不動産の売却は「引き渡しが完了したら終わり」ではありません。
売却した翌年の2月16日から3月15日までの期間には、確定申告が待ち受けています。
不動産売却による所得がなかった場合は、確定申告をする法律的な義務はありません。
しかし、勘違いしやすいケースも多いため、注意しなければなりません。
本来は確定申告が必要なのに怠った場合は、重いペナルティを受ける可能性があるため、確定申告の要・不要の条件を、この記事でしっかりと確認しましょう!
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不動産売却後の確定申告が不要なケースとは?
そもそも、確定申告とは「1年間の所得と、所得にかかる税金の金額を国に申告する手続き」のことです。
不動産を売却したことによる所得は「譲渡所得」といいます。
つまり、譲渡所得の有無によって、不動産売却後の確定申告が必要か不要かが決まるのです。
譲渡所得がなければ確定申告は不要
以下の計算式で計算をして、譲渡所得がゼロになるか、マイナスであれば、確定申告は必須ではありません。
▼売却価格とは
「売却価格」とは、不動産を売却して、受け取った代金の金額です。
(譲渡価格や、譲渡収入金額とも呼ばれます。)
▼譲渡費用とは
「譲渡費用」とは、不動産を売却するためにかかった費用のことです。
たとえば、以下のような費用が該当します。
- 不動産会社に支払った仲介手数料
- 印紙税
- 売却にあたって支払った測量費用
- 売却にあたって建物を取壊した費用
- 売却にあたって支払った立退料 など
より詳しく知りたい方は、国税庁ホームページの「No.3255 譲渡費用となるもの」をご覧ください。
▼取得費とは
「取得費」とは、売却した不動産を、購入・取得した時にかかった費用のことです。
たとえば、以下のような費用が該当します。
- 不動産を購入した時の費用
- 建物の建築にかかった費用
- 不動産購入時の仲介手数料
- 不動産購入時に支払った税金
- 不動産相続時の登記費用
- 司法書士への報酬
- 固定資産税精算金
- 土地の改良費
- 設備費
- リフォーム費用 など
なお、建物部分の価額については、減価償却費を差し引いて計算します。
もしも取得費がわからない(証明できる書類がない)場合は、「売却価格の5%の金額」を取得費の代わりとして、譲渡所得の計算に用いることができます。
より詳しく知りたい方は、国税庁ホームページの「No.3252 取得費となるもの」をご覧ください。
譲渡所得がマイナスでも確定申告して節税になる場合がある
譲渡所得を計算して金額がマイナスになった場合は、「譲渡損失があった」ことになります。
譲渡損失があった場合、以下のケースに該当すれば、確定申告をすることで節税ができる可能性があります。
- マイホームを住宅ローンの残高よりも低い価格で売却した
- マイホームを売却し、新居を住宅ローンを借り入れて購入した
以上に当てはまると、「損益通算」や「繰越控除」ができる特例を利用できる可能性があります。
▼損益通算とは
「損益通算」とは、本業の所得(給与所得や事業所得)から、不動産の譲渡損失の金額を差し引くことです。
本来、不動産の譲渡所得の計算と課税は、給与所得や事業所得とは別々に行います。
しかし、特例の適用を受けることで、不動産売却による損失を本業の所得と合算できるため、所得税が節税できるのです。
▼繰越控除とは
「繰越控除」とは、譲渡損失の金額が給与所得や事業所得を上回り、差し引きし切れなかった場合に、残った金額を翌年に繰り越すことです。
繰り越した金額は、翌年の所得から更に差し引くことができます。
(最長3年間まで行えます。)
この章のまとめ
不動産売却後に確定申告が不要かどうかの判断方法は、まとめると以下の図のようになります。
つまり、不動産を売却して譲渡所得がゼロかマイナスであり、損益通算も行わない場合には、確定申告は不要です。



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不動産売却後に確定申告が必要なケース
不動産の譲渡所得は、給与所得や事業所得とは合算せずに、別途計算して課税されます。
そのためサラリーマンであっても、以下のケースに当てはまれば、確定申告をする必要があります。
譲渡所得があった場合
譲渡所得を計算して金額がプラスになった場合は、確定申告が必要です。
