マンションを売却して利益(譲渡所得)が出たら、確定申告をする義務があります。利益が出ているのに確定申告をしないと、追徴課税や延滞金といった罰則もあります。
「確定申告しなければならないと、知らなかった」「適当に数字を書いて出したら、税務署から修正申告するように言われた」など、知らないばかりによけいな時間や手間、罰金などを取られる可能性があります。
確定申告が不慣れな方にとっては、必要書類や書き方がわかりにくく難しく感じるかもしれません。事前に書き方を把握して、漏れや誤りがないように書類作成を行いましょう。
この記事では、マンション売却後の確定申告の書き方や必要書類、確定申告書作成の流れ、注意点のほかに、マンションを高く売却する方法にも触れています。マンション売却後の確定申告書を作成する際の、参考にしてください。
マンション売却後の確定申告に必要な書類
マンション売却後の確定申告をする際に、必要となる書類がいくつかあります。ここではどのような書類が必要なのか解説します。
確定申告書B
確定申告書には、確定申告書Aと確定申告書Bがあります。所得制限の範囲や予定納税の有無でどちらの申告書になるか変わってきますが、マンション売却により得た利益を申告する際に利用するのは、確定申告書Bです。
確定申告書Bの入手は、税務署や市区町村の担当窓口、国税庁の公式サイトのダウンロードなどで行いましょう。またe-Taxも活用できます。e-Taxでは白色申告書の収支内訳書や、青色申告決算書なども作成・提出できるので便利です。
確定申告書Bは汎用的で、原則すべての所得を対象としています。誰でも使えるメリットはありますが、簡易的で比較的作成が容易な申告書Aと異なり、申告書Bは項目が多く作成が複雑です。慣れていないと、作成に時間がかかるかもしれません。
申告書Bには住所や氏名、所得、納める税金などの基本情報を記載する第一表と、所得の内訳や家族への給与などを記載する第二表があります。確定申告書提出の際には、第一表、第二表どちらも提出が必要です。
譲渡所得の内訳書
譲渡所得の内訳書も、確定申告時に提出が必要な書類です。この書類は土地や建物の利益(譲渡所得金額)の計算に用いられます。
譲渡所得内訳書は、税務署の担当窓口で入手できます。また国税庁ホームページからのダウンロードや、e-Taxを活用しても作成可能です。
譲渡所得の内訳書に記載する主な項目は、以下の通りです。
- 売主の個人情報(氏名、現住所、電話番号、職業)
- 譲渡した物件の所在地、面積、利用状況
- 売買契約日
- 引き渡し日
- 買主の所在地と氏名(名称)
- 代金の受領状況と売却理由
- 売却した物件の所得時にかかった費用
- 減価償却相当額
- 譲渡費用(仲介手数料・収入印紙代など)
- 譲渡所得金額の計算結果
- 交換、買換(代替)特例の適用を受ける場合の譲渡所得の計算
譲渡所得の内訳書は、「収入金額-(取得費+譲渡費用)」の内容を明確にする重要な役割を持っています。譲渡所得金額の計算に必要な数字を入力するため、誤りのないように契約書や領収書を手元に準備してから書類を作成しましょう。
申告書第三表(分離課税用)
申告書第三表も、確定申告時に提出する書類の一つです。税務署や市役所などで、書類を入手できます。
申告書第三表は、確定申告時に全員の提出が義務づけられているわけではありません。分離課税の対象者のみが、確定申告時に提出します。
分離課税の対象となる所得には、譲渡所得(一部)、配当所得(一部)、雑所得(一部)、山林所得、退職所得があります。不動産を売却して得た利益の場合は譲渡所得なので、申告書第三表の作成が必要です。
土地や建物の税率は、長期譲渡所得と短期譲渡所得で変わります。売却した物件の所有期間が5年を超える場合に長期譲渡所得、所有期間が5年以下の場合に短期譲渡所得になります。
また不動産の物件は、適用する特例によりさらに第三表の記載箇所が分かれます。短期譲渡所得は一般分と軽減分に、長期譲渡所得は一般分、特定分、軽課分に分かれるので、該当する特例を適用したいときには記載場所に注意しましょう。
マンション売却後の確定申告書の書き方
マンション売却後の確定申告の際に、税務署に提出する書類は3種類です。「確定申告書B」「譲渡所得の内訳書」「申告書第三表」の記載方法を、それぞれ解説します。
確定申告書の記載手順
