住宅を売却する際には買主と直接交渉をすることも多く、この時に売却理由を問われることは少なくありません。
マンションを売却する理由は人によって違いますが、中にはネガティブな理由で手放すこともあります。
この時に本当の理由を伝えるべきなのか、迷ってしまう人は多いです。マンションの売却理由はどのように話すのか、上手に伝える方法を知っておきましょう。
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【アンケート】マンション売却の理由はなんでしたか?
マンション売却経験者がマンション売却をした理由はなんだったんでしょうか。
すまいステップのアンケート結果をご覧ください。
この結果をグラフをみると、半分以上の方が住み替えの為にマンションを売却した人が最も多いことがわかります。
- 住み替え 55.8%
- 転勤 10.5%
- 相続 9.5%
- 金銭的な理由 9.5%
- 不要物件の処分 5.3%
- 離婚 4.2%
- その他 4.2%
- 住宅ローンで困っている 1.1%
売却理由ごとの伝え方を紹介
売却アンケートによると、マンションの売却理由がさまざまであることがわかりました。
どんな理由であれ、きちんと買主に伝えれば売却をすることができます。
ここでは売却理由が多かった6つの理由ごとに買主への上手な伝え方を解説します。
- 住み替え
- 転勤
- 相続
- 金銭的な理由
- 不要物件の処分
- 離婚
住み替え(結婚や出産による家族構成の変化・よりよい住まいへの住み替え)
売却理由
結婚して2LDKのマンションに住んでいましたが、子供が2人できて手狭になり、子供が小学校に上がる前に引っ越しを検討していました。なかなか良い物件もなく、ちょうど父親がガンで余命宣告を受けて、母親を一人にさせるのは心配だから二世帯住宅で一緒に住んで欲しいと言われ、実家を二世帯住宅に建て直して住むことになりました。
結婚や出産、両親との同居など、増加を伴う家族構成の変化によって、住み替えを検討する人は多いです。今のマンションでは手狭になってしまうため、より大きな家に引っ越すために売却するなら、そのまま伝えても悪印象を持たれることはないでしょう。
手狭という理由はマンション自体が狭いと批判しているわけではなく、単に家族が増え過ぎたというだけに過ぎません。
そのため、適正人数での居住を考えている人なら、問題なく購入を検討してくれるでしょう。
転勤のため
売却理由
20代後半で生活レベルを上げたいと思っていた頃、転勤の時期がきてちょうどいいチャンスと思い住み替えを検討。今後新婚生活もはじまるため家族に安心して生活して貰うためにも今住んでいるマンションを売却して、より生活しやすい環境を手に入れるために住み替えをしました。この選択は間違っていなかったと思っています。
住み替えの次に多かったのは転勤でした。
転勤による売却も一般的な理由の為、そのまま伝えても問題ありません。
相続のため
売却理由
実家の土地家屋を相続して住み続けてきたのだが、老朽化が著しく、当初は建て替えを検討していた。ただ、旧市街という場所柄、地域の高齢化が進み、隣近所にまで廃屋や空き地が目立つようになってきたのが気になり始めた時期でもあったので、今後の住環境の悪化を懸念して別の場所に住み替えた方が良いのではないかという判断に至った。
不動産は購入して手に入れるだけではなく、相続によって手にすることもあります。しかし、すでに持ち家がある、あるいは相続したマンションがあまりにも遠く、自分の生活圏にない場合は売却を考える人が多いでしょう。
相続による売却のケースは非常に多く、単に条件的に住めないことだけではなく、遺産を分割しやすくするために、売却して現金化するというケースもあります。基本的にはどの場合でもネガティブなイメージはつきづらく、ただ使わないから、売却したほうがよいからという理由なら正直に伝えても問題ないでしょう。
しかし、もしかしたら室内で亡くなったのかもしれないと不安に思う買主もいるでしょう。
他殺や自殺など、事故物件に当たりますが、病死や老衰の自然死は告知義務に該当しません。
金銭的な理由のため
売却理由
