住宅を購入するとき、ほとんどの人が住宅ローンを利用するのではないでしょうか。漠然と借り入れをおこなって住宅を購入すると知っていても、どのような住宅ローンがあるのか、どのように手続きをするのか知らない人も多いでしょう。
住宅ローンは、多くの金融機関が提供しています。借り入れをおこなうときの金利もそれぞれ異なり、利用できる期間や年齢なども金融機関によってそれぞれ定められています。
住宅ローンは、選ぶ返済方法によって返済額が増えることもあります。そのため、住宅ローンを選ぶときには、金利のタイプや返済方法についても正しく理解して自分にあったものを選ぶことが大切です。
この記事では、住宅ローンの種類や金利タイプ、返済方法の選び方を解説しています。無理なく住宅ローンを返済するためにも、申し込み時に自分にあった住宅ローンを選べるように備えましょう。
住宅ローンの種類
住宅ローンには、公的機関が扱う公的ローンと民間企業が扱う民間ローンがあります。ここでは、住宅ローンを組むときにはどのようなローンが利用できるかを見てみましょう。
公的ローン
公的機関が提供しているローンで、財形融資と自治体融資があります。
財形融資は主にサラリーマンを対象とした融資で、5年固定型です。利用には条件があり、1年以上財形貯蓄を続けていることや、貯蓄残高が50万円以上あることなどがあります。
借り入れできる金額は貯蓄残高の10倍までで、4,000万円が上限です。借り入れ申し込み時の金利が適用されて、借り入れ当初の金利は1%未満になることが多いようです。
また、地方自治体がおこなっている自治体融資があり、自治体融資の多くは民間の機関で借り入れした金利の利息を一定期間補給するタイプです。
ただし、この自治体融資はすべての自治体でおこなっているわけではないので、利用を検討する場合には、事前に最寄りの自治体に確認しましょう。
民間ローン
住宅の購入のときに利用する不動産会社と金融機関が提携しているタイプと、勤務先と金融機関が提携しているタイプ、どことも提携していない非提携のローンがあります。
不動産会社が提携している金融会社が提供しているローンを利用する場合、物件価格の全額の融資が受けられたり、窓口では取り扱っていない優遇された金利で利用できる場合があります。
勤務先と提携しているタイプもあり、この場合にも金利が低く有利に借り入れがおこなえます。ただし、これらの提携している住宅ローンは利用できる銀行が限られているというデメリットもあります。
非提携ローンは、勤務先や不動産会社と提携しているタイプ以外のローンを言います。
住宅ローンの金利のタイプ
住宅ローンを組むときの金利には、融資期間中、金利が固定されるタイプと金利が一定期間で見直されるタイプがあります。ここでは、それぞれのタイプの特徴について解説します。
固定金利タイプの特徴
金利が返済期間中変わらないタイプです。金利が変わらないので、月々の返済額も一定です。
借り入れた時の金利が変わらない
契約したときの金利が返済完了まで続くタイプです。返済期間中に市場金利が下がったり上がったりしても、契約した金利は変わりません。
そのため金利の上昇が予測される場合や、金利上昇のリスクを軽減したい人に適した金利タイプです。
固定金利タイプは、借り入れ中の金利や返済額が変わらないため、資金計画が立てやすいというメリットがあります。金利が低い時期におすすめの金利タイプです。代表的なものには、「フラット35」があります。
金利が変動金利よりも高い
変動タイプのものに比べると、金利は高めに設定されています。同じ金利で変動タイプと固定タイプを比べると、借り入れできる金額は、変動タイプの方が多くなります。
返済中に金利が上昇して、返済額が大幅に増えるリスクはなくせます。ただし、市場金利が下がっても、固定タイプの場合は、返済額は下がりません。
変動金利タイプの特徴
借り入れ期間中に金利が変わるタイプを変動金利タイプと言います。半年ごとに金利を見直すタイプと、一定期間金利を固定して、その後、金利タイプを選びなおすタイプがあります。
固定金利期間選択型は固定金利期間後の金利が読めない
変動金利タイプの中には、半年に1度金利を見直すタイプと、一定期間固定して、期間終了後に金利タイプを選びなおすタイプがあります。
変動型の場合は、半年に1度の金利の見直しと5年に1度の返済額の見直しがおこなわれます。市場金利の影響を大きく受けるため、返済計画が立てにくいというデメリットがあります。
固定金利期間選択型の場合は、2年や5年、10年といった一定期間金利を固定します。期間終了前には、その後の金利タイプを選択しておく必要があります。選択しておかなければ、自動的に変動型へと移行します。
この固定金利期間選択型も期間終了時の金利の予測は難しく、返済額が多くなる可能性があります。
変動金利型は金利が低い
変動型の金利は、固定型に比べると低く設定されています。市場金利は常に変動するため、借り入れをおこなっている金利も半年ごとに変わる可能性があります。
そのため、返済が終わらないと総返済額がいくらになるのか予測がつきません。ただし、固定タイプに比べると、借り入れできる金額は多くなります。
変動型の返済額は、5年に1度見直されますが、その際にルールがあり、返済額の上昇率は1.25倍までと定められています。
固定金利選択型の場合には、この上昇率の上限がないので注意しましょう。
フラット35の特徴
全国にある300以上の金融機関が、住宅金融支援機構と提携して融資をおこなっている長期固定型の住宅ローンです。
15年から35年の長期間の住宅ローンで、低金利で借り入れできることが特徴です。利用には、保証人や保証料が必要ありません。
申し込み当日に70歳未満であれば申し込み可能です。最大8,000万円までの借り入れができます。
優良住宅購入者を対象とした「フラット35S」も販売されており、このプランでは、当初の10年間の金利が0.3%優遇されます。