譲渡所得=不動産の売却価格-(譲渡費用+取得費)
3,000万円特別控除を申請する場合
マイホーム(居住している家やマンション、家屋を取り壊した土地)を売却した場合、譲渡所得から最大3,000万円まで控除できる特例を適用できます。
ただし、特例によって所得税の課税がなくなる場合も、確定申告が必要です。
各種特例を申請する場合
「3,000万円特別控除の特例」以外にも、税金の負担を軽減できる特例があります。
不動産売却の税負担を軽減する特例の一部
- 特定のマイホームを買い換えたときの特例
- 被相続人の居住用財産を売ったときの特例
- 収用等により土地建物を売ったときの特例
- 平成21年及び平成22年に取得した土地等を譲渡したときの1,000万円の特別控除
- 低未利用土地等を譲渡した場合の長期譲渡所得の特別控除
(リンク先は国税庁ホームページです。)
いずれの特例を利用する場合も、課税の有無にかかわらず、確定申告する必要があります。
譲渡損失を他の所得と損益通算をする場合
前章でも説明した通り、一定の条件を満たしていれば、本業の所得から不動産売却の譲渡損失(赤字)を差し引くことができます。
損益通算を行いたい場合は、特例の適用を申請し、要件を満たしていることの証明書類を提出しなければならないため、確定申告が必要となります。
不動産売却後に確定申告しなかった場合のペナルティ
納税は国民の義務であり、納税額を決めるための確定申告は重要な手続きです。
もしも、確定申告が必要なのに怠った場合には、以下のようなリスクやペナルティがあります。
1つずつ、詳しく解説していきます。
税務署が調査に来る
そもそも「なぜ確定申告をしていないことがバレるのか」ですが、これは不動産取引で大きなお金が動いた場合は、税務署にチェックされる可能性が高いからです。
大きな金額が動いた形跡があるのに確定申告がなされていないと、無申告の可能性があるとして調査されることが多いです。
税務署からの調査を受け、不動産売却の実態やそこで得た利益、無申告の事実などが明るみに出ると、税務署によって納めるべき税額を決められてしまいます。
税務署が決定する税額は、厳格な基準で定められているため、自分で申告した場合よりも課税額が大きくなる可能性があります。
基本的な税額に加えてその他にもペナルティがあるため、普通に申告した場合の何倍や、何十倍もの金銭の支払いが必要なことは覚えておきましょう。
銀行の融資が受けられなくなる
事業をしている場合特有のリスクとしては、確定申告をしていないことで、銀行融資が受けられないことが挙げられます。
これは確定申告をしないと、その年の決算書が正しく作成されていないからです。
決算書がないと事業としての信頼度が低くなり、融資を断られたり、すでに受けている場合でも打ち切られてしまったりする可能性があります。
また、決算書を偽って作成していることがバレると、今後の取引は一切できなくなる危険性もあるでしょう。
加えて、銀行から税務署に通告がいき、無申告によるペナルティを課せられる可能性も上がるため、注意しなければなりません。
延滞税が課される
確定申告の期限を過ぎ、納税の期限を超過してしまうと、超過した日数に対して延滞税が課せられます。
延滞税は納税期限から2カ月は約7%、2カ月以降は約14%と高税率になります。
延滞税は、申告をしても期限までに納付しないと課税されてしまうため、申告後は素早く納めることが大切です。
また、仮に期限を超過してしまった場合でも、より短期間で納付したほうが金銭的な負担は軽く済みます。
納付をあとに伸ばすほど納税額も多くなるため、延滞してしまったことに気付いたなら、素早く精算することを心がけましょう。
無申告加算税が課される
そもそも、確定申告をしていないことに対してのペナルティもあります。これを「無申告加算税」と呼びます。
無申告加算税は税額によって変化します。
50万円までの部分には15%、それ以上の場合は20%の税率が加算されます。
たとえば、200万円の譲渡所得税を納税する必要があった場合、無申告加算税額は次のように計算します。
この場合、本来納税すべき200万円とは別に、37.5万円分を追加で納税する必要があります。
譲渡所得がある状態で確定申告をしないと、その時点で確実に15%以上も税負担が増えることになります。
金額が大きくなるほど加算税も高くなるため、少なくとも無申告にはならないように、きちんと期限までに申告するように心がけましょう。