シンプルに安かったというのが理由です、年齢的にそこまで金銭的に余裕があるわけではないので、基本的には時間と費用のコスパを考えて購入しました。職場から15分ほどで移動できる場所にもあり、築年数がたっていますが、比較的立地もよくきれいな物件だったので、今後そこまで地価が下がらないと考えました。転勤も考えるとリセルバリューも見ていきたい
ローンを組んでマンションを購入した場合は、退職などをきっかけに収入が減少したことを理由にマンションを手放すこともあります。
金銭的な理由で売主がマンションを手放す場合でも、買主にとってはデメリットとなる点はほとんどありません。
マンションがきれいに管理されており、買主の生活に支障となる問題がない限り、金銭の問題のようなプライベートな事情を買主に伝える義務はありません。
不要物件の処分の為
売却理由
家が狭く、カビなどが発生し汚くなった。同時に古い印象があったので、両親が元気なうちに引っ越しした。すごく近くに新築ができて生活環境も変わらないし気分替えも含めて移ったという状況。近所にもちょっと印象の変な方が住んで気になったので引っ越すことを決意した。家が古いということは一生は住めないと思ったため。
マンションの老朽化が原因で、快適に住むことができなくなった物件を処分したい場合もあるでしょう。
老朽化が進んでいる場合、買主に対してマンションに瑕疵にあたる問題があれば伝えることが義務付けられています。
マンションの問題を買主に伝えず、マンション売却後に買主が発見した場合、契約不適合責任を負わされ、賠償金や修繕費の支払い、最悪の場合、売却を撤回されてしまうことがあります。
マンションの瑕疵にあたる告知義務は次の章で詳しく解説していきます。
こちらの記事では古い家を売る場合、買主とのトラブルに発展しないための対策を紹介していますので、不要なマンションを処分したいと考えている方は参考にしてください。
離婚のため
売却理由
離婚することになり、それまでに売却をして資産を分与したかったので
マンションは離婚時に財産分与をすることが多く、どちらか一方が住み続ける以外に、売却して現金を分割するということがあります。
かりに円満な離婚だったとしても、離婚そのもののイメージから買主にネガティブな印象を持たれてしまうことがあるため、注意しなければなりません。
特に新婚の人が購入を考えている場合は、離婚した人の家は縁起が悪いとして、購入を敬遠されることもあるでしょう。
しかし、離婚でマンションを売却する場合、説明が義務付けられている瑕疵理由には当たりません。
「住み替え」等の理由として濁して伝える方が良いでしょう。
マンションの売却には理由の告知義務がある
買主に尋ねられるかどうかに関係なく、不動産を売却する際にはその理由を告知する義務があります。これは法律で定められており、次のような瑕疵(かし)は必ず告知しておかなければなりません。
物理的瑕疵 | ・地盤のゆがみ ・土壌汚染 ・雨漏り ・ひび割れ ・シロアリ被害 ・アスベスト ・床下への浸水 |
環境的瑕疵 | ・周囲に騒音環境がある ・電車などによる振動がある ・日照・眺望に問題がある ・暴力団組員が居住または事務所がある ・周辺に火葬場や産業廃棄物処理場等がある |
法律的瑕疵 | ・建蔽率違反 ・容積率違反 ・接道義務違反 ・計画道路指定 ・防災設備が古い |
心理的瑕疵 | ・過去に起きた事件や事故など ・買主が心理的抵抗を感じる欠陥 |
物件の隠れた問題である瑕疵は4つの種類があり、売却時にはそれぞれを買主に告知する必要があります。
物理的瑕疵
土地や建物に欠陥がある場合は、物理的瑕疵として契約時に書面で説明しなければなりません。地盤の問題や建物の老朽化や欠陥などが該当し、目に見えない問題でも必ず説明する必要があります。
物理的な瑕疵は資産価値にも大きく影響するため、これを伝えずに売却すると実際の価値を偽っていると指摘されることも少なくありません。
買主からの苦情が出やすく、売買後にトラブルに発展することも多い問題のため、事前に告知して納得してもらってから売却するようにしましょう。物理的な瑕疵があったとしても、事前に説明し、双方合意のもとで契約したなら、売却しても問題はありません。
環境的瑕疵
