不動産を売るとき、「買主がキャンセルした」「売却後にクレームが来た」 などのトラブルが起こることもあります。
不動産売却では、多額の金銭のやり取りや、様々な法律が絡んでくるためトラブルに巻き込まれることが多いです。
本記事では、売却時にトラブルに巻き込まれないためにも、よくあるトラブルや対策を流れに沿って解説し、信頼できる不動産会社の見極め方、トラブルを避けるためにすべきことを細かく説明します。
【不動産売却でよくあるトラブル】
- 査定段階のトラブル
- 媒介契約段階のトラブル
- 売却活動段階のトラブル
- 売買契約段階のトラブル
- 引き渡し段階のトラブル
- 確定申告段階のトラブル



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不動産売却でよくあるトラブルと対策
不動産売却は、多くの人にとって一生に一度あるかないかの大きな取引です。高額な金額が動くだけに、残念ながら様々なトラブルが発生する可能性も否定できません。しかし、事前にどのようなトラブルが起こりうるのか、そしてその対策を知っておくことで、リスクを最小限に抑え、安心して売却を進めることが可能です。
ここでは、売却プロセスを時系列に沿って「査定」「媒介契約」「売却活動」「売買契約」「引き渡し」「確定申告」の6つの段階に分け、それぞれの段階で特に発生しやすいトラブルとその具体的な対策を詳しく解説していきます。
査定段階のトラブル
売却の第一歩となるのが、不動産会社による物件の査定です。この初期段階においても、注意すべきトラブルがいくつか存在します。
査定額の根拠が不透明
不動産会社から査定結果として金額だけが提示され、なぜその評価額になったのか、具体的な算出根拠が示されないケースです。
周辺の類似物件の成約価格(取引事例比較法)、土地や建物の評価(原価法)、収益性(収益還元法)など、どのような評価方法に基づき、物件のどの点がどのように評価されたのかが不明瞭だと、その査定額が適正なのか判断できません。不動産会社の信頼性を見極める上でも、根拠の明確さは重要です。
【対策】
- 査定額の根拠となる資料(比較事例、評価項目など)の提示を具体的に求める。
- 複数の不動産会社に査定を依頼し、査定額とその根拠を比較検討する。
査定額が高すぎる(釣り査定)
不動産会社が媒介契約を獲得することだけを目的として、意図的に相場よりもかなり高い査定額を提示する、いわゆる「釣り査定」です。
売主は「高く売れるかもしれない」と期待してその会社と契約してしまいがちですが、実際にその価格で売れる可能性は低いです。結果的に、売却活動が始まっても買い手が見つからず、「この価格では売れないので値下げしましょう」と大幅な価格引き下げを提案されることが典型的なパターンです。これにより、売却までに無駄な時間がかかり、本来売れたはずのタイミングや価格を逃してしまう不利益につながります。
【対策】
- 複数の査定額を比較し、突出して高い場合はその客観的な根拠を厳しく問いただす。
- 査定額の高さだけでなく、現実的な販売戦略や実績も合わせて評価する。
査定額が低すぎる
相場や物件の本来の価値を無視して、不当に低い査定額が提示されるケースです。
不動産会社に売却の専門知識が不足している場合や、悪質なケースでは、不動産会社自身や関連業者が安く買い取る(買い叩く)ことを目的としている可能性も考えられます。売主が相場を知らない場合、気づかずに低い価格で売却してしまい、大きな損をしてしまうリスクがあります。
【対策】
- 必ず複数の不動産会社に査定を依頼し、おおよ所の適正相場を把握する。
- 極端に低い査定額については、その理由を納得できるまで確認する。
物件情報を伝え忘れてしまう
売却する物件について、売主が把握している情報を不動産会社に正確に伝えないことから生じるトラブルです。
特に、雨漏り、シロアリ被害、給排水管の重大な故障、建物の傾きといった物理的な欠陥や、過去の事件・事故(心理的瑕疵)、近隣の騒音・異臭(環境的瑕疵)など、買主の購入判断に影響を与える可能性のある「瑕疵」について伝え忘れると、売却後に「契約不適合責任」を問われる可能性があります。これは、売主が知らなかった瑕疵であっても責任を負う可能性があり、最悪の場合、損害賠償請求や契約解除に至る重大なトラブルです。売主には、知りうる情報を誠実に告知する義務があります。