国税庁の「確定申告書の記載例」を簡略化した確定申告書Bの記載手順は、以下の通りです。
- 第一表の上の欄外を記入(宛先税務署長、年、住所氏名等、個人番号、住所、1月1日時点の住所、屋号・雅号、生年月日、種類、整理番号)
- 第一表の「収入金額等」と「所得金額」を記入
- 第二表を作成
- 第一表の「所得から差し引かれる金額」を記入
- 第三表の分離課税の「収入金額」や「所得金額」などを記入
- 第三表の「税金の計算」を記入
- 第一表の「税金の計算」、「その他」などを記入
上記の補足ですが、「収入金額等」と「所得金額」の収入とは、経費や控除額などを含む得たお金の全体で、いわゆる売上額です。所得とは、売上額から原価、経費、控除額などを差し引いて残った利益です。「収入金額等」と「所得金額」は異なるため、両方記載しましょう。
また第二表や第三表は、第一表に記入する数字を算出するためにも用います。そのため第一表の途中で、第二表や第三表を作成した方が第一表の作成がスムーズに進みます。
内訳書の記載手順
確定申告書と一緒に、譲渡所得の内訳書を提出します。内訳書の記載手順は、以下の通りです。
- 1枚目の右上に、提出年と枚数を記入
- 住所、氏名、職業を記入
- 売却した物件について記入(所在地、用途、面積、売買契約日、引き渡し日)
- 買主の情報(住所、氏名、職業など)を記入
- 譲渡価額と代金の受領状況を記入
- 売却した物件の購入代金について記入(だれから、いつ、いくらで購入したか)
- 建物の償却費相当額を計算して、所得費を記入
- 売却にかかった費用(仲介手数料、収入印紙代など)を記入
- 計算式に数字をあてはめ、譲渡所得金額を出す
売却してから日にちが経っていると、売買契約日や引き渡し日、各種金額など記憶が曖昧になってしまいます。譲渡所得額を算出する重要な書類なので、売買契約書や領収書などを見ながら、正確な数字を記入しましょう。
申告書第三表(分離課税用)の記載手順
譲渡所得税の申告には、確定申告書Bだけでなく分離課税用の申告書第三表の提出も必要です。第三表では収入金額や所得金額などの数字を記入し、計算式に当てはめて税金の計算を行います。算出した納税額を使用して、第一表の「税金の計算」を完成させます。
第三表の記載手順は以下の通りです。
- 提出年、空白部分に「確定」の文字、住所、氏名を記入
- 「収入金額」を記入
- 「所得金額」を記入
- 「税金の計算」を記入
- 特別控除額がある場合は、特別控除額の合計額を記入
第三表の「収入金額」で使用する数字は譲渡所得の内訳書2面の「1譲渡価格」を、「所得金額」は譲渡所得の内訳書3面の「E譲渡所得金額」を使用しましょう。
記載箇所は長期譲渡所得と、短期譲渡所得に分かれています。売却した不動産の所有期間が5年を超えるなら長期譲渡所得、5年以下なら短期譲渡所得に記入します。
分離課税の短期・長期譲渡所得に関する事項は、譲渡所得の内訳書の2面の「所在地」、3面の「必要経費」「差し引き金額」を参照するとよいでしょう。
マンション売却後の確定申告の流れ
確定申告書を記載するためには、添付書類の準備や譲渡所得税の計算が必要です。ここではマンションを売却してから、確定申告を行うまでの流れについて解説します。
確定申告書の添付書類を準備する
マンション売却により利益が出たら、添付書類を準備しましょう。確定申告に使用する必要書類には、自分で準備する書類と税務署から調達するものがあります。
自分で準備する書類は以下の通りです。
- 売却したマンションの売却時の売買契約書(コピー可)
- 売却したマンションの購入時の売買契約書(コピー可)
- 仲介手数料や印紙税などの諸経費の領収書
- (特例を受ける場合)特例に必要な書類
マンション売却のどさくさに紛れてしまい、売買契約書が見つからない場合もあるでしょう。必要書類はコピーでもかまわないため、不動産会社や売主に連絡を取り、売買契約書のコピーをもらってください。
原本が必要な場合は、不動産会社や売主に署名・捺印をしてもらって再発行します。こちらの場合は、収入印紙も必要です。
次に、税務署から調達する書類は以下の通りです。
- 確定申告書B
- 譲渡所得の内訳書
- 申告書第三表(分離課税用)
