子供の成長や転勤などのライフイベントをきっかけに、家の住み替えを検討される方は多くいます。
また、すまいステップが家を売った人1500人に行ったアンケート調査(2019年)では、家の売却理由の第1位は住み替え(35.6%)でした。(以下、第2位は資産整理23.0%、第3位は相続13.9%、第4位は転勤・転職9.6%……と続きます。)
しかし、家を売って住み替えることを検討する方の中には、どのような手順で住み替えるのか、住宅ローンはどうなるのかなど、疑問や不安に感じる方も多いのではないでしょうか。
本記事では、家を売って住み替える際の注意点やおすすめの手順、住宅ローンや売却時の優遇税制についても解説します。
家を売って住み替える際の注意点
今の家を売って住み替える際の注意点を解説します。
住み替えを検討している方は参考にしてみてください。
- ダブルローンは危険
- 査定額だけで購入計画を立てるのは危険
- 売却益だけで判断しない
- 安易に不動産買取を依頼しない
注意点①:ダブルローンは危険
住み替え時は「売り先行」と「買い先行」の2つの方法から選びますが、買い先行の場合は今の家の住宅ローンと、新居の住宅ローンのダブルローンとなる可能性があります。
ダブルローン状態だと、今の家を売却できるまでの期間は返済額が増えるため、金銭面の負担が重くなります。
仮に返済が滞れば、金融機関側は競売などによる一括返済の請求に踏み切ることとなります。そのため、ダブルローンは経済破綻するリスクを高めてしまうため注意が必要です。
買い先行については、今の家の住宅ローンを完済している方や資金的余裕がある方、入念な返済プランを建てている方でなければ、おすすめしにくい方法です。
売り先行と買い先行については以下の記事で詳しく解説しています。
注意点②:査定額だけで購入計画を立てるのは危険
不動産会社から提示された今の家の売却価格の査定額だけで、新居購入の計画を立てるのは控えましょう。
査定額はあくまで予想であり、実際に得られる金額と必ずしも一致しないからです。
この査定額と成約金額に生じる差を「価格乖離率」といい、下記の表はすまいステップが2022年5月に公表した価格乖離率を表したものです。
全体の27%の方に、11%以上の差が生じています。
査定額だけでは正確な売却金額が分からないため、入念な購入計画を立てるのであれば、売却金額が確定した後がおすすめです。
注意点③:売却益だけで判断しない
住み替えは今の家を売るため、物件条件次第では大きな売却益を得られる場合があります。
ただし、想定できる売却益だけで売却活動を進めないようにしましょう。
高く売りたいからといって相場に見合わない高い売り出し価格を設定してしまえば、買主が現れにくくなります。
また、不動産会社の査定を受ける際も、依頼を受けるために故意に高い価格を査定する企業も存在します。
「この会社が一番査定額が高いから」という理由だけで不動産会社を選んでしまうと、売却の長期化につながり、最終的に大きく値下げすることにもなりかねません。
住み替え時は、売却益だけで判断しないように気を付けましょう。
注意点④:安易に不動産買取を依頼しない
いつまでも家が売れないからといって安易に不動産買取を依頼しないようにしましょう。
不動産買取は、不動産会社に直接買取ってもらえるため、仲介での売却よりも早く売却できるメリットがあります。
しかし、早く売却できる一方で売却価格が安くなるデメリットもあります。
例えば、仲介だと3,000万円で売却できた場合、買取だと2,100万円前後での売却となります。
900万円もの差額が出るため、不動産買取を依頼するかどうかは慎重に検討しましょう。
どっちが先?家を売って住み替える手順
家を売って住み替えることを検討する際、下記の疑問を持つ方は少なくないでしょう。
- 今の家を売却した後に新居を購入するか(売り先行)
- 新居を購入した後に今の家を売却するか(買い先行)
結論から言えば、住宅ローンが残っている方は、今の家を売却した後に新居を購入する方法である「売り先行」をおすすめします。
先に新居を購入してしまうと、2つの住宅ローンを抱える状態となるダブルローンのリスクを高めてしまうからです。
一方、住宅ローンを完済している場合や、潤沢な資金を確保できている方は、先に新居を購入する「買い先行」をおすすめします。
それぞれの手順を解説するので参考にしてみてください。
売り先行の手順
売り先行で売却する際は以下の流れで進めていきます。
- 今の家の査定依頼
- 不動産会社と媒介契約・仮住まいへの引越し準備
- 売却活動開始
