住宅ローンの借り入れでは、市場金利の動きを知ることが重要になります。市場金利の上下によって、住宅ローンを借り入れしても問題ないタイミングなのか、もう少し遅らせたほうがよいのかなど、家を購入する計画も変わってきます。
また、住宅ローンの金利が低金利であるほど、返済額にも影響が出てきます。少しでも、返済額の負担を減らしたいのであれば、住宅ローン金利の推移を知っておくことがポイントになります。そこで、本記事では、世の中の住宅ローンの金利推移について、解説していきます。
1. 住宅ローンで金利を重視する理由
金融機関の多くが住宅ローンを取り扱っており、何を基準に選んだらよいのかわからないといった方も、多いのではないでしょうか。住宅ローンを選ぶポイントの中でも、重要なのが金利です。そこで、住宅ローンで金利を重視する理由について解説していきます。
1.1 金利にも種類がある
金利には大きく分けて、変動金利と固定金利の2つがあります。どちらも、良い面と悪い面がありますが、自分の目的や状況によって選ぶことができます。では、それぞれの特徴について紹介します。
変動金利とは?
変動金利とは、完済時までの間に金利が変わるものを言います。契約時は安かった金利も、市場金利の動きによって上下します。そのため、市場金利が完済時までの間に、急激に高くなってしまった場合は、住宅ローンの金利も見直しされることになります。
仮に、高い金利の住宅ローンになってしまった場合は、結果的に予想以上の返済額になり、家計が圧迫されてしまうこともあります。ただし、急激な金利の上昇は不可とされており、上昇したとしても5年間で返済額の125%を超えないようなルールが、徹底されています。
固定金利とは?
固定金利は、一度金融機関で借り入れを行うと、その金利から変わることがありません。そのため、市場金利が上下しようと、住宅ローンの金利の上げ幅を気にすることがないので、安心感があります。ただし、変動金利に比べると、金利が高めに設定してあります。
金利が変わらないという安心感はあるのですが、市場金利の動きが下降する状態が続いたとしても、金利は従来のままになります。そのため、変動金利を選んだほうが、結果的に返済額が少なくて済むといった状況もありえます。家計の経済的計画をしっかり立てておきたいという人には、向いている金利と言えます。
1.2 金利が低いと返済も変わってくる
例えば、ボーナス払いなし、頭金なし、金利1%、返済期間30年で3,000万円の借入を行うとします。金利が0.1%上がると、どのように変わってくるのでしょうか。下記を参考にしてみましょう。
返済期間 | 金利 | 月々の返済額 | 返済総額 | 利息 | 差額 |
30年 | 1.0% | 97,000円 | 3,474万円 | 474万円 | ー |
30年 | 1.1% | 98,000円 | 3,524万円 | 524万円 | 50万円 |
30年 | 1.2% | 10万円 | 3,574万円 | 574万円 | 50万円 |
このように、金利が0.1%変わるだけで、50万円近くの返済額の差が生まれます。金利が低いほど、返済額の負担が少なくなっていきます。そのため、市場金利が低いと言われるタイミングが、借り入れのチャンスです。
市場金利が変わることで、住宅ローンの金利も変わっていきます。住宅ローンの金利推移を見て、金利が低いと予測される時期であれば、借り入れしても、お得だと感じることが多くなります。
1.3 金利以外の見極めポイント
住宅ローンを見極めるポイントは、金利以外にも、保証料や繰り上げ返済手数料、事務手数料などを比較してみることです。とくに、事務手数料は数万円単位で変わってくるので、各社の事務手数料がいくらになるのか確認しておきましょう。
そして、住宅ローンの中でも重要なのが、金融機関によって異なる特典です。特典の中には、保険が無料になるようなプランを打ち出している金融機関もあります。住宅ローンを設定するときは、この保険に加入することが絶対条件になることが多いです。通常であれば数万円、高くて数十万円もする保険ですが、無料になるのであれば、大変お得になります。
・決められた固定金利
・金利以外にも注目
2. 住宅ローンの金利はどのように推移してきたのか
住宅ローンは、市場金利の動きに左右されることが多いです。そのため、市場金利の動きを把握することで、住宅ローンがお得かどうかの判別もつきやすくなるでしょう。そこで、市場金利と住宅ローン金利の動きの推移を、説明していきます。
2.1 バブル期と言われる時代の住宅ローン
日本経済が豊かで、個人の消費も激しかった時代がバブル期です。バブル時代に異変が起こり始めたのが、終盤頃です。その頃の住宅ローン金利は、8.9%まで上昇したと言われています。
個人の懐や日本全体の景気が良かったバブル時代。バブルの異変が起こり始めてから、崩壊するまでのきっかけが、不動産購入を制限する金融施策も大きく関係していると言えます。
2.2 バブル崩壊後の住宅ローン
バブル崩壊時には、異常事態が発生してきます。毎月の決められた返済を行っても、ローン残高が一向に減ることがなくなってしまいます。その理由としては、高すぎる利息にありました。毎月の決められた支払いは、ほとんど利息に回ってしまうため、いくら払っても支払いが追いつかなくなります。
その結果、未払いとなってしまう家庭が一気に急増します。その異常事態が、金融機関の混乱へとつながっています。そこから、数年後に住宅ローンは徐々に下がっていく動きとなります。
2.3 現在の住宅ローン
2000年から現在にかけての住宅ローンは、バブル期のような大きな波はありませんが、借り入れがしやすいような時代になったと言われています。2000年時は、住宅ローンの金利は2.0%近くまであったものの、2018年にかけて、1.0%以下になっています。
2018年時点も、激しく住宅ローンの金利が上がることはなく、0.640%から1.847%あたりが平均になっています。
・現在は低金利で推移
・借り入れしやすい時代
3. 低金利になる背景には何が影響するのか?
