現在使用していない家や空き部屋があるのなら、これを有効活用したいと考える人は少なくありません。特に近年注目を集めている活用方法は民泊であり、上手くやると収益を上げることも可能です。
しかし、民泊に興味はあるものの、どのようにやるのか始め方が分からないという人は多いです。民泊はどのように始めるのか、準備から運用までの方法を知りましょう。
民泊を始める前の7つの知っておくべきこと
使用していない不動産を有効活用する方法として民泊は人気を集めていますが、始める前にきちんと下調べをしておくことが大切です。
民泊開始にあたって知っておきたいことは全部で7つあり、これらを把握できていないと失敗する可能性もあります。まずは基礎知識を身につけ、民泊とはどのようなものか理解を深めることが大切です。
民泊の形態は3種類
空き家や空き部屋を使用した民泊には、実は3つの形態があります。
- 旅館業民泊
- 特区民泊
- 新法民泊
3つの業態のうち、もっとも旅館やホテルなどの宿泊施設に近いのは旅館業民泊です。旅館業民泊は特定の地域でしか運営できず、かつ自治体の許可も得なければなりません。開業までのハードルが非常に高いですが、その分年間の営業日数の制限はないため、民泊ビジネスに本格的に取り組みたい人向けといえます。
特区民泊は、各自治体ごとに定めた特区内で営業が可能です。どこを特区に定めているかは自治体によって異なり、そもそも特区指定がなく、この形態が利用できない地域もあります。特区民泊は自治体による許可が必要であり、宿泊は2泊3日以上という制限があります。
もっとも制限が少ないのは新法民泊であり、オンライン申請で簡単に始められる点が特徴です。年間の営業日数が180日という制限はありますが、気軽に始めたい人におすすめでしょう。
民泊を提供する条件
民泊サービスを提供する条件として、家主居住型と家主不在型という2つのスタイルが挙げられます。家主居住型は住民票がある場所を民泊施設とし、宿泊者がいる間は家主も同席するスタイルです。空き部屋を利用する場合は家主居住型となり、宿泊者のみを残して家主が外出することはできません。
1時間程度の短い外出は許されますが、宿泊者に鍵を渡し、勝手に利用してもらうということはできないため注意が必要です。反対に家主不在型は文字通り宿泊時に家主がいない状態です。
家主不在型として提供する場合は、民泊の運営機関などに依頼して、管理者を派遣してもらわなければなりません。つまり、宿泊サービスの提供時に家主が同席するか、家主不在で業者に管理を委託するかという2つの形態があると考えましょう。
民泊の準備にかかる費用相場
民泊の準備にかかる費用相場は、大まかに考えると次の通りです。
内容 | 費用 |
リノベーションや清掃費用 | 10万円以上~(業者に依頼する場合) |
行政書士への申請代行依頼 | 20~40万円程度 |
防火設備やセキュリティ設備の設置 | 1~10万円程度 |
アメニティグッズ | 10,000円~ |
リノベーションや清掃費用は、どこまで行うかによって変わります。全面的に改装するなら、これだけで100万円以上かかることは少なくありません。リノベーションはせず、清掃も自身で行えるなら、10万円もかけずに終えることも可能です。
しかし、プロに依頼して修繕、整備してもらったほうが、客室としての魅力が高まることは確かです。民泊を始めるには自治体などに申請が必要であり、これを行政書士に依頼すると代行手数料が数十万円かかります。
他にも各種設備やグッズを揃えるのに費用がかかりますが、どこまでこだわるかによって出費の額は大きく違ってきます。大体の相場としては、80~180万円程度が初期費用として必要と考えておくとよいでしょう。
最適な宿泊費の価格
宿泊費は自分で自由に決められますが、いくらに設定するかで集客率は違ってくるため注意しなければなりません。いくらが最適かは物件の立地や提供するサービスの質、時期によって異なります。
観光地などへの周辺アクセスがよく、かつ提供するアメニティや設備も高品質で長期休暇などのハイシーズンなら高めの設定でも集客できるでしょう。しかし、立地も設備も悪く、閑散期であるなら、かなり安めに設定しなければ集客は難しいです。
細かい要件で最適な宿泊費は変わるため、周辺の民泊施設の設定価格を参考にすることもおすすめです。民泊仲介サイトの中には、提供条件を入力すると相場を表示してくれるものもあるため、これを利用してみてもよいでしょう。
民泊可能な用途地域
特区の指定などだけではなく、民泊はサービスの提供が可能な用途地域が定められています。用途地域はエリアごとに定められており、例えば工業専用地域に定められた場所では、どの形態でも民泊の運営はできません。
また、形態によってもサービスの提供可能な用途地域が異なります。旅館業民泊と特区民泊は、次の5つの地域でのみ運営が可能です。
- 第二種住居地域
- 準住居地域
- 近隣商業地域
- 商業地域
- 準工業地域
条件によっては、第一種住居地域でも運営可能な場合もあります。対して新法民泊は住居専用地域以外の全ての地域で運営可能と、制限が少ない点が魅力でしょう。また、戸建てではなくマンションでも提供は可能ですが、運営開始にあたっては利用規約に違反していないかをチェックしておかなければなりません。
