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更地渡しとは?古家付き土地の現況渡しとどちらが得?メリットとデメリットを解説

  • 更新日:2023年7月4日
監修畑中 学
不動産に関わる相続や債務問題のトラブルシューティングを得意とし、その真摯な取り組みがNHK、読売新聞、日本経済新聞などで紹介されている。武蔵野不動産相談室株式会社代表取締役。
【保有資格】宅地建物取引士、公認不動産コンサルティングマスター、マンション管理士、管理業務主任者
【URL】武蔵野不動相談室株式会社
更地渡しとは?古家付き土地の現況渡しとどちらが得?メリットとデメリットを解説

古い家屋を売却したいと思っていても、『高い費用をかけて解体工事を行ったのに、売れ残ってしまったらどうしよう…』と不安な方もいらっしゃるのではないでしょうか。

「更地渡し」で古家付き土地を売りに出すと、買主が見つかるまで家屋を残したまま売却活動ができます。

この記事では、不動産の売却方法の1つである「更地渡し」について、わかりやすく解説します。

古い家を売る8つの方法をわかりやすく紹介!税金や節税対策も解説

更地渡しとは

更地渡しとは、不動産売買において「売買契約を締結した後に、売主側の負担で更地にしてから引き渡す」という約束で、土地に建物を残した状態で売りに出す売却方法のことです。

更地渡しと現況渡しの違い

市場価値のない古い家屋の残った土地のことを「古家付き土地」といいます。

古家付き土地の売却方法として「現況渡し」と「更地渡し」の2つの方法があります。

現況渡しは、古家の解体費用を買主側が負担する売却方法です。古家を残したまま売りに出し、売買契約後、解体せずに引き渡します。

一方、更地渡しは、解体費用を売主が負担する売却方法です。売買契約後に売主側で古家を解体し、更地にした状態で引き渡します。

更地渡し現況渡し
売却活動中古家が残っている古家が残っている
引き渡し時更地古家が残っている
古家の解体費用売主側が負担買主側が負担

更地渡しに法的な定義はない

更地渡しという売却方法には、法的な定義がある訳ではありません。

更地渡しは、売主と買主が交わす売買契約に「引き渡し前に売主側で建物を解体し、更地にすること」を特約として盛り込むことで成立する取引です。

そのため、売主と買主の間のトラブルを未然に防ぐためには、工事の対象や範囲を書面で明らかにしておくことが不可欠です。

更地渡しのメリットとデメリット

この章では、更地渡しのメリットとデメリットについて、解説していきます。

更地渡しのメリット更地渡しのデメリット

更地渡しのメリット

更地渡しのメリットとして、以下の3つが挙げられます。

買主が見つかりやすくなる

更地渡しで売却するメリットとして、まず「土地の買主が見つかりやすくなることが挙げられます。

更地渡しの約束で売りに出されている古家付き土地は、買主にとって以下のメリットがあります

  • 買主が解体費用を負担しなくてよい
  • 引き渡し前に土地の状態が分かる

現況渡しの場合、買主は解体費用を負担する必要があるだけでなく、費用の見積もりから買主側で段取りしなければならないため、手間暇もかかります。

また、建物を取り壊して更地にしてみるまで、土地の状態が分かりづらいというリスクがあります。

更地渡しの場合は、売主側で建物を解体して更地に整地する過程で、ある程度土地の状態が分かるため、リスクが軽減されます。

以上の理由から、更地渡しは現況渡しと比べて、土地の流通性が高くなる可能性がある売却方法であると言えます。

売却中に固定資産税が上がらない

古家を更地渡しの約束で売却することは、売主にとっても売却活動中に固定資産税や都市計画税が値上がりしない」というメリットがあります。

家屋が建っている土地には、かかる固定資産税や都市計画税が減額される特例措置が適用されています。

固定資産税都市計画税
小規模住宅用地
(~200㎡までの部分)
課税標準×1/6×税率課税標準×1/3×税率
一般住宅用地
(200㎡を超える部分)
課税標準×1/3×税率課税標準×2/3×税率

(※課税標準:固定資産税評価額を元に決まる課税のベース)

逆に言うと、土地に建っている家屋を取り壊すと、この特例措置が適用されなくなり、支払う固定資産税・都市計画税の税額が高くなります。

固定資産税の課税対象は毎年1月1日時点に決まるため、建物を解体して更地にした状態で年を跨ぐと、固定資産税の税額は最大6倍になります。

しかし、更地渡しの約束で売却活動をすれば、土地を売りに出してから年を跨ぐことになってしまっても、家屋が残ったままなので、支払う固定資産税額を抑えたまま売却を続けられます