税務署に取りに行かなくても、国税庁の公式サイトからダウンロードもできます。e-Taxでの提出は、手計算する必要がないので簡単でおすすめです。
譲渡所得税を計算する
マンション売却時の確定申告で、多くの方がつまずくのが譲渡所得税の計算です。譲渡所得税は、譲渡所得に税率をかけて算出します。
譲渡所得を算出するための計算式は、「譲渡所得 = 譲渡価格 - 取得費 - 譲渡費用」です。
「譲渡価格」とは、マンションの売却金額に、売主が納税済みの固定資産税・都市計画税を日割計算して精算した金額を足したものです。
「所得費」は、売却したマンションの購入時の費用から、減価償却相当額を差し引いたものです。減価償却は築年数によって劣化が進むマンションの建物部分にのみ、該当するので注意しましょう。減価償却相当額の計算式は「減価償却費 = 取得価額 × 0.9 × 償却率 × 経過年数」です。
「譲渡費用」は、仲介手数料や印紙税など売却にかかった費用です。登録免許税は経費とされますが、抵当権抹消費は経費とされないので注意が必要です。
最後に「譲渡所得 = 譲渡価格 - 取得費 - 譲渡費用」の計算式に実際の数字を当てはめて譲渡所得を算出したら、税率をかけて譲渡所得税を出します。
マンションの所有期間により、税率は異なります。税率は以下の通りです。
所有期間 | 区分 | 税率 |
---|---|---|
5年超え | 長期譲渡所得 | 39.63% |
5年以下 | 短期譲渡所得 | 20.315% |
※長期譲渡所得の税率は所得税30%+復興特別所得税0.63%+住民税9%、短期譲渡所得の税率は所得税15%+復興特別所得税0.315%+住民税5%=合計20.315%で計算しています。
参考:国税庁 「減価償却費」の計算について
参考:国税庁 長期譲渡所得の税額の計算
参考:国税庁 短期譲渡所得の税額の計算
税務署で確定申告を行う
必要書類がすべてそろったら、マンションを売却した翌年の2月16日?3月15日の1カ月間に確定申告を行います。年度により若干時期がずれる場合があるので、不安なら確認してから税務署に行くとよいでしょう。郵送の場合は、通信日付印の日付が提出日とされます。
既定の時期を過ぎても、確定申告は可能です。しかし「無申告課税」や「延滞税」の対象として、ペナルティ(罰金)が発生するので注意してください。
確定申告書作成に不安がある方には、この時期に各市区町村で開催されている税理士の無料相談がおすすめです。
マンション売却後の確定申告に関する注意点
マンション売却は、人生に何度もあることではありません。そのため確定申告に不慣れで、わからないことも多いでしょう。ここでは確定申告時の注意点をみていきます。
確定申告をしないとペナルティが科される
マンションを売却して利益が出た場合、税務署に確定申告をするのは義務です。確定申告において無申告や、報告漏れ、遅延などが発覚した場合、ペナルティを科されます。
もしも税務署が確定申告に不審な点を発見した場合、まず税務調査が行われます。申告漏れや過少報告などが見つかると知らせが届くので、必ず修正申告をしましょう。
修正申告をしないと、更正処分と追徴課税や延滞税などの連絡が、税務署から届きます。
一番やってはいけないことは、追徴課税の放置や無視です。最悪なケースでは滞納処分の対象として、財産の差し押さえをされるかもしれません。早急な納付や一括払いが難しい場合には、税務署に相談してみてください。
ペナルティは、追徴課税の種類や税額によって異なります。本来納めるべき税金を納めたうえで、一般的には税率10%から20%程度の罰金を支払います。もっとも高い罰則では、税率が50%になる場合もあるので、注意が必要です。
ペナルティを受けないためにも、正確な確定申告を行うよう心がけましょう。
損失だった場合でも申告はするべき
確定申告が義務とされているのは、マンション売却で利益が出た場合です。中には「マンション売却で損失が出たけれど、確定申告は必要ないの?」と疑問を持つ方もいるでしょう。
損失が出た場合、確定申告をする義務はありません。しかし利用できる特例があり所得税の還付を受けられそうなら、確定申告をすべきです。
マンション売却の際の特例には、以下の2つがあります。
- マイホームを買い換えた場合の譲渡損失の損益通算及び繰越控除の特例
- 特定のマイホームの譲渡損失の損益通算の特例