民泊サービスが提供できる用途地域にあっても、マンションの規約という制限に引っかかるとサービスの提供はできないため注意が必要です。
民泊を運営するために必須となる設備
単に空き部屋や空き家があるなら民泊は提供できるわけではなく、サービスの提供にあたっては最低限の設備は揃えておかなければなりません。
- 台所
- トイレ
- バス
- 洗面設備
これらの設備は必須のため、ない場合はリノベーションをして設置する必要があります。
民泊事業の納税と確定申告
民泊によって利益が出た場合は納税や確定申告が必要です。民泊事業で得た利益は所得として計上されますが、自宅を利用しているか賃貸物件を利用しているかで分類が異なります。
居住用に使用している家や部屋を利用している場合は、所得は「雑所得」に該当し、年間の売上が20万円以下なら所得税の申告は不要ですが、住民税の申告は必要です。
対して自己所有の賃貸物件を民泊として利用する場合は、所得は「不動産所得」に該当します。少なからず利益が出ているなら確定申告は必要なため、収入と支出を計算して、帳簿にまとめておかなければなりません。
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民泊で集客アップをはかるための3つのノウハウ
せっかく民泊を始めても、なかなか予約が入らず集客に悩むことは少なくありません。民泊施設は数が増えつつあるため、ただホテルや旅館よりも安く泊まれるというだけでは、他の民泊に負けてしまうことが多いです。そのため、集客アップをはかるために、次の3つのノウハウを知っておきましょう。
Wi-Fiのネット環境を整える
ネット環境は宿泊施設を選ぶ際の重要な条件であり、民泊でも同じことがいえます。ほとんど同じ施設でもWi-Fiの有無で集客率は大きく変わるため、モバイルWi-Fiは導入しておくとよいでしょう。
モバイルWi-Fiは国内の利用者はもちろん、外国人観光客に喜ばれるため、インバウンドの集客率を高められます。民泊は外国人観光客が多く利用するサービスでもあるため、ネット環境は充実させておくと魅力はアップするでしょう。
設備環境の向上
同じ泊まるなら少しでも環境のよいところと考える人は多いため、ある程度資金を投入してでも設備環境の向上を図ることは大切です。宿泊に便利な設備を追加したり、内装や外装をきれいにリノベーションしたりすると、集客率は上がりやすいでしょう。
また、設置する家具やアメニティをおしゃれにすることもおすすめであり、その民泊に泊まる価値があると利用者に思ってもらわなければなりません。他の民泊にはない充実した設備やサービスが提供できると、多少の立地の悪さはカバーして集客率が高められます。
外国人観光客の利用にも対応する
民泊は外国人観光客の利用も多いため、インバウンドを受け入れられる体制を整えておくことも大切です。例えば民泊内のガイドを多言語にしたり、自分がホストを務めるなら簡単な英会話くらいができたりすると、外国人観光客も利用しやすくなるでしょう。
また、日本のよさを味わってもらいたいと和式トイレや布団を用意するのはかえって不評を買うこともあるため注意が必要です。日本文化に憧れを持つ外国人は少なくありませんが、宿泊時には使い慣れた洋式トイレやべッドがよいという人は多いため、お客様のニーズに合わせることがおすすめです。
いま民泊を運営するメリットとは|リスク回避の対策としてできること
民泊運営に悩んだ場合の2つのポイント
余った不動産を活用する方法として民泊は注目を集めていますが、民泊の運営は難しいことも多く、誰でも簡単にできるほど甘くはありません。
そのため、いざ初めてみたもののうまくいかず、このまま続けるべきか不安を抱えてしまう人も多いです。民泊運営で不安を抱えた場合は、どのように対処すべきか2つの方法を知っておきましょう。
民泊運用の代行を依頼する
サービスの提供開始から運営まで全て自分でやろうとすると難しく、失敗することも多いため、無理せず民泊運用の代行を依頼することもおすすめです。
代行サービスを利用することで面倒な手続きは代行してもらえ、準備や運営に関するアドバイスも受けられます。人手が足りない場合にもおすすめなサービスであり、手間をかけずに民泊をやってみたい人に向いているでしょう。
一括査定サイトを利用して物件の売却も視野に入れる
そもそも物件によっては民泊運営に適していないこともあるため、どうしても続けるのが難しそうなら物件の売却も考えましょう。売却時には一括査定サイトを利用することで複数社からの査定を比較でき、より高値で売れるためおすすめです。
もし民泊をやりたいなら、売却して得た資金を使って新たに民泊に適した物件を購入するという方法もあります。必ずしも手持ちの不動産で民泊運営をしなければならないわけではないため、選択肢は柔軟に持っておくとよいでしょう。
【戸建て査定の基礎知識】見られるポイント・訊かれること・事前準備を徹底解説
準備が整ったら民泊経営に向けての一歩を踏み出す
民泊事業を成功させるには事前準備が重要であり、いかに念入りな準備ができているかによって、成功するかどうかは変わります。運営開始後も順調に続けるには明確なプランが必要なため、きちんと計画を練り、万全の準備を整えてから、民泊経営に乗り出しましょう。