【対策】
- 物件に関する情報は、良い点だけでなく、欠点や懸念事項も含めて全て正確に告知する。
- 不動産会社が用意する「物件状況報告書(告知書)」に、記憶違いや漏れがないよう正直に記載する。
営業がしつこい
一括査定サイトなどを利用した後などに、複数の不動産会社から頻繁な営業電話がかかってきたり、アポイントなしで訪問されたりするなど、過度な営業活動を受けることがあります。断るのが苦手な場合、精神的な負担になるだけでなく、冷静な判断ができなくなる可能性もあります。
【対策】
- 契約する意思がない、あるいは検討中の段階であれば、その旨を明確に伝える。
- 連絡を希望する場合は、連絡手段(メールのみなど)や時間帯を指定する。
- 悪質な場合は、宅地建物取引業の免許行政庁や業界団体に相談する。
媒介契約段階のトラブル
売却活動を正式に依頼する不動産会社と媒介契約を結ぶ段階です。契約内容の理解不足が、後々の不満やトラブルの原因となります。
自分の意図と合わない種類の契約をしてしまう
媒介契約には「一般媒介」「専任媒介」「専属専任媒介」の3種類があり、複数社への依頼の可否、売主自身が買主を見つけること(自己発見取引)の可否、不動産会社のレインズへの登録義務や売主への活動報告義務の有無・頻度などが異なります。
例えば、「広く情報を公開して早く売りたい」のに専属専任媒介を選んでしまうと1社にしか依頼できず、「自分で買主を見つけるかもしれない」のに専属専任媒介を選ぶと仲介手数料が発生してしまう、といったミスマッチが起こります。自分の売却戦略に合わない契約を結ぶと、後で後悔することになります。
【対策】
- 契約前に、3種類の媒介契約のメリット・デメリット、義務・制限の違いを十分に理解する。
- 自分の売却方針(スピード重視か、価格重視か、自由度を確保したいかなど)を明確にし、最適な契約形態を選ぶ。
契約期間と更新について把握していない
媒介契約の有効期間は、宅地建物取引業法により最大3ヶ月と定められています。問題は、契約期間が満了した際の更新についてです。
契約書に「自動更新」の条項があると、売主から申し出ない限り自動的に契約が継続されます。不動産会社の対応に不満があっても、気づかないうちに契約が更新され、他の会社に依頼する機会を逃してしまう可能性があります。また、契約期間中に自己都合で解約する場合、それまでにかかった広告費などの実費を請求される可能性もあります。
【対策】
- 媒介契約書で契約期間(通常3ヶ月以内)と、期間満了後の更新が自動か否か、更新手続きの方法を必ず確認する。
- 中途解約する場合の条件(違約金の有無、費用請求の可能性)についても確認しておく。
仲介手数料のトラブル
不動産売却で多いトラブルが仲介手数料に関するトラブルです。
通常、家(土地)やマンションなどの不動産を売却する際、不動産会社に相談します。売買契約が成立した場合には、不動産会社に仲介手数料を支払う必要があるのですが、悪徳不動産の場合、法律で決められた額よりも多い仲介手数料を請求されます。
法律で定められた仲介手数料の上限は以下の通りになります。
200万円以下の金額 | 取引額の5% |
200万円超400万円以下の金額 | 取引額の4% |
400万円超 | 取引額の3% |
また、広告料といった名目で仲介手数料に上乗せされ不当に請求される場合があります。一般的に、依頼主は売却活動で発生した広告費を負担する義務はありません。
ですが、「通常の売却活動ではかからないはずだった交通費がかかった」「通常の広告よりも目立った広告を出したい」などは、別途広告料を支払う必要があります。
仲介手数料は不動産売買契約が決まってから払うものであって、それ以前(契約が決まっていない、専属媒介契約期間が過ぎてしまった)などによって支払う義務は一切ありません。
【対策】
- 仲介手数料の法定上限額と計算方法を把握しておく。
- 契約書で手数料の金額、計算根拠、支払い時期(成功報酬であること)を明確に記載してもらう。
- 仲介手数料以外に費用が発生する可能性があるか確認し、発生する場合はその内容と金額、売主の承諾が必要であることを契約書に明記する。
囲い込みを受けてしまう