最近の世の中の流れでは、市場価格の動きが低金利になっています。では、低金利という動きになることで、どのような影響があるのでしょうか。そこで、マイナス金利の動きとなる世の中の影響について、説明していきます。
3.1 マイナス金利で影響があるのは金融機関
低金利とは、マイナス金利とも表現されます。マイナス金利になることで、影響があるのは金融機関になります。金融機関というのは、日銀に口座を所有しており、お金を預けている状態になります。しかしながら、マイナス金利の状況で日銀にお金を預けて、利息を払わなければならないような状態になっています。
しかし、それでは損をしてしまうので、金融機関はもっと企業にお金を貸して、金利収入を得るような動きを取り始めます。これが、アベノミクスによる景気押し上げの施策にもなるのです。
3.2 住宅ローンはお得になる
マイナス金利による影響は、金融機関が受ける影響ばかりではありません。その影響によって、お得になっているのが住宅ローンの金利です。金融機関が積極的にお金を貸す方向になり、住宅ローンの金利も以前に比べると低金利に。そのおかげで、不動産業界の販売が好調になります。
一般の方も、住宅ローンの金利が低くなったので、住宅購入に踏み切ることができるようになりました。また、個人的に不動産ビジネスとして、賃貸経営に興味を持つ人たちも増加しています。マイナス金利では、このように不動産業界を活気づける機会へと発展しています。
・住宅ローンはお得
・不動産業界が好調
4. 住宅ローンの借入期間が与える影響
住宅ローンの借り入れを行う際、注意するべきポイントは、金利と借入期間の長さです。まず、金利は低金利であるほど、返済額に差が出てきます。そして、借入期間の長さでもメリット、デメリットが変わってきます。
4.1 借入期間が短い
借入期間が短いということは、つまり返済期間をできるだけ短くして、返済していくことになります。早く返すメリットは、返済期間が長い場合に比べると、返済総額が少なくなります。そのおかげで、金利負担を避けることができます。
また、長期に渡る返済がないため、将来的なお金の計画を立てやすくもなるでしょう。デメリットとしては、通常よりも早い段階で完済させないといけないため、月々に支払う返済額も高くなります。仮に、収入が減少してしまうようなことがあったとしても、返済するお金を確保しなければなりません。その場合、家計での月々にかかる住宅ローンの負担が、大きくなるでしょう。
4.2 借入期間が長い
返済期間が長く、今まで高額な所得税を納税している方や、住宅ローンの借り入れが高額になる場合は、住宅ローン減税に関わる恩恵を受けやすくなります。また、返済期間を長くすることで、月々の返済額の負担も少なくて済むため、家計に余裕が生まれます。さらに、子どもが多い家庭の場合は、子どもの成長とともに、教育費や養育費も多くなるため、月々の住宅ローンの負担が少ないほうが、安心できるでしょう。
逆にデメリットは、返済期間を長くすることで、金利負担も多くなることです。最終的には、返済金額の総額が高くなってしまうことになります。また年齢が高齢であれば、返済していく期間が長くても、長期的に働いて収入を得ていく必要があります。
・短いと返済総額が減少
・長いと月々の負担が減少
5. 自分に最適な金利タイプとは?
