不動産売買には法律上の手続きがかかわってくるため、多くの書類が必要になってきます。
売り主側・買い主側がそれぞれ揃える必要のある書類について前もって知っておきましょう。
契約を前にして慌てたり、手続きが滞ったりすることのないよう、十分に前もって準備を始めておくことが重要です。
不動産売買にかかわる書類は早めに準備しよう
土地・戸建・マンションなどの不動産売買は、ほかの物品の売買とは異なり法律上の手続きが関係してくるため、揃えなければならない書類が多くあります。
中でも、売り主側の揃えるべき書類は特に多く、一度に揃えるのはなかなか難しいため、売却を検討し始めた時点で書類の準備も始めるのがおすすめです。
特に、売り主に関する書類に関しては、不動産が親子や兄弟などの共有名義となっている場合、共有者全員の書類が必要になるため注意が必要です。
共有者が多忙だったり、遠方に住んでいたりする場合もあります。早めの手配を心がけましょう。
とはいえ、住民票や印鑑証明書などは、発行から3カ月以内のものを使用する必要があるため、有効期限を過ぎないようタイミングを考えての準備が必要でしょう。
買い主が見つかってから慌てて書類を揃える人もいますが、欠けている書類があると契約手続きが滞ってしまう可能性があります。
余裕を持った準備で、スムーズな取引を心がけましょう。
ではまず、売り主側が準備するべき書類について、戸建ての場合とマンションの場合に分けて考えてみましょう。
戸建てを売る場合
戸建ての住宅を売却する場合、売り主側が準備する必要のあるのは次の書類です。
売り主に関する書類
売り主本人の身分を証明したり、法律上の手続きに効力を与えたりするための書類が必要になります。
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不動産売却に必要な書類はこれで全部!重要度や入手方法などわかりやすく解説
不動産や権利に関する書類
売却しようとしている住宅が本当に売り主のものであることを証明するための書類や、不動産自体の広さや設備を確認する書類などが必要です。
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そのほかにも、耐震診断報告書・アスベスト使用調査報告書・地盤調査報告書・住宅性能評価書・既存住宅性能評価書や、物件パンフレットなどもあれば提出しましょう。
・不動産や権利
・各種報告書や評価書
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続いて、マンションを売る場合にはどんな書類が必要なのかを見ていきます。
マンションを売る場合
マンションを売る場合に必要な書類は、戸建て住宅を売る場合と共通するものが多いのですが、多少異なるところもあるため注意しましょう。
マンション売却時の注意点は「マンション売却の失敗体験談10選!よくある失敗から見る注意点」で詳しく解説しています。
売り主に関する書類
戸建て住宅を売るときと同じく、売り主の身分を証明したり、法律上の手続きに効力を与えたりする書類を揃えます。
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不動産や権利に関する書類
売り主が売却しようとしているマンションの権利を持っていることを証明する書類です。戸建ての場合のように、土地の測量図などは必要ではありませんが、マンション特有の維持管理費や管理規約に関する書類が必要になります。
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ここまでは、売り主が準備するべき書類について見てきました。続いては、買い主側が準備するべき書類についてチェックしてみましょう。
・不動産や権利
・維持管理費や管理規約
不動産を買う場合
一方、不動産を買う人もいくつかの書類を揃える必要があります。売り主と比べると必要書類はかなり少ないのですが、やはり早めに確認しておくのが安心です。
買い主に関する書類
購入者側も、本人確認のできる書類と、契約に法的効力を持たせるための書類を揃えておく必要があります。
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ローンを組む場合
不動産の購入にあたりローンを組む必要のある場合は、以下の書類も必要となります。
住民票
同居家族全員の続柄が記載してあるものが必要です。発行から3カ月以内のもので、本籍地やマイナンバーの記載を省略したものを用意しましょう。
所得を証明できるもの
給与所得者(勤め人)の人は、会社員のある源泉徴収票と、所得証明書または市町村民税・都道府県民税特別徴収税額通知書のいずれかが必要です。また、事業所得者(自営業)の人は、所得証明書・納税証明書・住民税決定通知書のいずれかと、確定申告書の控(税務署の受付印のあるもの)を用意しましょう。
ローンを組む金融機関によって若干の違いはありますが、前年分だけでなく2年分、3年分を求められる場合もありますので、準備しておきましょう。
借入金残高証明書もしくは返済予定表
ほかに借金がある場合は、どれだけ残っているか、返済のめどが立っているかについて証明する書類が必要です。借入金残高証明書は借入をしている金融機関から発行されます。
返済口座通帳
返済口座の通帳と、通帳の届出印が必要です。実印と銀行届出印が違う場合は、両方持参するのを忘れないようにしましょう。
このように、不動産売買に際しては実に多くの書類を揃える必要があり、圧倒されそうな気持ちになるかもしれません。続く部分を通して、どの書類をどこでどのように入手したら良いのかについて知っておきましょう。
・買い主の身分証明
・ローンを組む時の書類
主な書類の入手方法
不動産売買には多くの書類を揃える必要があり、その中には聞きなれない名前の書類も少なくありません。主な書類について、どこでどのように入手できるのか見てみましょう。