不動産会社が、売主と買主の双方から仲介手数料を得る「両手仲介」を狙って、売却依頼された物件情報を意図的に他の不動産会社に公開しなかったり、紹介を断ったりする行為を「囲い込み」と言います。
具体的には、レインズ(不動産流通標準情報システム)に登録しない、登録しても「商談中」などと偽って他社からの問い合わせを断る、といった手口が使われます。囲い込みをされると、物件情報が市場に広く出回らないため、多くの購入希望者の目に触れる機会が失われ、結果として売却が長期化したり、相場より安い価格での売却を余儀なくされたりするなど、売主にとって大きな不利益となります。特に、1社にしか依頼できない専任媒介・専属専任媒介契約で起こりやすいトラブルです。
【対策】
- 媒介契約締結後、レインズへの登録証明書を発行してもらい、登録内容(価格、ステータスなど)を確認する。
- 定期的な販売活動報告を求め、どのような媒体で広告されているか、問い合わせや内覧の状況を具体的に確認する。
- 内覧希望が少ない、理由なく値下げを勧められるなど、不審な点があれば他の不動産会社に相談してみる。
- 不動産会社選定時に、囲い込み防止に対する姿勢を確認する。
契約書の内容がおかしい
媒介契約書は、不動産取引に関する専門用語が多く、内容も複雑なため、十分に理解しないままサインしてしまうケースがあります。
契約書には、不動産会社の行う業務の範囲、費用負担、免責事項など、重要な取り決めが記載されています。内容をよく確認しないと、例えば、売主負担となる費用の範囲が曖昧だったり、不動産会社に都合の良い免責事項が記載されていたりして、後でトラブルになった際に不利な立場に置かれる可能性があります。
【対策】
- 契約書は時間をかけて隅々まで読み込み、少しでも不明な点や疑問点があれば、納得できるまで不動産会社に説明を求める。
- 口頭での説明だけでなく、必ず契約書本文の内容を確認する。
- 必要であれば、署名・捺印前に第三者(弁護士など)に内容を確認してもらうことも検討する。
売却活動段階のトラブル
媒介契約を結び、不動産会社による売却活動がスタートします。しかし、期待通りの活動が行われなかったり、購入希望者との間で問題が発生したりすることがあります。
販売活動に不備がある
契約した不動産会社の販売活動が、質・量ともに不十分であると感じるケースです。
例えば、レインズへの登録が遅い、物件情報サイトへの掲載がない、掲載されていても写真が魅力的でない、説明文が不十分、チラシ配布などの広告活動がほとんど行われない、問い合わせへの対応が遅い、内覧時の対応が悪い、活動報告が義務付けられているのに(専任・専属専任媒介)報告がない、または内容が具体的でない、といった状況が考えられます。積極的な販売活動が行われなければ、当然ながら売却の機会は減少します。
【対策】
- どのような販売活動を期待するか、契約前に不動産会社と具体的にすり合わせておく。
- 定期的な活動報告を求め、具体的な活動内容(広告媒体、反響数、内覧数、買主の反応など)を確認し、疑問や不満があれば具体的に指摘し改善を要求する。
- 改善が見られない場合は、契約期間満了後の更新を見送る、あるいは契約解除を検討する(ただし、契約内容によっては費用が発生する場合もあるため注意)。
重要事項説明に不備がある
通常、重要事項説明は売買契約前に行われます。
売買契約に先立って、宅地建物取引士が買主に対して行う重要事項説明の内容に誤りがあったり、伝えるべき重要な情報が漏れていたりするケースです。
重要事項説明では、物件の権利関係、法令上の制限、インフラ(飲用水・電気・ガス・排水)の整備状況、マンションの場合は管理規約や修繕積立金の状況など、買主の購入判断に不可欠な情報が説明されます。この説明に不備があると、買主は誤った認識のまま契約してしまうことになり、後日トラブルが発覚した場合、不動産会社だけでなく、情報提供元である売主も責任を問われ、契約解除や損害賠償請求に発展する可能性があります。
【対策】
- 不動産会社に物件に関する正確な情報(登記情報、建築確認、管理規約など関連書類を含む)を提供する。
- 重要事項説明書の内容案を事前に確認させてもらい、事実と異なる点や記載漏れがないかチェックする。
内覧の予定が合わなかったり、買い主のマナーが悪い
購入希望者による物件の内覧は売却に不可欠ですが、日程調整や当日の対応でトラブルが発生することがあります。