自分に最適な金利タイプを知ることで、住宅ローンの借り入れに安心感が生まれます。また、将来設計も立てやすくなるでしょう。そこで、自分に最適な金利タイプは、どういったものなのかを紹介します。
5.1 金利の変動を知る方法
住宅ローンの金利は、主に固定金利か変動金利かの2つになります。また固定金利は、全期間固定金利型、固定期間選択型の2つに分かれます。固定金利は、基本的に変動金利よりも高く、固定金利の動きで金利の変動を知ることが可能です。固定期間選択型は、数年単位で金利が変わるものになるので、市場金利の様子を見ながら、数年単位で金利に変化が表れます。
変動金利は、固定金利よりも金利が低金利なので、市場金利の動きを把握しにくいと言えます。しかし、今は金利が全体的に最低まで下がっているので、今後金利が大きく変わるかどうかは、大きく景気が上昇するかしないかによるでしょう。
5.2 自分に合う金利タイプ
市場金利によって、金利が上下してしまう変動金利。はじめの借り入れ時から、金利が変わることのない固定金利。どちらもメリットやデメリットがあります。そこで、それぞれの金利タイプについて、説明していきます。
堅実な生活スタイルを望む方
まず、固定金利の中の全期間固定金利型のメリットは、金利が上昇してしまうようなリスクがないことです。そのおかげで、将来のお金に関わる経済的な計画を、しっかりと立てることができるでしょう。また、どんなに市場金利が高くなっても、金利が上がることがないので安心感があります。
着実な形で金利に振り回されることなく、返済をしていきたいという方に向いているでしょう。そして、固定期間選択型は、ある程度市場金利の動きを見ながら、恩恵を受けたいと思っている方に適しています。変動金利ほど、市場金利の動きに左右されることはないため、安心感があります。
共働きまたは金銭的余裕がある方
変動金利が向いている人は、共働きの人や借り入れ金額が少ない人です。金利が上昇したとしても、それによる影響を感じない方であれば問題ないでしょう。また、最近では住宅ローンの借り入れがしやすいところまで、低金利となっているので、変動金利を選択する人が増えています。
ここ数年間での市場金利の動きは、大きな変化は見られていません。そのため、変動金利を選択することで、少しでも返済額を少なくするように望む人も多くなっています。また、共働きでの生活スタイルなどで、経済的な余裕のある家庭も増加しているので、変動金利で大きな影響を受けなければ問題ないでしょう。
・固定金利は安定
・変動金利が人気
6. 具体的な状況での返済額をシミュレーション
こちらでは、借入金額と借入期間の異なるパターンで、シミュレーションしています。試算条件借入金額は、どちらも4,000万円です。それでは、具体的な返済額についての違いについて、参考にしてみましょう。
6.1 借入金額:4,000万円(ボーナス返済なし)借入期間:35年
こちらの試算は、借入金額4,000万円で借入期間35年と、返済期間を長く設定したパターンになります。金利が0.9%変わるだけで、利息も約500万円以上の差が出てしまいます。また、毎月の返済額にも影響が出てきます。金利が低いほうが、返済額が少なくて済むということが確認できます。
金利 | 毎月の返済額 | 総返済額 | 利息 |
0.6 % | 10万6,000円 | 4,436万円 | 436万円 |
1.5 % | 12万3,000円 | 5,144万円 | 1,144万円 |
6.2 借入金額:4,000万円(ボーナス返済なし)借入期間:30年
こちらの試算は、借入金額4,000万円で借入期間30年と、返済期間を短く設定したパターンです。上記の借入期間から5年短くすると、下記のように試算できます。このように見ると、利息は5年短くなるだけで、100万円以上も変わってしまいます。
したがって、借入期間を短く設定することで、総返済額を全体的に抑えることが可能になります。ただし、毎月の返済額は確実にアップしてしまうので、家計の余裕などの状況を見る必要性があるでしょう。
金利 | 毎月の返済額 | 総返済額 | 利息 |
0.6 % | 12万2,000円 | 4,372万円 | 372万円 |
1.5 % | 13万9,000円 | 4,970万円 | 970万円 |
・返済期間が短いメリット
・総返済額を抑える
7. 住宅ローンの金利推移を知ったうえで借入しよう
住宅ローンは市場金利の動きを知ることで、大体の動きを把握することが可能です。金利の推移を知ることで、住宅ローンの借り入れのタイミングをつかむことができます。
また、現在の住宅ローンは、基本的に低金利で推移しています。大きな変動はないので、借り入れには適しているでしょう。さらに、より細かい動きを知りたいのであれば、固定金利の動きを知ると良いでしょう。
固定金利の上下の動きを調べ、推移を把握することで、返済額をできるだけ少なく抑えられます。変動金利がよいのか、固定金利がよいのかは、ご自身の状況を考えたうえで決断するようにしましょう。