自分が現在住んでいる地域とはまったく違う遠隔地に土地を所有している場合には、どのように売却したらよいのでしょうか。通常、土地の売却には現地で不動産会社を探したり、内覧への立ち会いが必要だったり、何度も現地へ赴く必要があります。しかし、遠隔地の土地では交通費や宿泊費をかけて何度も往復するのが難しいこともあります。
実は、遠隔地の土地でもそれほど何度も往復しなくても売却を進めることは可能です。この記事では、遠隔地の土地の売却に困っている人のために、自分が現地へ行かずに売却を進めるためにはどうしたらよいのか、その方法について詳しく解説します。
遠隔地の土地を売却する基本の流れ
自分が現在住んでいる場所からは遠すぎて、交通費や宿泊費をかけたり、時間をかけたりして売却の手続きを自分で進めることができない場合には、どのような流れで土地を売却すればよいのでしょうか。遠隔地の土地を売却する場合の基本的な売却の流れについて見ていきましょう。
売却する土地の現状を調査
まず、自分がこれから売却しようとする土地が、本当に売れる状態なのか、自分一人で売却手続きを進めても大丈夫なのかどうか、土地の現状について正確に調査を行いましょう。
相続した土地の場合には、自分以外にも法定相続人がいれば、法定相続人全員の名義になっている可能性があります。また、何らかの理由で抵当権が設定されていれば売却には債権者の許可も必要です。自分以外にも土地の権利を持つ人がいる場合には、自分以外の権利者の同意も得なければ売却できません。
土地を売却するときには、境界線が確定していなければ売却することが難しくなります。境界線が確定していない土地でも売却することは不可能ではありません。しかし、山林以外は後々のトラブルになりやすいので、境界線が明確になっていなければ買手がなかなか見つかりません。
境界線が不明瞭な場合には、確定測量が必要になる場合もあります。
土地などの不動産の名義や抵当権といった権利関係は法務局の登記簿で確認できます。遠隔地の土地であっても、Web上にある登記情報提供サービスから有料で登記情報の確認ができます。図面付きで確認できるので、境界線についてもこちらから確認できます。
売却する土地の査定を依頼
近隣の土地を売却する場合には、不動産会社を通さずに知り合いや親戚と直接売買することもあります。しかし、遠隔地の土地を売却する場合には、自分で買手を探すことは難しいでしょう。遠隔地の土地を売却するのであれば信頼できる不動産会社を見つけて仲介を依頼することをおすすめします。また、適正価格で売却するためには正確な売却相場を調べることも大切です。
信頼できる不動産会社を見つけるのと、適正な売却相場を調べることを両方一度にできるのが、不動産一括査定サイトを利用することです。
不動産一括査定サイトなら、たった数分の入力作業だけで、査定を依頼された物件を扱っている地域の複数の不動産会社から査定を取り寄せることができます。不動産会社探しをしながら、複数の会社の査定額を比較できます。
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売却を依頼する不動産会社と媒介契約
査定結果から売却の仲介を依頼する不動産会社を決めたら、媒介契約を結びます。媒介契約とは不動産会社に売買の仲介を依頼するための契約で、一般媒介契約、専任媒介契約、専属専任媒介契約の3種類の契約方法から選びます。
3種類の契約方法の違いは次のとおりです。
? | 一般媒介契約 | 専任媒介契約 | 専属専任媒介契約 |
---|---|---|---|
複数社との契約 | 可 | 不可 | 不可 |
他社との契約の通知義務 | 明示型の場合有 | なし | なし |
不動産会社を通さない自己発見取引 | 可 | 可 | 不可 |
契約期間 | 期間の指定なし (一般的に3ヶ月程度) | 3ヶ月以内 | 3ヶ月以内 |
レインズへの登録 | 登録義務なし | 契約から7日以内の登録義務 | 契約から5日以内の登録義務 |
依頼主への報告義務 | なし | 14日に1回以上 | 7日に1回以上 |
レインズとは、国土交通省が指定した不動産流通機構のことです。不動産業界向けに不動産情報を公開しているネットワークシステムで、レインズに登録されれば他の不動産会社の目に留まりやすくなり、売却できる可能性が広がります。
