離婚を考える上で、購入したマンションの存在は大きな問題の一つです。
「可能であればマンションを売却したい」「売却できるなら離婚の話も進めやすい」と売却について考える方も多いでしょう。
離婚という突発的なきっかけでも、マンションを売却できるのかと不安になる方もいるかと思います。
この記事では、離婚にマンションを売却するために必要なことと、売却方法を主に解説しています。
売却が現実的でない方に向けて、売却以外の選択肢まで紹介していますのでご活用ください。
また、記事最後には、離婚に際したのマンション売却でよくある質問をまとめています。
離婚の際にマンションを売却するには
離婚に際してマンションを売却するには、住宅ローンの完済と名義人の同意が必要です。
また、売却後の財産分与についても取り決めておく必要があります。
離婚時のマンション売却に必要なこと
- 住宅ローンの完済
- 名義人の同意(共有名義の場合両者)
- 財産分与の分け方を決めておく
住宅ローンの完済
マンションのみならず、不動産を売却するには住宅ローンを完済する必要があります。
完済できない場合は、2章で解説するような売却以外の方法をとるか、任意売却で売却します。
※任意売却は、住宅ローンの支払いが困難な方が利用できる救済措置的な売却方法であり、全ての方が利用できるわけではありません。
任意売却についてはこちらをご覧ください。
手持ち資金で完済できない場合は、売却金額を合わせて引き渡し時に完済します。
まずは、不動産会社の査定を受けて、査定額が住宅ローン残債を上回っているか確認してみましょう。
配偶者に知られずに大まかな査定額を知りたい方は、すまいステップの匿名簡易査定シミュレーションをご利用ください。
名義人の同意(共有名義の場合両方)
不動産を売却するには名義人全員の同意が必要です。
あなたが単独の名義人である場合は、自由に売買できます。
一方で、離婚する夫婦の場合、住宅ローン借り入れの関係で共有名義の不動産となっている場合があります。
この場合は、共有名義人がどちらも売却に同意する必要があります。
財産分与の分け方を決めておく
売却をする前に財産分与について解決しておく必要があります。
以下は財産分与の基本的な考え方です。
- 基本は3分の1づつ分与
- 住宅ローンを完済して残った金額を分与
基本は2分の1づつ分与
結婚後に購入した不動産の場合、たとえ夫名義だとしても、夫婦二人が協力して築いた財産とされる場合がほとんどです。
そのため、基本的には2分の1づつ贈与します。
ただし、両者の合意さえあれば、必ずしも2分の1にする必要はありません。
住宅ローンを完済して残った金額を分与
住宅ローンが残っている場合は、売却金額で住宅ローンを完済し、残った金額を分与します。
例えば、住宅ローンが3,500万円残っていて売却金額が4,000万円だった場合は、残りの500万円を250万円づつ分与します。
離婚の際にマンションを売却する方法
売却時にローン残高が残っている場合は、手持ち資金や売却金額と合わせて、必ず完済しなければいけません。
売却金額を合わせてもローン完済できない場合は、原則的に売却できません。
住宅ローンの滞納がある方で、売却しないとお金が工面できない場合は金融機関承諾の上、任意売却が利用できます。
任意売却について詳しくはこちらをご覧ください。
この章では、ローンを完済できることを前提として2つの売却方法を解説いたします。
マンションの売却方法
- 仲介(不動産会社を通して第三者に売却する方法)
- 買取(不動産会社に直接売却する方法)
仲介
仲介は、不動産会社に売却の仲介をしてもらい、購入希望者を募集して売却する方法です。
マンションの条件にもよりますが、購入希望者が見つかるまで平均3ヶ月程かかります。
売却まで、時間と手間がかかる一方、高い価格で売却できます。
以下は、仲介でマンションを売却する流れです。
売り出しから売買契約を結ぶまでの期間は、買主が現れるかどうかによります。
仲介のデメリットは、時間と手間、加えていつ現れるか分からないことと言えます。
マンション売却の流れに関して詳しくはこちらをご覧ください。
査定を依頼する際は、一括査定サイトすまいステップを利用すると便利です。
すまいステップは、独自の厳しい基準で提携した優良企業の中から、一度に4社まで査定依頼できるサービスです。
3分程度の入力。完全無料でご利用いただけます。
買取
買取は、不動産会社に直接マンションを売る方法です。
購入希望者を募集する必要がないため、最短1週間で売却できます。
買取は、売却までの早さと手間の無さが最大のメリットですが、仲介の価格に比べて7割程度の価格で取引されます。
一刻も早く売却して、財産分与まで済ませたい方にはおすすめの売却方法です。
売却できない場合の選択肢
1章で解説したように、住宅ローンの完済と名義人の同意が得られない場合は売却できません。
この章では、売却以外の選択肢を紹介していきます。
売却できない場合の代替案として、一緒に考えていきましょう。
売却以外の選択肢
- どちらか一方が住み続ける