また、繰り上げ返済のときの手数料は無料で、100万円から繰り上げ返済が可能です。なお、繰り上げ返済をおこなうときには、期間を短縮する方法と月々の返済額を減らす方法があるので、確認してから繰り上げ返済をおこないましょう。
住宅ローンの最長借り入れ期間
金融機関では、借り入れできる最長の期間は35年としているところが多いようです。ただし、これは申し込み時の年齢によっては、35年を設定できない場合もあります。
一般的に、住宅ローンの申し込みができるのは70歳未満と決められているところが多く、80歳までに完済することが条件で借り入れできます。
そのため、70歳で申し込む場合には最長でも10年しか設定できません。最長の35年を利用したい場合には、45歳までに申し込む必要があります。
借り入れできる年齢や融資期間などは、金融機関によって異なります。手数料や金利などを確認するときに、あわせてこれらも確認するとよいでしょう。
住宅ローンの返済方式
返済方法には2種類あります。月々の返済金額が一定に保たれる元利均等返済型と、元金の返済額を一定に保つ元金均等返済型があります。ここでは、それぞれの返済方法を解説します。それぞれの返済方法の特徴を理解して、自分にあった返済方法を選びましょう。
元利均等返済型
一定の返済額を返済期日まで支払う返済方式です。返済を始めた初期は金利の割合が大きいため、元金の減りが少ないのが特徴です。
元金の減りが少ないため利息が多くなり、元金均等返済型に比べると、同じ融資期間での返済でも総返済額が多くなります。
ただし、毎月の返済金額が決まっているので資金計画が立てやすいというメリットがあります。
元金均等返済型
返済期間中の元金の返済額が一定に保たれた返済方法です。返済初期は利息の支払いが多いため、月々の返済の負担が大きいのが特徴です。
元金が毎月一定の金額減っていくので、利息が少なく済むというメリットがあります。元利均等返済型に比べると、融資期間が同じ場合、返済総額は少なく済みます。
資金に余裕があり、返済初期の返済額に問題がないのであれば、総返済額が元利均等返済型に比べると少なく済むのでおすすめの方法です。
ただし、元金均等返済型を扱っていない金融機関もあるので、申し込み前に確認しましょう。
住宅ローン控除とは
住宅を取得する人の金利負担を軽減するための制度です。制度の利用には条件があり、その条件を満たすと、10年間所得税から直接控除されます。ここでは住宅ローン控除について解説します。
住宅ローン控除の概要
個人が居住用の住宅を購入するために住宅ローンを10年以上の利用する場合、「住宅ローン減税制度」を利用できます。
この制度では、住宅ローンの残高の1%、もしくは住宅取得対価の少ない方の金額の1%が10年間所得税から控除されます。また、所得税で控除できない場合には、一部住民税からも控除できます。最大10年間で400万円が控除され、住宅ローン控除が利用できると住宅購入時の負担が減らせます。
なお、消費増税後の10%で住宅を購入し、令和元年の10月1日から令和2年の12月31日までに入居した人を対象に控除期間を3年延長しています。
この制度が利用できるのは、新築、中古住宅の購入や、省エネリフォーム、増築などの一定規模以上の修繕や模様替えなど、工事費用が100万円をこえる工事です。
住宅ローン控除の手続き方法
控除を受けるためには、住宅を購入した翌年に確定申告が必要です。毎年、2月15日頃から3月15日頃の間に手続きできます。手続きには以下の書類が必要です。
- 確定申告書
- 住民票
- 源泉徴収票
- 土地・建物の登記事項証明書
- 住宅借入金等特例控除額の計算明細書
- 本人確認書類
- 売買契約書の写し
- 住宅ローン残高証明書
翌年からは、サラリーマンであれば勤務先の年末調整で手続きができます。
所得税から控除される金額は、住宅ローンの残高の1%です。控除される金額には上限があり、年間40万円までです。また、所得税で控除しきれない分は、住民税からも控除されますが、この場合、上限が136,500円までとなります。
住宅ローンの手続きの流れ
ここでは、実際に住宅ローンを利用して住宅を購入するときの流れを見てみましょう。
- 事前審査
- 本申込
- 金銭消費賃借契約
- 融資実行
物件が見つかったら、まずは物件の購入申し込みをおこないます。そのときに、住宅ローンの事前審査も一緒に申し込みます。
この事前審査では、申込人の勤務先や勤務年数、年齢、家族構成、返済比率、ほかの借り入れ状況などをみて審査がおこなわれます。
返済比率とは、年収に対する返済額の割合です。25~35%以内に設定している金融機関が多いです。そして、車のローンやクレジットカードの支払い状況なども確認します。この事前審査に通ると本申込がおこなえます。
事前審査に通ると売買契約を結びます。その後、住宅ローンの本申込をおこないます。そして決済日の10日から1週間前くらいまでに、金銭消費貸借契約を結びます。このときに融資期間や金利が決まります。
決済日に申込人の口座に融資額が入金されます(融資実行)。そこから売主に支払って、同時に抵当権が設定されます。この融資実行の日と決済日は合わせなければならないので、事前に不動産会社に相談して同じ日に設定しましょう。
自分にあった金利のタイプを選ぼう
住宅ローンの金利は、借り入れをおこなう金融機関によって異なります。金利タイプを選ぶときには、金利の動向も確認してから決めるとよいでしょう。そして、選ぶ返済方法によっては、総返済額が変わります。
住宅ローンは高額の借り入れで、返済が長期間続きます。無理なく返済するためにも、申し込みのときに、自分のライフスタイルや将来を見据えて選ぶことが大切です。
10年以上の借り入れをおこなう場合には、金利の負担を減らせる住宅ローン控除が利用できます。住宅ローンを選ぶときには、金利タイプや返済方法、融資期間など慎重に検討して自分にあったものを選びましょう。