シニア世代の副収入としてだけでなく、現役世代の副業としても注目されているマンション経営。賃貸経営のおもな評価基準として利益率が挙げられ、この利益率を長期的に安定化させられるかどうかがマンション経営における大きな分かれ目になっていると言えます。
賃貸経営において想定される種々のリスクに注目しつつ、マンション経営を長期的に行うにあたって重視すべき利益率向上のポイントについて詳しく解説していきます。
マンション経営は儲かるのか
マンション経営は儲かるのでしょうか。
国税庁が発表した申告所得税標本調査によると、令和3年度の不動産所得の平均額は500万円から600万円。
マンションは部屋数によって収入が増加するため、年間所得額の平均は800万円~1300万円程度であると予測できます。
マンション経営の仕組み
マンション経営はどのような仕組みで利益を得ているのでしょうか。
マンション経営とは、簡単に言うと、マンションを購入し、そのマンションを賃貸として貸し出すことで家賃収入を得ることです。
マンションを購入した住宅ローンの返済は、入居者からの賃料で支払うことができるという仕組みです。
また、ローンの返済が終われば、マンションは引き続き家賃収入を得ながら賃料を得ることも、売却して現金化することもできます。
マンション経営の収入内訳
マンション経営をすると、賃料以外にも得られる収入があります。
マンション経営の収入の内訳は以下の通りです。
収入源 | 費用 |
---|---|
共益費 | 家賃収入の5%10%ほど |
礼金 | 1ヶ月~2ヶ月分の家賃 |
更新料 | 1ヶ月~2ヶ月分の家賃 |
駐車場賃料 | 5,000~20,000/月 |
家賃収入に加え、これらの収入が見込まれるため、マンション収入では利益が出やすいと考えられます。
1.マンション経営が注目されている理由
不動産バブル時代から現在まで、景気が落ち込んでも根強い人気のあるマンション経営。賃貸経営が「初心者にもおすすめ」と言われている背景には、どのような理由があるのでしょうか。まずはマンション経営の基本的な仕組みから見ていきましょう。
1.1.ローンを使って少ない自己資金で始められる
「老後も大がかりな事業に携わって安定した収入を得たいけれど、元手となる自己資金が乏しい」という方にとって、マンション経営はメリットの大きい投資形態であると言えます。
マンション経営においては住宅ローンが充実しており、たとえ潤沢な自己資金が確保できない状況にあったとしてもローンを上手に利用することで初期投資費用を最小限におさえ、リタイア後ならば退職金の範囲内で手軽に始めることができる仕組みになっています。
ただし、もちろん、事前のコストシミュレーションはきわめて重要であり、特に金利のパターンについては不動産業者やファイナンシャルプランナーなどの専門家などに相談したうえで、メリットを最大化しつつリスクをおさえられる金利の組み合わせを具体的に考えていく必要があります。住宅関連の金利には、以下のようなバリエーションがあります。
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一般に、固定金利のほうが変動金利よりもベースとなる金利水準が高めに設定される傾向がありますが、固定金利では景気動向の影響を受けにくいメリットがあり、一方で変動金利では初期金利が低くおさえられるという利点があると言われています。
固定金利と変動金利。どちらのほうがよりメリットが大きくなるのかはケースバイケースで変わってきますので、契約時に必ず長期的な視点をもって金利についてのシミュレーションを行いましょう。
1.2.長期的な家賃収入が期待できる
投資で得られる利益には大きく、「キャピタルゲイン」と「インカムゲイン」のふたつに分けられます。キャピタルゲインとは株式投資やFX、仮想通貨取引などで「短期的な売買によって得られる利益」を表し、一方のインカムゲインのほうは「その資産をもっているだけで発生する長期的な利益」を意味します。
マンション経営における主な利益である賃料収入はインカムゲインに分類され、短期的な利益は少ないかわりに長い視点で考えると得られる利益率が上昇していく、という性質をもっています。