特に売主が居住中に売却を進める場合、売主・買主・不動産会社の三者の都合を合わせるのが難しく、急な依頼や頻繁な内覧が負担になることがあります。また、内覧に来た買主候補者のマナーが悪く、無断で写真を撮る、部屋の隅々まで見ようとしてプライベートな空間に立ち入る、物件に対して批判的なことばかり言う、といった行為に不快な思いをすることもあります。
【対策】
- 内覧を受け入れ可能な曜日・時間帯、事前の連絡希望時間などを、あらかじめ不動産会社に明確に伝えておく。
- 内覧時の立ち会い方法(売主も立ち会うか、不動産会社に任せるか)や、見られたくない場所への対応などを事前に不動産会社と相談しておく。
- マナーの悪い内覧者については、不動産会社に注意を促してもらうよう依頼する。
価格交渉に自分の意向が反映されない
購入希望者から値下げ交渉が入ることは、不動産売買では一般的です。問題は、その交渉過程で売主の意向が無視されるケースです。
不動産会社は売主の代理人として交渉にあたるべきですが、中には早く契約をまとめたいがために、売主の希望を確認せずに買主の言い値に近い金額で話を進めようとしたり、「この価格でなければ売れない」と売主に対して値下げを強要したりする担当者もいます。価格は売却における最も重要な条件であり、最終的な判断は売主が行うべきです。
【対策】
- 値下げ交渉に応じる場合の最低ラインや判断基準を、事前に不動産会社と明確に共有しておく。
- 買主からの交渉内容は、金額だけでなく条件も含めて正確に報告してもらうように求める。
- 不動産会社の提案を鵜呑みにせず、納得できなければ安易に値下げに応じない姿勢を持つ。
購入申し込みがキャンセルされる
購入希望者から購入の意思を示す「買付証明書(購入申込書)」が提出されても、正式な売買契約を結ぶ前にキャンセルされることがあります。
主な理由としては、買主の住宅ローンの事前審査に通らなかった、より希望に近い他の物件が見つかった、家族の反対にあった、単純に心変わりした、などが挙げられます。売買契約前のキャンセルは法的には問題ありませんが、売主にとっては期待が裏切られる形となり、精神的なショックを受けることがあります。また、売却活動が振り出しに戻るため、時間的なロスも発生します。
【対策】
- 買付証明書を受け取る際に、不動産会社に買主の購入意思の強さ、資金計画(特にローン事前審査の状況)、キャンセルになる可能性などを確認してもらう。
- 契約前のキャンセルは起こりうることと理解し、一喜一憂しすぎないように心がける。
- キャンセルが続く場合は、価格設定や物件の状態、販売方法などを見直すきっかけとする。
売買契約段階のトラブル
買主が見つかり、諸条件について合意に至れば、正式な売買契約を締結します。この段階では、契約内容の解釈や、後日判明する問題点に関するトラブルが発生しやすくなります。
契約内容の認識に齟齬がある
不動産の売買契約書は、売買代金とその支払い方法、手付金の額と性質、所有権移転と引き渡しの時期、付帯する設備(エアコン、照明、カーテンレールなど)の範囲と状態、公租公課の分担、危険負担(天災などによる損害)、契約不適合責任の範囲や期間など、多岐にわたる重要な取り決めが記載されており、専門用語も多く複雑です。
口頭での説明や思い込みで理解したつもりになっていても、契約書の実際の記載内容と認識が異なっていると、後で「言った、言わない」「そんなはずではなかった」といったトラブルに発展します。例えば、引き渡し時期や、残していくと思っていた設備が撤去されていた、などで揉めるケースがあります。
【対策】
- 契約締結前に、契約書の全ての条項を不動産会社の説明を受けながら、売主・買主双方で丁寧に読み合わせ、内容を正確に理解する。
- 少しでも曖昧な点や疑問点があれば、その場で質問し、完全に解消してから署名・捺印する。
- 口頭での合意事項も、必ず契約書に明記してもらう。
売却活動の報告がされない
媒介契約の種類(専任媒介・専属専任媒介)によっては、不動産会社は売主に対して、売却活動の状況を書面などで定期的に報告する義務があります。
どのような広告を行い、どれくらいの反響があり、内覧が何件あって、どのような感触だったか、といった報告がなされないと、売主は自分の物件がどのように売られようとしているのか全く把握できず、不動産会社への不信感につながります。
