親から相続する前後に実家を売却するときには、9段階のステップを踏む必要があります。
また、売却するときには不動産会社への報酬や費用、税金も必要です。
今回は実家を売却する手順と費用、税金について解説します。
後悔しないためのポイントや、売却以外の選択肢についても紹介するので、ぜひご参考にしてください。
実家の売却を検討するタイミング
実家の売却を検討するタイミングは、親からの相続が予想されるときと、相続が実際に起こったときの2つがあります。
ここからはそれぞれのタイミングとポイントについて解説します。
実家の相続が予想されるとき
親の高齢化に伴い実家の相続が将来的に予想されるときは、売却を検討する良いタイミングであると言えます。
理由としては、親が実家に居住していると「マイホームを売ったときの特例」が利用でき、要件を満たしていれば、譲渡所得から最高3000万円までが控除されるためです。
譲渡所得税は、不動産の売却で利益が発生したときに課される税金です。つまり住宅の取得費用よりも、売却価格が大きい場合に、その差額分である利益に対して課税されます。
実家の値上がり益が大きいときには、相続前にこの特例を利用するいいタイミングと言えるでしょう。
実家の相続が起きたとき
親からの相続が起きたときにも実家を売却するタイミングです。
相続税の課税対象者は、遺産総額が基礎控除を超える方です。
基礎控除の計算は「3000万円+(600万円×法定相続人の数)から求めることができます。
遺産総額が実家を含めて基礎控除の範囲内であれば、相続税を払うことなく、実家を引き継いで売却を進めることができます。
一方で、相続税が課税される場合は、実家を売却して相続税の支払い資金に充てることもあるでしょう。
実家を売却する9つの手順(相続後に売却する場合)
冒頭でお伝えしたように、実家の売却には9つの手順があります。
手順の中には、不動産や法律、税金に関する項目もあるため、事前に把握しておくことで、売却を行う際に適切な判断ができるでしょう。
ここからは手順を一つずつ解説していきます。
①隣家との境界線を確定させる
実家の売却をする前には、どこまでが実家の土地で、どこからが隣地なのかをはっきりさせる必要があります。
境界線の確定は、土地家屋調査士に依頼して、隣地の住人も立ち会いながら慎重に行いましょう。調査期間は1ヵ月〜3ヵ月程度が一般的です。
築年数をかなり経ている実家の場合、境界線があいまいだったり、確定していなかったりすることが多く、売却時に思わぬトラブルの原因となります。
実家の売却に際しては、境界線をはっきりさせておくことをおすすめします。
②相続登記をする
親から実家を相続したときには、実家の名義人を親から自分に移す作業が必要です。
これを相続登記といい、相続登記を行うことで、実家の所有権がはっきりするため、売却時にトラブルが起きにくくなります。
相続登記には多くの書類作成が必要となるため、基本的には司法書士に依頼しましょう。
一般的に5万円~10万円程度が司法書士報酬の目安となります。
③不動産会社に査定を依頼する
実家の資産価値を適切に算出してもらうためには、複数の不動産会社に査定を依頼しましょう。その際には一括査定がおすすめです。
また、不動産ポータルサイトのSUUMOやアットホームで、周辺の物件相場を調べておくことも効果的です。
不動産会社から届いた査定結果の整合性を自分でも確認できると、さらに安心して売却に進めるでしょう。
④必要書類を集める
実家の売却のために必要な書類の主なものは、以下の通りです。
- 本人確認書類(免許証のコピーなど)
- 住民票または印鑑証明書
- 登記済権利証
- 固定資産税納税通知書
- 土地測量図や境界確認書
- 建築確認済証
- 耐震診断報告書(任意)
- アスベスト使用調査報告書(任意)
住民票や印鑑証明書は市役所や区役所などで発行してもらう必要があるため、媒介契約の前に用意しておくようにしましょう。
⑤不動産会社と媒介契約を結ぶ
実家の査定が完了し、必要書類を集めたら、次は不動産会社と媒介契約を結びます。
媒介契約には一般媒介契約、専任媒介契約、専属専任媒介契約の3種類があります。
以下の表は、それぞれの契約種類の内容です。
媒介契約 | 契約期間 | 契約できる業者数 | 売主が買主を直接見つける行為 | 業者からの報告義務 |
一般媒介契約 | 3か月 | 複数可能 | 可能 | なし |
専任媒介契約 | 3か月 | 1社のみ | 可能 | 週1回以上 |
専属専任媒介契約 | 3か月 | 1社のみ | 不可能 | 週1回以上 |
⑥実家を売りに出す
媒介契約を締結したら実際に実家の売却活動を行います。
基本的には、不動産業者が購入希望者を見つけ、物件の内覧を行ってくれます。
そのときに遺品が整理されていたり清掃が行き届いていたりすると好印象となるでしょう。
また、内覧を終えた買主から、希望購入価格(指値)が伝えられて、交渉に入ることもあります。
そのため、譲歩できる価格や条件も検討しておくことがおすすめです。
⑦買主と売買契約を結ぶ
買主が見つかった場合には売買契約を結びます。契約日当日の流れは以下の通りです。
- 不動産業者が買主に対して重要事項説明をする
- 買主と売主が売買契約書を確認する
- 売買契約書への記名捺印
- 買主が手付金を渡す
- 契約締結
契約日の前には、「重要事項説明書」と「売買契約書」に目を通しておくことをおすすめします。
どちらの書類も、抜け漏れや不明な点があるときにはトラブルのもととなるためです。
⑧決済、実家の引き渡しを行う
売買契約を締結した後には決済と引き渡しを行います。
決済日当日の流れは以下の通りです。
- 司法書士が登記簿の権利関係の項目を確認する
- 買主が残金の支払いをする