- 賃貸にする
- レンタルスペース・民泊にする
どちらか一方が住み続ける
売却できない場合でなくても、住み続けることを選ぶ方は多くいます。
すまいステップが実施したアンケートでは、56.7%の回答者が「離婚後にも住み続けていた」と回答しました。
ただ、住宅ローンの名義人でない人が住み続ける場合には注意が必要です。
住宅ローンは、ローンの名義人が支払いしなければいため、トラブルが起きやすいのです。
例えば、名義人でない元妻が住み続け、元夫が支払いを続ける場合、元夫の支払いが滞り、いきなり一括返済請求が元妻に届くケースなどがあります。
離婚時の不動産に関するトラブルについては3章をご覧ください。
名義人でない人が住み続ける場合は、ローン名義の変更をしておくと安心です。
名義変更できない場合は、公正証書でローンの支払いや、完済後の所有権について取り決めておきましょう。
賃貸にする
売却するのはもったいないと考え、賃貸に出す方もいらっしゃいます。
家賃収入が見込めるほか、賃貸をやめてマイホームに戻すこともできるなどメリットがあります。
ただし、『住宅ローンが完済できずに売却できない』場合の代替案としてはおすすめできません。
住宅ローンの規約上、賃貸とするには、いま借りている住宅ローンを完済しなければいけないためです。
賃貸向けのローンに借り換える方もいらっしゃいますが、賃貸向けローンは住宅ローンに比べて高金利に設定されています。
離婚時は金銭的な部分で揉めやすいので、お金に余裕がある方に向いた方法と言えます。
レンタルスペース・民泊にする
賃貸は、数年単位で貸し出す方法です。
一方レンタルスペースは、数時間単位。民泊は数日単位で貸し出しする方法です。
賃貸と同様に、住宅ローンは完済しなければいけないため、不動産投資用のローンへの借り換えの必要がでてきます。
レンタルスペースや民泊は、最近人気を増している投資方法なので、夫婦間のトラブルの心配がない方は検討してみてもいいでしょう。
ただし、マンションの管理規約上、レンタルスペースや民泊を禁止している場合も多いため、確認が必要です。
離婚時のマンション売却に関するよくある質問
離婚時のマンション売却は、財産分与などの関係から、少し複雑に感じる方も多くいます。
この章では、離婚時にマンションを売却する人がよく疑問に思いやすい部分を、Q&A方式でまとめています。
よくある質問
離婚前か後か、いつ売却するべき?
マンションを売却するタイミングは、離婚前と離婚後どちらでも問題ありません。
離婚前に売却すれば、離婚時点ですっぱりと縁を切れるメリットがあります。
一方で、離婚後に売却した方が、売却に時間をかけられるため、高い価格での売却を目指すこともできます。
離婚前に売却する場合
- マンションを手放した状態で離婚できる
- 離婚後に連絡をとれないなど、リスクがない
- 離婚を急ぎ、売却活動も焦りがちになる
(早く売るためには、安く売る必要がある)
離婚後に売却する場合
- 売却に時間がかけられる
- 離婚後も連絡を取り合わなくてはいけない
名義人が一人でも財産分与する?
不動産の名義人が一人であっても、結婚後に築いた不動産である場合は財産分与の対象です。
結婚に取得した財産や貯蓄は共有財産となり、平等に分与するのが一般的です。
一方で、結婚前からどちらかが所有していた不動産だった場合は、その人の特有不動産となり、財産分与の対象外です。
売却費用はどれほどかかる?
マンションの売却には費用がかかるため注意しましょう。
財産分与は、売却金額からローン残債と費用・税金を差し引いた手取り額を元に考えましょう。
マンション売却にかかる費用や税金は、売却金額の5~7%となるのが一般的です。
マイホームを売却する場合は、売却益を3,000万円まで非課税にする特例を利用できますので、多くの場合で税金が発生しない、あるいは少額となります。
- マンションの売却にかかる費用・税金一覧
科目 費用の目安 仲介手数料 売却額×3%+ 6万円 + 消費税
※売却金額400万円以上の上限額計算式ローン一括返済手数料 1~3万円(ネットバンキングの場合0円~15,000円) 印紙税 1000円∼6万円 譲渡所得税 売却で出た利益に対し
39.65%(所有期間5年以下)
20.315%(所有期間5年越え)抵当権抹消費用
(登録免許税)1~2万円(司法書士に依頼する場合の報酬を含む) その他 引越し費用など項目によって異なる
売却後の確定申告、納税は誰がする?
売却した不動産の名義人が、確定申告および納税を行います。
確定申告の期間は、売却した翌年の2月16日~3月15日の間になります。
共有不動産の場合は、それぞれが個別に確定申告を行い、税金が発生する場合は個別に納税します。
また、売却金額を元配偶者に全て分与した場合でも、不動産の名義人が確定申告を行います。
売却益が出ていない場合は、必ずしも確定申告を行う必要はありません。
ただし、損益通算・繰り越し控除等の節税に関する特例を受けるには確定申告が必要です。
親から購入資金を援助されていた場合の財産分与は?