【対策】
- 媒介契約書で定められた報告義務(頻度、方法など)があることを不動産会社に再確認し、履行を求める。
- 報告内容が不十分な場合は、より具体的な情報の提供を要求する。
契約時に知らされなかった欠陥が見つかる(契約不適合責任/瑕疵)
売買契約が完了し、物件の引き渡しを受けた後に、契約時には説明されていなかった重大な欠陥(瑕疵)が発見されるケースです。
例えば、雨漏り、シロアリ被害、給排水管の漏水や詰まり、建物の構造的な欠陥(傾きなど)が代表的です。このような場合、買主は売主に対して「契約不適合責任」を追及できます。具体的には、欠陥の修補(追完請求)、代金の減額請求、損害賠償請求、そして場合によっては契約の解除を求めることができます。
この責任は、原則として売主がその欠陥の存在を知っていたかどうかにかかわらず発生します(ただし、責任を負う期間や範囲は契約で定めることが可能です)。売主にとっては予期せぬ大きな負担となる可能性があります。
【対策】
- 売却前に、把握している物件の欠陥や不具合は、どんなに小さなことでも正直に全て買主に告知し、「物件状況報告書」や売買契約書に明記する。
- 不安な場合は、専門家によるホームインスペクション(建物状況調査)を実施し、結果を買主に開示する。
- 任意で「既存住宅売買瑕疵保険」に加入し、万が一の際の修補費用などをカバーできるようにしておく。
手付解除・違約解除が発生する
不動産売買契約では、契約成立の証として買主から売主へ手付金が支払われます。
契約書には通常、この手付金を用いた解除(手付解除)に関する条項が定められています。一般的には、相手方が契約の履行に着手するまで(または契約で定めた特定の期日まで)であれば、買主は支払った手付金を放棄することで、売主は受け取った手付金の倍額を買主に支払うことで、一方的に契約を解除できます。
また、どちらか一方が正当な理由なく契約内容を履行しない場合(例:買主が決済日に代金の支払いを怠る、または売主が物件の明け渡しを拒むなど)は、契約違反(債務不履行)となり、相手方は契約を解除し、契約書に基づいた違約金を請求することができます。これらの解除に関するルールを理解していないと、予期せぬ契約解除や金銭的なペナルティに戸惑うことになります。
【対策】
- 売買契約書に記載されている「手付解除」の期日と条件、「違約解除」の条件と違約金の額を、契約前に正確に理解しておく。
- 解除の可能性があることも念頭に置き、特に手付金の額については安易に低額にしすぎない(買主が解除しやすくなるため)。
買主が住宅ローンの承認を得られない(ローン特約)
不動産購入者の多くは住宅ローンを利用するため、売買契約書には通常「ローン特約(融資利用特約)」が付けられます。
これは、買主が契約書で定められた期日までに、予定していた金融機関からローンの承認を得られなかった場合に、ペナルティなしで契約を白紙解除できる(支払った手付金も全額返還される)という、買主を保護するための特約です。
ローン審査の結果、承認が得られずに契約が白紙解除となるケースは決して少なくありません。売主にとっては、売却が決まったと思っていたものが振り出しに戻り、再度売却活動を始めなければならなくなるため、時間的な損失が発生します。
【対策】
- 売買契約書に記載されているローン特約の内容、特にローン承認を得るべき期日、対象となる金融機関、解除の手続きなどを正確に確認する。
- 不動産会社を通じて、買主のローン事前審査の状況や承認の見込みなどを可能な範囲で確認してもらう。
引き渡し段階のトラブル
売買契約に基づき、買主から残代金を受け取り、物件の所有権を移転し、鍵などを渡す最終段階です。ここでも、金銭の支払いや物件の状態に関するトラブルが発生することがあります。
残代金決済が遅延してしまう
契約で定められた引き渡し日(決済日)に、買主が売買代金の残額を支払えないケースです。
原因としては、買主側の住宅ローンの手続きが金融機関の都合や書類不備などで遅れたり、買主自身の資金繰りの問題などが考えられます。決済日に残代金が支払われなければ、売主は所有権移転登記手続きや物件の引き渡しを拒むことができますが、売主自身の住み替えなどの資金計画に影響が出る可能性があります。
【対策】
- 決済日が近づいたら、不動産会社を通じて買主側のローン手続きの進捗状況や決済準備状況を確認してもらう。