2つの違いは、マンションを売却して新たにマイホームを購入した買い替えの場合か、売却で損失が出た場合かの違いです。
どちらも損益通算と繰越控除ができますが、確定申告が適用条件です。発生した売却損を所得から差し引けるかもしれないので、売却損が出た場合も特例を使う予定があるなら確定申告をしましょう。
書き方のルールを守る
手書きの場合、計算や入力漏れの自己チェックを行わなければなりません。また読めない文字や書き方が誤っている箇所があると、税務署から連絡が来る場合があります。
国税庁が特に注意喚起している書き方のルールは、以下の3点です。
- 黒色ボールペンで強く記入すること
- 数字はマス目の中に丁寧に記入すること
- 記載ミスは二重線で訂正し、正しいものを余白に適宜記入すること
書類を作成した後は、誤りがないか再度確認しましょう。
またパソコンでの確定申告(e-Tax)の場合、自動で計算式の結果を算出してくれますし、上記の注意事項を心配する必要がありません。そのため手書きよりも計算ミスや入力漏れ、提出書類の不備などを防げるのでおすすめです。
マンションを高く売却する方法
マンションは売却方法や手段によって、大きく売却額が変わります。ここではマンション売却のコツをお伝えします。
マンション売却に強い不動産会社に依頼する
不動産会社といっても、それぞれの会社に強みや特徴があります。マンション売却をするならば、マンションの売却に強い不動産会社を選びましょう。
マンションは所有者だけではなく管理会社や組合など、確認しなければならないことが数多くあります。そのため不慣れな担当者だと、売却がもたつくかもしれません。マンションの販売実績が多い不動産会社や担当者なら、マンション売却に慣れているので売却活動もスムーズに進みます。
またマンションと一括りでいっても、ファミリー用のマンション、投資用のマンション、築浅マンション、築30年超えのマンションなどさまざまです。不動産会社のサイトを見て、売却予定の物件と似たタイプのマンションを多く扱っているか確認しておくとよいです。
複数の不動産会社の査定額を比較する
マンションの販売価格を最終的に決めるのは、売主です。販売価格という重要な内容を、不動産会社任せにはできません。自分で物件の相場を、把握する必要があります。
複数の不動産会社に査定依頼をすることで、物件のおおよその相場がつかめます。また複数の不動産会社とのやり取りにより、提案するサービスや担当者の実力や相性がわかります。
1社に査定依頼をしただけでは、相場も不動産会社の実力もわかりません。複数の会社に査定依頼を出しましょう。複数の不動産会社を回るのが大変なら、無料の不動産一括査定サービスがおすすめです。
一括査定はすまいステップがおすすめ
無料の不動産一括サービスを使うと、家にいながらインターネットを介して複数の不動産会社に査定依頼を出せます。個人情報や物件の情報を一度入力するだけなので、簡単です。
例えばすまいステップでは個人・物件情報を入力するだけで、最大4社に一括査定依頼できます。厳選審査を通過した不動産会社ばかりが登録しているので、悪質な業者に引っかかる心配もありません。
また経験や実力を持つエース級の担当者が対応してくれるので、疑問や相談があれば頼りになります。無料なので、気軽に活用してみましょう。



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マンション売却後の確定申告書の書き方を覚えておこう
マンションを売却したら、それでマンションに関わる諸手続きが終了したわけではありません。利益が発生していたら税金を納める必要がありますし、損失が出ていても特例を活用すれば損失を最小限に抑えられます。
源泉徴収を行っている一般のサラリーマンにとって、確定申告はなじみがなく難しく感じられるでしょう。しかし確定申告の義務を怠れば、追徴課税や延滞金などのペナルティを受けます。
税務署からの連絡を無視・放置するのは得策ではありません。わからないことがあれば、税務署に確認して対処する必要があります。
確定申告の手順や必要書類を知ることは重要です。決められた時期に正しい確定申告が行えるように、準備を進めましょう。
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