仲介手数料は専属専任媒介契約が最も高額で、一般媒介契約が最も安くなります。しかし、一般媒介契約ではレインズへの登録義務や売主への報告義務がありません。また、仲介手数料は成功報酬なので、他の不動産会社が売却に成功してしまうと、自分の会社へは1円も入ってきません。
売却しにくい物件の場合には、一般媒介契約ではあまり積極的に宣伝活動をしてもらえない可能性があるので、仲介手数料の安さだけで一般媒介契約を結ばないようにしましょう。
相場から売り出し価格を決めて売却活動を開始
不動産会社と媒介契約を結んだら、売り出し価格を決めて売却活動を始めます。売り出し価格は相場に沿った上で、売却後に手元に残したい利益、値引き交渉が行われることを考えて決めましょう。
とはいえ、相場からかけ離れた高額な価格では買手が見つからず、安すぎては利益が少なくなります。不動産会社とよく相談して、適正な価格をよく考えましょう。
売却活動は不動産会社が行います。チラシをポスティングしたり、タウン誌や不動産情報サイトや自社のポータルサイトへ物件情報を掲載したりします。レインズへ登録した場合には、レインズを見た他の不動産会社からの問い合わせが来ることもあります。
問い合わせが来た場合でも、遠隔地の土地の場合には不動産会社に対応をお願いして大丈夫でしょう。土地だけなら見学のときも建物内部への立ち入りはないので、売主の立ち会いは不要です。
買主と売買契約を結び土地の引き渡し
買主が見つかり、売却価格や条件に売主と買主の双方が同意できたら売買契約を結び、土地の引き渡しと決済を行います。遠隔地の土地であっても、売買契約のときと引き渡しおよび決済のときには、できれば現地へ直接赴いたほうがよいでしょう。
どうしても自分で契約や引き渡しの手続きができない場合には、委任状を作成して代理人を立てる必要があります。代理人は信頼できる人を選定しましょう。
不動産の取引は高額なので、書面で細かい条件を記した売買契約書を作成しておくことが大切です。売買契約書と宅地建物取引士が作成する重要事項説明書の内容をしっかりと確認した上で、契約日には売主と買主が契約内容を最終確認して署名捺印します。そして、買主から手付金を支払ってもらいます。
売買契約書に記載する内容は次のような内容です。
- 土地の住所と面積
- 売買価格/手付金の価格
- 引渡し日
- 契約不適合責任について
- 台風などで引き渡しができない場合の危険負担
- 印紙税などの負担について
- 税金などの精算について
- 契約違反による解除の条件
引渡し日になったら、司法書士に所有者移転登記をしてもらい、売却価格から手付金を差し引いた残金を決済して引き渡しが完了します。所有者移転登記の確認も売主か委任状のある代理人の立ち会いが必要です。
遠隔地の土地を売却する不動産会社の選び方
遠隔地の土地の売却を進める上で、売買契約と引き渡しのとき以外はほぼすべての過程を不動産会社に任せることができます。売却の大部分の過程を任せるのであれば、やはり信頼できる不動産会社を選びたいものです。
自分が直接現地に行って不動産会社選びをできないのであれば、どのように不動産会社を見つけたらよいのでしょうか。遠隔地の土地を売却するための不動産会社の選び方について見ていきましょう。
優良な不動産会社のリストアップは一括査定から
売りたい土地のある地域の不動産会社を1件ずつ当たっていたのであれば、膨大な手間と時間がかかってしまいます。一括査定サイトで売却相場を調べながら不動産会社も見つけてしまうのがおすすめです。
厳格な審査を通過した優良な不動産会社だけを集めているすまいステップなら、全国どこの土地でも対応できる良心的な不動産会社を必ず見つけることができます。査定の依頼後に、知らない会社から電話が頻繁にかかってくることもありません。
仲介を依頼する不動産会社を決めたら、その後の他の不動産会社からの連絡はないので安心して利用できます。ぜひ、安心して不動産会社を見つけることができるすまいステップを利用してみましょう。
大手か地元密着かにこだわらない