工事費用を売却時の経費にできる

売却後に支払う税金を計算する時に、解体工事にかかった費用を経費に計上できるというメリットもあります。

売却後に支払う税金は、以下の計算式で求められる「譲渡所得」に、税率をかけ合わせて計算します。

譲渡所得=売却価格-(譲渡費用+取得費)-特別控除額
譲渡所得税=譲渡所得×税率
すまリス
つまり、譲渡所得の金額が小さければ、売却後に支払う税金の金額も安くなります。
引き渡し前に行う解体工事の費用は、譲渡費用に含められます
解体工事費用の負担はありますが、売却して譲渡所得がある場合には、節税に繋げられるというメリットがあります。

更地渡しのデメリット

更地渡しのデメリットとして、以下の2点が挙げられます。

解体費用の負担がある

売却する家の解体費用を負担しなければならないのは、デメリットと言えるでしょう。

解体費用は、敷地内の建物の構造や材質、大きさによって変動します。

一般的な家屋で、建物を取り壊して廃材を処理するために、おおよそ100~300万円かかります。

更地にするためにかかる費用について、詳しくは次の章をご覧ください。

トラブルが起きる可能性がある

売主と買主の更地渡しに対する認識の齟齬によって、トラブルが起きるリスクがあるのもデメリットとして挙げられます。

前章で説明した通り、更地渡しには法的な定義がありません。売主と買主の間の取り決めに基づいて契約が交わされます。

そのため、事前の取り決めに曖昧な部分があると、思いがけないトラブルが発生する恐れがあります。

たとえば、売主が「隣地との境界にある物だから」と自己判断でブロック塀を残したまま引き渡した結果、当然撤去した状態で引き渡されると思っていた買主と揉めてしまうということがあります。

トラブルを防ぐためには、塀だけでなく、庭木や庭石など土地に存在しているもの全てについて「何を残して何を撤去するのか」を取り決めておきましょう。

また、更地で引き渡すのか、整地まで行って引き渡すのかどうかも売主と買主で齟齬が起きやすい部分であるため、必ず確認しましょう。

すまリス
トラブルが起こるリスクは、売主と買主の間の取り決めを書面に残すことで軽減できます。

更地渡しにかかる費用

更地渡しにかかる費用は、大きく4つに分けられます。

家屋の解体費用

家屋の解体費用は、主に建物の広さと構造(建材)によって変動します。

すまリス
たとえば、鉄骨製の建物の方が、木造よりも解体が難しいため、費用は高額になります。
以下に、おおまかな費用の相場を、表にしてまとめました。
坪数木造鉄骨造鉄筋コンクリート造
20坪62~130万円68~140万円70~160万円
30坪93~195万円102~210万円105~240万円
40坪124~260万円136~280万円140〜320万円
60坪186~390万円204~420万円210~480万円
80坪248~520万円272~560万円280~640万円

間取りや、家の階数によっても費用は変動します。特に、地下階がある場合は高額になりやすいです。

ご自身の家の解体費用を詳しく知りたい場合は、解体業者に問い合わせて見積もりを取っておくのがオススメです。

家屋以外の撤去費用(付帯工事費用)

敷地に、家屋以外の付帯物がある場合には、その撤去工事費用がかかります。

付帯物とは、たとえば以下のような物です。

  • ブロック塀
  • 車庫、カーポート
  • 古井戸
  • 庭木
  • 納屋、物置
  • 浄化槽

解体工事見積もりを受ける際には、費用に含まれている項目をしっかり確認しておきましょう。

廃材の処理費用

家屋や付帯物の解体工事によって出た廃材(木くず、金属くず、瓦礫など)の処理にも費用がかかります。

また、家屋に不用品を残した状態で解体した場合には、残置物の撤去費用もかかります。

廃材や残置物の分別作業にも人件費がかかるため、家屋に使われている建材の種類が多かったり、家屋に残した不用品の量が多いと、高額になりやすいです。

すまリス
残置物は、免許の関係で依頼した解体業者では処分できず、別途専門の業者へ依頼しなければならないこともあります。残置物の処分まで任せられるかどうかは、事前に業者に確認しておきましょう。

建物滅失登記費用

土地に建っている建物を取り壊すと「建物滅失登記」を法務局に申請して行わなければなりません。

建物滅失登記の申請手続きを自分で行う場合は、登記事項証明書を取得する費用(1,000円程度)の負担が必要です。

登記の手続きを土地家屋調査士や司法書士に委任する場合は、報酬と実費を合わせて約4~5万円かかります。

更地渡しの流れ

実際に更地渡しをする流れは、以下の通りです。

  1. 更地渡しの約束で売り出す
  2. 買主と売買契約を結ぶ
  3. 解体工事を実施する
  4. 決済・引き渡し
  5. 建物滅失登記

注意点として、更地渡しの場合、土地の引き渡し後も売主が「建物滅失登記申請」をする必要があります

解体後に建物滅失登記を行わないと、買主が新しい建物を建設できません

建物滅失登記は、解体工事から1ヶ月以内に申請しなければなりません。申請を怠った場合は、過料(罰金)が課せられる対象となります。
自分で登記申請をする時間が取れない場合、手続きが難しい場合は、土地家屋調査士や司法書士に依頼して手続きを代行してもらうことも可能です。