例えば、妻の親から1,000万円の援助を受けてマンションを購入していた場合は、その1,000万円は妻側の特有財産(分与の対象とならない財産)となります。
ただし、購入時のマンションの価値と現在の価値は違うため、一般的には「援助金の1,000万円が購入時の価格の何割であるか」に応じて特有財産の額を決めます。
購入時4,000万円のマンションである場合、援助金1,000万円は、マンションの価値の4分の1となります。
現在のマンションの価値が2,000万円の場合は、4分の1の500万円が妻側の特有財産となります。
売却しないとトラブルが起きやすい?
マンションを残して離婚すると、元配偶者とのつながりが完全に断ち切れず、トラブルに発展するケースがあります。
よくあるトラブル事例を確認しておきましょう。
売却の自由が利かなくなるリスクがある
不動産の売却には、名義人本人に売却の意思がないと売却できません。
よくある例としては、名義人が夫のマンションに妻子が残るケースです。
妻側が「やっぱりマンションを売却したい」と思い立った時に夫連絡が取れず、売却ができない可能性があります。
- 実際に合ったトラブル事例:夫が失踪し連絡が取れない
マンションを購入して2年後、夫は会社を辞めて、IT関連のベンチャー企業を立ち上げました。安定した生活が崩れるのではと不安を抱きましたが、夫の意思は固く、事業計画のきちんとしていたので、みんなで夫の新しい船出を応援しました。
(中略)
夫の事業は最初こそ利益も出ていましたが、会社員時代に比べると収入は激減。そのうちに事業が行き詰ってしまいます。
(中略)
そうこうしているうちに夫が失踪してしまったのです。この事例では、失踪後夫との連絡が取れず思うように売却することができませんでした。結果的に競売となり夫の母親と妻が借金を背負う形になりました。
一方がローンを滞納した際に、その請求が来るのが配偶者であることはよくあります。
離婚時に売却を済ませ、不動産関係をしっかりと清算しておくことが最大のリスク回避となります。
名義人がローンを払わなくなるリスクがある
住宅ローンの支払いはローンの名義人が行います。
夫が名義人で、妻がマンションに残る場合でも、夫が支払います。
例えば、夫の収入が減少した場合、住宅ローンの返済は滞ります。
住宅ローンを3ヶ月程滞納すると、ローン名義人は一括返済を強いられますが、妻が連帯保証人となっている場合、妻にも請求が来ます。
- 実際に合ったトラブル事例:10年後に元夫のローン滞納で督促状
離婚して10年以上が過ぎ、再婚した夫との間に子供も生まれたS子さん。幸せな家庭の主婦となり、以前の結婚生活のことはすっかり忘れていたころに、もっと夫がローンを返せなくなったことが原因で突然、督促状が届きました。その時初めて、自分が住宅ローンの連帯保証人であったことにかがついたのです。
離婚したからといって連帯保証人の責任は無効にできません。
離婚時の財産分与で家の名義を夫に替えたとしても連帯保証人が自動的に外れることはありません。連帯保証人を解除するのは困難ですが、2つの方法があります。
- 別の連帯保証人(同意のうえ)を銀行に提案する
- ローンを別の金融機関に組み換える
1つ目の方法では、連帯保証人を解除する旨を詳しく説明したうえで、返済能力の高い代わりの人を見つけることができれば大いに可能性があります。
2つ目の方法では、現在のローンを払い終えることになるので必然的に連帯保証人は外れます。
財産分与でトラブルになりやすい
結婚後に購入したマンションは財産分与の対象になります。
財産分与は50%ずつ資産を分け合うのが一般的ですが、マンションのままでは分配が非常に難しくなります。
売却せずにマンションを分与するには、片方に不動産の価値の半分の額を現金をで渡す必要があります。
不動産の価値は売却しない限り明確ではないため、分与額でもめやすくなります。
- 実際に合ったトラブル事例:公正証書を残し財産分与したのに約束が守られず
夫が浮気し、浮気相手に子供ができたとのことで離婚しました。完全に夫に非があるため、弁護士に相談して公正証書を作成。内容は「子供が20歳になるまで養育費を1人2万円ずつ支払い、自宅の財産分与は妻に財産分与。
(中略)
そんな時、元夫から連絡がきたのです。
「失業して住宅ローンが払えなくなり、3ヶ月滞納している。今後も払える見込みがない。」この事例では、公正証書といわれる強制力がある文書を残したうえで財産分与したのにも関わらず、夫が約束を守れなくなり返済義務が妻に移行しました。
財産分与の末、夫が支払う家に住み続けるのは非常に危険です、
公正証書といえど相手に資産がないのなら強制執行することはできないのです。2人で冷静に話せるうちに早期的に売却を決断してしまう方がよいでしょう。
まずは自宅マンションの査定をしてみて、その値段を判断材料として離婚協議を進めていくことをおすすめします。
離婚時に所有するマンションの価値を知ることはこれからの話をスムーズに進めていくうえで非常に重要です