不動産会社には全国規模で展開している大手企業と、地元密着の中小企業があります。遠隔地の土地を売却するのであれば、大手企業と地元密着のどちらかにこだわらずに探したほうよいでしょう。
地方でも比較的売りやすい土地であれば大手企業のほうが高額での売却が期待できます。しかし、なかなか需要が少ない土地の場合には、中小企業の地元密着の情報網を生かしたほうがよいかもしれません。
査定結果とその理由などをよく聞いた上で、納得できる対応をしてもらえる不動産会社を選択しましょう。
一度実際に会ってから不動産会社を決める
遠隔地の土地を売却するときでも、できれば一度担当者と直接会ってから媒介契約を結ぶかどうかを決めたほうがよいでしょう。直接現地へ行くのが難しいのであれば、Web会議システムでのビデオ通話もおすすめです。
担当者の人柄や知識量、対応力などは直接顔を合わせて話してみなければわかりません。遠隔地の土地の場合には、自分が直接、売却活動を見ることができないので、本当に大切な土地の売却をおまかせできるかどうかを、自分の目で判断するようにしましょう。
遠隔地の土地の売却で引き渡しに立ち会わない方法
遠隔地の土地の売却では契約や引き渡しに売主が立ち会わずに進めることも可能です。売主が立ち会わずに売却を進める3つの方法について解説します。
持ち回り契約で手続きを進める
持ち回り契約とは契約書を郵送でやり取りする方法です。不動産会社が契約書の原本を作成して、それをまずは買主に送ります。買主は契約書の内容を確認した上で、署名捺印をして手付金を振り込んでから売主へ郵送します。
売主は契約書の内容と買主の署名捺印、手付金の振り込みを確認した上で署名捺印して不動産会社へ郵送します。この方法なら、現地で立ち会わずに引き渡しができますが、時間がかなりかかります。
親族や友人・知人に代理を依頼する
売りたい土地の近所に親戚や親しい友人がいる場合には、委任状を作成して署名代理をしてもらう方法もあります。この場合、署名の責任は代理を依頼した人が負います。書類に不備があると代理人や買主に大きな迷惑をかけてしまうことになります。書類や契約内容のチェック、代理を依頼する人の人選を慎重に行う必要があります。
司法書士に引き渡しの立ち会いを依頼する
手数料を支払って司法書士に代理をお願いすることもできます。司法書士は不動産の登記や契約書の作成のプロなので、書類の不備などの心配はありません。現地での契約や引き渡しの代理もお任せできます。どうしても自分で立ち会いできない場合には、費用はかかりますが、最も手間がかからずにスムーズに売却を進められる方法です。
遠隔地の土地が売却できないときの対処法
遠隔地の土地を売却したくて、不動産会社と媒介契約を結んでも、なかなか売却できないこともあります。土地が売却できない理由はそれぞれありますが、売却できないときの対応方法は共通したものがあります。土地の売却ができない場合に可能な3つの対応法について解説します。
不動産会社での買取を利用
仲介での売却よりも売却額は安くなってしまいますが、不動産会社による直接買取りが利用できないか確認してみましょう。直接買取りとは不動産会社が買主を探すのではなく、その土地を買取ります。その後、整地をするなどして付加価値を付けた上で不動産会社が売却します。
不動産会社が付加価値を付けるための費用と利益が必要になるので、直接買取りでの売却価格は仲介の場合の7割程度になってしまいます。しかし、買取りをしてもらえるのであれば、確実に売却できるので、どうしても売却してしまいたい場合にはおすすめです。
隣接地の所有者に売却を相談
不動産会社による仲介では買主が見つからない場合には、隣の土地の所有者に売却を相談してみましょう。隣接している土地であれば活用しやすく、格安の条件であれば応じてもらえる可能性があります。
ただし、無償譲渡はしないようにしましょう。どうしても自分では管理しきれなくても、タダでもよいから譲りたいという場合もありますが、無償譲渡では贈与税が発生する可能性があります。多少なりとも金銭のやり取りが発生する売却という形にするように気をつけましょう。
土地が広すぎる場合は分割
土地が広すぎて購入後の活用が難しい場合にはなかなか買手が付きません。土地の面積が広いと、総額が高額になるためです。