このように、インカムゲインはロングスパンで考えるほどメリットが大きくなるというタイプの利益であるため、毎月安定した収入を確保したいシニア世代の副業とも非常に相性が良いのです。
1.3管理は委託できて本業と両立しやすい
昔ながらのアパマン経営では、賃貸物件の経営者が自分自身で物件に泊まり込み、常駐し、マンションを包括的に管理するというパターンが一般的でしたが、ここ数年は委託による物件管理が当たり前になっており、本業に軸足を置きながらも賃貸物件の経営者として利益を受け取ることができる、という仕組みが確立されています。
かつてのように賃貸物件にみずからが常駐し、物件の管理を行うのは大家と呼ばれ、一方、現在のように委託会社と契約を結び、間接的に物件を所有している経営者のことを管理人と呼んで区別しています。
最近ではさらに、入居者から得られた賃料をいったん管理会社が回収し、そのうえで契約を結んでいる所有者に賃料を分配するという「サブリース契約」が主流になりつつあり、賃貸経営のハードルはますます下がりつつあります。
1.4.物価の変動に強い
賃貸経営によって得られるインカムゲインの特徴として、「物価変動の影響を受けにくい」という点が挙げられます。つまり、将来的に本格的なインフレが起きたとしても実質的な利益が目減りすることもなく、契約当時の賃料水準を維持することが可能になります。
さらに、あらかじめ固定金利に設定しておくことで長期的にローンの返済額をシミュレーションしやすくなり、老後資産の活用法をプランニングすることが容易になります。
1.5.節税や相続の対策に使える
初心者の方にとってはややわかりにくいかもしれませんが、賃貸物件を所有しておくことで将来の相続税、贈与税などの節約につながります。
ごく大まかに言えば、「同じ規模の資産を相続するのであれば、現金よりも不動産物件のかたちとして引き継いだほうが課税負担が軽減される」ということであり、基礎控除要件にあてはまる相続や贈与であればさらに最終的な課税額を低くおさえることができます。
具体的な節税方法や課税率については、賃貸物件の契約時に不動産業者や司法書士などの専門家に相談しましょう。
・ローンを上手に活用
・賃料収入はインカムゲイン
・節税対策にも利用可能
2.マンション経営でよくある5つの失敗
初心者向けの投資形態と言われるマンション経営ですが、もちろん失敗例もあり、ポジティブな情報ばかりをインプットするだけでは利益率を安定させることはできません。初心者がマンション経営でおさえておくべき基本的な注意点を把握しつつ、失敗のパターンについて具体的にシミュレーションしていきましょう。
2.1.利回りだけで経営するマンションを選んでしまった
賃貸物件の選定にあたり、物件あたりの利回り(利益率)を基準にすることは基本中の基本ではありますが、だからといって利回りのみに着目して物件を選んでしまうと後々、想定外のリスクに対応できず苦しめられることになります。
不動産広告などでPRされている賃貸物件の想定利回りはあくまでも見込みの数時であり、その時々の景気の動向や周辺立地のささいな変化などによって利益率は大きく上下してしまい、「契約時の利益水準を維持できない」ということになりかねません。
利回りはもちろんのこと、周辺の立地、購入価格、金利、空室率など、さまざまな要素を考慮に入れ、長期的なスパンでメリットとデメリットを比較しましょう。
2.2.周辺環境の変化を読めなかった
賃貸物件の想定利回りが大きく変動する要因として、周辺環境の変化が挙げられます。たとえば、近隣に大規模な商業施設が営業していた影響で入居率が安定していた場合、何らかの理由でその商業施設が閉鎖されれば周辺住民の導線も変更されることになりますから、結果として空室リスクが一気に高まり賃貸物件としての魅力が失われる、ということにつながってしまいます。
商業施設以外にも、学校や学生寮など、まとまった賃貸需要を発生させやすい施設はいくつかあります。賃貸物件をピックアップする際には必ず想定利回りとともに、「なぜその利回りを維持できているのか」というポイントまで細かくチェックし、不確定要素がどれだけ含まれているのかを確かめるようにしましょう。
2.3.ランニングコストが高額