- 万が一遅延した場合の対応(遅延損害金の取り扱いなど)について、事前に不動産会社と相談しておく。
物件の状態が契約時と異なる
通常、引き渡し直前に、売主・買主・不動産会社の立ち会いのもと、物件の最終確認が行われます。その際に、売買契約時には存在しなかった新たな傷や汚れ、あるいは契約時に正常に作動していた付帯設備(給湯器、エアコン、換気扇など)が故障していることが発覚するケースです。
契約から引き渡しまでの間に発生した損傷や故障は、原則として売主の責任で修補する必要があります。どの範囲まで売主が責任を負うのか、契約書の条項(特に「危険負担」や「契約不適合責任」に関する部分)を確認する必要があります。
【対策】
- 売買契約後も、引き渡しが完了するまでは善良な管理者として物件を適切に維持管理する。
- 引き渡し前の最終確認は、時間をかけて丁寧に行い、契約時の状態と変わりがないか、付帯設備が正常に作動するかなどを双方で確認する。
- 問題が見つかった場合は、修補方法や費用負担についてその場で協議し、合意内容を書面で残す。
引き渡し日が遅延してしまう
売主側の引っ越し作業が間に合わない、買主側のローン実行が決済日に間に合わない、必要な書類が揃わない、関係者の都合が悪くなったなど、様々な理由で契約時に定めた引き渡し日に手続きが完了できないことがあります。
引き渡し日が遅れると、売主・買主双方の引っ越しスケジュールや、関連する様々な手続き(転居届、各種契約変更など)に影響が及びます。
【対策】
- 引っ越しや各種手続きは、引き渡し日から逆算して余裕を持ったスケジュールを組む。
- 遅延が発生しそうな場合は、判明した時点ですぐに不動産会社を通じて相手方に連絡し、日程の再調整を行う。
- 遅延に伴う損害が発生する場合(仮住まいの費用など)の取り扱いについて、事前に確認しておく。
登記手続きに不備が発生する
物件の所有権を買主に移転するためには、法務局で「所有権移転登記」を行う必要があります。
この手続きは通常、司法書士に依頼して行いますが、売主側で用意すべき書類(登記済権利証または登記識別情報通知、発行から3ヶ月以内の印鑑証明書、固定資産評価証明書、実印など)に不備があったり、最も重要な登記済権利証や登記識別情報を紛失していたりすると、決済日に登記申請ができず、引き渡しが完了しません。
【対策】
- 決済に必要な書類の種類と有効期限を、事前に不動産会社や司法書士に確認し、リストアップしておく。
- 必要書類は余裕をもって準備し、有効期限切れなどに注意する。
- 登記済権利証や登記識別情報を紛失している場合は、代替手続き(事前通知制度や資格者代理人による本人確認情報の作成)が必要となり時間もかかるため、早めに司法書士に相談する。
境界線が確定していない
特に土地や一戸建ての場合、隣接地との境界線が明確になっていない(境界標がない、あるいは位置が不明確など)と、引き渡し後に買主と隣地所有者の間でトラブルになる大きな原因となります。
境界が確定していない土地は、買主が住宅ローンを利用する際に金融機関から担保価値を低く評価されたり、将来、買主が建物を建て替えようとした際に建築確認が下りなかったりするリスクもあります。宅地建物取引業法では、売主は買主に対して境界を明示する義務を負っています。
【対策】
- 売却活動を開始する前に、土地家屋調査士に依頼して隣接地所有者立ち会いのもと境界を確定させる「確定測量」を実施し、境界標を設置する。
- 測量結果に基づいて作成された「筆界確認書」や「確定測量図」を買主に提示し、契約書にも添付する。
- 境界が確定できない事情がある場合は、その旨を買主に正確に伝え、契約書に明記する。
残置物の処理ができていない
売主が居住していた物件の場合、引き渡し日までに、家具、家電、自転車、庭の物置、ゴミなど、契約で引き継ぐと定めた以外の私物(残置物)を全て撤去し、空の状態で引き渡すのが原則です。
しかし、計画的に処分を進めなかったために、引き渡し日になっても残置物が残ってしまい、買主とトラブルになるケースがあります。買主は残置物の処分費用を請求したり、引き渡しを拒否したりする可能性があります。
【対策】
- 引き渡し日までに全ての残置物を撤去できるよう、不用品の処分計画を早めに立て、粗大ごみの収集予約や不用品回収業者の手配などを進める。