- 売買契約締結
- 引き渡し・仮住まいへ引越し
- 新居を探す(内見)
- 新居の購入契約を締結
- 購入代金の支払い・新居へ引越し
今住んでいる家を売ってから次の新居を探し始めるため、売却資金を使って購入できるのがメリットです。
住み替え先の購入資金が足りない方は売り先行で進めるのがよいでしょう。
買い先行の手順
買い先行の手順は以下を参考にしましょう。
- 新居を探す(内見)
- 新居の購入契約を締結
- 購入代金の支払い・新居へ引越し(入居)
- 前の家の査定依頼
- 不動産会社と媒介契約
- 売却活動開始〜買主の内覧
- 売買契約締結〜引き渡し
買い先行は住み替え先の新居を購入してから今住んでいる家の売却活動が開始するため、時間をかけて購入できるのがメリットです。
ただし、売却が完了するまでは新居の住宅ローンと今住んでいる家の住宅ローンが二重になるケースがあるため、資金に余裕のある方に向いている売却方法です。
家を売って住み替えるメリット・デメリットを比較
次に、売り先行・買い先行の、各メリット・デメリットを比較した表が下記となります。
メリット | デメリット | |
売り先行 |
|
|
買い先行 |
|
|
上記のように、両者には資金確保の方法にも違いがあります。
売り先行では、売却代金や売却利益を新居の購入費用に充てられる点がメリットです。
一方、買い先行では、新居購入に伴う費用の確保が前提になるため、住宅ローンを組む場合には、審査に通らないと購入できないデメリットがあります。
住宅ローンが残った家を売って住み替える方法
住み替えを検討する際に、今の家に住宅ローンが残っている場合、家を売却できるか気になる方は多いでしょう。
住宅ローンが残った家を売って住み替えるときの、主な方法や注意点は下記の3点です。
- 抵当権を外す
- 住み替えローンを活用する
- つなぎ融資を活用する
それぞれ順に解説します。
抵当権を外す
住宅ローンが残った家の売却には、事前に抵当権を外すことが必要になります。抵当権が設定されている家は、売却ができないからです。
抵当権とは、住宅ローンの返済ができなくなった場合に備えて、金融機関が債務者の家を担保として設定する権利のことで、住宅ローンの融資を受けた家に設定されています。
注意点は、住宅ローンを完済しても、抵当権は自動的には外れないことです。
抵当権が設定されている家の住宅ローンを完済した後は、自身で抵当権抹消登記(抵当権を外す登記手続き)を行ってから売却する流れとなります。
なお、抵当権抹消登記に伴う費用は、不動産1つにつき1,000円です。土地と家で不動産は分けられるため、1件につき2,000円が必要になります。また、司法書士への報酬費用はおおむね10,000〜15,000円ほどです。
住み替えローンを活用する
今の家を売却しても住宅ローンが残ってしまう(オーバーローン)の場合、住み替えローンの選択肢があります。
住み替えローンとは、返済しきれなかったローンと、新居購入用のローンの合わせた金額を融資するサービスです。
例えば、今の家を売却しても500万円の残債がある状態で、新居購入に3,000万円が必要だった場合、残債と合わせた3,500万円の融資を受けられます。
残債を完済でき、かつ新居の購入費用も賄えるため、売却しても住宅ローンが残ってしまう場合の解決策となり得ます。
ただし、残債分を上乗せした額の融資を受けるため、借入額が高くなることから、審査は厳しくなります。
月々の返済負担も大きくなってしまうため、住み替えローンは無理のない返済計画を立てられる場合の選択肢となります。
なお、住宅ローンが残っていても、住み替えの際に失敗しない方法については、こちらの記事もご参照ください。
【家住み替えの基礎知識】ローンが残っていても失敗しない方法を解説
つなぎ融資を活用する
家が完成してから融資を受けられる住宅ローンの特性上、融資を受けられる日までに、住み替えに伴う費用が必要となった場合、資金繰りに困るリスクが伴います。
その際には、住宅ローンの借入が確定していることを担保として、融資を受けられる日までの短期間、つなぎとして組むローンサービスが「つなぎ融資」を活用することが可能です。
例えば、今の家の売却期間中に魅力的な物件を見つけたケースでは、購入したくても今の家の住宅ローンが残っている場合、購入資金を賄えません。購入資金を確保できたときには売れてしまっているリスクが伴います。
そこで、つなぎ融資を活用すると、先に資金を確保して新居を購入した後、今の家を売却して得た資金で一括返済をするという流れとなります。
