直に瑕疵を伝える
売却する不動産に瑕疵があるなら、まず不動産会社に伝えましょう。
その上で、買主の方にもご自身が直接もしくは、不動産会社を通じて包み隠さず伝えることが大切です。
不動産仲介を通じて不動産を売却する場合、売主の代わりに不動産会社が買主と交渉をすることになります。
あなたが直接交渉するわけではないので、瑕疵がある場合は不動産会社の担当者に伝えましょう。
この時目立つ瑕疵は発見されますが、目立たない部分は見落とされることもあります。
見落とされた瑕疵は売買契約時にも触れられず、買主はその事実を知らない状態で購入することになります。
それは契約内容と異なることになるので、買主が購入後にその事実に気づくと売主がその責任を負うことになります。
不動産を売却する際は「告知書」というヒアリングシートへの記入が求められます。雨漏り、シロアリ被害など過去に問題があったかをチェックするシンプル書類です。
ネガティブな理由でも正直に伝えることで、不動産会社はその理由を踏まえて買主を探してくれますし、買主にネガティブに感じられない伝え方も一緒に考えてくれるでしょう。
契約不適合責任で重要なのは、「契約書に書いてあるか」です。
不具合を不動産会社に伝えた上で、契約書の「容認事」欄や「物件状況等報告書」に記載してもらいましょう。
契約書に記載されていれば、それは「契約内容」となるため、後から責任を問われることはありません。
ホームインスペクションを実施する
ホームインスペクションとは建物状況調査のことで、中古住宅の外壁や基礎などの劣化状況や補修箇所を専門の診断士が調査します。
専門家に物件に瑕疵がないか確認してもらえ、確認証明書ももらえるので瑕疵を把握するのには最適な方法でしょう。
確認証明書があれば、契約時の伝達漏れが発生するリスクを減らすことができます。
費用相場は5万円程度ですが不動産仲介会社によって無料でホームインスペクションを提供している会社もあります。
特に築年数が経っている物件を売る際はホームインスペクションを実施して、買主に物件の健全性をアピールしましょう。
瑕疵保証に加入する
瑕疵保証は、不動産購入後に契約段階で知らされていない不具合や欠陥が見つかった際に、売主が買主に対して支払う修繕費用などを保証する仕組みです。
瑕疵保証に加入するのは、万が一のリスクに備えることはもちろん、売却による利益を確実に守るためにも重要です。
保証対象となるのは物件の構造耐力上主要な部分や屋根などの雨水の浸入を防止する部分などです。保険期間は1年以上が一般的です。保証金の支払限度額は1000万円程度です。
瑕疵のある不動産を売却する方法
事故や瑕疵があると買主がつきづらく、売りに出してもなかなか売却できないことも少なくありません。しかし、瑕疵がある=絶対に売れないわけではなく、売り方次第では好条件で売れることもあります。不動産の売却は買主が現れるかどうかが勝負のため、売却活動の工夫で成約率を高めることは可能です。
また、何を瑕疵と感じるかは人によって違い、これは裏を返せば瑕疵があっても売れる可能性があることを示しています。瑕疵があるからと売却を諦める必要はありません。工夫して売却活動を進め、少しでも好条件で売れるよう努力しましょう。
値引きして売る
事故や瑕疵によって買主がつきづらい不動産は、値引きして売るのが基本です。不動産には相場価格があり、それをもとに適正価格を設定して売りに出します。瑕疵があるなら相場価格の50~80%程度で売ることが多いです。
設定価格は任意で決められるため、さらに値段を下げることも可能です。しかし、あまりに値引きをすると買主はつきやすくても損をする可能性が高いため、注意しましょう。また、少しでも利益を出そうと値引き額を小さくすると、買主が見つからないままで時間ばかりが経ってしまうことが多いです。
一概にどれくらい値引きすべきか決まっているわけではありませんが、利益と買主のつきやすさのバランスがよいのは、相場価格の80%程度です。
更地にして売る
不動産に建物があり、両方を売却する場合、建物に瑕疵があるなら更地にするのもひとつの手です。
おおきな欠陥や不具合を持った不動産は解体が必要な場合もあります。
それはマイナスな評価となりかねません。
すでに解体して更地になっているなら、建物のマイナス評価がなくなり、使用用途の幅も広がるため、より売却しやすくなります。
業者買取も検討
不動産を売却する場合、不動産業者に仲介を依頼し、買主を探してもらうのが一般的です。どうしても買主がつかないなら業者買取も検討しましょう。不動産業者によっては、売却の仲介だけではなく、自社で不動産の買取を行っていることもあります。
業者買取の最大のメリットは、契約不適合責任が免責になることです。
買主がプロの不動産会社である場合、売主の責任を免除する特約を結ぶことが一般的だからです。
価格は相場の70~80%程度になりますが、「売却後にクレームが来る不安」から解放される点は大きなメリットです。
売却理由を明確にし、納得できる売買をしよう
不動産を売却する際には、売却理由を正直に伝えることが大切です。本当の理由を誤魔化すと、瑕疵を隠して売ってしまうことにもなりかねず、後から賠償請求をされる可能性もあります。
また、何を瑕疵と感じるかは人によって違うため、瑕疵があっても問題なく売れるケースもあります。不動産売買は金額が大きいだけに、揉めることも多く、重大なトラブルに発展するケースも少なくありません。余計なトラブルに巻き込まれないためにも、売却理由や不動産の瑕疵は正直に申告し、お互いに納得できる売買を心がけましょう。
不動産売却の相談をするなら、一括査定のすまいステップで信頼できる業者を探すのがおすすめです。すまいステップは全国の厳選された不動産業者と提携しており、信頼度は非常に高いです。信頼でき、かつ相性のよい業者を見つけて、トラブルなく不動産売却を成功させましょう。

- 監修畑中 学
- 不動産に関わる相続や債務問題のトラブルシューティングを得意とし、その真摯な取り組みがNHK、読売新聞、日本経済新聞などで紹介されている。武蔵野不動産相談室株式会社代表取締役。
- 【保有資格】宅地建物取引士、公認不動産コンサルティングマスター、マンション管理士、管理業務主任者
- 【URL】武蔵野不動相談室株式会社