- 契約時に、どの設備を残し、何を撤去するのかを「付帯設備表」で明確にし、双方で確認しておく。
- 万が一、引き渡しまでに撤去が間に合わない可能性がある場合は、事前に買主の承諾を得ておく。
確定申告段階のトラブル
不動産を売却して利益(譲渡所得)が出た場合、原則として売却した翌年の2月16日から3月15日までの間に確定申告を行い、所得税・住民税を納付する必要があります。この税金に関する手続きでも、ミスや勘違いによるトラブルが発生することがあります。
申告漏れや遅延してしまう
不動産売却で譲渡所得が発生したにも関わらず、「知らなかった」「忘れていた」などの理由で確定申告をしなかったり、期限までに申告・納税を完了しなかったりするケースです。
税務署から指摘された場合、本来納めるべき税金に加えて、ペナルティとして「無申告加算税」や「延滞税」が課せられ、結果的に多くの税金を支払うことになります。なお、売却によって損失が出た場合は確定申告の義務はありませんが、他の所得と損益通算したり、損失を翌年以降に繰り越したりする特例を利用する場合は、確定申告が必要です。
【対策】
- 不動産を売却したら、譲渡所得が発生するかどうかを確認し、確定申告の要否を判断する(不明な場合は税務署や税理士に相談)。
- 申告が必要な場合は、申告期限を厳守し、早めに準備を進める。
譲渡所得の計算ミス
譲渡所得は「売却価格 – (取得費 + 譲渡費用) – 特別控除額」という計算式で算出されます。
この計算において、物件の購入代金や購入時の諸費用(登記費用、不動産取得税など)である「取得費」や、売却時にかかった仲介手数料、印紙税などの「譲渡費用」を正確に計上する必要があります。これらの費用を漏れなく計上しないと、譲渡所得が過大に計算され、本来よりも高い税金を支払うことになってしまいます。
逆に、計上できない費用を含めてしまうと、過少申告となるリスクがあります。取得費が不明な場合は、売却価格の5%を概算取得費として計算することもできますが、実際の取得費の方が有利な場合が多いです。
【対策】
- 物件購入時の売買契約書や領収書、売却時の諸費用の領収書など、取得費・譲渡費用を証明できる書類を全て保管しておく。
- 取得費・譲渡費用に含められる項目、含められない項目を正確に理解し、計算する(国税庁のウェブサイトや税理士への相談が有効)。
- 計算に自信がない場合や複雑な場合は、税理士に確定申告を依頼する。
特別控除の適用ミス
不動産売却には、税負担を軽減するための様々な特例(特別控除)が設けられています。
代表的なものに、マイホーム(居住用財産)を売却した場合に譲渡所得から最高3,000万円を控除できる特例や、所有期間が10年を超えるマイホームを売却した場合の軽減税率の特例などがあります。これらの特例は節税効果が大きい反面、適用を受けるためには居住期間、所有期間、家屋の用途、売却後の経過期間など、細かく厳しい要件を満たす必要があります。
要件を満たしていないのに誤って適用して申告してしまうと、後で税務署から指摘され、修正申告と追徴課税(延滞税などを含む)が必要になります。逆に、適用できるのに知らずに申告しないと、本来払う必要のない税金を納めてしまうことになります。
【対策】
- 自分のケースで適用できる可能性のある特例がないか、国税庁のウェブサイトなどで調べる。
- 各特例の適用要件を詳細に確認し、自分が要件を満たしているか慎重に判断する(税務署や税理士への事前相談が確実)。
- 複数の特例を併用できない場合もあるため、どの特例を選択するのが最も有利か検討する。
必要書類が不足している
確定申告を行う際には、申告書に加えて、譲渡所得の内訳書、売買契約書の写し、取得費や譲渡費用を証明する領収書の写し、登記事項証明書など、多くの添付書類が必要です。
また、特別控除の適用を受ける場合には、さらに追加の書類(戸籍の附票など)が必要になることもあります。これらの必要書類を紛失してしまったり、準備が間に合わなかったりすると、譲渡所得の計算が不正確になったり、特例の適用が認められなかったりする可能性があります。
【対策】
- 不動産売買に関連する契約書、領収書、登記関連書類などは、確定申告が終わるまで(税務調査の可能性も考慮し、通常5~7年程度は)一箇所にまとめて大切に保管しておく。