事前申請をすれば無申告加算税は軽減できる
税務調査を受ける前に自ら申告すれば、無申告加算税率が5%に軽減できます。
期限内に確定申告をしていなかったとしても、気づいたうちに早めに確定申告をおこないましょう。
無申告加算税がかからない場合もある
確定申告する期限を過ぎていても、以下の条件をすべて満たせば無申告加算税は5%すらかかりません。
- 本来の申告期限から1月以内の自主申告である
- 期限内申告をする意思があったと認められる場合
「意思がある」の定義は国税庁が定めており、次のいずれにも該当する場合です。
・その期限後申告書を提出した日の前日から起算して5年前までの間に、無申告加算税又は重加算税を課されたことがなく、かつ、期限内申告をする意思があったと認められる場合の無申告加算税の不適用を受けていないこと
悪質な隠蔽には重加算税が課される
「悪質な隠蔽をした」と判断された場合には「重加算税」が課せられます。
「悪質な隠蔽」については、明確に定義が決まっているわけではありません。
しかし、故意に確定申告をせずに所得を隠そうとした場合など、申告の必要性を分かっていながら無視したときには、重加算税の対象になりやすいです。
重加算税の税率はケースによって異なりますが、35~40%となっています。
課税される場合には、非常に重たい税負担が待ち受けています。
申告内容を間違えたら過少申告加算税が課される
過少申告加算税は、過少に納税額を申告していた場合に課される税金です。
追加で10%の税金が課されますが、過少に申告した金額が大きかった場合には税率が上乗せされます。
ただし、自主的に申告誤りを修正した場合には、過少申告加算税は課されません。
自分で確定申告したくないなら税理士に相談
自分で確定申告の手続きをするのは面倒だと思う方もいらっしゃるでしょう。
そんな時は税理士に依頼すると、申告書の作成など必要な手続きを委任することができます。
費用は、申告書の作成と提出を依頼する場合は5万円程度、全ての手続きを依頼する場合は10万円程度です。
確定申告期間の2月~3月はどこの税理士も繁忙期なので、税理士への依頼を考えている方は、早めに相談しておきましょう。
自分で確定申告を行う流れ
この章では、自分で確定申告する場合の手続きの流れを解説します。
課税譲渡所得を計算する
まずは課税譲渡所得を計算します。計算方法は次の通りです。
課税譲渡金額=譲渡価格-(取得費+譲渡費用)-特別控除 |
譲渡価格は、実際に不動産を売却した金額です。
取得費は、不動産を取得した当時にかかった費用から、建物部分についての減価償却費を差し引いた金額です。
譲渡費用は、不動産を売却するためにかかった費用です。
(たとえば仲介手数料や測量費用、建物取壊し費用、印紙税などが含まれます。)
課税譲渡所得の額に応じて課税額が変わってきます。
必要書類を揃える
次に、確定申告に必要な書類を揃えます。
必要書類には、税務署で用紙を入手する書類と、添付して提出書類があります。
書類名 | 入手場所 |
---|---|
税務署 | |
税務署 | |
税務署 | |
| (不動産の売却時に締結したもの) |
| 法務局 |
| (不動産の売却時に入手したもの) |
税務署で用紙を入手する書類は、国税庁のホームページの確定申告作成コーナーで書類を作成することも可能です。
不動産売却に必要な書類はこれで全部!重要度や入手方法などわかりやすく解説
確定申告書を作成・提出する
確定申告書の必要項目に記入をし、添付書類を揃えられたら、確定申告書を提出します。
提出期限は、不動産を売却した翌年の2月16日から3月15日までです。
この期間に税務署に持参するか、郵送、もしくはe-Taxでの電子申告で提出しましょう。
不要な場合以外は不動産売却後の確定申告を忘れずにしよう
確定申告は、売却した翌年の3月15日までと期限が決まっています。
スムーズに手続きを完了させるために、不動産の売却した後は、必要書類のチェックなど、あらかじめ準備を進めておくのがおすすめです。
ご自身が確定申告をする必要があるかどうか不安な場合は、不動産売却を担当してくれた不動産会社の担当者にも相談してみるのもよいでしょう。
確定申告を忘れてしまったり、怠ってしまった場合は、ペナルティとして更なる税金が課されます。
自分で書類を作成するのが難しい場合は、税理士に依頼するなどして、必ず済ませるように気をつけましょう。