更地渡しが向いているケース

古家の解体費用は高額であるため、

建物が住める状態ではない場合

たとえば古い建物の基礎に不具合が生じてしまっていたり、築年数は浅くてもシロアリ被害に遭っていたりして、建物の状態が悪い場合には、更地渡しの約束で売却するのがオススメです。

建物の基礎部分や柱がボロボロになってしまっていると、修繕して利用するには高額な費用がかかります。

損傷具合によっては、お金をかけてリフォームをしても建物が利用できない場合もあります。

そうなると、古家付き土地を現況渡しで売り出しても、「安く買った古家をリフォームして住みたい・貸家にしたい」という買主にとっても購入するメリットが低くなります。

建物部分を残して売ることで、売主は契約不適合責任が発生するリスクも負うため、建物の状態が著しく悪い場合は、更地渡しでの売却が向いています

解体によって控除が受けられる場合

残っている古家を取り壊すことで相続空き家を譲渡した場合の3,000万円特別控除の特例」を適用できる場合は、支払う譲渡所得税を大きく節税できるため、引き渡し前に解体工事をした方が収支が良くなる可能性があります。

相続空き家の3,000万円控除の特例は、適用要件が細かく決められていますが、昭和56年5月31日以前に建築されている(旧耐震基準である)、被相続人が一人暮らしをしていた家である場合、適用できる可能性があるため、詳しく要件を確認してみましょう。

相続した空き家の3,000万円控除の適用要件をわかりやすく解説

土地の固定資産税が高い場合

予め更地にした状態で売り出すか、売買契約後に引き渡す約束で売り出すか、どちらにするか迷う場合には、土地の固定資産税を見直してみましょう

建物を取り壊すと、建物について支払っていた固定資産税の支払いはなくなりますが、土地にかかる固定資産税が最大6倍に増額します。

そのため、立地や敷地面積によっては、思いがけず税金が高額になる可能性があります。

家屋の取り壊し後すぐに売却できなかった場合に、負担になる金額ではないか、固定資産税を確認しておきましょう。

古家付き土地を売却する場合は解体して更地にすべき?そのまま売却した方がよい?

更地渡しで売却する時の注意点

更地渡しの約束で売却する場合には、以下の3つのポイントに気をつけることで、トラブルを未然に回避しましょう。

売買の条件を明確にする

1章でもお伝えしましたが、更地渡しの条件をしっかり話し合い、買主との間に齟齬のないように、きちんと契約書に記載しておきましょう

特に、以下のポイントについては、話をすり合わせておくのがオススメです。

  • どこまでの範囲を解体・撤去するか
  • どのタイミングで解体工事を始めるか
  • 整地まで行うかどうか

再建築不可物件でないか確認する

売却する土地が「再建築不可」となっていないか、気をつけましょう。

再建築不可であるかどうかは、市区町村役場など、建築の可否を判断できる自治体で確認できます。

なお、土地が再建築不可の場合は、建物を取り壊してしまうと、再び建物を建てられなくなってしまいます

すまリス
再建築不可の土地でも、建物をリフォームして活用することは可能です。
土地に接している道路が「建築基準法上での道路」でない場合は、再建築不可の土地である可能性があります。
建築制限に関しては売買を担当する不動産会社も調査をしますので、必ず確認を取りましょう。

近隣住民とのトラブルに気をつける

解体工事によって発生する騒音や振動によって、土地の近隣住民とトラブルになる恐れがあります。

事前に解体業者と近隣住民に挨拶回りをするなどして、解体工事を行うことや、工事の期間を伝えておくとよいでしょう。

売主にとっては、近隣に住む方々は売却後は関わり合いのなくなる人たちかもしれませんが、買主は今後もその土地で暮らしていくことになります。十分に配慮した上で、解体工事を実施しましょう。

記事のおさらい

更地渡しとは何ですか?

更地渡しとは、更地渡しとは、不動産売買において「売買契約を締結した後に、売主側の負担で更地にしてから引き渡す」という約束で、土地に建物を残した状態で売りに出す売却方法のことです。

詳しく知りたい方はこちらをご覧ください。

更地渡しのメリットとデメリットにはどんなものがありますか?

更地渡しのメリットには、以下の3点が挙げられます。

  • 買主が見つかりやすくなる
  • 売却中に固定資産税が上がらない
  • 工事費用を経費にできる

更地渡しのデメリットには、以下の2点が挙げられます。

  • 解体費用の負担がある
  • トラブルが起きる可能性がある

詳しくはこちらをご覧ください。

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