- 確定申告の時期が近づいたら、必要書類をリストアップし、早めに準備に取り掛かる。
- 紛失した書類がある場合は、再発行が可能か確認する(領収書の再発行は難しい場合が多い)。
不動産売却のトラブル回避に役立つ事前準備
この章では、不動産売却でのトラブルを避けるために、事前にできることを紹介します。
不動産売却に関する知識をつける
不動産売却でトラブルを避けるためには、不動産に関する知識を最低限、身に着けておくことが重要です。
事前に知識があることで、売却時のトラブルを避け、実際にトラブルになった際にどうすべきか、すぐに対処できます。
不安な点はすべて解消する
不動産を売却する際の不安は、その場ですべて不動産会社に質問し、解消してから取引を行うようにしましょう。
特に、契約書を交わす際など、契約書を何度も読み込み、些細な点であれ不明な点があれば、その都度質問します。その際に、納得できる回答がない場合は不動産会社を疑ったほうがいいいです。
細かなやり取りであっても書面化する
不動産売却では契約書などの書面化が命といっても過言ではないです。
事細かなやり取りであっても、後に大きな影響を及ぼすため、書面化し、書面以外での金銭のやり取りはしないようにしましょう。
例えば、境界に関するトラブルに対して、隣人との境界線を口頭で交わしたとします。その時は同意していたにもかかわらず、時間が経って「いやいや、ここまでが私の土地だ」など、食い違いもでてくるでしょう。
こういった、食い違いによるトラブルを避けるためにも書面化は重要になります。
信頼できる不動産業者を選ぶ
いずれにしても信頼できる不動産業者を見つける事が大切です。すまいステップの一括査定なら、一度に複数の不動産会社から売却価格の査定を行えます。まずは、お気軽にご相談ください。
不動産売却でトラブルになった場合の相談窓口
不動産売却でトラブルになった場合の相談窓口を知っておきましょう。
トラブルになった場合の相談窓口の一覧は以下の通りです。
- 不動産会社の営業責任者
- 不動産会社の相談窓口
- 不動産会社が所属する団体相談窓口
- 弁護士、司法書士、税理士、土地家屋調査士、測量士などの専門家
- 各都道府県庁の相談窓口
- 国民生活センターや各都道府県の県民生活サービスセンター、消費生活相談
取引を行った不動産会社の営業責任者
まずは不動産業者の営業責任者や責任者が良いでしょう。
極力トラブルに関しては大事にはしたくないはずです。また売主側にとってもメリットが一つもありません。
トラブルやおかしな点があったら、遠慮なく不動産業者に相談してみる事です。
中には窓口が新人できちんと理解をしていない可能性もあります。まずは取引を行った不動産会社を訪ねてみましょう。
取引を行った不動産会社の相談窓口
次は大手の不動産業者の場合には大抵相談窓口が別にあります。
ちょっとした不安や契約の中身などに疑問に感じる点を見つけたら、相談窓口に問い合わせてみましょう。
不動産会社が所属する団体相談窓口
中小の不動産業者は団体に所属しており、その団体へトラブルになりそうになったら申し立てると解決への近道になります。
トラブルに関する事に精通している担当者がいるので、信頼に足る対応をしてくれます。
弁護士、司法書士、税理士、土地家屋調査士、測量士などの専門家
外部へ漏らさないといけないような個人間のトラブル事例の場合には弁護士に、登記関連のトラブルに関しては司法書士に、税務関係のトラブルは税理士に相談できます。
また、建物そのものに関するトラブルは土地家屋調査士や測量士などに依頼する事で解決できる場合があります。
各都道府県庁の相談窓口
各都道府県にはそれぞれ窓口があり、ここでも相談を受け付けています。
不動産業者や団体に相談しても解決しない場合にはこちらの相談窓口を利用してみましょう。
国土交通省各地法整備局
土地や建物の取引は国土交通省が管轄しており、トラブル解決にも役立っています。
その他、国民生活センターや各都道府県の県民生活サービスセンター、消費生活相談など
金銭関係のトラブルに関しては、国民生活センターや各都道府県の県民生活サービスセンター、消費生活相談などが役立ちます。
不動産売却の悩み別の相談先は以下の記事で詳しく紹介しています。
実際に売却を進める中でトラブルに遭ってしまった際は、こちらの記事を参考にしてください。