住民票
住民票を取得するには、基本的には住所地の市区町村役場に出向き、市民課や戸籍課で取得します。自治体によって異なりますが、200円~300円前後の手数料がかかります。
また、直接役所に出向かない場合は、住民票請求書と返信用封筒、本人確認書類のコピーに、郵便局で購入した手数料分の定額小為替を同封して役所へ送付すると、住民票を郵送してもらうことができます。
最近では、コンビニエンスストアのマルチコピー機で住民票を取得することも可能です。マイナンバーカードあるいは住民基本台帳カードが必要です。
ちなみに、海外に在住している日本人には、住民票は発行されません。居住している国の日本領事館または日本大使館に申請して「在留証明書」を発行してもらうことで、住民票に代わり氏名と住所を証明することができます。
印鑑登録証明書(印鑑証明)
これまで実印の必要な取引を行ったことのない人は、まず実印を作って印鑑登録を行う必要があります。印鑑登録とは、特定の印鑑が自分だけのものであることを各市区町村の役所に登録することです。
印鑑登録の仕方
成年被後見人を除く15歳以上の住民登録をしている人が、一人1個のみ印鑑を登録できます。同じ印鑑を他の人が登録することはできません。また、大きさが8mm四方の正方形以下・25mm四方の正方形以上のものや、印影が変形しやすいゴム印などは受け付けられません。印鑑登録のプロセスは自治体によって異なりますが、おおむね次の通りです。
まず、役所にて印鑑登録申請書を提出します。ほどなくして「照会書」が住民登録している住所に郵送されてきます。これは、確かに本人の意思であることを確認するためです。「照会書」の回答欄に記入のうえ、登録申請した印鑑と本人確認書類を持って、登録申請受付日から1カ月以内に再び役所に出向きます。
自治体によっては、登録申請する印鑑と本人確認書類を持って、本人が窓口で申請すれば、当日に申請が完了する場合もあります。申請が完了すると「印鑑登録証」というプラスチック製のカードが発行されます。このカードがあれば、印鑑登録証明書を簡単に発行してもらうことができます。
印鑑登録証明書の発行
印鑑証明を発行してもらうには、3つの方法があります。1つ目は、役所へ出向く方法。窓口にて「印鑑登録証明書交付申請書」に必要事項を記入し「印鑑登録証」と本人確認書類とともに提出します。自治体によって違いますが、一般に数百円程度の手数料がかかります。
2つ目は、自動交付機を利用する方法。この方法では、事前に暗証番号の登録手続きをしておく必要があります。3つ目は、コンビニエンスストアで取得する方法。この場合は、マイナンバーカードあるいは住民基本台帳カードが必要となります。
土地建物登記済証(権利証または登記識別情報)
不動産については「権利書」または「権利証」という言い方になじみがあるかもしれませんが、平成17年3月7日以降に不動産登記を行った場合は、権利証ではなく登記識別情報を受け取ることになっています。
この登記識別情報というのは、その登記名義人が真正な権利者であることを公的に証明するもので、登記完了時に登記名義人に通知される秘密の12桁の番号のことです。不動産を管轄する登記所(法務局)にて、登記を行う際に受け取ります。
土地建物登記済証(権利証)を紛失した場合、権利証の再発行はできないため、売却などで必要な際は代わりの手段で不動産の所有権を証明します。
固定資産税・都市計画税納税通知書
固定資産税・都市計画税というのは、毎年1月1日時点での不動産の所有者に課税される税金のことです。この通知書は、固定資産税の確認や、移転登記の際の登録免許税の算出に必要となります。
固定資産税・都市計画税納税通知書を紛失してしまった場合はどうすれば良いでしょうか。納税通知書の再発行は不可能ですので「固定資産税評価証明書」という書類を役所で取得して代用とします。
重要事項説明書と物件状況等報告書
「重要事項説明書」と「物件状況等報告書(告知書)」はどちらも、売買される物件の実際の状況を買い主に説明し、良いことも悪いことも納得の上で購入してもらうためのものです。売却・引き渡し後のトラブルを防ぐうえでとても大切な書類です。
「重要事項説明書」は、物件の権利関係・法令上の制限・インフラ整備やその他の制限事項について明記したもので、専門知識を有する宅地建物取引主任者が調査して作成します。一方「物件状況等報告書」は売り主が記入します。
過去の事件事故、雨漏りや埋設物、隣地との境界紛争など、売り主が知りうる情報を隠さず提供する必要があります。「物件状況等報告書」できちんと示したうえで契約したなら、のちに何らかの不具合があったとしても売り主の責任を問われることはありません。
借入金残高証明書
借入金残高証明書は、住宅ローンを組む場合に買い主が用意するべき書類のひとつで、通常は借入先の金融会社から郵送されるものです。概ね10月から11月ごろに届くのが一般的です。住宅ローンを組む時期が9月以降の場合は翌年1月ごろに届く場合があります。
借入金残高証明書を紛失してしまった場合は、金融機関に再発行してもらいましょう。基本的には、支店へ出向き本人確認を行えば無料で再発行できます。また、インターネットで気軽に再発行を申請できる金融機関もあります。
・登記識別情報は登記所
・借入金残高証明書は銀行
必要書類を揃えてスムーズな売買を
不動産売買に際し、売り主側・買い主側がそれぞれ揃える必要のある書類は様々です。
書類を取得できる場所もいろいろあり、1日では取得できないものもあるため、書類集めは思ったよりも時間と手間のかかる仕事になることが予想されます。
売り主側も買い主側も、不動産売買を検討したら、早い段階で書類を揃え始めるのがベストです。
契約を前にして慌てることなく万全の状態で臨むことができ、双方にとって満足のいく取引につながることでしょう。