マンションの周囲がうるさかったり、排気ガスや産業廃棄物などを出す施設が周りにあったりすると、住環境が悪いとして環境的瑕疵と認められます。環境的瑕疵は範囲がやや曖昧であり、どこまでをマンション周辺とするのか、明確な基準が設けられているわけではありません。
また、例えば近くに電車が走っていてうるさいと感じる人もいれば、駅までのアクセスがよく便利と感じる人もいるように、捉え方の違いによって瑕疵になるかどうかも変わります。自分では環境的瑕疵と思っていないことが、買主にとっては重大な問題というケースもあるため、注意しなければなりません。
売却時には周囲のことはできるだけ丁寧に説明し、少しでも生活に影響する要素を含むものがあるなら、その存在だけでも伝えておいたほうがよいでしょう。
法律的瑕疵
各種法律に違反することや、欠陥を抱えている場合は、法律的な瑕疵があると認められます。法律的な瑕疵は売買契約時の重要事項の説明でなされるものであり、告知は必須です。
法律的瑕疵は不動産会社の宅建士から説明されますが、売主への説明時に同席できるなら、一緒に聞いて抜け漏れがないか確認しておくことが大切です。
心理的瑕疵
マンション内や売却する部屋で起きた事件や事故などは、心理的瑕疵として認められることがあります。
事件や事故などの内容によって買主がどのように感じるかは凄惨な出来事があったところに住みたくないと考える人は多いため、もしも何かがあった場合はそのことを伝えておかなければなりません。
しかし、心理的瑕疵は買主が心理的な抵抗を覚えるものという曖昧な基準であり、主観的な基準が採用されるためどこまで伝えるべきか悩むことも多いです。実際に明確な基準が存在しないことから、どこまでを必須告知とするかは定まっていません。
しかし、心理的瑕疵となりえることを意図的に隠して売却し、後からそれが分かった場合は、告知義務違反の責任を追及されることもあるため注意が必要です。
告知しなかった場合は損害賠償を請求される可能性がある
告知義務に違反すると、後から瑕疵が分かった場合に買主から損害賠償を請求されることがあります。また、引き渡し前に発覚すると契約の解除となり、手付金の返還や売主が違反金を支払わなければならないこともあります。
これらについては、宅地建物取引業法の47条で明確に定められているため、注意しなければなりません。
宅地建物取引業者は、その業務に関して、宅地建物取引業者の相手方等に対し、次に掲げる行為をしてはならない。
一 宅地若しくは建物の売買、交換若しくは貸借の契約の締結について勧誘をするに際し、又はその契約の申込みの撤回若しくは解除若しくは宅地建物取引業に関する取引により生じた債権の行使を妨げるため、次のいずれかに該当する事項について、故意に事実を告げず、又は不実のことを告げる行為
イ 第三十五条第一項各号又は第二項各号に掲げる事項
ロ 第三十五条の二各号に掲げる事項
ハ 第三十七条第一項各号又は第二項各号(第一号を除く。)に掲げる事項
ニ イからハまでに掲げるもののほか、宅地若しくは建物の所在、規模、形質、現在若しくは将来の利用の制限、環境、交通等の利便、代金、借賃等の対価の額若しくは支払方法その他の取引条件又は当該宅地建物取引業者若しくは取引の関係者の資力若しくは信用に関する事項であつて、宅地建物取引業者の相手方等の判断に重要な影響を及ぼすこととなるもの
二 不当に高額の報酬を要求する行為
三 手付について貸付けその他信用の供与をすることにより契約の締結を誘引する行為
ただし、瑕疵があるからといって全てが問題になるわけではなく、事前に告知しなかった場合のみ告知義務違反としてペナルティが課せられます。つまり、さまざまな瑕疵を持った物件でも、買主にきちんと説明し納得を得られたのであれば売却は可能です。
マンションを売却する理由を明確にしてまず不動産会社に相談
どのような理由で売却するにしても、まずは不動産会社に正直に話して、買主にはいかにして伝えるのか相談することが大切です。
自己判断で全て話したり、一部を告知しなかったりすると、買主を逃したり後で問題になったりすることもあります。
不動産会社のアドバイスのもと、上手に売却理由を伝えて購入希望者を逃さないようにしましょう。