- 不動産会社に手数料、司法書士に報酬を支払う
- 司法書士が所有権移転登記の申請手続きをする
一般的に決済は大きな金額が動くため、銀行のオフィスで行われます。
また、引き渡しは実家の鍵をすべて手渡すことで完了します。
⑨確定申告をする
実家の売却をした翌年の2月16日から3月15日までの間に確定申告をしましょう。
確定申告は税務署に行って申告書を提出する以外にも、「e-Tax」を使ってインターネットから申告することもできます。
これで実家の売却に関する一連の手順はすべて完了です。
実家を売却するときに必要な費用や税金
実家を売却するときに必要な費用として、不動産業者に支払う仲介手数料や清掃業者への支払いなどがあります。
また関わる税金として、譲渡所得税、登録免許税、印紙税があります。
ここからは必要な費用と税金について詳しく見ていきましょう。
実家売却に必要な費用一覧
実家の売却に必要な費用と特徴の一覧は、次の表の通りです。ぜひ参考にしてください。
費用項目 | 相場 | 特徴 |
仲介手数料 |
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住宅ローン返済手数料 | 5,000円~3万円程度 | ローン返済時に金融機関に支払う |
清掃費用 | 1万円~ |
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実家売却にかかる税金一覧
以下の表は、実家を売却するときに関わりのある税金と特徴の一覧です。
税金項目 | 相場 | 特徴 |
譲渡所得税 | 5年以内:売却益×約40% 5年以上:売却益×約20% | 長期間保有している場合は譲渡所得税が抑えられる |
登録免許税 | 売買金額×2% | 登記に必要な費用 |
印紙税 | 1000円∼6万円 | 売買契約書に貼り付ける |
相続税 | {資産総額-(3000万円+500万円×相続人の数)}×税率 | 相続税の税率は最大55% |
譲渡所得税は、実家を売却したときに、売却利益が発生した場合に課税される税金です。そのため、売却金額が取得金額を下回る場合には課税されません。
実家の売却をするときのポイント
実家を売却するときのポイントとしては、以下の3点が挙げられます。
- 法律や権利関係に強い不動産業者に相談する
- 清掃をして高く売る
- 不動産会社に買い取ってもらう
それぞれ解説していきます。
法律や権利関係に強い不動産会社に相談する
不動産会社によって、相続不動産に強みを持っている、戸建てに強みを持っているなど、特徴は大きく異なります。
相続直後の実家の売買の場合、権利関係や法律に関する正しい知識がないと、大きなトラブルのもととなります。
実家の売却の際には、相続不動産の売却に豊富な実績のある不動産会社を選びましょう。
清掃をして高く売る
清掃を自力で行うか、もしくはハウスクリーニングを入れてきれいにすると、実家の売買価格を上げられる場合があります。
相続をした後に遺品の整理をするようなケースは、実家の掃除にまで手が回らないことがほとんどです。
そのため、あらかじめ終活の一環として、実家の荷物を整理しておくなどの対策をとることで、遺品整理業者への依頼などもせず、スムーズに実家を売却に出せるでしょう。
不動産会社に買い取ってもらう選択肢もある
不動産仲介業者と媒介契約を結んで買主を探してもらう以外の選択肢としては、不動産業者に買い取ってもらう方法があります。
ただし、買取を行ってくれる不動産業者は、資金や担保に余力のある業者に限られます。
また、不動産会社から希望価格(指値)の交渉が入ることもあるため値下がりの可能性が高いことに注意が必要です。
実家を売却せずに活用する方法
実家を売却せずに活用する方法として、次のような方法が挙げられます。
- リフォームして親族が住む
- 賃貸に出す
- 解体して更地を活用する
ここからはそれぞれの方法と特徴について解説します。
実家をリフォームして親族が住む
実家をリフォームして相続人や親族が住む方法があります。
建物があまり老朽化していなければ、最低限のリフォームで、新築を建てるよりも大幅に費用を抑えて、実家を快適な住まいに変えることができます。
また普段使いの住宅としてではなく、別荘として、親族で利用するという方法もあるでしょう。
実家を賃貸に出す
実家の建物自体が傷んでいなければ、売却ではなく賃貸に出すのも効果的です。
特にローンの返済が終わっていて、築年数も古くない実家の場合であれば、賃貸に出すことで家賃収入が入ります。
建物や設備の改修リフォームの費用を考慮したうえで、資金回収の目途が立つようであればおすすめの方法です。
解体して更地を活用する
実家の建物の老朽化が激しい場合には、建物を解体して土地活用をするという選択肢もあります。
例えば、更地にして売却・賃貸に出したり、コインパーキングや月極駐車場として利用したりすることも可能です。
解体費用がかかってしまう点がデメリットとなりますが、選択肢が広がる点ではメリットがあるといえるでしょう。
実家の売却なら不動産会社へ相談を
親からの相続前や相続後に実家を売却するときには、9段階のステップを踏む必要があります。
また売却には不動産会社や司法書士への報酬や費用、税金が必要です。
まずは不動産会社に査定を依頼しつつ、自分でも周辺の相場観を養っておくことをおすすめします。
実家を売却するうえでは、必要な知識や選択肢を知って、後悔のないようにしましょう。
実家の売却を不動産業者に依頼するときには「すまいステップ」が便利です。不動産業者の住所検索ができるため、戸建て住宅の売買に強い地元の業者をすぐに見つけることができます。あなたもぜひ一度「すまいステップ」のご利用を検討してみてはいかがでしょうか。