ただし、つなぎ融資の金利は住宅ローンよりも高く、融資の期間も6ヶ月〜1年程度と短い点がデメリットです。そのため、住み替えローンと同様に、無理のない返済計画が必要です。
なお、金融機関によっては、買取保証を条件として融資を提供するケースもあり、仮に買取になった場合、売却価格の8割程度の価格となってしまいます。
家を売って住み替える際に伴う費用や税金
家の住み替えには、売却と購入のそれぞれに費用が伴います。
併せて税金も発生するため、事前にどの位の費用が伴うのかを把握しておくことは、返済プランを立てる上で重要です。
さらに、家の売却時には、税制上の控除を活用することで節税も見込めます。
ここでは、売却と購入に伴う主な費用と、マイホーム売却時に控除される特例について解説します。
売却に伴う主な費用
売却する家の状態や、地域の相場などによりますが、家の売却にかかる費用は売却額の5%〜7%程度です。
下記の表は、売却時に伴う主な費用を表したものです。
費用の種類 | 内容 |
仲介手数料 | 不動産会社に支払う費用 |
印紙税 | 不動産売買の契約書に発生する収入印紙の代金 |
登記に伴う費用 (登録免許税含む) | 抵当権抹消登記といった登記手続きに伴う費用(登録免許税含む)を含め司法書士に支払う費用 |
譲渡所得税 | 家を売却して得た利益に課される税金 (利益が発生しなければ課されない) ※復興特別所得税は令和19年まで |
復興特別所得税 | |
住民税 | |
住宅ローン返済の費用 | 一括返済の対応に伴う費用(繰り上げ返済の手数料など) |
仮に、家の売却額が2,000万円だった場合、おおむね100万円〜140万円の費用が目安となります。
以下の費用シミュレーターを使って、あなたの不動産を売ったときにかかる費用を算出してみましょう!
「売却価格」「購入価格」「物件の所有期間」「現在住宅として住んでいるか」をそれぞれ入力し、「費用を算出する」ボタンを押すと、売却時にかかる費用が自動で算出されます。
※購入価格が分からない場合は空欄で大丈夫です。
費用の内訳も表示されますので、まずはどんな費用がいくらかかるのかを把握しておきましょう。
家の購入に伴う費用
また、家の購入に伴う費用も同様に、物件の状態や相場によって左右されますが、おおむね購入額の5%〜8%が一般的です。
購入に伴う主な費用は下記の通りです。
費用の種類 | 内容 |
仲介手数料 | 不動産会社に支払われる費用 |
印紙税 | 不動産売買の契約書に発生する収入印紙の代金 |
住宅ローンに伴う費用 | 住宅ローン融資に伴う手数料や費用 |
保険料に伴う費用 | 火災・地震・家財・団信などの保険料に伴う費用 |
登記に伴う費用 (登録免許税含む) | 建物や土地の所有権設定登記や抵当権設定登記といった登記手続きに伴う費用(登録免許税含む)を含め、司法書士に支払われる費用 |
その他費用 | 引越し代金や新居購入に伴った費用、固定資産税など |
仮に、新居の購入金額5,000万円だった場合、おおむね250万円〜400万円の費用がかかることとなります。
マイホームを売ったときの特例を活用
マイホームの売却で利益が発生した場合には、譲渡所得税などの税金が課されることを前述しました。
しかし、一定の要件を満たしていた場合には、譲渡所得から最大で3,000万円が控除され、節税が可能です。これを「マイホームを売ったときの特例」といいます。
マイホームであることや、他の特別控除を受けていないなど、さまざまな要件がありますが、3,000万円の控除は資金面に大きく影響します。詳しい要件は、国税庁ホームページ「マイホームを売ったときの特例」をぜひ確認しましょう。
家を売って住み替えるには不動産会社選びが重要
家の住み替えには、売り先行・買い先行の2つのケースがありますが、住宅ローンが残った家の場合には、売り先行が適しています。
売却金額が先に分かるため、資金計画を立てやすく、資金繰りに困るリスクを抑えられるからです。
家を売って住み替えるには、家の売却と購入が必要となり、それぞれ不動産会社の協力が欠かせません。売却価格や売却に伴う期間にも影響するため、住み替えの際には信頼できる不動産会社を選ぶことが大切です。
不動産会社選びを検討されている方は、一括査定サイトの「すまいステップ」もぜひご利用ください。物件とお客様の情報を入力するだけで、厳選された売却実績多数の不動産会社(最大4社)から査定結果を得られます。
厳しい審査基準を通過した優良な不動産会社のみと提携しているため、家の住み替えの際には「すまいステップ」をぜひ活用されてはいかがでしょうか。