賃貸経営におけるランニングコストは、契約から契約満了時まで一定ではありません。このことを意識して賃貸経営を結ばなければ、賃貸経営が長期化した場合にランニングコストがどんどんかさんでいき、せっかく安定した利益が出ていたとしてもコストばかりが上まわってしまい肝心の利潤が得られない、ということにもなりかねません。賃貸経営におけるランニングコストには、以下のようなものがあります。
- 建物の管理費用
- 修繕費およびリフォーム費用
- 数十年に一度の大規模改修費用
- 設備交換費用
- 入居者の管理費用
- 入居者募集費用
- 共用部分の水道光熱費や消耗品交換費用
- 固定資産税、都市計画税
- 不動産所得に関する所得税
- ローンの支払い
上記のランニングコストのうち、固定資産税や改修費用はまとまった金額になるため、契約時から長期的な視点で将来のランニングコストをシミュレーションし、なおかつ、個々のランニングコストをできるかぎり安くおさえられるように工夫していく必要があります。
ランニングコストを軽減するポイントとしては、「まとまったコストから削っていく」ということです。たとえば、物件の改修をこまめに行うことによって1回あたりのコストを最小限にとどめることができ、月々の利益からランニングコストを少しずつ積み立てていくことが可能になります。
ローンの金利についても時期に合わせてこまめに見直しを行い、少しでも条件が良い金利パターンに変更し、返済額を長期的にコントロールすることがポイントになります。
・利回り以外に立地を確認
・ランニングコストは変化
・金利もこまめに見直す
3.儲かるマンション経営を続けるポイント
マンション経営の初期段階で一時的に利潤をあげることは、実はそれほど難しくはありません。本当に難しいのは「長期的に納得のいく水準の賃料収入を出しつづけること」であり、それを実現するためには将来を見据えた経営計画とより専門的なテクニックが必要となります。
3.1.中長期で判断して立地の良い物件を選ぶ
賃貸と入居率と周辺の立地には密接な関係があります。いわゆる「立地の良い物件」に入居者が集まりやすくなるのは当然のセオリーのように思えるかもしれませんが、立地の良さにはいくつかの条件があり、たんに便利な土地だから空室リスクが低くなる、というわけではありません。
もとめられる立地条件は、エリアごとの年齢層や男女別の人口比などによって変わってきます。たとえば、周辺に学校が多く、学生寮が点在している地域ではコンビニなどの施設があったほうが喜ばれますが、高齢化の進む地方都市ではコンビニではなく、病院やヘルパーステーション、大規模ショッピングモールなどの施設が望まれるなど、その地域や時代によって周辺施設の需要バランスが変化していきます。
3.2.空室を早期に解消
賃貸経営において最も恐ろしいのが空室リスクです。空室率の増加は賃料収入の低下にダイレクトにつながるだけでなく、物件そのものの老朽化や資産価値の減少を招きかねないリスク要因であり、オーナーとしては早急に改善しなくてはなりません。
空室率を最小限におさえるためには、信頼できる不動産業者をピックアップすることが重要です。入居者の募集は不動産業者の手腕にかかっており、業者との足並みがそろっていなければ入居者を効率よく集めることができず、空室のほうも時間とともにどんどん増えていってしまいます。
業者の宣伝手法、業者間のコネクション、得意とする販促戦略などを時間をかけてチェックし、入居率をアップさせてくれる業者を見きわめましょう。
3.3.修繕費用をつねに確保しておく
賃貸経営に際して無視できないランニングコストとして、修繕費用を忘れてはいけません。マンションの修繕時期を正確に予測することは難しく、長期間放置しているうちにいつの間にか壁のキズや変色が目立っていた、というトラブルも残念ながらゼロではありません。
不測のトラブルにそなえ、修繕積立金以外にも修繕のための費用を月単位でストックしておき、どのタイミングで大規模な修繕が発生してもスピーディに対応できるようにしておきましょう。
・地域ごとの立地条件を確認
・不動産業者との相性が重要
・充分な修繕費用を確保
4.儲かるマンション経営のためリスクを管理
マンション経営を早い段階で軌道に乗せるためには、事前のコストシミュレーションが重要です。修繕費用や固定資産税などのランニングコストを正確に算出し、空室リスクや大規模修繕のリスクを最小限におさえることによって利益率を底上げし、安定した賃料収入を確保しましょう。