その場合には、土地を分割してから売却することをおすすめします。土地の分割には、測量や確定図の作成、登記申請などの手続きが必要で費用も発生します。しかし、土地を分割することで、買手が見つかりやすくなるのなら、検討しましょう。
ただし、個人が土地を分筆した場合には、1筆分しか一度に売却できません。残りの土地を売却するには一定期間を空ける必要がある点に注意しましょう。
遠隔地の土地を売却する3つの注意点
遠隔地の土地の売却を検討するときに注意しなければいけない点について詳しく見ていきましょう。
早く売却をしないと税金や管理費の負担
自分では活用することができない土地を所有している場合には、税金や管理費などの費用の負担ばかりが発生します。自分が住んだり活用したりできていなくても所有しているだけで固定資産税は毎年課税されます。土地はまったく管理しなければ雑草が伸び放題になってしまい、隣近所に大きな迷惑をかけてしまいます。定期的な草刈りなどの管理が必要になります。
水道や電気を通していた場合には、利用する機会が少なくても基本料の支払いが毎月発生します。
賃貸に出す、太陽光発電を経営するなど、何らかの形で土地を活用できていれば多少なりとも収益が発生しますが、何も活用できていないのなら、ただ費用の負担だけが発生する負の財産となりかねません。遠隔地の活用しきれていない土地は、できる限り早めに売却してしまったほうがよいでしょう。
土地に埋没物が見つかると売主の責任
土地を売却するときには、売買契約書に契約不適合責任について必ず記載します。契約不適合責任というのは、売却時に買主も売主も気がつかなかった不具合が売却後に見つかった場合には、一定期間の間は売主が責任を持たなければいけないというものです。
土地の場合には、地中の埋設物や土壌汚染が売却後に見つかった場合には、契約不適合責任を問われることになってしまいます。場合によっては、売主側の負担で埋設物の除去を求められたり、契約を白紙撤回されてしまう可能性もあります。できれば売却前に調査しておいたほうがよいでしょう。
しかし、遠隔地の土地の場合には売主が現地で売却前に埋設物や土壌汚染について調査することはとても難しいのが現実です。
そこで、土地の売却時には契約書の契約不適合責任の項目に、地中の埋設物や土壌汚染については売主の責任を免責するという特約や容認事項を入れることで、万が一の場合のリスクを軽減できます。
利益がでない土地の売却でも確定申告しないと損
遠隔地の土地を売却した場合には、利益を得るよりも、自分では活用しきれない土地を早く手放したいという場合も少なくありません。そのために、売却による利益が出ないこともよくあります。
土地などの不動産の売却によって利益が出た場合には、譲渡所得税が課税されるので確定申告が必要です。譲渡所得税が発生するのに確定申告しなければ、後から延滞税も支払わなくてはいけなくなります。
しかし、利益が出なかった場合にも、確定申告したほうがよい場合があります。それは、給与所得や事業所得がある場合です。個人が不動産売却で赤字を出したときには、赤字分を給与所得や事業所得と相殺する損益通算ができます。
土地の売却の赤字と給与や事業所得での収入を相殺して、その年の所得の総額を低く抑えることで所得税や住民税の総額を低く抑えることができます。
確定申告は、土地を売却した翌年の2月から3月の確定申告期間にしかできません。利益が出なくても、必要があれば確定申告を行い、節税に努めましょう。
準備を整え遠隔地の土地の売却をスムーズに進めよう
以前自分が住んでいた場所の土地だったり、親や親族から相続した土地だったり、遠隔地の土地を所有している理由は人それぞれでしょう。しかし、どのような理由でどのような土地を所有していたとしても、自分で活用することができなければ、固定資産税などの費用負担だけが続く負の財産です。早めに売却を進めたほうがよいでしょう。
遠隔地の土地であっても、自分でそれほど現地に赴かなくても売却を進めることは可能です。手間や費用はかかりますが、契約や引き渡しも立ち会わなくてもできます。
遠隔地の土地の売却はしっかりとした準備が大切です。ぜひ、早め早めに行動して、すまいステップで信頼できる不動産会社を見つけて、売却をスムーズに進めていきましょう。